3月1日課長会議資料の解説
予算配分
自立支援法の個別給付(介護給付や訓練給付)ですが、予算成立時に財務省からの要請で、デフレ率に合わせて予算削減が盛り込まれました。全体予算でマイナス1.3%、ただし在宅福祉制度は推進が必要なので1%マイナスの予算となりました。
10月より、ヘルパー制度などは「訪問系サービス」に分類されます。施設サービスは「日中活動」と「居住サービス」に変ります。例えば、通所授産は日中活動になり、入所授産は昼間が日中活動で、夜間は居住サービスになります。
障害児を除くデイサービスは地域生活支援事業に移行し、10月より個別給付からはなくなりますが、日中活動のサービスに衣替えすれば、大きく単価アップになります。
4月から9月まで
4月から9月までは若干の単価引き下げになります。平均1%程度の引き下げですが、日常生活支援の3時間以上は2.2%引き下げになります。
日常生活支援は、単価が低いために、人工呼吸器利用者や全身性障害+精神障害の重複障害者の場合など、重度になればなるほど、受けてもらえる事業所がほとんどない状態です。それ以外の全身性障害者でもほとんど事業所を選べない地域もあります。これ以上単価が下がるのは問題です。
そのほか、通院乗降介護は99単位。移動介護は身体介護や家事援助と同じ単価。
1単位は10円(大都市部は現状と同様、最高10.72円まで地域加算あり)
10月から
10月からはいろいろ制度・単価が変わります。身体介護や家事援助は介護保険とあまり差をつけるわけにはいかないため、変わりませんが、重度訪問介護(日常生活支援)は単価が引き下がります。
訪問系サービス(10月からの改正内容)
10月からの新しい分類では、訪問系サービスとは、居宅介護(身体介護と家事援助)・重度訪問介護(旧日常生活支援)・行動援護・重度障害者等包括支援のことです。
「家事援助中心」
「家事援助中心」は、介護保険の(4月の)改正にあわせ、障害ヘルパーでも連続1.5時間までの単価設定になりました。ただし、介護保険とは違い、知的障害等で長時間連続の家事援助中心の利用があるため、市町村が「特にやむをえない事情があると判断した場合」には、1.5時間以降も利用できることになりました。(ただし延長部分は1時間1400円単価に低下)。
「身体介護中心」
「身体介護中心」は原則3時間までになりました。介護保険では身体介護に制限はありませんので、これは障害ヘルパー制度だけの規制です。こちらも、市町村が特にやむをえない事情があると判断した場合には、3時間以降も利用できることになりました。(ただし延長部分は1時間1400円単価に低下)。
また、介護保険の4月改正同様に、障害では10月から3級ヘルパーの減算が始まります。身体介護は70%単価に、家事援助は90%単価になります。(介護保険では家事(生活援助)も70%で4月から開始)。
なお、介護保険では3年後には3級ヘルパーは全面廃止になりますが、障害ヘルパーでは、知的障害者が3級資格を取得して介護に入るケースが出てきたため、3年後以降も3級ヘルパーを残す予定です。
3級ヘルパーで減算されるのは身体介護と家事援助だけで、重度訪問介護には関係ありません。
「行動援護」
「行動援護」は、従来の基準が「サービス提供責任者の要件が知的障害者の直接支援経験5年以上」など、基準が高すぎであったため、事業所がほとんどない状態でした。
このため、期間限定で、基準を緩和し、その代わり行動援護専門の研修を義務付けた上で、70%単価で実施できる方法が新設されました。
「重度訪問介護」
「重度訪問介護」は月90時間(1日3時間)以上の支給決定を受けている人だけが使える制度になります。1日3時間未満の人は身体介護と家事援助の組み合わせで利用するかたちになります。これは、当会ほか障害者団体数団体が「単価の低い日常生活支援は連続8時間以上の利用に限れ」と要望したものが一部受け入れられたものです。(悪質な市町村が短時間利用者にまで単価の安い日常生活支援を決定しているため、サービス提供をしてもらえる事業所がほとんどない、という問題がおきているための要望)。
現在、日常生活支援の利用者の3分の1が、月90時間以下の支給決定で、これらの利用者が身体介護に移行し、単価が大幅アップになります。
なお、1日3時間以上の利用でも、市町村が身体介護で支給決定することは可能です。(例えば、「朝1時間、昼1時間、夕方1時間、夜1時間、深夜は30分が2回」などのような飛び飛び利用などの例も多くあるので)。
日常生活支援(重度訪問介護)は身体介護に比べて2倍以上単価が低いため、事業所の間接サポートがたくさん必要な障害者ほど、サービス事業所が見つからないという問題があります。人工呼吸器利用者になると、県内中の事業所に聞いても利用を断られるという事態も続いています。
厚生労働省は当初、区分4・5・6を同じ単価にする案でしたが、いくつかの障害者団体の交渉で最重度の区分6については高い単価にすることになりました。また、人工呼吸器と文字盤を使うALSなどの最重度障害者については、当初案よりさらに単価を上げることになりました。また、夜間加算も、身体介護や家事援助などと同様に、現行どおり、夜間は25%、深夜は50%の加算になりました。ただし、全体的には単価が下がっています。区分6の場合でも、24時間連続利用では10%ほど単価が下がりました。
(注: 1単位は10円(丙地)。表の8時間と3〜4時間の欄のパーセントは、2005年度単価に対する数値ではなく、4月〜9月の単価に対する数値です。)
重度訪問介護の中で外出した場合の加算
重度訪問介護では、家の中の介護も、家の外での移動時の介護も両方行えます。その際、外出時には以下の加算があります。つまり、1時間だけの外出の場合、区分4の重度訪問介護の基本1600円/hに加えて、1000円が加算されますので、1時間の単価は2600円となります。(現在の移動介護(身体介護を伴う)は4020円)。
8時間の重度訪問介護利用でそのうち4時間外出した場合は、12400円+2500円=1万4900円が事業費となります。
*1単位は10円(丙地)
重度包括よりも重度訪問介護の単価が高い
人工呼吸器利用のALSなど文字盤で意思疎通する場合などが、重度障害者等包括支援の対象者ですが、重度訪問介護のほうが重度障害者等包括支援よりも単価が高くなっています。特に入浴などに2人介護を使う場合や、移動加算がつく場合は、より重度訪問介護の単価が高くなります。このため、事業所の人員基準の厳しい重度障害者等包括支援を実施する事業所は極めて少ないと予想されます。
(重度包括の指定基準には相談支援員が必要になるなど、規制が多い)
なお、重度包括は当初の24時間365日をカバーする制度ではなくなり、ヘルパー制度と同様に1人1人に合わせてサービス量がちがうという制度に変わっています。違いは、重度訪問介護は1時間単位の支給決定ですが、重度包括は4時間単位の支給決定です。(身体介護や家事援助は30分単位の支給決定)。
このことからも、全身性障害者の分野に関しては、重度包括は全国で「利用者0人、事業者0箇所」になると思われます。わずかに、精神障害・知的障害の分野で利用価値があるというくらいです。
国庫補助基準
訪問系サービスには、国庫補助基準が設けられ、市町村が基準額を超えて行うと、越えた部分は国庫補助がされません。これに対し、施設予算には国庫補助基準がなく、いくら使っても全額国庫補助されます。これでは市町村は重度障害者をヘルパー制度ではなく施設で支援したほうが財政的に有利になってしまう問題があります。
国庫補助基準の計算方法は、従来どおり、市町村内の利用者全員を合算して行います。ただし、支援費制度では支給決定者数で計算しましたが、今後は実利用者数での計算になります。支給決定は受けたが、利用は0であった人は除かれます。
事実上、国庫補助基準なしにできる
国庫補助基準は障害の区分と利用するサービス種類によって金額が決まりますので、ヘルパー利用の場合、1人暮らしかどうかは金額に反映されません。つまり、施設から地域移行が盛んな1人暮らしの障害者の割合の高い市町村では、損をするという、とんでもない制度設計になっています。
対策として、滋賀県などは全ての重度障害者に申し込みがなくても少しのヘルパー時間を支給決定しておくという方法をとっています。利用者にとっても、急な病気などの場合に、支給決定に時間をかけずに、通院(身体介護)や買い物代行(家事援助)を少しだけ利用でき、市町村にとっても、短時間の利用者が増えるので国庫補助基準をオーバーすることはなくなります。
障害ケアマネジメント
障害ケアマネジメントは、在宅制度利用者のうち約1割の人数に対して予算確保されています。自分でサービスの種類を把握する、事業所を選ぶなどのマネジメントをできない重度障害者が対象で、利用希望者のみが利用できます。障害ケアマネジメント事業者には利用者1人あたり月1万円の報酬があります。過疎地等では、利用者30人以上がいない場合は、事業実施は困難です。ヘルパー事業所などへの併設も可能です。
障害ケアマネジメント事業所の指定基準は、障害ケアマネジメント研修修了者が常勤で1名いればよいことになっています。
地域生活支援事業(外出支援・日常生活用具など)
自立支援法では、個別給付と手当以外のほとんどすべての障害福祉制度が地域生活支援事業という包括補助金の制度にまとめられました。包括補助金は、ミニ地方分権制度ともいえる制度で、障害福祉に関する事業ならば、都道府県や市町村の判断で、どんな事業を行ってもよいという制度です。制度の設計も全て自治体任せで、国は一切口出ししません(移動支援や日常生活用具のモデル要綱などは課長会議で示した)。ただし、国庫補助は基本的には人口比(注)で配分される金額が上限です。配分基準よりたくさん事業を行うと、都道府県や市町村の持ち出しになります。逆に事業費が配分基準より少ない場合は、かかった費用の50%が国庫補助されます。
入院中の介護・通勤介護・運転介護も制度的には可能
地域生活支援事業では自治体の判断により必要な事業を何でも行えます。個別給付との組み合わせ実施も可能です。(前ページの課長会議資料の下5行参照)。
このため、現在、最重度全身性障害者の一時入院中のヘルパー制度利用を認めている市町村は、地域生活支援事業の中の制度に位置づければ、国庫補助事業として実施可能です。
また、現在、入院中のヘルパー利用を認めるよう交渉している市町村でも、地域生活支援事業に位置づけるように交渉を行うことで、要望する制度が国庫補助対象となり、制度化が認められやすくなります。
運転中の介護については、支援費制度になる前は、各市町村でガイドヘルパーの運転時間を認めている市町村がありました。たとえば、高知県A市では市がリフトカーを購入し、障害者はその車を借り、ガイドヘルパーが運転して外出介護を行っていました。運転中の時間も制度対象でした。(障害者が借りた車や障害者の持っている車をヘルパーが運転するのは、道路運送法の規制対象外ですので、道路運送法の4条や80条申請などは不要)。
電車もバスもない地方では、こういった取り組みが当然検討されるべきです。これも、運転中は個別給付(ヘルパー制度)の対象にはなりませんが、地域生活支援事業でなら、運転時間を対象にできます。
そのほか、移動介護は10月から個別給付からはなくなって、代わりに地域生活支援事業の中で移動支援として、各市町村で自由な方法で外出の介護を行えます。現在の移動介護では「通勤・営業活動を除く」「通年かつ長期にわたるものは除く」「原則として1日の範囲の外出」などの国の規制がありますが、10月からは、各市町村が自由に制度を作れますので、こういった規制を外すことも可能です。たとえば、個々人の状況に応じて「年間何時間」や「3ヶ月で何時間」などと決めることもできます。「その時間の範囲であれば、通勤に使っても、泊りがけの研修に出かけてもある程度は自由」という制度にすることも可能です。
(もちろん、予算が変わっていないならば、対象を広げた場合は、単価が下がってしまいます。その際には、最重度障害者は単価が下がりすぎると事業所が受けてくれなくなるため、一律の単価ではなく、障害が重ければ、単価をほかよりも上げるなどの対策が必要です)。
こういったことも、市町村との交渉で、必要性が認められたら、実現可能になります。
また、都道府県がこの事業を使って、ヘルパー制度の国庫補助を全額受けられなかった市町村に対して、欠損分を全額補助することも可能です。(4・5ページの記事参照)
(課長介護資料 地域生活支援事業について)
(編注:都道府県分は、国庫補助は人口比で配分されます。)
|
外出介護の制度など
外出介護の制度も地域生活支援事業の中の制度です。ガイドヘルパー制度のほか、リフトカーなどを使った事業も自由に市町村で実施できます。
ここに示した要綱案も、あくまで例示であって、自由に市町村が決められます。ただし、事業所を利用者が自由に決められるという部分は、全ての市町村に導入してもらわないと、利用者が困ります。この部分は障害者団体の要望によって「国から市町村に対してガイドラインを示す」という方法で、国会答弁されて実現したものですので、市町村と話すときには、必ずご確認ください。
その際、「(1)市外県外の事業者も自由に選べる対象にすること(2)現在使っている事業者だけではなく、今後事業所を変更したいときにも自由に選べること。」の2点は市町村に確認してください。
日常生活用具
日常生活用具も地域生活支援事業の中の制度になるので、基本的には市町村が自由に制度を変えられます。しかし、事業の継続性を重視したのか、厚生労働省が要綱案を課長会議資料に示しましたので、おそらくほとんどの市町村はこのとおりの要綱を採用すると考えられます。ただし、各品目の基準額はなくなりますので、多くの市町村では、同じ機能であればより安いものを選ばなくてはいけなくなります。
一方、今まで国庫補助額を超えて自治体独自で基準額を高くしていた自治体や、品目を国の基準より増やしていた自治体では、それらの独自施策が国庫補助対象に入ります。
たとえば、介護リフトや特殊マットは、現状の国の基準額では、市場の商品の値段の方が高く、障害者が自費を追加しないと買えないことが多いです。市町村との交渉で、個々人のニーズに応じて市町村が金額をケースバイケースで認めるような制度にすれば、支給申請時に認められれば、自費の追加が必要なくなります。
一方、今までの制度のように市場価格が安くなっているにもかかわらず、基準額が高いままですと、市町村は業者に高い買い物をさせられることになります。地域生活支援事業は「1つの財布」ですので、どこかの事業で無駄な予算がかさめば、ほかの事業に影響します。交渉する側も、何でも求めるのではなく、真に必要不可欠なものに限定して要望し、一方基準額を下げるべきものも提案してください。
また、この要綱案にない品目で、必要性の高いものがあれば、市町村に要望すれば、追加される可能性もあります。
たとえば、岡山県B市では障害者が保有する車にリフトを取り付ける補助金が出る制度がありますが、こういった自治体独自制度も、日常生活用具に組み入れ可能です。
また、日常生活用具には修理の規定がなかったのですが、そういったものも市町村で制度の中に追加可能です。
相談支援体制整備事業(都道府県の事業)
都道府県で、地域では対応困難な事例に助言するなどの担当アドバイザーを設置する事業を行えます。都道府県地域自立支援協議会(障害者関係団体も入れますので、最重度障害者の自立支援ノウハウのある団体は、今から県に話をして、参加するといいかもしれません)で、その人選や人員を決めるという要綱案です。これに関わることで、障害者団体は、県内でもいままで連絡などがなかった遠方の市町村の最重度の障害者の1人暮らしへの移行などに関われる可能性があります。
全てのヘルパー指定事業者が精神障害者のヘルパー事業を実施可能に
自立支援法では、精神・知的・身体の3障害が1つの法律に組み込まれたので、ヘルパー指定事業者は、4月1日から、精神障害者のヘルパー派遣も行えます。
都道府県によっては、利用者が事業所を名簿から探しやすいように、「主たる対象者」の届出を全事業所に求めるなどしていますが、この「主たる対象者」で身体障害のみを届け出たとしても、精神障害のヘルパー派遣依頼を受けることは可能です。(詳細は下記)
補装具はヘルパーの自己負担とは別に自己負担上限
車いすなど補装具はヘルパーの自己負担とは別に1ヶ月ごとに自己負担上限まで自己負担になります。10万円の車椅子の支給を受ける場合も、低所得2ならば、2万4600円の自己負担がかかります。2ヶ月連続で2つ補装具の支給を受けるよりも、1ヶ月にまとめて2つ支給を受けるほうが自己負担が少なくてすみます。
課長会議資料に掲載された自治体からの質問と回答
審査会に非定型の支給決定の場合の意見を聞くやり方などが載っています。
(3月1日の課長会議資料の解説特集は以上です)
|