7月22日の厚生労働省交渉の報告
7月22日に介護保障協議会常任委員で厚生労働省交渉を行いました。要望 書を紹介します。各項目の中に回答や解説を掲載します。(7/22は障害福祉課
居宅支援係長対応)
厚生大臣殿
障害保健福祉部障害福祉課
要望書
2003年7月22日
全国障害者介護保障協議会
代表 横山晃久
東京都武蔵野市境2−2−18−302
TEL 0424−62−5996
FAX 0424−67−8108
ホームヘルプサービス事業について
貴職・障害福祉課におかれましては、障害者の介護施策の推進にご尽力賜り ありがとうございます。
以下、要望いたします。
1.各自治体でのヘルパー上限撤廃にむけて、各自治体への指示や電話対応など
(a)ヘルパー派遣時間数に上限を設けている自治体には、引き続き上限を設 けないように指導してください。
(b)課長会議等の資料には必ず「上限を設けないように強く指導すること」 という文章を今までどおり入れてください。
(c)各地の交渉団体からのお願いがあった場合、電話等での自治体への事例 を示した助言指導も引き続き行ってください。
解説:これについては、今までどおり上限を設けないようにいっていく。 機会があるごとにそれは周知していく・・とのことです。 |
2.ヘルパー資格とヘルパー研修について
ヘルパー研修がやりにくい、時間がかかる、様々な規制がある都道府県等が あるため、ほとんどの都道府県ではヘルパー研修を自由にいつでも受講できな
い状態です。
特に、自薦登録の介助者を使って生活を組み立ててきた最重度障害者が、支 援費制度が始まってから、介助者不足で非常に困っています。
(多くの24時間介護保障でない市町村では、自薦利用の障害者は現行のヘ ルパー決定時間数では足りない為、「1時間介護に入ってもらったら、もう2
時間ひきつづいてボランティアしてもらう」など、苦労しています。学生や勤 労者の(半分ボランティアの)介助者を確保をして、実質的に「制度を引き伸
ばして」生活してきました。これらの介助者は、昨年までは無資格で介助に入 れていたのですが、4月からは無資格では介助には入れなくなっています。学
生に頼っていた障害者は4分の1の介助者がいなくなり、特に困っています。 このように無資格者は介護には入れなくなることを役所から知らされていなか
った障害者も多くいます。これらの介助者はほかに仕事を持っているなどで、 空き時間がなく、一般の研修を受講してもらうことは不可能です)。
要望1
1部の政令市では、昨年まで全身性障害者介護人派遣事業を利用していた障 害者に対し、(今年度1年間はヘルパー研修を「いつでもどの団体でも実施で
きる体制」が間に合わないので)、市の判断で(今年度から新たに介護を始め る自薦ヘルパーに)仮のヘルパー証明書などを出して介護に入れるようにして
います。(今年度1年かぎりの経過措置) 自治体のこのような運用も認めてください。
要望2
また、ヘルパー研修がいつでもどこでも障害者グループなど任意団体によっ て実施できるようになり、受講希望者がいつでもすぐに受講できるようになれ
ば、このような問題はかなり解決されます。全国で小規模な障害者グループな ど任意団体で研修が行われるような状況になるように奨励すべきです。都道府
県等に対して「ヘルパー研修がいつでもどこでも障害者グループなど任意団体 によって実施できるようになるよう」、3級研修・日常生活支援研修・移動介
護研修の3種類は、研修実施申請の受付を柔軟な方法にするよう事務連絡など で助言してください。
要望3
未だに「行政の外郭団体等にしか障害ヘルパーを実施させない」といってい る都道府県・政令市・中核市があります。早急に「民間企業・民間団体・ボラ
ンティア団体などが3級研修・日常生活支援研修・移動介護研修を実施できる よう」に趣旨を通知してください。研修実施団体を法人に限る自治体もありま
すので法人に限らないように趣旨を説明してください。
要望4
3級研修・日常生活支援研修・移動介護研修の3種類のヘルパー研修は、無 資格者が最初に受講する基礎的な研修となります。過剰な講師の規制を掛けて
いる自治体が多いので、2級や1級と同じ考えで規制しないように(3級研 修・日常生活支援研修・移動介護研修の)3種類のヘルパー研修は基礎的な研
修ですので、別扱いにするように趣旨を説明してください。
(例:「医学等の関連する領域の基礎的な知識に関する講義」という講義項目 は1級にも2級にもありますが、看護師が必須としている自治体がほとんど。
3級や日常生活支援の講義の項目にも同じ「医学等の関連する領域の基礎的な 知識に関する講義」があるため、同じ講師基準を掛けている自治体が多い。3
級や日常生活支援の研修で看護師は必要とは言えないので、趣旨を説明して欲 しい。同様に「障害者福祉に係る制度及びサービスに関する講義」では講師に
担当行政職員が必要な県などがあるが、3級や移動介護の中にも「障害者福祉 に係る制度及びサービスに関する講義」があるが同じ講師基準になっている県
がある。2級や1級は主任ヘルパーになる可能性もありそれなりの基準も必要 であるが、3級などには不要な規制なので趣旨を説明して欲しい)
要望5
自薦の制度を使っていた重度の障害者にとって、無資格の介助者を求人して、 面接して、すぐに研修を自ら(の団体・グループで)行って、指定事業所に自
薦登録して介助に入れていく・・・・という流れがスムーズに行われることが 必要です。
そのためには、必要なときに小人数(定員1~2人)の研修が年中(毎週) 実施できて(初年度は申請から2週間ほどで指定され、2年目以降は年度の初
めに年間52週分を申請できるなど)、研修会場や日程や講師の変更も(数日 前の変更届で)自由に行えるような体制が必要です。
この趣旨を都道府県等に説明してください。
要望6
介護保険の1〜3級ヘルパー研修では、12年度1年間程度は、ヘルパー研 修を複数の都道府県のスクーリング会場で行う際に、本部のある都道府県に対
してのみ申請して、複数の都道府県で研修実施することが可能でした。
障害ヘルパー研修でもこの運用を行ってください。(期間は、47都道府県 でヘルパー研修がいつでもどこでも障害者グループなど任意団体によって実施
できるようになり、受講希望者がいつでもすぐに受講できるようになるまでの 経過措置として)
解説:要望1は無理であるが、要望2〜5は事務連絡等を出すべきという意見 も課内にあるので検討してみるとの回答(その後、事務連絡等を出すことに決
定。5ページ先を参照)。要望6については、これは可能だと思うとのことで した。 |
3.明らかに身体介護である内容を日常生活支援にかえられて困るので日常生 活支援は「原則4時間以上」に
事例1
鹿児島県のK町の1暮らしで24時間介護が必要なキンジスのAさんは、昨 年度まで、身体介護型で朝1時間・昼1時間・夜1時間といった、1日5回の
「とびとび」利用をしていました。夜間は毎日ボランティアが泊まり介助を行 っており、昼もヘルパーがいない間は近所の支援者に緊急時などの介助を頼ん
でいたので、これでは時間数が足りません。支援費制度になる直前に、時間数 を伸ばすように交渉を行ったところ、逆に「朝と昼は日常生活支援61分で使
ってください」といわれ、単価的には引き下がってしまいました。もともとの 介助内容がトイレや食事介助など明らかに身体介護型であるにもかかわらず、
予算が足りないので削減したいとの理由です。時間も1回1時間30分まで利 用できるので、「時間はのびたのでいいでしょう」といわれています。
しかし、支援費制度になって自立生活センターで支援費ヘルパーを使い、1 日5回の身体介護を18時間程度の介助に引き伸ばして使うつもりで準備して
いたので、大変困っています。もともと24時間介護が必要で、障害が重度化 し、ボランティアの確保が年々難しくなってきたため、もう限界です。(町は
ボランティアの介助が不可欠な実態は把握しています)。
要望
単価の低い日常生活支援が無原則に使われるため、このような事が起こりま す。1回4時間以下の日常生活支援は原則禁止とし、利用者が特に希望するな
ど、特別な場合に限って認めるように運用を改善してください。
特に、1時間の身体介護を、1時間30分の日常生活支援に変える事を市町 村の意志で無規制で行えるなら、どんな身体介護でも「30分は、もともとな
かったから、60分身体介護で、30分見守りでいいのではないか」という理 屈で、日常生活支援にできてしまいます。これは日常生活支援のもともとの趣
旨からかけ離れたことですので、規制が必要です。
4.明らかに「身体介護」である介護内容を「日常生活支援」で行うよう求め られて困るので「身体介護」は身体介護単価で行うように強く指導を
事例2
静岡県H市では1人暮らしで24時間介護の必要な頚椎損傷のBさんに対し て、2002年度までは身体介護型で1日5時間出していましたが、2002
年度の終わり頃に「支援費制度になったら日常生活支援にする」と言い出しま した。
Bさんは24時間介助者をつけており、施設を出るときに交渉を行い、市も 24時間介助者が付いていないと生きていけないことは把握しています。しか
し、予算がかかるので1日5時間までしか出せないとのことです。Bさんは2 002年度はヘルパー制度委託先の自立生活センターを通して5時間の事業所
収入で24時間の介助に伸ばして24時間介護を利用していました。
ところが、2003年度から日常生活支援が始まるので、「全身性障害者で 月にたくさんの時間を利用する障害者は全て日常生活支援になる」という説明
を国の会議などで聞いてきたということで、市は「何がなんでも日常生活支援 にします」といってきました。しかも、時間数は他の障害者や高齢者などとの
バランスを考えて1日5時間しか出せないとの事です。
Bさんは24時間介護が必要で、24時間他人介護者を付けているわけです から、24時間のうちに特に身体介護が集中している入浴やトイレや食事介助
などの時間帯にヘルパー制度の身体介護を利用して、そのほかは制度外とする ことにすれば、1回あたりのヘルパー時間は1時間〜1時間半で、1日に5回
程度に分けてヘルパー制度を利用するということになります。つまり、日常生 活支援で想定しているような長時間で介護と家事と見守り待機が混在している
状態ではありません。
要望
身体介護しか行っていない時間帯に対して日常生活支援を使え・・・という ことは、制度の趣旨を逸脱しており、「市町村は国が決めた最低単価を下回っ
てはならない」と定めた法律に違反しています。このような違法な制度運用を 行わないようにQ&Aや課長会議などで注意事項として周知徹底してください。
解説:3・4とも市町村が不適切な判断をしている場合には問題なので聞いて みたい。課長会議などの場でそのようなことのないように周知していきたい
とのことです。ただ、日常生活支援を4時間以上にする要望には、4時間 と決める根拠がないと数字では示せないとの事でした。
|
5.車を使った移動の介護について(介護保険の介護タクシーとの差別化)
介護保険で車での移動介護を利用するのは要介護1〜2の高齢者が中心であ り、支えて歩ける程度の軽い障害をもつ高齢者が改造していない普通車のタク
シーを利用しているのがほとんどです。支援費制度の移動介護は1級の全身性 障害者が(車を必要とする)中心であり全く状況が違います。
例えば、全身性障害者の日常生活支援では「介護」と「いつでも介護が出来 るように待つ(見守り)」が混在しており、以下の(A)のような場合があり
ます。これと(B)では介護している内容は同じです。
(A)家の中での日常生活支援の例 |
(B)車の中での介助の例 |
8:00 |
食事介助・着替え介助(120分) |
8:00 |
食事介助・着替え介助(120分) |
10:00 |
車椅子の上での体位変換1分
何か呼ばれるまで待つ9分 |
10:00 |
乗車して車椅子の上での体位変換1分
何か呼ばれるまで運転しながら待つ9分 |
10:10 |
水分補給2分
何か呼ばれるまで待つ8分 |
10:10 |
停車して水分補給2分
何か呼ばれるまで運転しながら待つ8分 |
10:20 |
車椅子の上での体位変換1分
何か呼ばれるまで待つ9分 |
10:20 |
停車して車椅子の上での体位変換1分
何か呼ばれるまで運転しながら待つ9分 |
10:30 |
トイレ(小)介助4分
何か呼ばれるまで待つ6分 |
10:30 |
停車してトイレ(小)介助4分
何か呼ばれるまで運転しながら待つ6分 |
10:40 |
車椅子の上での体位変換1分
何か呼ばれるまで待つ9分 |
10:40 |
停車して車椅子の上での体位変換1分
何か呼ばれるまで運転しながら待つ9分 |
10:50 |
水分補給2分
何か呼ばれるまで待つ8分 |
10:50 |
停車して水分補給2分
何か呼ばれるまで運転しながら待つ8分 |
11:00 |
スーパーの買物同行30分 |
11:00 |
スーパーの買物同行30分 |
このように、最重度の全身性障害者は、常に呼ばれたらすぐに介護が出来る ような状態で介助者が待っている状態が多く、「座席に座ったら、介護は要ら
ない」という高齢者・障害者とは分けて考えるべきです。
国土交通省は運転行為自体に対して厚生労働省がお金をつけることを問題に しており、車を路肩にとめて介護することに対してお金をつけても問題はあり
ません。
要望
市町村の判断で特に上記の介護のような密な介護の必要性がある障害者には 車移動中も支援費を適用できるように運用を変えてください。
解説:このようなケースの場合は、2人で出向いて、1人が運転し、1人が介 護すれば、全時間が支援費の対象になるので、そのほうがいいのではないかと
のことでした。しかし、当会は、これはあくまでいろいろなケースのうちの1 つであり、いろいろな状況がありえるので、運転を対象にするかどうかは市町
村の判断にしてほしいと要望しました。解決せず。 |
6.介護保険では1.5時間を越える身体介護は家事単価に下がるが、来年度介護 保険と同じにしないように
介護保険では2003年度からの改正で、「身体介護型で1.5時間以上の 長時間利用を行うと、1.5時間を超える部分の単価が家事援助単価になる」
改正が行われました。またヘルパー派遣がおわり、次のヘルパー派遣が始まる までの間隔は原則2時間空けることになっています(原則なので最重度の場合
は間隔の短縮は自治体判断で可能)。また、やむをえず2時間以内に2回の身 体介護型の派遣を行った場合は、1つながりの派遣と認定され、1時間半を超
える部分は家事援助単価になります。
支援費制度では気管切開している障害者や人工呼吸器利用者など最重度の障 害者が身体介護型で1日10時間連続などの長時間利用をしている実態も数多
く有ります。
要望
来年度、介護保険と同じ「身体介護型で1.5時間以上の長時間利用を行う と、1.5時間を超える部分の単価が家事援助単価になる」という制度になら
ないようにしてください。
解説:この日の時点では、回答は難しいという回答。その後継続して交渉を行 っています。次々ページ参照。 |
7.常時ヘルパー利用の1人暮らし等の最重度全身性障害者の一時入院時のヘル パー利用について
(現時点では国庫補助はつかないが)支援費制度で一時的な入院の場合の病 室へのヘルパー派遣を市町村の判断があれば行っても良いという現行方針を自
治体に周知してください。
また、国庫補助についても来年度から行えるように検討してください。「既 に毎日10時間以上などのヘルパー利用をしている1人暮らし等の最重度障害
者」が一時的に入院したときのはなしですので、支援費の受給者証の時間数が 増えるわけではなく、国も自治体も余計な予算はかかりません(予算変化なし)。
最重度の1人暮らしや障害者のみ世帯などに限られるので、対象者も全国で年 20人もいませんので、大きな変更ではありません。しかし当事者にとっては
命にかかわる大きな事態です。
解説:今まで何度も交渉を行っていますが、今回も進展せず。 |
8.単身者等の対策
1人暮らしや障害者夫婦など、家族の介護を受けられない重度全身性障害者 などは、介護が足りないことは命にかかわることです。毎年、ヘルパー制度の
時間数が足りない地方で、1人暮らしの最重度障害者がボランティアなどの介 助者探しの過労で肺炎などにかかり亡くなっています。
障害保健福祉部の中で、このように命にかかわる重大事項はほかに何がある でしょうか。
要望1
(今年度から)1人暮らしや障害者夫婦など、家族の介護を受けられない重 度全身性障害者や知的障害者等に対して特別な対策をとってください。
自治体に対し、「1人暮らしや障害者夫婦など、家族の介護を受けられない 重度全身性障害者や知的障害者等に対しては、必要な介護時間をすべて支援費
のヘルパーで対応」するように特別な指導をしてください。(特に今年度は制 度改正があったので自治体で補正の組みやすい年ですので、9月補正に間に合
うように8月中に通知・指導等をしてください)
要望2
来年度、「1人暮らしや障害者夫婦など、家族の介護を受けられない重度全 身性障害者や知的障害者等に対しての特別対策」の名目で予算確保してくださ
い。(来年度はまず400人で10億円)。
ヘルパー全体予算がわずかでも伸びる場合は、増加分(の一部)に対して、 上記の名目をかならず入れてください。
要望3
予算確保と平行し対策の専門の全国担当者会議などを行い、1人暮らし等の 障害者へのヘルパー対策を協力に指導してください。
解説:市町村では1人暮らしの障害者に毎日24時間のヘルパーを決定す ると、数年立って職員が入れ替わるころには、すべての利用者に対して自
立した生活に必要な時間を考えて決定していくように変わります。逆に1 人暮らしの24時間ヘルパー利用者がいない市町村では、ヘルパー制度は
家族の介護の1部を補助する制度と考えられており、一律の時間数上限が 定められていたりします。 解決するには、まず1人暮らしの24時間要介護の障害者に24時間の介
護保障をする土壌を作ることが重要です。そのため、予算要望で、特別に 1人暮らしで命にかかわる状態の障害者に特に予算の項目として対応して
表現を要望しました。しかしながら、そのような予算の書き方を通常しな いということで、解決せず。なお、この要望項目は8月8日の4大団体
(22ページ参照)での要望にも入れて引き続き要望しています。 |
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