障害者自立支援法は政省令の攻防に
自立支援法は、4月スタートに向け、政省令が順次決まっていきます。予算のかかるものについては、財務省と合意ができてからの決定になります。政府予算の確定は12月28日前後ですので、そのあとに政省令が次々に1〜3月にかけ出ることになります。
すでに、厚生労働省では、ほとんどの政省令の案を作り終わっています。今後は、与党の議員への働きかけで、少しでも多く改善していくことが重要になります。
特に、自民党議員へは、厚生労働省が長時間ヘルパー利用者のことを大げさに説明に回っており、「1人で100万円以上使っているものがいる」と否定的に話す議員もいます。自民党議員へ重点的に「そんな重度の利用者はほんのわずかなので、全体予算の0.8%や0.1%だ」と説明していく必要があります。各都道府県の自民党議員には地元の選挙民の働きかけが有効です。皆様のご協力をお願いします。
議員への要望の内容の例など
議員へ回って説明する内容ですが、現時点では、以下のような見本内容のうち、各団体の実情に沿ったものを考えて行ってください。
ここでは、法改正ではなく政省令で対応できる要望を書き出しましたので、与党への要望もこの内容で行えます。
(なお、自分たちの生活を最初に説明してください)
1 最重度の独居障害者等のヘルパー予算確保と国庫補助について
・2003年度厚労省定点調査資料(注1)では、1日24時間以上のヘルパー制度利用者はヘルパー制度利用者全体の0.06%です。
また、2004年10月の厚生省全国調査では、月に100万円以上ヘルパーを利用している人数は全国でわずか900人で、ヘルパー利用者の0.9%です。これにかかる予算は自立支援法の施設や在宅予算をあわせた約8000億円に対し、0.8%とわずかです。(同様に24時間介護利用者は0.1%と試算できます。)
・現在、独居の24時間介護が必要な障害者に必要な時間数(場合によっては毎日20時間や24時間)を決定している市町村は数十箇所ですが、その市町村の障害ヘルパー事業費はそれほど大きくなく(注2)、その事業費を日本の総人口に換算しても1800億円(国900億円)ですみます。(17年度障害ヘルパー予算は約1066億円(国533億円))。障害施設予算1兆2000億円(国6000億円)、介護保険6兆円に比べても、それほど過大ではありません。
早期に1800億円の予算を確保し、命にかかわる、1人暮らしの最重度障害者に、必要な時間が決定されることが必要です。
(注2)厚生労働省へ国庫補助請求した全国市町村の15年度事業費実績より算出
・家族の介護の得られない独居などの最重度障害者が、地域生活をできるよう、1人暮らしで最重度者のヘルパー制度の一律の上限を設けず、必要不可欠なヘルパー時間はつけるようにしてください。また、そのために、予算確保と、国庫補助を確実に行える方式を整備してください。
・最重度の人工呼吸器利用者などが想定されている、重度包括の単価は現状のヘルパー制度の日常生活支援の月744時間の合計単価より下がると、引き受ける事業所がなくなるので、対象者の範囲は限定し、きちんとした単価を設定してください。(現状の単価でも大幅に資金が不足していて、他の利用者の収入を最重度の人工呼吸器利用者に回してサポートしている実態がある)。
・審査会に市町村が意見を聞く前に、市町村は利用者の利用計画を作りますが、この利用計画を作る際に、最重度の独居の障害者は自分の介護の必要性や自分の生活状況の説明をするのに慣れていない。そこで、確実に説明ができるまで、何度でも説明する機会を保障してください(政省令や通知等で)。
・障害程度区分に、独居の場合は別区分をもうけ、特別障害者手当受給者(全介助の全身性障害者など)の独居者は、国庫補助基準を月800時間分の「国庫補助上限(市町村が必要性を認めて重度訪問介護を実施した場合、この時間以下なら国庫補助がつく数字)」としてください。
2 外出介護について
(1)居宅支援事業(市町村事業)のガイドヘルパー制度について
・重度訪問介護や行動援護以外に区分される障害者の場合でも、重度で、なれた介護者でないと、外出が困難な全身性障害者や知的障害者については、現状のヘルパー指定事業者がガイドヘルパー制度を行い、利用者が自由に選択できるようにしてください。
(注:全身性障害者でも、重度訪問介護の利用者はごく一部)
(2)重度訪問介護について
・重度全身性障害者の1〜2時間の外出介護は、身体介護と同単価を適用してください。(理由:重度訪問介護(現:日常生活支援)は、介護保険の生活援助(家事援助)よりも単価が低いため、1〜2時間の重度全身性障害者の外出を引き受けてくれる事業所はありません。現日常生活支援は8時間などの長時間連続利用を想定した制度だからです。通常のヘルパー利用者よりも重度な利用者向けの制度ですので、短時間利用の場合、単価は身体介護と同じにすべきです。)
自己負担問題の要望を行わないように注意を
現在、議員などに出されている99%以上の要望内容が自己負担の問題の要望であると考えられます。あるテレビ局のスタッフは9月になって関西の1人暮らしの全身性障害者の自宅に取材を行い「初めて自己負担以外に問題があることを知りました。」と話しました。今までの取材先では自己負担の問題を話す障害者ばかりだったようです。
このような状況のため、議員の注目点も、厚生労省の妥協案も自己負担問題ばかりです。「この問題さえ配慮すれば、自立支援法の問題が解決される」という誤解があり、弊害が出てきています。
介護サービス利用者のほとんどは家族と暮らしており、それらの障害者にとっては自己負担の問題も大きなことだとは理解します。が、1人暮らしや障害者のみの世帯、家族が介護できない状態の最重度障害者の場合、1番の問題は、命に関わるヘルパー制度の長時間利用の問題です。これらの最重度の独居者などは、自己負担の問題の要望はあえて行わないようにし、「独居・最重度の長時間の介護制度」の要望に集中してください。
どんな障害者もやがて家族の介護を得られなくなるときが来る可能性があります。いま、その問題をきちんと要望して伝えられるのは、現在そのような厳しい状況にいる障害者だけです。
|