Z市で24時間介護保障になるまでの交渉経過
Z市で2003年4月から24時間介護保障が実現しました。交渉を行ったZ市の障害者生活支援センター・てごーすに、97年からの交渉経過をいただきました。
注意:制度が伸びた地域への引越し希望がたまに寄せられますが、そのようなことは行わないで下さい。制度を伸ばし努力した市を財政的に苦しめる結果になり、そうなると、それを見ている周りの市が続いて制度を良くして行けなくなります(財務部が許可しなくなる)。制度は各地域に住む障害者が何年も努力して交渉して作り上げていっています。皆さんの住む市でも制度交渉を行うことで制度を伸ばしていけます。そのノウハウは当会で提供していますので、制度交渉の方法をお問い合わせ下さい。
制度係0037−80−4445(通話料無料)11:00〜23:00
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Z市交渉経過報告
1996年からてごーすの前身である「自立生活プロジェクト」として、重度障害者の介護問題を中心に自立生活をしている障害者・介護に関わる健全者で、介護問題を話しはじめる。
「自立生活プロジェクト」として、97年1月にZ市に対して介護時間の拡大を求め、要求書を提出すると同時に、代表が「私に必要な介護」という資料も提出する。
1997年4月
「パートヘルパー特例運用」(1日3時間×週5回)の派遣時間延長を認めた。代表が高齢でもある障害者の介護保障を充実させるため、障害福祉課と協議する。
1997年7月
Z市障害福祉課職員が代表宅に泊り込み、介護ニーズの実態調査、めざす会自立生活プロジェクトはこれに先立ち3月に抗議要求書を提出、Z市は全身性障害者介護人派遣事業」の制度がある全国の自治体の中で断トツ低いレベルの1ヶ月26時間(重複障害の場合39時間)だった。そこで緊急対応として、市の制度として既にある「パートヘルパー」に「自薦登録方式」を取り入れさせるより交渉を重ねた。その結果、特例運用が認められた。
その当時、一人暮らしの障害者が使えた制度は次のとおりである。
- ホームヘルパー(パートヘルパー特例運用推薦方式)
- 車椅子等ガイドヘルパー
- 全身性障害者介護人派遣事業・生活保護他人介護料
その後も、障害者のニーズに合わせた介護保障をするように交渉を重ねた。
1998年2月3日
障害福祉課と協議をもち、主にヘルパー派遣時間について議論したが、市側は「厚生省の上限撤廃の指示は理解しているが、撤廃できる体勢が整っていないので、市障害者計画の数値達成に向けてヘルパーを増員していく。全身性障害者については「全身性障害者介護人派遣事業」の時間延長で対応していくとの姿勢を譲らなかった。
1998年4月
「障害者生活支援センター・てごーす」を設立。「自立生活プロジェクト」時代に交渉していた「全身性障害者介護人派遣事業」が4月より1ヶ月60時間になった。それでも最低レベルであることは変わりなかった。さらに、行政側は「3月の時点で4月までの介護券は各利用者に配布しているので、時間数を伸ばすのは5月から」と言い出し、交渉している私たちを怒らせた。抗議をした結果、介護券の不足分は後に郵送するということで落ち着いた。
「車いす等ガイドヘルパー」に関しては現行の「有料ボランティア」並の制度を改め、99年度から厚生省の指示通り、介護型ヘルパーに準じる制度に転換するよう求めているが、市側は「現在、全国の政令指定都市の同様の制度について調査中だが、来年度からの変更は困難。しかし今後の重要検討課題」と答えるにとどまった。99年度から「謝金」から「時給制」(1時間700円)になり、上限が設けられた。(1ヶ月80時間)
しかし、相変わらず有料ボランティア扱いをくずしておらず、外出の多い障害者にとってはサービスの切り下げになるため、このことが分かってからは、事務局スタッフが障害福祉課に毎日抗議に行ったが、前提をくつがえすことができなかった。
1999年3月30日
予算に対する抗議・要求書を提出。4月14日に、今年度第一回の交渉を持った。交渉の論点は、今までと同様ホームヘルパーの上限撤廃であった。その時に課長は「厚生省の上限撤廃の指示は介護保険との関連で出てきたもので財政難のZ市が強制されるようなものではない」と発言したため、私たちの怒りをかった。結局その時同席していた市議が「人の生死にかかわる問題には早急に対応すべき。すでに撤廃している自治体の先例を調べるなり、撤廃したらどれほどの財政負担になるのかを試算するなりしてはどうか」と提案。市側もそれを受け入れ、試算する準備に入った。
補正予算で99年8月より「全身性障害者介護人派遣事業」の時間数が月60時間から70時間に延長された。
1999年11月
てごーす、他団体と共同で市長に面会「要望書」を提出。他団体と合同でZ市長に面会して要望を伝える「市長ヒアリング」を行い、ホームヘルパーの派遣時間上限撤廃を柱とする「障害者福祉施策充実にむけての要望書」を行った。
Z市長も障害者が自立したいという気持ち、そのために自分たちからイニシアチブをとって活動しているみなさんに敬意を表します。今までも努力をしてきましたが、これからも要望に向けて努力をしてみたい。遅れているようなら、みなさんの側が催促してください、と明言。
2000年4月
全身性障害者の介護制度では「パートヘルパー特例運用」の時間数が週25時間となり、1回あたりの時間制限がなくなって9時〜20時の範囲内で自由にプランを立てることができるようになった。
2000年6月22日
障害者施策についての要求書提出。
2000年8月9日
要求書に対する回答を示した上、協議を持った。全く具体的な内容が伴わないばかりか「ホームヘルパー派遣時間の上限撤廃」を指示している厚生省から「財政難の現状では、やむを得ない」との回答を得ていたことが判明。
2000年8月30日
市長直通ファックスに代表名で抗議と再回答を求める文書を送信。その後、断続的に協議の設定を要求して訪問・連絡を行ったが、12月にずれ込んだ。
2000年12月15日
8月30日に市長に送信したファックスの回答が示された。これに基づき「代表への即時24時間保障」を中心に議論するが文書回答内容の域を出ず。障害者のニーズに応じた介護時間の把握は今年度中にアンケート調査を行い、それを来年度以降に分析し、2003年度までの今後の方策のめどを立てたい。
課長からは、施設利用を勧めるような発言があったため撤回させた。課長補佐からは、市社協ボランティア利用の提案があり、私たちはボランティア利用はしないことを明確に伝えた。その上で、真に緊急性のある対象者に絞り直ちにそのニーズに合った介護保障を施策化するよう求めた。
2000年12月
Z市、介護保障時間延長に向け、市内の全身性障害者への介護ニーズ及び、東京都下の24時間保障自治体の実態についてアンケート調査実施。2002年2月次のような結果が出た。
- 東京の数字から推計すればZ市で24時間保障制度にした場合、現在の3倍以上の予算が必要。
- 市側からは、来年度に向けてはこの調査は反映できていない。代表の要介護時間実態調査の結果の数字を目標にしたい。
- より緊急度の高い人への保障については、2003年度からの「支援費制度」による単価変更も考慮しつつ検討するとの回答。
2001年2月20日
緊急時に介護が必要な障害者の24時間保障を求める市長宛抗議書を提出。
2001年4月
全身性障害者介護人派遣事業が70時間〜80時間に拡大。 4月〜5月、このアンケートについては色々議論されたが2月中に全身性障害者介護人派遣事業の対象となる障害者に配慮された。
2001年6月18日
障害者施策についての要求書提出。
2001年7月13日
市側が要求書に対しての回答を示した。
2001年7月26日
交渉を待ったが検討するという域を出なかった。
2002年4月
全身性障害者介護人派遣事業を月95時間に延長。
2002年4月25日
市長面談「上限撤廃」を訴える。
2002年6月19日
予算に対する抗議・要求書提出。
2002年8月21日
要求書への回答。9月11日に交渉を行った。障害福祉課長は来年度から支援費に移行しても今のサービス水準は下げないと約束。この頃になると障害福祉課の担当者は、今まで私たちが「必要な人に必要な介護保障を」訴えてきたことが分かってきたようであり、全身性介護人派遣事業を利用者の緊急性の高い障害者に24時間保障する方向で考えていた。しかし、具体的な事を示すことはなかった。12月市議会議員連携。支援費制度について、てごーすとしての要望を伝えた。
- 24時間のサービスが提供可能となるような制度の整備を早急に進める必要がある。
- 利用者からの苦情や相談に応じ、問題解決にあたる体制を行政の責任で整備する必要がある。
- 施設入所者で地域生活を希望する者には、その実現に、向けて必要な取り組みを行うこと。
2002年12月25日
障害福祉課と支援費制度のことにしぼって交渉を行った。2003年度予算について問い合わせる。
2003年2月19日
Z市障害福祉課と協議を行った。ヘルパー派遣時間の上限撤廃実現のことを中心に、来年度の施策について協議。その協議の中で、障害者のみ・またはそれに準ずるの世帯で、移動介護プラス日常生活支援で24時間介護保障が実現すると知らされる。
2003年4月
支援費制度の居宅事業のうち「日常生活支援」類型を利用する全身性障害者について、利用時間の上限を撤廃。
以上がZ市が介護保障の上限撤廃するまでの報告である。
去年までと違って障害者の生活がどのように変わったのかということを2ヶ月間振り返って考えてみると、去年までは介護者がこの時間までしかいないので介護者のいる時間に合わせて自分の生活を組み立てていた(今日は泊まりの介護者がいないから何時までに布団に入らなければいけない。というふうに)。今は必ず泊まりの介護者が家に来るので自分のライフスタイルに合わせて生活できるようになった。とは言っても、慣れないことも多い中、忙しくなったのは事実である。この2ヶ月間を振り返ってみると、24時間保障になったことでまだまだ市側と協議しなければならないことはあるし、これで安心してはいけないという思いをいつも肝に銘じながら、自分のライフスタイルを満喫できるようにしたいと思っている。
注意:制度が伸びた地域への引越し希望がたまに寄せられますが、そのようなことは行わないで下さい。制度を伸ばし努力した市を財政的に苦しめる結果になり、そうなると、それを見ている周りの市が続いて制度を良くして行けなくなります(財務部が許可しなくなる)。制度は各地域に住む障害者が何年も努力して交渉して作り上げていっています。皆さんの住む市でも制度交渉を行うことで制度を伸ばしていけます。そのノウハウは当会で提供していますので、制度交渉の方法をお問い合わせ下さい。
制度係0037−80−4445(通話料無料)11:00〜23:00
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ヘルパー時間数のアップに向けて交渉を!
支援費の決定はどうだったでしょうか。この決定の後もひきつづき交渉を行うことは可能です。ひどい決定だった場合は、きちんと自分の状況の説明ができていない場合が多いです。すぐに追加説明の交渉に行くことが肝心です。今年は新制度になったことから、補正予算が出しやすい年です。抗議後、要望書を出し、課長の予定を聞き、交渉申し込みしてください。交渉をしたい方、ご連絡ください。制度係 0037−80−4445 11時〜23時。厚生労働省の情報、交渉の先進地の制度の情報、ノウハウ情報、など、さまざまな交渉成功実績のある情報があります。ぜひ自治体との交渉にお役立てください。
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