第14回社会保障審議会・障害者部会の報告
自薦ヘルパー推進協会本部事務局
(議事内容聞き取りメモの全文はホームページに掲載しています)
支援費と介護保険との統合問題についてほかについて、6月25日の障害者部会で中間とりまとめをおこない、6月28日の介護保険部会に提案するということになっていました。
介護保険との統合について、どのようなとりまとめがなされるのか注目を集めていましたが、とりまとめ案では以下のような表現となりました。
(2)新たな障害保健福祉施策と介護保険の関係
○上記のような状況の中で、今後、地域福祉の考え方に立って障害保健福祉施策を推 進するため、国民の共同連帯の考え方に基づいており、また、給付と負担のルールが
明確である介護保険制度の仕組みを活用することは、現実的な選択肢の一つとして広 く国民の間で議論されるべきである。
○この場合において、第12回障害者部会(平成16年6月4日)において三人の委員が示し た考え方(「障害者福祉を確実・安定的に支えていくために〜支援費制度と介護保険
制度をめぐる論点の整理と対応の方向性」)のように、介護保険制度によりすべての 障 害者サービスを担うのではなく、介護保険制度とそれ以外の障害者サービス等とを組
み 合わせて、総合的な支援体制を整備する必要がある。
○また、介護保険制度の仕組みを活用することについては、障害特性を踏まえたもの となるのかどうか等について関係者から課題や懸念が示されており、これらについて
十分検討し対応することが必要である。
○現時点においては、障害保健福祉施策の推進のために介護保険制度の仕組みを活用 することについては、賛成する意見や課題を示しつつ選択肢の一つであることを認め
る意見のほか、判断する材料が十分ではないとの意見や反対する意見もある。
○今後、よりよい制度を模索していく中で、障害者、医療関係者をはじめ多くの関係 者の意見を十分聴いて検討を進める必要があるとともに、障害保健福祉施策の実施者
であり、介護保険制度の保険者でもある市町村と十分協議することが必要である。
○いずれにしても、介護保険制度の仕組みを活用することを含め障害保健福祉施策を どうするかについては、今後、国民一人ひとりが「障害」の問題を、他人事としてで
はなく、自分に関係のある問題との認識に立ち、広く議論が行われ、その理解と協力 が 得られることを期待したい。
これを受けて、各委員から、統合に反対する意見、支援費を継続する選択肢もいれ るべきという意見、介護保険統合にもっと踏むこむべきだという意見など様々な意見
がでました。
○丹下委員(NPO障害者雇用部会 日経連)
介護保険に組み入れる事、20歳に被保険者を広げることは時期尚早である。わが国の障害者施策の方向がどこにあるのか、多くの選択肢を吟味し、議論することから
はじめるべき。すでに統合へ決まったかのような方向があることはおかしい。
20歳以上から保険料をとるなら、対象の人が理解、共感を持つのか。所得補足率の問題もあり、学生・フリーターからはとれない、勤労者しかとれない。
産業界が障害者問題を拒否しているのではない。産業界が求めているのは福祉にも合理化を求めている。高福祉・高コスト体質ができている。福祉においてもコストをどう下げるかを産業界は求めている。
支援費をどう再生するかの選択肢があり、これがまだ議論されていない。障害者福祉と雇用を結ぶ法体系を提起して欲しい。提供されるサービスが過剰でないのか、そのためのルールが必要で、これはケアマネジメントの議論にかかってくる。このような検討をして支援費制度の再生をすべきであるというのが産業界のおおかたの意見である。
介護保険との統合が将来的にあるのかもしれないが、議論をつくしてから考えるべき。
○京極部会長
私のメモでは、"有力な選択肢"ではなく"現実的な選択肢の一つ"ということである。保険徴収が20歳から、30歳からということはふれていない。
○安藤委員(ろうあ連盟)
介護保険との統合は現実的な選択肢というが、支援費制度も現実的な選択肢であり、それが全く触れられていない。統合が強くでていて、検討を求めたい。
手話通訳、要約筆記はホームヘルプとは別にというのは評価できる。この中間報告の方向で進めていって欲しい。
○福島委員(東京大学)
選択肢と言うからには、介護保険を選択肢の一つとすると、介護保険統合だけに向いてしまう。支援費の再生を検討する選択肢があればバランスはとれる。
"介護保険制度によりすべての障害者サービスを担うのではなく、介護保険制度とそれ以外の障害者サービス等を組み合わせて、総合的な支援体制を整備する"とある
が、介護保険制度にのる場合に、他の制度も組み合わせるという考えを支持しているのであり、3人の委員の案をそのまま支持するものではない。今回のとりまとめは明確な方向性を示してはいない、あえて示さない事が様々な可能性があることを示している。
○松友委員(育成会)
タイムリミットの中で、ある種の結論をださないといけない。本質は大事だが、7年前の積み残しの議論があり、今回の見直しの中で、障害者部会で結論がでなければ
介護保険部会は議論しない。京極座長には介護保険部会で7年前の積み残しをきちんと議論してほしいと言って欲しい。年齢による差別、明らかな排除である。
○徳川委員(身体障害者施設協議会)
統合と決めたわけではなく、"現実的な選択肢"として投げかけることには問題はない。介護保険部会になげて、それを受けてまた議論したい。
○武田委員((福)桑友)
退院促進が言われているが、退院した人が地域で生活を送れる手立てはなされていない。統合を断定ではなくボールを投げるための議論を始めようとしている。これまで議論すらしなかったが、議論を始めていただきたい。治療の必要のない入院している人たちの保障のためにまず介護保険を議論していただきたい。
○新保委員(精神障害者社会復帰施設協会)
前回、介護保険との統合に賛成する意見をだした。支援費の再生といわれても、精神障害は支援費に入っていない。介護保険ならば義務的経費として活用できる。介護保険の選択肢がないなら、精神の施策を支援費に入れてくれるのかという約束をして欲しい。私たちには何の選択肢もない。精神の社会復帰施設が介護保険に賛成した意をくんで欲しい。
○高橋清久委員(国立精神・神経センター)
多くの選択肢があるだろうと思う。しかし、いろいろな選択肢を考えた上で、介護 保険制度の仕組みを活用することが有力な選択肢である。
経済的な理由で結論を得たのでなく、介護保険制度がユニバーサルという考え方、高齢者も、どのような障害も含むという考え方で、介護保険の仕組みを活用する。
介護保険は国は負担の責任をもっている。理念的な面で介護保険制度が持つ優れた面の議論を深めていく。
○岡谷委員(看護協会)
必要なサービスは介護保険で全てまかなえるのではなく、税の部分がでてくるが、どこまでが税で、どこからが保険なのか。そういうことを判断する材料がほとんどない。
統合がいい、そうではないという判断が、これではできない。サービスを使っている障害者の立場にたって、統合の是非が判断できる中で検討したい。
こちらからボールを投げて、介護保険部会ではどうなるのか。部会での結論がこちらに投げ返されるのか。
○京極部会長
介護保険部会でも議論があるし、医療保険との議論もある。ボランティアもある。そういうすみわけをどうするのかが課題である。
来週の介護保険部会でボールを投げる。障害者部会と介護保険部会をいったりきたりするようなことになるかもしれない。
これは部会長案であるので、医療関係者、市町村、経済界と少し詰めた議論をして、中間まとめをする。それをあらためて介護保険部会に出す。
介護保険部会も7月末に向けて精力的な議論をする。
○村木企画課長
ここでの議論を28日の介護保険部会になげて議論をいただく。この部会もそれをながめながら中間まとめをする。あと1回か2回開催して、中間まとめをする。
その後の議論は、介護保険部会がどう結論を出すかを見ながら、ご相談させていただきたい。
○北岡委員(滋賀県社会福祉事業団)
今回の中間のとりまとめでは現実的な選択肢の一つとして議論をすることを介護保険部会になげられればと思う。
しかし、何をもって現実的なのかが、このまとめでは不十分だ。支援費の財政的な欠陥、在宅が裁量である、給付と負担の問題、知的障害者のサービス利用増、国家財政が厳しい、地域格差の是正などを議論して、現実的な選択肢が導き出された、ということから議論していくことだと思う。
自立の概念、費用負担、サービスの上限、横だし・上乗せ、などの議論がこれから必要になる。介護保険がどこまで改革されるのかということもある。
支援費制度と介護保険が発展的に自立と共生を生み出す新たな制度の創出を期待していて、そのための議論をしたい。
○広田委員(精神医療サバイバー)
統合を考えるときに、地域生活保険、社会保障保険などのいろんな言い方ができる。統合といっても精神は支援費に入っていない。
講演に行って学生に、20歳以上に介護保険をはらうことをどう思うかを聞くと、1 /3は抵抗がない、2/3は抵抗があると答える。
これを業界で考えるのではなく、いろんな人に語りかけることである。世間の人がわかりやすいようにマスコミは伝えて欲しい。障害になっても安心して暮らしていける社会保障制度、日本に住む人間全体の問題として考える。障害者の業界の議論では
だめだ。
○堂本委員(千葉県知事)
自治体の立場でいうと、介護保険部会に投げられるという議論がされているが、それ以前に社会保障制度が作られる場合、特に市町村に主体性が確保できるようにする
必要がある。かつての機関委任事務のように微にいり、細にいり決まりができてはいけない。かっちり制度ができると地方の自主性をもった運用ができない。誰もがその人らしく住むという可能性が狭くなってしまう。
○妻屋委員(全脊連)
"判断する材料が不十分、反対する意見があった"とあるが、ここは介護保険部会にもっていく際には、"国の責任として税でまかなうべき"なので反対という意見をはっきりいれて欲しい。
○安藤委員(聾唖連盟)
確認だが、この中間まとめについては、立場によって読み方が変わってくる。どちらでもとれるものでは、障害者部会の見解も問われる。座長はどのように介護保険部会で説明するか確認したい。
○京極部会長
現実的な選択肢として検討せよと投げかける。両論併記をとっているのではなく、限りになく賛成に近い。
○安藤委員(聾唖連盟)
賛成に近いという方向なら、部会で確認が必要だ。
○京極部会長
"賛成"という表現はいいすぎた。いろんな意見がでたことが伝える。しかし、向こうで検討してもらうためには、現実的な選択肢としてという表現を使う。
○福島委員(東京大学)
安藤委員の質問への部会長のお答えはかなり重要なポイントがある。限りなく賛成というのなら、とりまとめには賛成できない。
介護保険を利用する際にどういうパターンがあるのかを今後を検討する。その時にあらためて、賛否をとうべきである。現段階で限りなく賛成はおかしい。部会長個人の意見でないととりまとめを支持できない。
○京極部会長
部会長の失言ということで理解を。中間とりまとめでは今までの議論をすべてもりこんだ。これほどの大きな方向性をだしたのは厚労省でいままかつてないことである。
介護保険を私たちの現実的な選択肢として検討しなくてはならない。これまでの議論は入口にしかすぎない。介護保険のメリット、デメリットある。市町村も含めて、国民的な議論が必要。さしあたりは介護保険部会にだすが、医療関係、市町村、いろんなかたがたにボールを投げる。私たちももっとつっこんで議論する必要がある。
○高橋紘士委員(立教大学)
介護保険部会になげることで、介護保険部会との共同作業となるのかどうかはわからないが、障害者を介護保険でこう考えようという、障害者団体にも判断材料がでてくる。
○嵐谷委員(日身連)
当事者の意見が有効である。投げかけて帰ってきた球をどうするかという論議になってているが、将来にわたって障害者施策はどうなるかという議論をして欲しい。国民の理解と共感を得る、障害者施策トータル的な部分をもう少し論議した上で、この話をすすめていって欲しい。もっと材料がないと判断できない。
○斉藤委員(社会就労センター協議会)
介護保険制度に就労は入るのか。
○京極部会長
そこは明確には議論していない。授産が介護施設なのかどうか、福祉工場は介護施設ではない。個別の施設体系はこれから議論する。
○徳川委員(身体障害者施設協議会)
上乗せ・横だしの議論はされていない。介護保険と障害者施策の関係ではこれは重要なことである。高齢も障害も人間として同じニーズをもっている。それを含めた新たなものをつくる。単に介護保険にあるものを利用するだけでなく、国民全体のあり
かたについて新しい社会保障を作る。
○高橋紘士委員(立教大学教授)
高齢ケアも介護保険だけでなく、介護保険以外のサービスを別立てで行っている現実がある。これは今の介護保険制度を前提とした議論である。
介護保険そのものが将来がどうなるのかというのはその次の議論である。現状の制度を前提として、介護保険も持続可能な制度として厳しい目が注がれている。ピッチャーがキャッチャーに投げて、それが投げ返されてきてから議論が始まる。
○京極部会長
今度の介護保険の見直しでは、介護保険部会でも生活支援保険にするという議論はしていない。今回の見直しでなく、次の見直しになる。介護保険部会では介護保険をどう定着するかという見直しを今やっている。生活支援保険は議論としては将来あるが、当面の議論でない。
今日の意見を聞いて修正をした上で、最終的なものを委員にみてもらった上で、介護保険部会にだしたい。介護保険部会では、障害者部会からボールをなげるという意味で今日の議論をふくめて説明したい。
以上のような議論がなされ、障害者部会では統合を決定したわけではないが、"現 実的な選択肢の一つ"として介護保険部会で検討をしてもらうために、部会長メモと
して中間とりまとめを28日の介護保険部会に提出することになりました。
また、障害者部会は本日でいったん終了と思われていましたが、あと1〜2回開催 し、介護保険部会の状況をみながら、また、障害者団体・市町村・医療関係との協議
をしながら、最終的な中間とりまとめを行うことが示されました。
これまでの部会の議論の中では「介護保険自体を大きく改革して地域で生活するた めの支援を行う制度にする」という介護保険改革を念頭においた賛成意見がありまし
たが、部会長からは「介護保険部会では、介護保険をどう定着するかという見直しを 今やっていて、生活支援保険にするという議論はしていない。生活支援保険は議論と
しては将来あるが、当面の議論でない。」という否定的な見解が示されました。ま た、介護保険との統合で小規模通所授産、無認可作業所の問題が改善されるとの期待
もありましたが、今日のやりとりの中では通所授産を介護保険にいれるかどうかは トーンダウンした議論がなされています。
また、支援費の今年度の予算が170億円の不足がでるという報道についての質問 が委員からありました。これに対して、障害福祉課長は「今の段階で不足の確たる数
字はない。新年度始まって3ヶ月、利用の伸びの状況もある、4月から工夫もしてい る。適切にデータをとる努力をしている。昨年は初年度であったので緊急避難的に確
保し、当面は回避できたが今年は同じような流用は困難である。補正予算も困難であ る。不足した財源確保は、4月から加算の算定の合理化、長時間の単価の逓減などの
対応をしている。今年度の状況を見ながら更なる運営上の工夫を対応する。」と答え、追加的な財源確保を否定しています。
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