★6月25日社会保障審議会 障害者部会 - 介護保険との統合は「現実的な選択肢」

★岐阜県と愛知県でも24時間介護保障に

★ヘルパー時間数のアップに向けて交渉を

6月号
2004..
編集:障害者自立生活・介護制度相談センター
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2004年6月号    目次

   

3・・・・岐阜県と愛知県で24時間介護保障に
4・・・・全国各地のヘルパー制度最高時間数一覧
7・・・・常任委員会で、介護保険統合の案に意思表示決定
9・・・・障害ヘルパー等を介護保険と統合するとおきる18の問題
17・・・6月9日の抗議行動の報告
18・・・6月4日 第12回社会保障審議会・障害者部会の報告
22・・・6月18日 第13回社会保障審議会・障害者部会の報告
30・・・6月25日 第14回審議会「介護保険統合現実的な選択肢」
32・・・第14回社会保障審議会障害者部会 座長中間取りまとめ資料
36・・・6月25日 第14回社会保障審議会・障害者部会の報告
41・・・「要介護5では、電動車椅子は想定しにくい」介護保険で通知
42・・・「障害者支援費170億円不足」朝日新聞記事について厚労省見解
44・・・ホームページ掲示板コーナーより
46・・・全国ホームヘルパー広域自薦登録協会のご案内



各地で交渉が行われ、24時間介護保障実現

岐阜県と愛知県で24時間介護保障に

  岐阜県と愛知県の県庁所在地以外の市で24時間介護の必要な1人暮らしの障害者が交渉し、20時間や24時間の日常生活支援ヘルパーが決定され(20時間の利用者は生活保護の他人介護料大臣承認(1日4時間分)利用者)、24時間の介護保障が実現されました。次号以降で詳細解説を行います。



全国各地のヘルパー制度最高時間数一覧

 支援費制度開始に伴い、長らく交渉を行ってきた地域で、日常生活支援でヘルパー毎日24時間(月744時間)の決定が相次いで出るなど、24時間介護保障の地域が大幅に増えています。
 また、身体介護型で時間数アップ交渉を行っている地域では、日常生活支援の毎日24時間と同等以上の単価が出ている地域も増えています。これらの地域も実質的に24時間介護保障ができたと言えます。

注意:制度が伸びた地域への引越し希望がたまに寄せられますが、そのようなことは行わないで下さい。制度を伸ばし努力した市を財政的に苦しめる結果になり、そうなると、それを見ている周りの市が続いて制度を良くしていけなくなります(財務部が許可しなくなる)。制度は各地域に住む障害者が何年も努力して交渉して作り上げていっています。皆さんの住む市でも制度交渉を行うことで制度を伸ばしていけます。そのノウハウは当会で提供していますので、制度交渉の方法をお問い合わせ下さい 。
フリーダイヤル0037−80−4445

日常生活支援で交渉している各市町村の状況

実際のヘルパー利用者の1日あたり最高時間数
広島市 24時間 (いままでは生保大臣承認とあわせても13時間保障だった)
名古屋市     24時間  (いままでは生保大臣承認とあわせても13時間保障だった)
島根県 A市   24時間
栃木県 B市   24時間
広島県 C市   24時間
愛知県 Y市   24時間
西日本のX町   24時間 (人口1万人以下)
大阪府 Z市   24時間
兵庫県 D市   24時間
兵庫県 E市   24時間
神奈川県 W市  24時間
兵庫県 F市   24時間
兵庫県 G市   24時間
埼玉県 V市   24時間
東京都10市区  24時間
神戸市      24時間
島根県 I市   23時間
福井県 N市   20時間 (生活保護大臣承認と合わせて24時間保障)
岐阜県 X市   20時間 (生活保護大臣承認と合わせて24時間保障)
東京都25市区  20時間 (生活保護大臣承認と合わせて24時間保障)
岡山県 J市   17.1時間
香川県 K市   17時間
愛媛県 L市   16時間
京都府 F市   16時間
岐阜県 B市   16時間
大阪府 M市   15.4時間
北海道 O市   14時間
宮崎県 P市   12.5時間
静岡県 Q市   12時間
広島県 R市   12時間
奈良県 T市   8.3時間
佐賀県 U市   8.2時間
岩手県 V市   11時間  
高知県 W市   10時間 (身体介護と移動介護を平均2時間含む)
静岡県 X市   10時間
神奈川県Y市   10時間
兵庫県 Z市   10時間
福島県 A市   10時間
宮城県 C市   9.3時間
青森県 D市   8.7時間
山形県 E市   8.2時間
(生保大臣承認=生活保護の他人介護料特別基準大臣承認で概ね1日4時間分の介護制度として利用されている)

身体介護型で交渉している市町村の状況

福岡県 B市  24時間 (身体介護17hと移動介護と日常生活支援8h)
兵庫県 A市  17.5時間 (身体介護)
埼玉県 A市  17時間 (身体介護と移動介護と家事援助)
山口県 C市  13.7時間 (身体介護と移動介護)
長崎県 D市  13時間 (身体介護と移動介護)
熊本県 E市  12時間 (身体介護と移動介護)
鹿児島県F市  11時間 (身体介護)
和歌山県G市  9時間  (身体介護)
山口県 H市  8.5時間 (身体介護)
奈良県 I市  8.3時間 (身体介護と一部日常生活支援)
大分県 J市  7.6時間 (身体介護)
新潟県 S市  7.5時間 (身体介護と移動介護)
三重県 K市  7.5時間 (身体介護と一部家事援助)
千葉県 L市  7.3時間 (身体介護と移動介護)
茨城県 M市  7.2時間 (身体介護と一部家事援助)
静岡県 N市  7.1時間 (身体介護と一部家事援助)
静岡県 O市  7時間 (身体介護5+家事2)
岐阜県 P市  7時間

注:いずれも、24時間介助が必要な1人暮らしの全身性障害者等に対する実際の利用者の最高時間数です。誰もがこの時間数を利用できるわけではありません。基本的には介助の必要な状況が何時間あるかどうかで、市町村が時間数を決定します。実際の支給決定月時間数は上記時間の30倍または31倍です。

 これらの市町村での交渉経過の詳しい情報などは全国障害者介護制度情報のホームページ(www.kaigoseido.net)で紹介しています。

 知的障害者の1人暮らしの場合は東京都で毎日10時間のヘルパー利用があるのが最高時間です。
 また東京都では3市区で健常者の複数の家族と同居のALS等最重度障害者に24時間介護保障が行われています(介護保険と支援費のヘルパーを合わせて毎日24時間)。脳性まひや頚椎損傷では、障害者1人+健常者1人の2人世帯では、最高毎日14時間のヘルパー利用の例があります。これらはいずれも、1人暮らしの全身性障害者が交渉して5年以上前に24時間介護保障を実現している地域に限って実現しています。(まず、1人暮らしの障害者がヘルパー制度の上限をなくすことで、徐々に1人暮らし以外の人にも必要なだけのヘルパー時間が出るように変わっていきます)。

 このように、これから交渉して全国3300市町村のヘルパー制度をのばしていくには、まず地域で24時間つきっきりで介助の必要な全身性障害者の1人暮らしの支援を行い、ボランティアなどで24時間の介助をつけて毎月集中して市町村の課長と交渉を行うことが重要です。全国障害者介護保障協議会と自薦ヘルパー(パーソナルアシスタント制度)推進協会、全国ホームヘルパー広域自薦登録保障協会などでは、協力して、交渉空白地域で24時間介護保障の制度を作るために1人暮らしを始める24時間介護の必要な全身性障害者に(東京などでの)研修参加交通費・介助費用の助成・貸付や、1人暮らしを実際に始めて数ヶ月の制度が伸びるまでの介護費用の助成・貸付などを行っています。これも全国障害者介護制度情報のホームページ(www.kaigoseido.net)で紹介しています。



全国障害者介護保障協議会は最高決議機関である常任委員会(選挙選出の北海道から九州までの13人)で、現状の厚生労働省の介護保険統合の案には大きな問題があり、これらの問題を無視して介護保険統合の結論を出そうという厚生労働省の動き・方針には賛成できないため、意思表示のために抗議行動を他団体と共同で6月に行うことを決定しました。

ヘルパー制度統合の問題点

 厚生労働省障害保健福祉部の介護保険統合案は、3300市町村の9割以上の地域で、介護保険制度だけが存続し、1日3時間以上介護の必要な身体・知的・精神障害者が1人暮らしをすることができなくなる(=施設や病院から自立することが一生できなくなる)という大きな欠点を抱えており、現状で制度がきちんと受けられていない、知的障害者や精神障害者にとっても受け入れることのできない制度です。すでに知的障害の当事者団体や精神障害の当事者団体からも絶対反対の意思表示がされています。もちろん、最も長時間介護ニーズのある全身性障害者にとっても、非常に大きな問題です。
 また、現状で24時間の介護保障制度がある自治体などでは、現状の案では統合直後には2階建て制度化がされて救済される案が出たとしても、その国庫補助制度は全国の一割以下の一部の市町村向け国庫補助制度になってしまい、障害者団体全体としての政治力を失い、一般財源化が避けられなくなり、数年後には利用者のヘルパー時間数が切り下げされてしまいます。また、残りの9割の市町村では、今後一切制度の伸びが止まってしまいます。介護制度は毎年多くの市町村で重度の自立者が出るたびに交渉が行われ、24時間の介護制度をはじめる自治体は増えていっています。この運動の先には、全国の過半数の自治体で24時間介護保障を実現し、全国的なパーソナルアシスタント制度に切り替えていく運動があります。この動きは、ほかの先進各国でも同じです。しかしながら、このような運動過程や制度改善の予定がすべて実現不可能になってしまいます。ですから、今回の介護保険統合問題は、障害ヘルパー制度をすでに受けている人にも、これから受けていく人にも、共通する問題を抱えています。
 また、ヘルパー制度の2階建て制度を導入する際に、9割の市町村で障害ヘルパー制度が消滅しないように、「国として強制的に市町村に対して、ヘルパー時間数決定の全国共通ガイドラインを作る」という検討をする障害保健福祉部職員もいますが、その発想は、きわめて少ない予算を想定しています。たとえば、24時間の人工呼吸器利用者など、きわめて小人数だけに24時間の介護を検討するといった発想です。(その実現もかなり難しい)。しかも、現在24時間介護制度を受けている全身性障害者のほとんどはその水準の制度は受けられません。そもそも、全国共通の時間数決定制度を導入すると、必ず、最も高い水準の24時間保障に自治体の制度よりは低い水準のものができてしまいます。最高10時間程度しか保障されないであろうと予想する団体もありますが、その水準も全国一律基準にするには難しいといわざるを得ません(予算余裕のある介護保険でさえ、一日3時間の身体介護という低水準の制度しか作れなかった)。厚生労働省は2階部分のヘルパー制度の時間数基準などがどうなるかの回答が出せるのは、「予算がかかわるもので、財務省の承認後にしか決まらないため、来年障害を統合する介護保険法改正が行われた後に、その年末の政府予算が確定するまで返事ができない」という回答しかしていません。命のかかっている介護制度で、このような危険な賭けをするわけにはいきません。しかも、全国一律の低い水準の制度を作ってしまうと、その水準を超えて、制度を伸ばすことは事実上不可能になります。また、この水準を国と交渉して動かすこともきわめて困難になります。
 障害保健福祉部は、このような問題点を一切無視し、介護保険への統合を強引に進めようとしています。審議会の障害部会に介護保険統合賛成派の精神障害のサービス事業者など非当事者を増やす改定を行い、現在、審議会は3分の2が介護保険統合賛成派です。しかも昨年は年に2回しか行わなかった審議会障害部会を6月に4回も行い、介護保険統合の結論を出そうとしています。大変危険な状況です。
 障害保健福祉部長は一月に「障害者団体の反対があれば介護保険との統合は行わない」と発言していますが、もっとも大きな団体である育成会(知的障害の親の会)は賛成の方針を表明しています。日身連は先日の総会で反対を表明しました。他の全国各地の障害者団体の意見表明も必要とされています。そこで、当会は、障害者団体の意思表示とアピールを行うために6月に抗議行動を他の身体・知的・精神の障害当事者団体と共同で行うことにしました。

  6月9日には、北海道から沖縄までの障害当事者団体1200人が厚生省前に集まり、介護保険統合の厚生省労働省の現状の進め方に対する意思表示を行いました。この活動には全国の475団体の賛同を得ました。知的障害者の当事者団体であるピープルファーストや精神障害の当事者団体も参加し、代表団に入りました。

障害ヘルパー等を介護保険と統合するとおきる18の問題

(1)ヘルパー時間上限問題 (巻末に補足)  
  介護保険では最高の要介護5でも身体介護1日3時間が上限。(深夜なら1日2時間が上限)。介護保険と支援費ヘルパーの2階建て方式では、9割の市町村で介護保険の1日3時間の上限が、全制度の上限になる。しかも今後、制度は伸びなくなる。日本のほとんどの地域で施設から出られない世の中になる。
 介護保険では、1日3時間=月90時間程度の上限がある。現在、1人暮らしの全身性障害者がいない9割の市町村では、月90時間以下のヘルパー利用実績しかないので、介護保険に統合すると、介護保険だけで介護需要が充足する。このため、介護保険と支援費ヘルパーの2階建て制度が実施されたとしても、2階建て制度が実施されるのは、東京や大阪など1部の都市部だけにとどまる。9割の地方の市町村では、上乗せ用の障害ヘルパー予算は必要なくなり、廃止される。また、2階建て障害ヘルパー利用者1人程度の市では、年間予算が数十万円という、きわめて小さい予算の制度になってしまう。こうなった場合、数年後に重度全身性障害者の同居家族が死亡した場合、または、施設に入っている重度障害者が自立を希望した場合、その市町村には、2階部分の支援費ヘルパー予算は0か、きわめて少ないので、必要なヘルパー時間が決定されることはできなくなる。(0や数十万円の予算の制度を、補正で1000万円予算にすることは不可能)。市町村の財政部や理事者や議会は、1階部分の介護保険だけで十分と判断し、支援費ヘルパー予算を大きく増やす補正を許可しなくなる。この結果、毎年、順調に伸びてきていた障害ヘルパー制度は今後は伸びることはなくなる。日本の9割の地域では、3時間以上介護の必要な障害者は施設から永久に地域に自立することはできなくなってしまう。

(2)別の方法の2階建て制度を採用した場合でも問題がある
 一方、2階部分の制度を「新たな時間数決定方式」をもつ障害ヘルパー制度として1から組み立てなおす方式もあり、「このような障害者ならこの時間数を2階部分で出すべきである」と全国共通の時間数決定のガイドラインをつくるという方法もある。この方式は、現在、長時間の利用者がいない地域でも、たとえば、家族と同居の最重度全身性障害者でも、ある程度はヘルパー利用時間を強制的にのばす効果がある。そうすれば、予算は0ではないので、重度障害者が突然1人暮らしをはじめても、補正予算などで長時間のヘルパー時間を確保できる可能性もある(ただし、2階部分の予算規模が、現在の障害ヘルパー制度全体より小さくなっていれば、長時間のヘルパー時間が受けられる可能性は現行制度よりも低くなる)

この方法の欠点は、 以下の2点。
(1)全国共通の時間数決定のガイドラインというものは、現状の先進自治体(24時間介護保障の実現している自治体)の時間数決定の考え方よりどうしても(かなり)水準が下がってしまう。
(2)今までは、1人暮らしをはじめた最重度障害者が市町村と交渉をし、命にかかわるということで市町村も補正予算を組んで、ヘルパー制度を伸ばしてきたという全国での実績と歴史があるが、この方法が同じようにとれなくなる(水準の低いガイドラインを作ると、それ以上には、ヘルパー制度が伸びなくなる)。

(3)要介護認定(アセスメント)の問題
 知的・精神・聴覚・視覚・内部障害は、介護保険の要介護認定では多くが自立になってしまう。別項目で判定するアセスメントが必要。 しかし、多くの老人は肢体障害である。同じ障害である若い肢体障害者は現在の介護保険の判定方法を使うしかない。介護保険の肢体不自由むけの判定は、施設での介護職員から受ける介護時間を基に算定されているため、いつあるかわからない「緊急事態」や「トイレ」や「水分補給」や「物を取る」などのために介護者が見守り待機することが必要な時間数が反映されない。15分おきの車椅子の上でのじゅくそう防止の体位交換なども必要性が時間に反映されない。このため、障害者の在宅生活で、健常者家族との同居の場合に、家族の介護も足し合わせて何とか生活できる水準でしか、介護保険はサービスが提供されない。 また、介護保険は1人暮らしでもヘルパー時間数が増えない。1人暮らしの場合などは別のアセスメント方式が必要。

(4)要介護3・4の人は十分上乗せできるか?
 旧全身性障害者介護人派遣事業の対象者(特別障害者手当て受給者で1人暮らしなどが対象で、東京では毎日8〜24時間が決定されている)でも、要介護2・3・4の人はかなりいる。たとえば、食事が自分でできる場合は、要介護4以下になる。要介護が5でない場合に、十分な上乗せが受けられるかどうか、疑問がある。特に制度利用者の少ない地方の市町村では要介護5でないと上乗せを認めない運用になる可能性が高い

(5)ヘルパー資格問題 (日常生活支援など)
 現在日常生活支援毎日8時間の利用者の場合、このうち3時間が介護保険ヘルパーに切り替わった場合、なれた介護者は日常生活支援の資格しか持っていないが、どうするか。介護者は平均2〜3年程度で退職するので、無資格者を求人して補充が必要で、面接採用後に2日で受講できる日常生活支援の研修を受けさせている。(無資格者の求人でないと、求職者が少ないため、男性ヘルパーで休日・夜間・早朝・とまり介護ができ、正月も働け、きちんとした介護のできる人材は確保できない。)2〜3級ヘルパー研修はなかなか受講機会がない。
 また、全身性障害者の場合は支援費前は無資格者に障害者が教えて介護に入れていくという方法をとっていた。日常生活支援ではなく身体介護型ヘルパーの決定を受けている障害者は、支援費以後は、自分の介助者に3級を受けさせている。しかし、3級は介護保険では90%に減算される。

(6)セルフケアプランが事実上不可能になる問題
 支援費制度では、自分で自分の計画を決める制度であるので、ヘルパーが時間変更に対応できる限り、毎日、障害者が、仕事などの終わる時間に合わせてヘルパー利用予定を変えることも可能。しかし、介護保険では、このようなことは不可能。介護保険でも、自己プラン制度はあるが、多くの市町村は認めていない。しかも、自分で点数計算して複雑な書類を毎月市町村に提出する能力がある障害者以外は、自己プランは選択できない。また、その能力があっても、市町村に毎日変更されたケアプランを(点数計算して)出しに行くことは不可能。現在の介護保険制度では、99%の障害者がケアマネージャーを利用するしかない。

(7)介護保険のケアマネージャーに管理される
 支援費では毎月・毎週・毎日、障害者が自分の予定を変えることが可能だが、介護保険ではプラン変更のたびにケアマネージャーの許可を受けなくてはいけないため、迅速なプラン変更が不可能になる。そのほか、ケアマネージャーにさまざまな管理をされ使い勝手が悪くなる。これは、現在介護保険利用をしているALSの障害者などで、実証されている。ケアマネージャーを使うか、ケアコンサルタントを使うか、選択できるようにすべきである。(ケアコンサルタントとは、支援費と同様に、障害者は利用希望時間を毎日変えることが可能で、ケアコンサルタントは社会資源の情報提要や制度の仕組みの情報提供や保険点数計算の補助のみを行い、管理権限はない。)

(8)介護保険では健常者家族同居の場合、家事援助や窓拭きなどの規制がある
 障害ヘルパーでは家事援助の規制はなく、健常者の家族が同居している場合でも、障害者が自立して生活するのに必要なヘルパー時間が決定されるが、介護保険では健常者家族がいる場合は、家事援助が利用できない(多くの市町村の介護保険課はそういう運用を行っている)。子育て支援や草抜きや窓拭き、代筆や代読も障害ヘルパーでは可能だが、介護保険では禁止されている。

(9)入院時のヘルパーの 問題
 支援費の障害ヘルパーでは自治体が認めれば、(国庫補助を使わずに)全身性障害者が一時入院中もヘルパーを利用できる。(東京都、札幌市、さいたま市などで実績あり)。1日24時間介護が必要な障害者の1日3時間が介護保険ヘルパーになると、3時間分はこのような措置がなくなる。介護保険は国の縛りが大きく、障害者団体の交渉による制度改善が不可能。諸外国では重度障害者の入院中のヘルパー利用が認められているので、国との交渉で今後少しずつ実現していく可能性があるが、介護保険に入ると、その道は閉ざされる。

(10)自己負担の問題
 1人暮らしの知的障害者や精神障害者は、ほとんどは月6万円台の年金が唯一の収入で あり、1人暮らしの全身性障害者も8万円台の年金のみが収入という場合がほとんどであ る。
 介護保険の自己負担の上限(高額介護サービス費)として月15000円(非課税で老齢年金 受給者)〜約2.5万円(非課税)〜約3.5万円(一般)があるが、居宅支援費の自己負担は 0円(非課税)〜数千円(低所得)が上限である。 また、支援費の自己負担は本人以外に配偶者と子供の収入が対象である。介護保険の自己負担の上限は、配偶者、子供だけでなく親の収入も対象になる。

(11)車椅子など補装具の問題
 介護保険に入ると、JIS型普通車椅子やリクライニング車椅子は介護保険レンタル事業所からレンタルできるので、非常に特殊な改造が必要な場合を除き障害制度の補装具制度での支給はされなくなる。ところが、現在でも、多くの市町村は介護保険の方が自治体負担額が少ないという理由で、体に合わない介護保険のレンタル車椅子を使うよう強制している事例がある。40歳以上の特定疾患障害者で、介護保険開始前は自分の体の幅に合わせたリクライニング車椅子を補装具制度で作ってもらっていたが、介護保険に入り、体の幅に合わないリクライニング車いすを介護保険レンタルで利用するように強制されている例がある。重度全身性障害者にとっては、車椅子の各部分のサイズが体に少しでも合わないと、座位が保てないので、使い物にならない場合も多い。褥瘡ができ易くなる。しかし、更正相談所での特殊な改造の許可が出るほどでない障害者の方が圧倒的に多い。このため、「更正相談所での特殊改造の許可が出るほどではないが、既成のレンタル車椅子ではサイズなどが合わない」多くの障害者にとって、外出などが困難になり、閉じこもりや寝たきりとなってしまう。

(12)精神障害者の地域移行にはつながらず病院(療養型病床群)が介護保険で増えてしまう。
 精神障害者は先進国で最悪の30万人が病院に入っており、当面7万2000人を早急に地域移行してもらうことが決まっているが、その財源が、障害分野の予算不足で、まったくめどが立たないということが介護保険統合の理由にされている。介護保険に入れば、入所施設やデイサービスやショートステイ、ホームヘルプが精神障害でも利用できるようになるとも言われている。しかし、要介護認定が改善されないと、ほとんどの精神障害者は自立判定になり、サービス利用できない。さらに、精神系列の医療法人が精神専用の療養型病床群をたくさん作ってしまい、地域移行は進まない(障害保健福祉部では介護保険に入れば精神病院の中に精神の療養型病床群のようなものができれば、介護保険の対象になると言っている)。介護保険開始時にも、老人病院を運営する医療法人は、大量に療養型病床群(介護保険対象の入所施設の1つで、医療法人が作る)を作り、介護保険を食い物にした。

(13)小規模作業所の問題は介護保険では解決しない
 介護保険に入る際に、デイサービスの1種として小規模作業所を位置づければ、飛躍的に予算が作業所に確保できる可能性があるといわれている。しかし、すでにNPO法人化して支援費の知的障害者デイサービスなどの指定を取っている作業所があるが、さまざまな問題があり、わずかである。介護保険は支援費よりも基準が高いがこれをクリアしなくてはいけない。支援費でデイサービスを取れない作業所が介護保険で取れるわけがない。

(14)過疎地などの町村部で障害ヘルパーをほとんど行っていない地域でもヘルパー制度が受けられるようになるが、1日3時間の水準から先は制度が伸びなくなり、地域自立は不可能。
 支援費制度では、障害福祉に熱心でない市町村では、極端に制度が悪い。特に、重度障害者の1人暮らしなどがない町村の場合は、大多数の障害者は家族が介護して何とかなる場合が多いので、障害ヘルパー制度がないところも多い。介護保険制度になれば、家族同居でも、1人暮らしでも、おなじ障害状況ならば同じ要介護認定が出るので、市町村は必ず制度を行うことになる。町村でもヘルパー制度が受けられるようになる。ただし、最重度の要介護5(全介助で、食事も介護が必要な程度が目安)でも、ヘルパーなら身体介護で1日3時間分しかなく、現状よりはヘルパー時間数がアップするが、そこから先が制度が伸びない。つまり、町村部のほとんどでは3時間以上介護の必要な重度障害者は一生家族から自立(1人暮らし)できなくなる。つまり家族が高齢になり死亡すれば施設に入るしかなくなる。

(15)健常者家族と同居している重度障害者のほとんどは、ヘルパー時間数がアップするが、費用負担する家族の許可がないと利用できなくなる。
 介護保険制度になれば、家族同居でも、1人暮らしでも、おなじ障害状況ならば同じ要介護認定が出るので、健常者と同居の場合は、たいていは時間数はアップする。家族と同居の場合は、時間数がアップするが、家族の収入があるので、1割負担(昼間身体介護ヘルパー利用は、1時間402円の自己負担)となり、要介護5のすべて(毎日3時間の身体介護)を使い切ると、3万5000円の自己負担となる。一般家庭にとってはかなりの高額であり、費用を負担する家族の許可がない限り、ヘルパーは使えないことになる。これに対して、現在は家族と同居の障害者のほとんどは未婚で、支援費制度では自己負担はないので、親と同居でも、ヘルパー利用に際して親が反対しない。視覚障害者団体からは「子供と同居する中高年の視覚障害者がガイドヘルパーを利用しようとしても、子どもに費用負担がかかるので、利用させてもらえない」という報告も「ありかた検討会」であった。これと同様のことが介護保険に入れば全ての障害者に発生する。

(16)障害者団体が自治体の障害福祉課に対して交渉し、介護制度の改善がされてきた長い歴史と実績があるが、今後、それができなくなる
 日本の障害者の在宅介護制度は、1970年代から、障害者団体が自治体や厚生省の障害福祉担当課と交渉して、制度が改善されてきた実績がある。介護保険に介護制度が吸収されると、交渉が不可能になる。特に、介護保険では、市町村が動かせる裁量の部分がほとんどなく、制度改善がされない。

(17)介護保険の要介護5の障害者には電動車椅子レンタルが対象外になる問題
 先ごろパブリックコメントに出されていた、介護保険の要介護度5の者へは電動車いすのレンタルが制限される方針になっているが、これが拡大解釈されれば障害者も必要な器具の使用などにも一方的に規制され日常生活に困難をきたすことになる。

(18)ALSなどの人工呼吸器利用者について
 人工呼吸器の管理や吸引などの医療的ケアや意思伝達方法や寝返りなどには個別性がもとめられる難病患者の介護でも、1時間などの細切れの身体介護でしか派遣しない介護保険事業者が多い。すべて介護保険になったら、患者のニーズに的確に対応してもらえるか

(1)の補足

障害が介護保険に入ると非常に大きな問題点がある

 介護保険本体はかなりの財政難で、介護保険自体を「上限なし」に変更するのはかなり厳しい状況です。
 現状で可能性があるのは、現状のままの制度上限の介護保険ヘルパーが1階とすると、障害ヘルパーを2階とする方式だと考えられます。しかし、この解決方法では、以下のような大きな問題が発生します。

@ 24時間/日のヘルパー時間が出ている市では・・・・・(介護保険ヘルパーが1階とすると、障害ヘルパーを2階とすることで、現状と同じ制度利用が可能)

介護保険ヘルパー3時間/日 障害ヘルパー(2階部分)21時間/日

A 3時間/日以下のヘルパー利用者しかいない市町村では・・・・(介護保険ヘルパーだけが残り、障害ヘルパー予算は消滅する。3300市町村の9割がこうなる)

介護保険ヘルパー3時間/日が上限  

3300市町村の9割の市町村で
1日3時間以上介護の必要な障害者は施設から出られない地域になり、将来も固定化の可能性大。

 介護保険では身体介護1時間4000円×3回×30日=36万円。1日3時間で上限突破する。現在、支援費ヘルパー利用者全員がこの水準以下の市町村では、介護保険だけが残り、上乗せ部分の障害ヘルパー予算は消滅する。消滅した予算が復活することは財政難の中で非常に難しい。これらの市町村で5年後に施設から自立希望者が出ても、障害ヘルパー予算は0なので、3時間以上介護が必要な障害者は施設から出られない。

毎年ヘルパー制度は伸びてきているが、上記の地域では、今後一切伸びなくなる

 たとえば、1日16時間の介護が必要な障害者が、施設から自立希望が出たり、介護していた親が死亡した場合で、1人暮らしになった場合には、現在は、小規模市町村でもヘルパー時間数が1日8〜24時間に伸びている。これは、少ないといっても、それなりの予算規模があるから。1日8〜24時間のヘルパーが決定されるには、大きく補正予算を組む必要がある。予算規模が年間数十万円以下や0円の市町村では無理。しかも、介護保険に障害が入ると、少なくとも介護保険で「一階部分」が保障されているという理由で、「二階部分」が実施される可能性は極めて少なくなる。

(「障害ヘルパー等を介護保険と統合するとおきる18の問題」は以上)



以下、6月9日の抗議行動の実行委員会の報告文書を転載します。

[6.9全国大行動当日報告]

 当日は梅雨時ということもあり雨も心配されたが、早い時間から集会会場の日比谷公園の草地広場には全国各地からの参加者が集まった。最終的には北海道から沖縄まで全国から1200人の障害当事者、支援者、関係者が集まった。

 集会は12時30分少し前に始まり、まず主催者の実行委員委員長、横山氏より挨拶があった。続いて尾上氏より今回の行動に至るまでの経過説明がなされた。今年1月、厚労省に介護制度改革本部が設置され支援費制度と介護保険との統合がにわかに議論に上がり現在まで他に類を見ない速さで議論が進められている状況が報告された。
 次に来賓挨拶として3名の国会議員からの挨拶、精神、知的、難病、身体の各障害者団体のアピールが行われた。各団体それぞれからは介護保険と統合への懸念や不安、障害者の地域生活が崩壊への危機感、拙速に議論を進める厚生労働省への強い不信感が表され、障害者の地域生活確立への訴えが続いた。会場にもその熱気は広がり「統合反対」「障害者地域生活確立」への大きなうねりとなった。

 集会は約1時間続き、最後に厚労省へ向けたシュプレヒコールが高らかに挙げられデモ行進、国会議員への要望書提出へと移った。国会議員への要望書提出は衆参厚生労働委員会の議員70名を対象に議員会館へ出向き、厚生労働省へ代表団が提出した申し入れ書を提出した。国会会期中ということもあり不在の議員も多かったが、対応に出た人に要望の趣旨を説明し必ず議員の下へ届くよう働きかけを行った。

 他方デモ隊は「障害者の地域生活の確立を!−介護保険統合も一般財源化もNO!国は全ての障害者の地域生活に対する責任を果たせ!−」という横断幕を先頭に日比谷公園を出発。1200人におよぶデモ隊の列は、霞ヶ関をぐるりと一回りほぼ取り囲むような形になった。参加者は皆、霞ヶ関に響きわたる大きな声で「介護保険統合反対」を叫び、国が障害者の声をしっかりと受け止めるように強く訴えその歩を進めた。

 約1時間半のデモ行進を終え参加者は厚労省、財務省、総務省前に陣取り「障害者地域生活確立」を訴えるビラを配りアピールを行い、同時に約30名の代表団が厚労省に入り厚労省への申し入れと交渉を行った。(代表団交渉の報告は下記参照)3カ所のアピールでは全国から集まった障害者が次々にマイクを握り、その切なる思いを叫びにした。「障害者が地域で生きる権利を奪うな」「介護保険への統合反対」「一般財源化反対」実際に地域で支援を受けて生活する人々の重みのある言葉が発せられ、力強い訴えが続いた。最後には議員会館、財務省、総務省から戻った人達も加わり、厚労省前には人があふれかえり道路を挟んだ日比谷公園側歩道も埋める状態となり代表団の帰りを待った。

 17:00過ぎ、代表団が厚労省との申し入れ・交渉を終え戻り、厚労省側と「6月18日前後に、本日の申し入れに対する回答とやりとりを、責任を持った者が出席して行う」との確認を得たことを報告した。これを受けて、楠氏の挨拶と参加者全員でもう一度シュプレヒコールを挙げ行動は終了した。

 今回、私達は障害者団体として「介護保険への統合反対」の姿勢を初めて表明しアピール行動を行ったが、もちろんこの行動だけで統合への議論が白紙に戻されたわけではない。いわば今回は反対行動の第一波といえる。この統合への議論が始まった当初、障害保健福祉部長は「障害者団体の反対することは、進められない」と話していた。それでも代表団の報告にもあるように、国は社会保障審議会障害者部会において6月18日の障害者団体のヒアリングを経て6月25日の部会で中間とりまとめを行うスケジュールに沿って議論を進めている。今回の申し入れへの対応や、社会保障審議会の議論の推移には今後も注視が必要であることには変わりはなく、事態によっては近いうちに第2、第3の行動が必要となることもあり得る。1200人が叫びを挙げたシュプレヒコールのとおり私たちは「最後の最後まで戦う」決意である。

 最後となりましたが、今回、呼びかけが短い期間だったにもかかわらず、全国から約1200人の参加をいただき、また475団体、52名の個人から賛同の意志表明を頂きました。大人数での行動となりましたが、皆様の協力のおかげで大きな混乱もなく終了することができました。この場を借りて、参加者皆様、賛同して下さった団体の方々に感謝いたしたいと思います。

(実行委員会の報告文書(一部抜粋)は以上)

なお、当日の抗議行動の様子は、6月18日の社会保障審議会・障害者部会で行われた障害者8団体のヒヤリングにおいて、DPIを代表して出席した中西氏よりスライドで紹介されました。



6月4日第12回社会保障審議会・障害者部会の報告

自薦ヘルパー推進協会本部事務局

 前回の部会で提案された高橋紘士委員、高橋清久委員、岡田喜篤委員による介護保険との障害者施策に関するたたき台「障害者福祉を確実・安定的に支えてい くために〜支援費制度と介護保険制度をめぐる論点の整理と対応の方向性〜」  (http://zenrenkyo.ld.infoseek.co.jp/040604syougaibukai.pdf に全文掲載) についての説明がありました。

   内容は、支援費を巡る状況の変化や制度的な課題をあげて、介護保険との統合を結論づけています。介護保険による施策と介護保険外の施策を別建てで行って、障害者福祉全体の体系とするとしていますが、それ以上についてはこれまで指摘されてきた課題をあげるだけで具体論はありません。

 これに対して、以下のやりとりがありました。

○加藤委員(知的障害者福祉協会)
 知的障害者を中心とする福祉協会としては障害者基本計画、支援費制度には理念として賛成し、これが地域に広がることを期待している。
 しかし、昨今の状況の中で、介護保険、財政難の中で、検討する必要がる。統合化はある程度やむをえない。
 ただ、3委員の提言にあったように、介護というテーマと障害者の社会参加、自立の中身が必ずしも同じと考えられない。
 今回出たイメージ図では介護保険とそれ以外の面積の比は、介護保険が大きいが、逆ではないか。むしろ、介護保険のカバーする領域と障害の様々な根ざした特有の支援体制が考慮されないといけない。
 認定基準、障害程度区分、サービスの中身、施設サービスの種別、規模、利用者負担の問題、大きな問題がある。この違いについて裏うちのあるしっかりした検討が必要で、条件つきの賛成である。
 とりわけ、岡田委員から指摘があったが、1億2千万人の人口で46人の知的障害は少ない。障害というマイナー、さらに知的障害というマイナー、今後知的障害の人生が不利にならないように。それを前提にしてお願いしたい。

○徳川委員(身体障害者施設協議会)
 前文については賛成、しかし、4p以降に問題点がある。
 4pの最初に、支援費の支給量に基準がないというが、基準はある。これをないと書いて、そのために地域差があるというのはどうか。
 ケアマネジメントの制度化、高齢と障害とではケアマネジメントが違う。高齢は介護の内容を決める。障害は、教育・雇用を含めた人生全体にかかわる。介護保険のケ アマネジメントでは足りないと考えている。
 契約制度を支える権利擁護の仕組みも、保険制度になればできるのか。介護保険は抜きにして必要。支援費だからいらないということではない。
 就労の問題も介護保険、支援費とは別の問題で、必要なことである。
 二階建てという考えも一つの選択肢だが、我々は全く新しい介護保険制度の選択肢を提唱している。「(1)支援費制度をこのまま継続する方向」「(2)介護サービスを介護保険制度に組み入れる方向」だけではなく、(3)として全く新しい保険制 度を視野にいれる。二階建ては疑問に感じる。 6p。「自己決定の尊重と自立した日常生活の支援」とあるが、支援費ではおこなわれていないのか、介護保険ならできるのか。全てにおいて支援費に対する正確な見方が必要である。
 私たちは介護保険に反対ではない、積極的に取り組んでいる。それゆえに支援費の状況に正確に基づいた文章にして欲しい。
 委員にお願いしたのは、メリット・デメリットではなくて、思想的な面で障害者施策がどうあるべきか教えていただきたい。

○高橋清久委員(国立精神・神経センター)
 支援費の支給量の決定の基準がないということについて、確かに支給の基準は決まっているにしても、やはり地域差を生ずるような細かいところでは十分に整備されていない。
 ケアマネジメントの制度化について、障害者のケアマネジメントは現在、手法として使われていて、ある面では有効である。しかし、精神障害者の分野では制度化されてない故にそれが使えない、普及していない実情がある。
 ケアマネジメントを使うための財政的な問題があって、十分な機能を果たせていない。そういう機能が十分にはたされていない。
 権利擁護の仕組み、一応はできているとしても、まだまだ内容的には、いろんな事例には現場的な問題がたぶんに残されている。そういう理解をしている。
 地域生活、就労、重症障害者への対応、現状をみると、就労は希望者が多いが、実際に就労しているものの数が少ない。精神疾患の場合、十分なサポートシステムがない、まだ、十分な対応がなされていない。

○高橋紘士委員(立教大学)
 文章に誤解をまねいた配置があったと思って聞いていた。
 支援費においても契約制度なので、契約を支援する仕組みは必要である。基礎構造改革で利用援助事業ができ、地域福祉権利擁護事業として実施されている。また、成年後見人制度も改正された。しかし、それを上手く活用する仕組みができていない。支援費は第三者契約を容認するような形で運用されている。そういう問題意識がある。
 ケアマネジメントも同じ。介護保険はケアマネジメントではない、居宅介護支援事業である。その中の一部でケアマネジメントが使われている。ここでは障害者の自己 決定を支援するケアマネジメントとして使っている。介護保険でもそういう理念があるが、ここでは識別してケアマネジメントを使っている。
 支給量の基準はあるが、勘案事項の運用のありかたが必ずしもうまくいっていない、再検討する必要がある。
 新しい保険制度の構想と言う議論が必要というのは、個人的には同感。介護保険から支援保険へ。しかし、現在の時点で、ここに書き入れるのは躊躇した。現実的な現在の政策判断で。
 イメージ図の面積で、介護保険が大きいのはたまたま、絵の書き方の問題。理念的、制度の仕組みはつめていきたい。具体的、補完的に。
 障害者の生活支援は障害者福祉だけではできない。私の考えは所得保障が必要、地域生活を支える住宅手当、ヨーロッパではある。一部自治体では生活保護の住宅補助を使っている。施策の組み合わせで、この議論の中であらために浮き彫りになる。
 6pの「自己決定の尊重と自立した日常生活の支援」については、高齢者の介護保険にむけて書いている。介護保険も、在宅・自立支援を言っていた。現実では施設志 向になっている。介護保険部会も一人暮らし高齢者を考えるという方向性を出している。従来は家族同居の高齢者を考えていた。そういうことを書きいれた。
 指摘された誤解を招く部分については意見を踏まえてより工夫をする。

○岡田委員(川崎医療福祉大学)
 徳川委員の思想を明確にといす指摘はうれしいことである。この報告書では支援費で高らかに謳われた事を失われないようにしたい。これに、皆さんの賛同を得た。
 基準がないことについては、知的障害者、障害児では多い。ある市ではショートステイが3日、隣の市では1ヶ月となっている。支給決定については共通化を進めてい く。
 ケアマネジメント制度化にはこだわった。知事会がいっているケアマネジメントは介護保険のケアマネジメントにいれるということで、これは納得できない。本来は ソーシャルワーク、この議論を今後高めるべき。
 権利擁護の仕組みは、支援費の中で奇妙な気持ちをもっている。知的障害では自己決定でできないで代理でよくなっている。支援費は自己決定を理念として掲げたのに、それを簡単に代理といっていいのか。しかも、誰が代理人になれるかの要件も決 めていない。
 地域生活の保障というが、地域とは何かが語られていない。グループホームなら地域と言うことには懸念をもっている。
 イメージ図については介護保険とそれ以外のどちらが大きいではなくて、議論の中で徹底的に明らかにしていって欲しい。
 第三の保険、私も考えたが、今の国民の議論の中で現実的か、ためらいがある。
 知的障害や精神の状況で自己決定ができない人に、成年後見人制度でやればいいと簡単にいうが、しかし、いったん成年後見制度を使えば、本人のいかなるものについても後見人が決定する。そこは慎重に考えないといけない。
 "自立"という言葉も簡単に使ってきた。自立生活運動で謳われた自立の意味、どんな援助、介護を受けていても自分の生活を自ら決める、主体的に生きることである。
 高齢者の自立支援は自分ができるように支援する、これはあやまりで、主体的に生きること。ここで使われている言葉は今後、概念を深めて欲しい。

○松友委員(育成会)
 基本的なところを確認したい。5pが介護保険との関係になるが、介護のサービスを介護保険に組み入れる場合、介護の範囲をどうするかということがでてくる。
 ここで議論されている統合、組み入れという介護保険制度は現在の介護保険制度は手直しするのか、全くしないか。介護保険制度をドラスチックに変えるのは難しいと思うが。
 介護と言う表現になじまない、知的障害は介護という言葉をあまり使ってこなかった、また、身体障害では介助という言葉を使ってきた流れもある。名称自体を変えて欲しいという私たちの会の希望がある。「支援保険」、名称だけでなく内容も。今の介護保険をそのままにして、入らない部分を別建てでやるのか。そうではなく介護保 険も変えるのか。どちらか。

○高橋清久委員(国立精神・神経センター)
 介護保険の中も変えて、統合する。突き詰めては議論していないが。現在の障害者を介護保険にそのままあてはめることは難しい。今後の議論でどのような内容にしていくか。その結果、介護保険では不十分であるならば名称変えることもある。

○高橋紘士委員(立教大学)
 ステージ、段階がある。第1〜3のステージ、まず障害の給付について深めていって、介護保険にくみいれていく、その中で支援保険に変わっていく。
 ピッチャーがキャッチャーにいきなりユニフォームを替えろとはいえない。しか し、やがては一緒にチームでやるのなら、それも要求していく。
 要介護認定も障害に適する認定に変える。障害者施策から障害福祉に変わっていく。様々なハンディ、ユニバーサルな仕組みになっていく。時間的な経過と今後の介護概念の検討の中でどういうふうにしていくか。

○妻屋委員(全脊連)
 改革の方向で、ケアマネジメントの導入、精神障害の福祉、サービスの計画的な整備という改革の方向性がでている。しかし、選択肢が2つしかでてない。もう一つ、支援費を改革する方法がある。たたき台は誘導的な書き方である。
 誰でも一番心配しているのは、2階建て方式、例えば100歩ゆずって介護保険としても、2階建ては税財源になる。支援費になって税財源が足りない。どういう方向になるのか。高橋委員は大丈夫といったが。  岡田委員から見積もりをまちがったという話があったが、ここで誰が保証するのか、担保が見ない。この案に欠陥がある。
 サービスの格差をなくすことの保証もここにはない。誰がどういう保障するか書かないと納得できない。
 障害者は急激な変化をきらう。これを頭にいれて欲しい。入院している人が転院して欲しいと言われると、精神的にたえられない。安易にこっちにいくというはできな い。それを考えて欲しい。

○高橋紘士委員(立教大学)
 二階建ての部分で介護保険から外れた部分の将来的な財政的な不安があれば、これは議論したい。介護保険が残って、税が先細りではこまる。保証はないが、介護保険とリンクしたことによって担保される、その点は行政側のサジェッションもあった。そうであるならばこの方向でいけばいいのではないか。格差をなくすという保証はないが、しかし、それを確実に見通せる方法を今後の議論の中でしたい。

○丹下委員(障害者雇用部会)
 安定的な財源確保のためには、介護保険制度との統合が選択肢であると読める。そうであるならば、介護保険にくみいれれば安定ではない。安定と考える基本的な考えがあると思う。介護保険にいれた場合、誰がどれほど負担するのか、どれだけ負担すると安定的か。第三号被保険者を作るのか。

○高橋紘士委員(立教大学)
 20歳から保険料というのは当然である。個人的な積算であるが、十分な費用を捻 出できる費用が確保できる。それは今日は明らかにはしない。
 国民全体が負担する。事業者も負担する。一部の問題ではなく、皆、社会的に障害 を受ける可能性をもっている。その場合の負担、それをどうするのか。

○長尾委員(精神科病院協会)
 3人の委員のかたには精神障害者のこともいれていただいている。4pで精神障害者を対象とすることを書いている。これは支援費に入ってから介護保険にいくのか、介護保険に直接入るのか。
 求めたいのは今は精神は遅れている。三障害同レベルに持っていくことをもりこんでいただきたい。

○猪俣委員(自治体病院協議会)
 制度の安定的な継続と、精神障害の福祉の問題を考えると、3人の委員に基本的に賛同する。
 イメージ図があるが、介護以外のサービスがどう必要なのか。今の要介護認定ではできない。そこを煮詰めて、具体的に提示できるとイメージの共有がしやすい。
 統合の具体的な課題については、こうしたほうがベターだと踏み込んでいかないと、障害者は不安である。第二段の案を期待したい。

○福島委員(東京大学)
 先ほど、妻屋委員が誘導的といった。以前にも私は言ったが、Aの長所と短所、Bの長所と短所を出さないと、選択できない。今日は支援費の欠点と、介護保険の長所しかない。支援費の長所と介護保険のマイナス面をだして網羅的に検討すべきである。
 議論の最終的な段階で、統合を具体的に決断すべきだと思うが、加藤委員からも内容についての具体的な要望が出ている。しかし、内容を決めていたら時間がないという議論もある。
 最初に結論ありきではない、最初に基本的な問題点のすり合わせは必要である。基本的な部分を抽出して、そこを守っていきますよということがないと。とにかく財政だけの理由では決断がしにくい。基本的な柱、譲れない部分、基本的な価値をどう見出すのか。統合でも、会社の合併でも、やっていて白紙撤回になることもある。会社のリストラでなく、障害の場合は人生のリストラなる。後戻りできる保障も欲しい。2009年度に伸ばす、2006年は試行実施で2009年から本格実施ということも考えられる。
 今の段階で白から黒に変わる、基本的な部分も不透明ということでは、決断はできない。人生をかけている障害者の立場になると基本的な条件を明示するのが最大限のルールである。

○笹川委員(日盲連)
 介護保険に組み入れられない事業は具体的に何か。
 介護保険にいれるとしても、問題点が8点あがっているが、それでいいのか。もっと具体的な問題点があるのではないか。

○高橋清久委員(国立精神・神経センター)
 介護の範囲は議論したが、この審議会の場で議論いただくほうがより明確になる、そういう結論になった。
 自立に向けたいろいろなサービス、これを介護といっていいか。この介護の範囲は将来にはきちんとしないといけない。3人の段階では詰められなかった。

 上記のようなやりとりがなされ、京極部会長から、「今日はあまり議論の時間がなかったので、次回6/18に障害者団体のヒアリングも含めて議論を深める。支援費の課題については、介護保険で解決するもの、そうでないもの、介護保険以外で整備するものが一緒になっているので整理する。たたき台をもとに、委員から出た意見をいれて6/25のとりまとめ案を作る。」ということが示されました。



6月18日第13回社会保障審議会・障害者部会の報告

 前回の部会で、3人の学識経験者における検討作業で、中間報告書案がでましたが、それに対する障害者8団体(日身連、日盲連、聾唖連盟、全脊連、DPI、JD、育成会、全家連)のヒアリングと質疑を中心に開催されました。

各団体の意見は主に以下のようなものでした。(詳細についてはホームページの傍聴メモをご覧下さい。)

○日身連
 障害者を取り巻く現状を考えた場合、地域生活支援を進める観点からは、障害者福 祉サービスの提供について、「中間報告原案」にある、介護保険制度を活用する新しい障害者施策体系の案は、現実的な選択肢のひとつであるとも考えられる。
 しかしながら、この場合において日身連としては、現行の支援費制度による障害者一人ひとりのサービス水準については、高めることがあっても、低下させることは認 められない。また、「中間報告原案」が示すとおり、統合には解決されなければならな い多くの課題がある。今後、日身連とこの課題の解決のための新たな協議をしていくことを、国をはじめとする関係機関に対して強く要請する必要がある。
 中間報告原案にも解決する多くの課題があるとしているが、課題をあげる。

  1. サービス水準を低下させない
  2. 地域間格差の縮小
  3. 全国どこでも必要なサービスを平等に受けられるように。
  4. 長時間の介護を受ける人の上乗せ部分はどうするのか。国がかかわり、安定した 仕組みを。重度の人が一番影響をうける。
  5. 自己負担は十分な低所得者への対応、扶養義務者の負担は撤廃する。
  6. アセスメント、要介護認定は多様な障害がみれるように内容を検討する。
  7. ケアマネジメントも自己決定が生かされる仕組みに。
  8. ガイドヘルパーは保険外できちんとした位置づけを。
  9. 障害者向けのグループホームの制度化を。
  10. 障害者用具については保険外の施策として、きちんとした位置づけを。

 制度設計については日身連との協議を設けて欲しい。日身連はいっそうの理解と協力がえらるよう努力する。この解決ができるよう国とも協議していきたい。

○日盲連
 介護保険との統合は各地域の視覚団体で話題に登っている。最大の関心事である。どこも統合に反対と言う意見が圧倒的に多い。
 1年足らずで支援費が挫折して、統合の問題が浮上して、統合の方向に傾いている。措置制度がむしろ良かったという声も多く聞かれている。支援費はサービスを当 事者が選択、自己決定ということでいい事づくめを聞かされてきたが、ここで破綻を きたした。将来に対する不安と、国の見通しの甘さ、不信感がある。
 支援費には多くの問題がある。費用負担の問題、地域格差の問題、1時間あたりの単価の問題。まず支援費の問題を解決すべきである。
 介護保険の費用負担は統合になった時にどうなるのか。すでに1割でなく、2〜3割でないと介護保険はもたないという学識経験者もいる。
 統合は賛成できないが、仮に統合となっても、介護保険になじむもの、なじまないもの、精査をおこなって、別途方策を行っていくべきである。最もニーズの高いガイドヘルパーは介護保険になじみにくい。視覚障害のガイドヘルパーの派遣は別途の形で取り扱って欲しい。

○聾唖連
 介護保険との統合は財源の問題である。介護保険は福祉サービスの内容が不十分で自由な利用ができない。支援費も不十分、これを別の不十分な制度に統合して決して解決するとは思えない。それぞれの持つ問題をどうするか、改善の道筋が明らかにならないと、統合の可否は検討できない。
 聴覚は音声障害からの阻害である。正しく伝えられる環境が大事。生きる上での根幹である。これは基本的人権の基盤をなすものである。介護保険の介護サービス、支援費の支援サービスも聾唖者が自由に利用できるかということ、自己決定・選択できない。
 コミュニケーションも共通するようで異なる。知的障害者障害の聾唖者は手話以外の方法が必要、介護者と一緒に作りだしている。視覚障害をもつ人は触手話を使っている。
 実際に利用できない制度で推移している。介護保険、支援費も聾唖者の利用は少ない。利用できない現状を理解して欲しい。
 介護を必要としない聾唖者もいる。支援費とは別に情報保障をする新しい制度が必要。言語として手話を認めること。手話通訳を公的保障すること。厚労省だけでなく、各省庁に関連しているし、行政だけ無く司法、立法に関連する。生活全般に影響を及ぼす制度である。
 情報保障の受益者は聾者だけか?私が今発言している事、他の人が教えてくれること、手話通訳がなければ社会の中で孤立してしまう。ここに参加している人のすべてが通訳の受益者である。コミュニケーション保障は一方ではなく、双方にある。
 ろうあ連盟は、支援費の改善、介護保険の改善、全ての分野をカバーする新しい手話通訳の法的・制度的な構築を求める。

○全脊連
 全脊連として5月22日の総会で決議している。介護保険の具体像がないと判断で きない。今の時点では支援費の発展させることが重要である。
 市町村では全て支援費は実施されない。評価するための時間が必要。一般財源化もまだ市町村に浸透していない中、無理があって、反対である。
 支援費の一番の欠陥は、在宅が補助金であること。施設と同様に義務的経費にすること。
 高齢者福祉は人生最後のライフステージで、家族の意向、レスパイトの視点が強い。高齢者は必ず誰でもなる。高齢者は2400万人いる。人口の20%、今後増えていく。
 一方、障害者福祉を考えると、重度の人も社会で生活していて幅の広いライフステージを送っている。障害は遺伝的、薬物、アクシデントで障害をもっている。高齢者とは違っている。障害者は600万人。人口の5%。今後はそれほど増えない。支援費も地域移行が進めばそんなに増加はしない。
 三位一体改革の問題は今回の問題と裏腹である。地方分権の確立は言うまでもない。国の役割、外交、防衛、生命にかかわるものは国が担保すべきで、その考えは三位一体にも入っているはずである。介護保険では生命を守れるか憂慮せざるをえない。
 昨年は労災の民営化の議論あった。介護保険も民営化の議論もでてくるだろう。制度が2階建てでやっても、民営化は障害者にはなじまない。将来的には無駄な議論になる。民営化もみて議論をお願いしたい。
 様々な障害種別、障害程度、難病であっても、地域で認められ生活できることが公 平ということである。介護の金額の高低が公平でない。いかに暮らせるか、生存権が 公平の原則である。  最後にまとめとして、年金改革、介護保険改革、医療保険改革、消費税引き上げと言う国のスケジュールがあるのは知っている。厚労省と話をして熱意は感じるが、伝わってこない。裏切られた現状である。現在、要介護認定の調査を介護保険制度改革本部が進めている。なぜ、障害部でできないのか。また調査をするのに、障害者団体をいれないのか。3障害について政令市で調査を行うことになっているが、なぜ、当事者をいれないのか、これが不信感を生む。今後こういうことがないようにして欲しい。
 信頼関係がなく、内容も見えない。はっきり言ってもどこの団体もノーの状態。お互いの信頼関係をもっと構築すべきである。

○DPI
 6/9に身体障害者、知的障害者、精神、難病の団体があつまった。1200人、 480団体が集まった。おおぜいの障害者がこの問題で心配している。集会の案内をして時間がなかったにもかかわらず大きな反響があった。3月に実施したアンケート調査では反対が85%。厚労省の言う二階建て部分の不安も大きい、将来の生活の不安を感じている。
 高齢と障害の違いのニーズ調査を行ったが、高齢者は親族介護を望んでいる。障害は自立希望が多い。夫婦、同居人がいても他人介助をいれたい。高齢はサービスを家 族が決めている。障害者は自己決定している。介助の利用時間も高齢は1日3時間以 内で90%がカバーされている。全身性障害者は70%が1日3時間では足りずに2階建てになる。本体より2階だてが大きくなると言う逆転がおこる。
 制度が迷走して、理念無き福祉である。財源先行で理念がないがしろにされている。支援費制度は利用が伸びた、歓迎すべき良い制度だったととらえるべきである。 介護保険は5.5兆円。障害者の在宅サービスは1200億円と規模が小さい、なぜこのような大きなパイをもってこないといけないのか。
 行き先のない船にはのれない。障害部会で選択が迫られているが、内容も何もわか らない、行き先もわからない、国は後はまかせとけということだろうが、白紙委任状で乗れない。我々のバックには地域で生きる障害者がおおぜいいる。介護保険になれば市町村は介護保険以上のサービスはカットする動きが始まる事を恐れている。将来 の障害者のことを今、決めてしまう問題で、後世の障害者に批判されかねない。介護保険でも大変、支援費でも大変、しかし、今の支援費制度は使いやすい、これを残して生きたい。
 イギリスのでは高齢と障害は並び立たないということで、ダイレクトペイメントが生まれた。カナダでは長時間介助の問題をCILと行政が話をして、ダイレクトファウンディング、セルフマネジドケアを生み出した。ドイツでは介護保険で障害者が入って、ドイツの障害者からはドイツでは失敗した、日本では障害者は入らない方が いいというアドバイスを受けた。
 CILはこれまで地域で血と汗を流してやってきた。知的障害者、精神障害者も地 域で取り組みをしている。私が最初に地域で生活を始めたときに民家を借りて暮らして、地域でボランティアをつかって、夜は介護者探しに追われた。サービスのない地 域で命がけの自立生活をしてきた。このような30年の成果を10ヶ月で変えるのか。テーブルの上だけで考えている。地域では毎年1時間の制度をのばしてきて、今 の制度がある。
 介護保険に精神、知的障害者も反対している。「政策の都合で障害者が翻弄されるのではなく、支援費に精神をいれることが最初だ」と言う精神障害当事者の声、知的障害者についても移動介護、見守りを含めた介護が介護保険でどのような位置づけに なるのか心配している。ALS、人工呼吸器利用者の介護は介護保険事業者では対応 できない、支援費制度の中で考えていく問題である。
 介護保険とは自立の概念が違う。障害の自立の概念は介助を受けながらの自立という方向に変わった。これを後戻りさせないで欲しい。
 ガイドヘルプを介護保険とをわけようとしているが、ガイドヘルプといっても家の中で必要な介護を外でやっているだけである。ガイドだけ横出しにした場合、市町村はやらない心配がある。  利用者、現場の提供者、市町村の担当者は、介護保険にならないほうがいいという。現場を知っている人、切実なニーズを感じている人はそういっている。その全ての障害者の人が納得できる答えが提示されているのか。その保障がない限り、安易に統合賛成と部会で決めるべきでない。

○JD
 結論から言うと、現段階では賛成の判断できかねる提案。もっと判断できる提案を議論して欲しい。
 精神障害者の社会的入院問題、ほぼ固定化の状況。働く場、障害者の法定雇用率も一回もクリアできていない。無認可作業所が6000箇所にもなっており、異常な事 態である。
 障害種別間の格差もある。精神、難病、てんかん、自閉症、重度重複重症の施策が講じられていない。
 なぜこれが常態化しているのか。法律、政府の運用がおかしい。厚労省が真正面から取り組んでこなかった。個人的ながんばりをしているスタッフもいるが、全体としてはそうは見えない。
 介護保険との統合は手段であり、安心して暮らせる事が大きな目標。一大転換をするなら政策目的、地域生活の保障をすることをベースにおくべきである。これを論じてから、介護保険との統合論議をやっていくべき。「とりあえず」「よりまし」「一 歩前進」、この言葉は障害分野では結果を生んでいない。基幹的な問題は先送り、表層的な改善にとどまっている。基本的な問題にメスをいれることが大事。
 あらためて、全体をどう議論するかを強調したい。全体像をどうするのか、基幹的な課題にどうメスをいれていくのか、方向付け、検討のタイムテーブルを示すべきで ある。
 全体的なテーマとして、「扶養義務制度」「障害認定」「経済的自立・所得保障」「総合的な福祉法、あるいは全ての障害者を対象にした地域生活支援法」「60種類 の施設体系の簡素化」「社会資源の量的な整備、育成」「社会的な入所、入院の問題」  一気に解決はできないが、方向付けとタイムスケジュールをやるべきである。
 議論の上で正確なデータが不足している。データがない中での制度設計は支障がある。支援費の失敗は、思いのほかにニーズがでてきた。データないままの執行が失敗だった。
 経済団体など負担増から統合に反対する人もいる。これは障害者団体の反対とは意 味が違う。社会的な負担から障害者を排斥したい人には反対していかないといけない。
 このような議論をしている最中で、今、乗り遅れたら一般財源化であるということを強調しすぎることを問題だと感じている。三位一体改革は理解しているが、それをもって統合不可避というのは狭い論調である。もう少し自由な議論を展開しないと結 論は萎縮してしまう。
 あらためていうと、提案に賛成と言うのは材料が乏しい、引き続き検討を求めたい。1/16に塩田部長が改革本部の発足について説明を受けた。皆さんが反対したらこの話は壊れると言った。厚労省も胸にきざんで、基礎において欲しい。

○育成会
 一昨日の理事会で知的障害者障害者福祉との統合は必然と言う意見書を決議した。その趣旨と道のりを説明したい。
 私たちは知的障害者の親の会で、2700を越す地域の会があり、会員が32万人いる。私も32歳になる、知的障害者とてんかんの子供の親で、これまで生きる場を もとめてきた。知的障害者は家族の責任にされた。特に母親に大きな責任が負われ た。その中で疲れ、施設にたよった親もいた。しかし、これに終止符をうちたいと決 意している。地域での支援システムを求めて、行動している。このような立場で意見 を決めた。
  援費の財政破綻、混乱を予言して、介護保険との統合を主張した人たちがいた。また、10年近く前に介護保険の議論では障害者のことを積み残してきた。障害 者部会は介護保険から結論をまたれている。判断していかないといけない。
 支援費も介護保険も利用契約制度である。支援費制度への評価は契約方式への評価 なのか、そうでないのかを考えないといけない。介護保険で自主性が高まる。共助方式である保険は理解を高めることができる。逆にいうと障害者への理解がないと統合できない。
 歴史的な経過、現実、将来の展望をみると必然の選択肢である。ネガティブな理解 だけでなく、積極的な理解も可能である。介護保険制度で解決されないといけない事はある、これからの課題である。方向性が固められたら具体的な課題を提示し、その解決にまい進する。入り口で時間をかけるのが良いのか。
 障害者部会で統合を明確にしても、介護保険部会で受け入れられるか。経済団体、 高齢者分野、医療分野は否定的である。彼らはその反対の理由として障害者が反対しているということを使っている。共生の思想を掲げて国民に働きかける。障害者基礎年金も連帯でできた。
 そういう議論をへて育成会は統合に賛成の結論をだした。
 支援費制度で知的障害者の利用がのびた。しかし、知的障害者の利用についての基本認識ができていない。そもそも知的障害者は数が不明確である。世界的には4、5%、最も少ないアメリカでは1%。しかし、日本は40万人。これまで居宅の事業者がなかったところで、サービスがはじめればふえるのは当然である。
 強度行動障害、てんかん発作などの極めて高度な支援、地域生活支援を考えると日常的なサポートが必要。今までの積み重ねを越えた財源を確保しなければできない。 無認可作業所に通っている多くは知的障害者、精神障害者である。座して死をまつより、たちむかっていくしかない。特に重篤な高度な支援を税できちんと確立する。それを前提とした上で、共生の方向にむかっていく。

○全家連
 基本法ができ、精神保健法から精神保健福祉法にかわり、手帳、在宅サービスができた。 精神科についても通院中心、入院期間の短縮になっている。医療と福祉の両面、自立と社会参加が必要。
 当事者と家族が安心して暮らせる制度にすべきである。原則は障害者福祉は税金でやるべきである。しかし、今回国家財政が逼迫しているので、統合が示された。
 財源確保から検討すると介護保険との選択は一つの選択肢として前向きに考えていくべき。しかし、検討すべき課題が多い。
 多くの精神障害者が家族と同居して扶養のもとにいる。家族も高齢化している。在宅の問題を家族が背負うならば改善しない。社会によって支援する事が急務である。
 福祉サービスは個々の状況によって提供されるべきで、障害特性に配慮した制度設計を。3障害共通で平等にして欲しい。精神のサービスは不足している。インフォー マルサービスの整備も遅れている。精神は市町村の理解が低い、専任の職員をおく必要がある。  介護保険制度との統合に関して前提となる検討課題として、9項目をあげた。

  1. 統合された場合は、介護保険、支援費のサービスで利用できるものは全て利用で きるようにして欲しい。
  2. 経済的に厳しい精神障害者の保険料、自己負担を減額する。世帯でなく本人所得 を基準とする。
  3. 介護保険の限度額を超えるサービスの特例制度を設けること。
  4. 精神は対人関係、就労など固有の障害を有している。あいさつが不得意、言われ たことしかできない、注意力、気配りがないなど。
     認定には精神独自の認定基準を作る。不利益とならないように。多角的な十分な検 討を。一部の専門家で決めずに地域の実践者、当事者、本人家族が十分な意見をのべ るように。
  5. 精神独自のケアマネジメントを確立すること。現行のケアマネジメントでは対応 できない。研修を受けたケアマネージャーを育成。
  6. 生活の質の向上を現場に浸透させる。顔を洗うこと、買い物にいけるようになる ことなど。
  7. 法内と法外の施設の取り扱いについては関係者と十分な協議を行っていって欲し い。
  8. 介護保険外のサービスが維持、継続できる措置とその充実を図る。
  9. 地方では事業者がない。質量の格差がないように。

 このヒアリングを受けて、質疑応答が行われました。

○福島委員(東京大学)
 8団体の意見を聞いたが、賛成は育成会。条件づき賛成が全家連。反対はDPI、 全脊連。その他は判断の材料がないということだったと思う。
 明確に賛成を言っている育成会と反対のDPIに聞きたい。
 まず育成会に、判断できないという団体が多い中で賛成にいたる理由について説明をききたい。
 DPIのいう生存権の保障、税でやるという理念は正論である。しかし、財源が足りないと言うシビアな問題があり、障害者団体のリーダーとして予算が足りなくなると困るのは地域生活をしている重い人たちである。その場合の責任をどう考えるのか。理念はわかるが、厳しい条件の中でリーダーは判断しないといけない。

○松友委員(育成会)
 結論としては政策決定なので、科学的なプラスマイナスでない、政治的な判断である。介護保険のほうが、まだひどくならないだろう、そういう政治判断をした。
 その根拠は、知的障害者はいま遡上にあがった。精神はまだ俎上にもあがっていない。施設は強固に義務的になっている。地域の支援体制を強固につくるにはどうするのか。
 知的障害者と痴呆性老人と何が同じで何がちがうのか。グループホームへの報酬は老人の方が高い。
 厳しい財政状況で国民一人当たり700万の赤字を抱えている。応益負担になることははっきりしている。制度の永続性も考えて、厳しい状況の中で、安心、寄らば大 樹のかげ、社会保障全体が一本化、おおきな流れで戦わないと、障害者だけではいけない。苦渋の結論である。

○中西氏(DPI)
 私には責任が問われている。重度の人の地域のいる人の思いを代弁する、集約する責任がある。私に課せられた責任は障害者一人一人の生活の保障ではない。障害者の声に対する国民の理解を訴えていくことである。
 生活保障の責任をもっているのは、国家である。生存権が認められている。障害をもって地域でいきる。トイレのいきたいときにいく。悪いのは障害者がサービスを使っていることではない。悪いのは予算のシステムである。
 介護保険は国家責任はおわない。これに入ることは最初から上限をもったシステムに入ったということになってしまう。障害者に必要なシステムを考える。お金がない ので他の仕組みに移ろうではない。必要なことは国が責任を負うべきである。

○徳川委員(療護施設協議会)
 統合反対の意見には2つある。ひとつは理念的な面で、全脊連、DPIは公的責任の問題、保険制度はなじまないという考えであった。保険だから公的責任でないとい う理由を聞きたい。
 もう一つは、介護保険が不安な場合、そのサービスの問題が解消されれば介護保険でもいいのか、そこがわからないと議論できない。

○中西氏(DPI)
 介護保険は自己負担しないとサービスが停止される。家族に負担がいく。支援費は本人負担しか求めていない。高齢は稼得能力があって、資産ももっている。障害者に払えないものを払えというのが公的責任なのか。
 障害のサービスがよくなればいいというのではない、高齢も良いサービスを使えればいい。支援費は介護保険より進んでいた。介護保険の目的が支援費制度にあるのなら、財源の問題はあっても、すぐれた制度を誇りに思うべきである。ダイレクトペイメント、パーソナルアシスタントにつなげていく。それが日本の最終的なゴールであ り、もっと議論すべきである。  

○小林委員(長寿科学振興財団)
 医療では所得がないと生活保護では負担がない。保険ではできない部分には高度先進医療や高額療養費制度がある。介護保険においてもそういう見直しをしていく。今 出来るかどうかはわからないが。

○藤井氏(JD)
 そもそも高齢者と障害者を別にするのは差別に近い発想である。前回の介護保険では、障害をいれることはめんどくさかった。ゆくゆくは介護保険、医療、年金、労災 とならんで保険はやぶさかでない。しかし、統合なら条件の整備が必要である。併合 や吸収ではいけない。あまりにも違いがありすぎる。統合のために条件整備が必要である。基幹的な施策を整備しないと統合は新たな問題を生む。

○京極部会長
 議論の整理をしたい。
 介護保険にすぐ入るのではなくてタイムラグがあり、しばらくは支援費制度が続く。また、介護保険が全てでなくて介護保険以外の施策も行う。財政は金額の問題も あるが、介護保険は在宅も義務的経費になっている。この3点は共通の認識ではないか。

○前田氏(日身連)
 3委員の提案は共感できるところある。これを見る前に、大会で現行の介護保険のサービスでは低下するという決議をした。しかし、提案は解決するべき課題がある。 日身連はこれから8団体の皆さんと厚労省との協議の場で多くの課題を解決できるよ う進めていきたい。

○笹川委員(日盲連)
 先ほど、説明したが、どこでも統合反対の声がでている。支援費をまだ見直さないといけない。ガイドヘルプが支援費では措置制度より悪くなった。まずは現状回復である。それから統合と言うことである。ガイドが充実するならともかく、いまのまま では統合に入れない。

○松友委員(育成会)
 わが国は知的障害の定義がない。サービスの定義しかない。それでは人数はわからない。軽度発達障害、ADHD、自閉症は全く救われていない。また、年齢できられている。18歳で発症しないと知的障害者といわれない。
 介護保険で全てが片付くわけでない。本質的には法改正の問題で、金でないというのはわかるが、統合を突破口にして、日本の国家体系を組み替える。そういう思いで ある。

○藤井氏(JD)
 支援費はデータがないことの悲劇だった。ニーズ爆発ではなく、科学的なデータがないと、その時の財政でさまよっていく。もう少し、定点調査を行い、NGOとも協力できる。かつてのように障害者団体が調査反対をすることはない。データの重要性を強調したい。

○前田氏(日身連)
 中間報告で気になるのは三位一体改革、地方分権の推進があり、全国市長会でも一般財源化が求められている。市町村障害者生活支援事業が1500万でスタートしたが、一般財源化されて、市のほうで困っている。市が財政を負担しているが、補助金 をカットされている。今回も市長会から一般財源をもとめているというが、全てを一 般財源化する事が本来の分権の姿であるのか。ますます格差が生じてくる。国の考え 方も聞きたい。
 介護保険でできるもの、できないものがあると思う。それは今後、どういう形でいくのか。支援費制度を残してやっていくのか、あるいは別な制度を作っていくということもある。介護保険とのそれ以外の制度の線をひくことができないと、統合賛成となりにくい課題が残る。

 このような議論を受けて、最後に塩田障害保健福祉部長が全体的なコメントをしま した。

○塩田障害保健福祉部長
 これからの福祉の全体像を示す事は同感である。骨太の方針でも障害者のことを書 いてもらった。できるだけ早く障害者福祉の全体像、スケジュールを示したい。
 これからいろんな関係者と議論して介護保険となっても、当分は支援費でやっていく。支援費の見直し、充実、強化、いろんな努力をしていかないといけない。裁量的 経費となっていることは致命的だが、在宅の予算確保は最大限やりたい。関係者が一 致団結して予算確保したい。支援費の見直しが、介護保険に移行する準備作業にな る。いろんな努力が必要。
 克服する課題は山のようにある。その制度をどういう設計になるか厚労省も関係者から聞いてつくっていく。今はだせないが、なるべく早くデザイン、設計図を出したい。
 こうした場以外でも関係団体と意見交換、協議の場も設けて生きたい。議論はまさにこれからである。国民各層でいろんな議論で障害者福祉のコンセンサスをえていきたい。

   また、当日の提出資料として精神障害者社会復帰施設協会の「精神障害者福祉の発展のための介護保険の活用と、課題の克服」を趣旨とする見解と方針、全国市長会・町村会の「多くの市町村長が慎重・反対の意向を示しており、一方的な統合を進めることなく市町村長の意見を尊重する」趣旨の申入書が示されました。

 これを受けて最後に京極部会長より「今回のヒアリングを踏まえて、次回は、今後の方向性について議論し、まとめる。この議論の結果によっては介護保険部会にインパクトを与えることもあるし、空振りに終わるかもしれない。慎重な審議を。」とのまとめの言葉がありました。

なお、審議会各回の全体の発言メモは介護制度情報ホームページに掲載しています。

知的・精神障害が賛成で身体障害は反対?

 新聞報道などでは、知的・精神障害者団体が賛成で身体障害者団体などが反対と表現されているが、実は知的・精神の団体で賛成しているのは親の会だ。知的・精神の当事者団体は反対している。これは、当事者団体には施設から出て長時間介護を受けて1人暮らしをする知的障害者などがいるが、親の会の障害者は親と同居している障害者がほとんどという事情もある。介護保険に入ると9割の市町村でヘルパー制度で1日3時間が上限になる可能性が大きく、こうなると1人暮らしは不可能になり、親が死ねば施設に入るしかなくなる。



6月25日の第14回審議会 中間とりまとめ

「介護保険統合現実的な選択肢」確定的な表現避ける

 6月25日の審議会・障害部会で、京極部会長は、中間とりまとめ案を出しました。 支援費と介護保険については、反対意見や賛成意見などさまざまな意見があると認めつつも、統合が「現実的な選択肢の1つとして国民の間で議論されるべきである」としました。中間取りまとめ案は部会案としては了承されず、部会長案として、28日の介護保険部会に送られることになりました。今後は、介護保険に障害者を入れるかどうかの議論は、介護保険部会で行われることになります。介護保険部会は8月にとりまとめを行います。それを受け、厚生労働省として方針を出すのは9月中旬になります。厚生労働省の思惑では、秋から冬に自治体や産業界などへの説得を行い、来年の前半に通常国会で法律改正、来年夏以降は予算編成を行い再来年4月施行となっています。

介護保険改革:
障害者支援費と統合 賛否渦巻くなか一歩

毎日新聞 2004年6月26日

 00年にスタートした介護保険制度の初の大幅改正となる05年度の改革に向けた動きが本格的に始まった。25日には、社会保障審議会障害者部会が、介護保険と障害者の支援費制度の統合を事実上容認する部会長案をまとめた。保険料の徴収年齢を引き下げ、その代わりに若年層の障害者もサービス対象に含めようという案が下敷きになっている。厚生労働省は今秋にも原案をまとめる見通しだが、一部の障害者団体からは両制度の質の違いからサービス後退を心配する声も上がっている。【渋川智明、玉木達也】

◇「サービス低下」懸念も
 「統合問題について賛否がはっきり書かれていない。これでまともな議論ができるのか」。25日の障害者部会で部会長案が提示されると、委員から声が上がった。京極高宣部会長が「これは限りなく(統合へ)賛成に近い内容。こちらから(介護保険部会へ)ボールを投げなければ、議論が始まらない」と述べると、委員から批判の声が相次ぎ、京極部会長は「言い過ぎだった」と釈明した。部会長案は統合を事実上認める内容だが、反対論も依然根強いことを印象づけるシーンだった。
 00年の介護保険スタート時に要介護認定者は約218万人だったのが、現在は約367万人。このまま団塊の世代が高齢化していくと、介護保険財政の破たんは目に見えている。04年度の保険給付は5.5兆円だが、25年度には20兆円に膨れる。
 介護保険法では、3年で保険料を改定し、5年で制度内容を見直すことになっている。昨年4月の改定では、65歳以上の保険料が全国平均で13.1%アップし、月額3293円になった。保険者である市町村も赤字財政のところが増えている。
 一方、税財源で運営されている障害者の支援費は昨年4月に始まった。行政が必要と判断した福祉制度を障害者に与える措置制度から、障害者自らが希望する福祉サービスを選んで業者と契約する制度へと大きく変わった。初年度からホームヘルプサービスなどの利用者が急増し、100億円以上が不足する事態になった。今年度も引き続き予算不足になることが予想されている。
 小泉政権の三位一体の改革で補助金が削られていく中、税財源による支援費制度の維持を危ぶむ声は強く、厚労省は支援費が始まる前から水面下で介護保険との統合を模索してきた。
 厚労省は両制度を統合した場合、介護保険料を徴収する年齢を、現行の「40歳以上」から「20歳以上」に広げたうえ、20歳から必要と認めたサービスが受けられるようにする方針だ。財政の安定を考えての案だが、介護保険が始まる前から、20歳以上を被保険者とする議論が行われた経緯もある。先行したドイツの介護保険も年齢による制限がないため、日本でも医療保険と同じように20歳以上を被保険者に加えるとの案に理解を示す関係者も多い。

◇負担増に警戒感  反対の障害者
 東京都千代田区で今月9日、全国から集まった車イスの障害者ら約700人が介護保険との統合反対を叫んだ。「厚生労働省は『障害者団体が反対することを進めることはできない』と言ってきたのに、審議会で強引に統合への議論を進めるのは許せない」「高齢者の介護と、若い障害者のサポートは根本的に質が違う」
 両制度の違いは以前から指摘されてきた。介護保険は要介護認定を受けた高齢者が、要介護度による支給限度額の範囲内でサービスを受けられる。サービスの種類は、ケアマネジャーのケアプランに沿って、利用者が選択できる。一方、障害者支援費では市町村が個々の障害者についてサービス支給を決定し、障害者自身がどのサービスを選ぶかを決めるが、ケアマネジメントは制度化されていない。
 介護保険では、身体の状態や痴呆の有無などをもとにコンピューターなどによる判定で要介護度が決まる。しかし、障害者のケアは日常生活上のハンディを補うだけでなく、社会参加や自立を目指す障害者のサポートが求められる。現行の要介護認定基準をそのまま障害者に適用すると、要介護度が低いランクに判定され、サービス供給量が狭められる恐れも指摘されている。
 また、利用者負担については、介護保険は原則として費用の1割負担(応益負担)だが、支援費は負担能力に応じた徴収(応能負担)だ。自立して暮らす障害者の多くが経済的に苦しい立場にあり、介護保険との統合による負担増への警戒感は強い。

◇労使、障害者団体も対立
 日本経団連は4月、介護保険と支援費の統合について「若年障害者には、就労支援、所得保障をはじめ、高齢者に比べ多様なニーズがあり、現行の介護保険制度の枠組みの中で一体的・効果的に障害者福祉が機能するのかどうか疑問」とする意見書を発表した。「支援費の財政支出が1年目から当初の予想をはるかに超えた原因を検証すべきだ」とし、統合に反対の立場を示した。保険料は雇用主と社員が折半して負担するため、経済界にはこれ以上負担が増えることへの反発が根強い。
 一方、連合は5月20日に発表した「介護保険制度の見直しに向けて」の中で、「介護とは、高齢者特有のニーズではなく、疾病や交通事故などによる後遺症でも必要となるものであり、本来は年齢や事由を問うものではない。介護ニーズを社会全体で支え、あらゆる人の地域社会と社会参加を保障するという、社会連帯に基づいた改革でなければならない」として、統合に賛成している。
 身体障害者などのグループに反対意見が多い中、知的障害者の親など約30万人で組織する「全日本手をつなぐ育成会」(東京都港区)は「両制度とも自己決定を尊重する理念に基づいている。急増する障害者のサービスの需要に対応し、安定した財源を保障するためには統合は必然」と発表し、意見は割れている。 



第14回社会保障審議会障害者部会配布資料(2004年6月25日)

今後の障害保健福祉施策について(中間的な取りまとめ)

 社会保障審議会障害者部会においては、本年2月に社会保障審議会により設定された審議事項である「ライフステージ等に応じたサービス提供の在り方、ケアマネジメントの在り方、雇用施策との連携、財源の在り方等、支援費制度や精神保健福祉施策など障害者施策の体系や制度の在り方に関する事項」について、3月2日以来、ほぼ2週間に1回のペースで○○回にわたり精力的に議論を行ってきた。
 これまでは、とりわけ身体障害、知的障害及び精神障害の三障害共通の枠組みに関する大きな方向性を議論してきたが、中間的なとりまとめの方向に沿って政府及び関係者において施策体系や制度の在り方についてさらに詳細な検討が行われることを期待し、当部会としてもさらに議論を深めることとしたい。

1 基本的な方法性

○障害保健福祉施策の基本的な方向性については、障害者基本法に基づく障害者基本計画や、「今後の障害保健福祉施策のあり方について(中間報告)」(平成9年12月、関係三審議会合同企画分科会)をはじめとするこれまでの審議会の議論を踏まえつつ、今後は、狭義の福祉だけではなく、就労、教育なども含め、幅広く自立と社会参加を進める視点で考えるべきである。

○現在の障害保健福祉施策は、障害種別や年齢により、支援費制度、措置制度、精神保健福祉施策、医療保険制度などが組み合わさっているが、福祉サービスや就労支援等に関する制度的な枠組みについいては、基本的に三障害共通の枠組みとすべきである。

2 障害者の自立支援のための保健福祉施策の体系の在り方

(1)ライフステージ等に応じたサービス提供
 (全体的課題について)

○支援費制度は国の共通の制度としてサービス提供量を拡大させるなど障害者福祉の向上に寄与しているものの、実際にはサービス提供量等の地域差が大きく、サービスを選択できる地域とそうでない地域とがある。また、精神障害者福祉については、他障害に比べても立ち遅れている状況にある。

○これまで必ずしも施策の対象となってこなかった高機能自閉症やADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)などの発達障害についても総合的な支援に取り組んでいく必要がある。

○様々な施設類型があるが、実態を見ると違いがわかりにくくなっており、施設の果たしている機能に着目した整理が必要である。

○地域移行を進めるためには、居宅サービスを充実させるだけでなく、入所施設が利用者を地域に押し出す機能を持つことが重要である。

○入所・通所に関わらず、施設の機能を一旦分解して、各機能のサービスを地域での受けられるようにすることが重要である。施設・在宅の二元論ではなく、自由な利用を可能とすべきである。

○地域の人々にノーマライゼーションの考え方を理解してもらう必要がある。差別を品性、文化の問題とせず具体的にどう解消するかという議論をすることが必要である。地域で暮らすためには、日常的に住民と交流することや、子どもの時から友達づきあいだできるようにすることが重要である。

 (ライフステージごと等の課題について)

○ライフステージごとに様々なサービスが不連続となっており、それらのサービスをつなげていくことが必要である。

○乳幼児期は、障害の発見、療育、障害児の養育に不安を持つ親(特に母親)に対する支援が重要である。障害の告知方法など障害を受容できるようなアプローチを検討することが、必要である。

○障害の重度化に伴い、肢体不自由児施設や重症心身障害児施設への緊急入所という形での支援が在宅生活を支えるために必要である。

○障害児については、18歳以上になっても障害児の施設を利用し続ける「加齢児」が多いということ、措置制度となっていること、措置の権限が市町村に委譲されていないこと、医療との関係が深いということなどについて議論が必要である。

○高齢障害者では、生活支援・介護だけでなく、医療支援も重要である。

○聴覚障害者に対する手話通訳や要約筆記などの情報・コミュニケーション支援や視覚障害者の移動介護は、ホームヘルプや他のサービスとは別系統のサービスとして考えるべきである。

○公的サービス以外にも手帳を持っていれば受けられるサービスがあり、これを拡大するように働きかけることが必要である。

(2)就労支援

○就労支援は、障害者施策の中心課題の一つであり、どう実行し実現するかという段階に入っている。

○本人の意欲と能力に応じて就労できるよう、評価、相談、調整の支援の機能を位置づけることが重要である。この場合において、一旦就職した企業等でうまくいかなくても再訓練等により就労に結びつけていくことが重要である。

○施設体系を機能に応じて整理し、機能強化を図っていくべきである。その場合に、量的な整備を図ることも重要である。

○一律に一般就労へ移行するのではなく、一般就労につながらないが働きたい人たちのための雇用の在り方を検討する必要がある。

○現時点では保健医療・福祉・就労の間のつながりが十分でなく、それらを含めた連携が重要である。

○雇用だけでなく、自営業、起業や在宅就労に対する支援も検討する必要がある。

○障害者の能力を活かして、いろいろな障害者を合わせて雇用することで、企業にとっても有利なことでもあるのではないか。また、企業は雇った以上は障害に配慮しながらその能力を最大限発揮できるようにするので、就労の際のマッチング、ジョブコーチ、環境整備等の支援が必要である。

○通勤や職場の人間関係が難しく、たとえ就職してもすぐ辞めてしまうケースがあり、人間関係をどうしていくかが、重要である。また、精神障害者の場合、長時間の勤務が難しいといった理由により、就労が進んでいないという実態があり、こうした実情を踏まえた就労支援の取り組みがもとめられている。さらに、就労支援と合わせて生活支援を行うことも必要である。

○本人がいくら頑張っても支援者がいないと仕事ができない人もおり、どこが責任を持って支援者を確保するのか議論する必要がある。

○仕事の場面で障害者の役割を認め、働く意欲がわくようにすべきである。

○障害の状態等から就労困難な障害者についても、日中活動の場が必要であり、通所の利便を考えると、小規模なものが多く必要である。

(3)住まいの確保

○障害者の住まいの確保をすすめる際には、グループホームなどの福祉施設の充実を図ることに加え、公営住宅や一般住宅への移行も念頭においた施策への取組が必要である。

○障害者の地域移行をすすめる観点からは、住まいの確保が重要であり、とりわけ在院長期化が問題となっている精神障害者の場合、住まいが確保できれば早期退院、地域生活への移行が促進する。

3 ケアマネジメント等の在り方

○障害者の生活を支え、自立と社会参加を進める観点から総合的なケアマネジメントの制度化を図るべきである。

○障害者ケアマネジメントは、様々な職種によるチームアプローチを基本とするとともに、その透明性や中立性の確保に配慮すべきである。

○契約制度の下では、制度を利用するに当たって、権利擁護が実質的に機能する方策を考える必要がある。

4 サービスの計画的な整備と財源(配分)の在り方

○市町村障害者計画に精神障害者も含めた三障害の記述をするほか、数値目標を義務付けることが必要である。

○支援費制度には、勘案事項はあるが、全国の市町村で必ずしも統一的に運用されておらず、また、精神障害者福祉には勘案事項そのものが存在していないため、公費を財源としたサービスの配分の在り方や支給量の決定などに関する基準をより明確にするべきである。

○現在の制度では、扶養義務者の負担があるために、ヘルパーの利用状況が扶養義務者にわかってしまったり、扶養義務者に気兼ねしてサービスの利用が抑制されたりする面がある。

5 今後の障害者保健福祉施策に係る制度の在り方について

(1)障害保健福祉施策全体の在り方

○既に述べたように支援費制度をはじめとする障害保健福祉施策については、 @幼児期や学齢期における発達支援、青壮年期における就労支援や日中活動支援、高齢期における生活支援などのライフステージ等に応じたサービス提供、 A障害の有無にかかわらず共に働き共に支えあう観点からの就労支援、B暮らしの基盤となる住まいの確保、C障害者の自己決定と適切なサービス利用を支援するケアマネジメント等の在り方、Dサービスの計画的な整備と財源(配分)の在り方等、様々な視点から施策の在り方を見直す必要がある。

○今後の障害保健福祉施策の基本的な取組の方向性を具体的に明らかにし、多くの課題に対して法律改正も含めて積極的に取り組むため、当部会においても引き続き議論を深める必要がある。

○また、障害保健福祉施策の主な実施主体である市町村をとりまく状況をみたとき、住民に身近な地方自治体が自らの権限、責任、財源をもって行政を進められる体制を整備するという地方分権の大きな流れがある一方、それぞれの市町村においては、福祉に限らず多くの困難な政策課題を抱えている。そして現行制度のもとでは、障害保健福祉施策の実施主体である市町村に対する国の財政を含めた支援は十分とはいえない。このような中で、いかに市町村が障害保健福祉行政をすすめていくことのできる施策体系や制度を整備するかが大変重要である。

○さらに、介護保険制度については、来年にも介護保険制度の見直しが予定され、障害者施策との関係は制度創設当初から見直しの際に検討すべき課題となっている。

○また、地域住民の視点からみたとき、障害の状態に誰しもなりうるものであり、また、誰しも年老いていくものであるということを考えると、障害種別や年齢等に関わりなく、同じ地域に住まう一人の住民として等しく安心して暮らせるように支えあうという地域福祉の考え方が重要になっている。

(2)新たな障害保健福祉施策と介護保険の関係

○上記のような状況の中で、今後、地域福祉の考え方に立って障害保健福祉施策を推進するため、国民の共同連帯の考え方に基づいており、また、給付と負担のルールが明確である介護保険制度の仕組みを活用することは、現実的な選択肢の一つとして広く国民の間で議論されるべきである。

○この場合において、第12回障害者部会(平成16年6月4日)において三人の委員が示した考え方(「障害者福祉を確実・安定的に支えていくために〜支援費制度と介護保険制度をめぐる論点の整理と対応の方向性」)のように、介護保険制度によりすべての障害者サービスを担うのではなく、介護保険制度とそれ以外の障害者サービス等とを組み合わせて、総合的な支援体制を整備する必要がある。

○また、介護保険制度の仕組みを活用することについては、障害特性を踏まえたものとなるのかどうか等について関係者から課題や懸念が示されており、これらについて十分検討し対応することが必要である。

○現時点においては、障害保健福祉施策の推進のために介護保険制度の仕組みを活用することについては、賛成する意見や課題を示しつつ選択肢の一つであることを認める意見のほか、判断する材料が十分ではないとの意見や反対する意見もある。

○今後、よりよい制度を模索していく中で、障害者、医療関係者をはじめ多くの関係者の意見を十分聴いて検討を進める必要があるとともに、障害保健福祉施策の実施者であり、介護保険制度の保険者でもある市町村と十分協議することが必要である。

○いずれにしても、介護保険制度の仕組みを活用することを含め障害保健福祉施策をどうするかについては、今後、国民一人ひとりが「障害」の問題を、他人事としてではなく、自分に関係のある問題との認識に立ち、広く議論が行われ、その理解と協力が得られることを期待したい。



6月25日第14回社会保障審議会・障害者部会の報告

自薦ヘルパー推進協会本部事務局

 3月に第5回が開催され、介護保険との統合議論だけでなく、障害保健福祉施策の体系、就労支援、住宅、ケアマネジメントなどの議論をハイペースで行ってきましたが、本日で中間とりまとめをおこない、28日の介護保険部会に提案するということになっていました。

 特に介護保険との統合について、どのようなとりまとめがなされるのか注目を集めていましたが、とりまとめ案を受けて、各委員から、統合に反対する意見、支援費を継続する選択肢もいれるべきという意見、介護保険統合にもっと踏むこむべきだという意見など様々な意見がでました。

○丹下委員(障害者雇用部会)
 介護保険に組み入れる事、20歳に被保険者を広げることは時期尚早である。わが国の障害者施策の方向がどこにあるのか、多くの選択肢を吟味し、議論することからはじめるべき。すでに統合へ決まったかのような方向があることはおかしい。
 20歳以上から保険料をとるなら、対象の人が理解、共感を持つのか。所得補足率の問題もあり、学生・フリーターからはとれない、勤労者しかとれない。
 産業界が障害者問題を拒否しているのではない。産業界が求めているのは福祉にも合理化を求めている。高福祉・高コスト体質ができている。福祉においてもコストをどう下げるかを産業界は求めている。
 支援費をどう再生するかの選択肢があり、これがまだ議論されていない。障害者福祉と雇用を結ぶ法体系を提起して欲しい。提供されるサービスが過剰でないのか、そのためのルールが必要で、これはケアマネジメントの議論にかかってくる。このような検討をして支援費制度の再生をすべきであるというのが産業界のおおかたの意見である。
 介護保険との統合が将来的にあるのかもしれないが、議論をつくしてから考えるべき。

○京極部会長
 私のメモでは、"有力な選択肢"ではなく"現実的な選択肢の一つ"ということである。保険徴収が20歳から、30歳からということはふれていない。  

○安藤委員(ろうあ連盟)
 介護保険との統合は現実的な選択肢というが、支援費制度も現実的な選択肢であり、それが全く触れられていない。統合が強くでていて、検討を求めたい。
 手話通訳、要約筆記はホームヘルプとは別にというのは評価できる。この中間報告の方向で進めていって欲しい。

○福島委員(東京大学)
 選択肢と言うからには、介護保険を選択肢の一つとすると、介護保険統合だけに向いてしまう。支援費の再生を検討する選択肢があればバランスはとれる。
 "介護保険制度によりすべての障害者サービスを担うのではなく、介護保険制度とそれ以外の障害者サービス等を組み合わせて、総合的な支援体制を整備する"とあるが、介護保険制度にのる場合に、他の制度も組み合わせるという考えを支持しているのであり、3人の委員の案をそのまま支持するものではない。今回のとりまとめは明確な方向性を示してはいない、あえて示さない事が様々な可能性があることを示している。

○松友委員(育成会)
 タイムリミットの中で、ある種の結論をださないといけない。本質は大事だが、7年前の積み残しの議論があり、今回の見直しの中で、障害者部会で結論がでなければ介護保険部会は議論しない。京極座長には介護保険部会で7年前の積み残しをきちんと議論してほしいと言って欲しい。年齢による差別、明らかな排除である。

○徳川委員(身体障害者施設協議会)
 統合と決めたわけではなく、"現実的な選択肢"として投げかけることには問題はない。介護保険部会になげて、それを受けてまた議論したい。

○武田委員((福)桑友)
 退院促進が言われているが、退院した人が地域で生活を送れる手立てはなされていない。統合を断定ではなくボールを投げるための議論を始めようとしている。これまで議論すらしなかったが、議論を始めていただきたい。治療の必要のない入院している人たちの保障のためにまず介護保険を議論していただきたい。

○新保委員(精神障害者社会復帰施設協会)
 前回、介護保険との統合に賛成する意見をだした。支援費の再生といわれても、精神障害は支援費に入っていない。介護保険ならば義務的経費として活用できる。介護保険の選択肢がないなら、精神の施策を支援費に入れてくれるのかという約束をして欲しい。私たちには何の選択肢もない。精神の社会復帰施設が介護保険に賛成した意をくんで欲しい。

○高橋清久委員(国立精神・神経センター)
 多くの選択肢があるだろうと思う。しかし、いろいろな選択肢を考えた上で、介護保険制度の仕組みを活用することが有力な選択肢である。
 経済的な理由で結論を得たのでなく、介護保険制度がユニバーサルという考え方、高齢者も、どのような障害も含むという考え方で、介護保険の仕組みを活用する。
 介護保険は国は負担の責任をもっている。理念的な面で介護保険制度が持つ優れた面の議論を深めていく。

○岡谷委員(看護協会)
 必要なサービスは介護保険で全てまかなえるのではなく、税の部分がでてくるが、どこまでが税で、どこからが保険なのか。そういうことを判断する材料がほとんどない。
 統合がいい、そうではないという判断が、これではできない。サービスを使っている障害者の立場にたって、統合の是非が判断できる中で検討したい。
 こちらからボールを投げて、介護保険部会ではどうなるのか。部会での結論がこちらに投げ返されるのか。

○京極部会長
 介護保険部会でも議論があるし、医療保険との議論もある。ボランティアもある。そういうすみわけをどうするのかが課題である。
 来週の介護保険部会でボールを投げる。障害者部会と介護保険部会をいったりきたりするようなことになるかもしれない。
 これは部会長案であるので、医療関係者、市町村、経済界と少し詰めた議論をして、中間まとめをする。それをあらためて介護保険部会に出す。
 介護保険部会も7月末に向けて精力的な議論をする。  

○村木企画課長
 ここでの議論を28日の介護保険部会になげて議論をいただく。この部会もそれをながめながら中間まとめをする。あと1回か2回開催して、中間まとめをする。
 その後の議論は、介護保険部会がどう結論を出すかを見ながら、ご相談させていただきたい。

○北岡委員(滋賀県社会福祉事業団)
 今回の中間のとりまとめでは現実的な選択肢の一つとして議論をすることを介護保険部会になげられればと思う。
 しかし、何をもって現実的なのかが、このまとめでは不十分だ。支援費の財政的な欠陥、在宅が裁量である、給付と負担の問題、知的障害者のサービス利用増、国家財政が厳しい、地域格差の是正などを議論して、現実的な選択肢が導き出された、ということから議論していくことだと思う。
 自立の概念、費用負担、サービスの上限、横だし・上乗せ、などの議論がこれから必要になる。介護保険がどこまで改革されるのかということもある。
 支援費制度と介護保険が発展的に自立と共生を生み出す新たな制度の創出を期待していて、そのための議論をしたい。  

○広田委員(精神医療サバイバー)
 統合を考えるときに、地域生活保険、社会保障保険などのいろんな言い方ができる。統合といっても精神は支援費に入っていない。
 講演に行って学生に、20歳以上に介護保険をはらうことをどう思うかを聞くと、1/3は抵抗がない、2/3は抵抗があると答える。
 これを業界で考えるのではなく、いろんな人に語りかけることである。世間の人がわかりやすいようにマスコミは伝えて欲しい。障害になっても安心して暮らしていける社会保障制度、日本に住む人間全体の問題として考える。障害者の業界の議論ではだめだ。

○堂本委員(千葉県知事)
 自治体の立場でいうと、介護保険部会に投げられるという議論がされているが、それ以前に社会保障制度が作られる場合、特に市町村に主体性が確保できるようにする必要がある。かつての機関委任事務のように微にいり、細にいり決まりができてはいけない。かっちり制度ができると地方の自主性をもった運用ができない。誰もがその人らしく住むという可能性が狭くなってしまう。  

○妻屋委員(全脊連)
  "判断する材料が不十分、反対する意見があった"とあるが、ここは介護保険部会にもっていく際には、"国の責任として税でまかなうべき"なので反対という意見をはっきりいれて欲しい。

○安藤委員(聾唖連盟)
 確認だが、この中間まとめについては、立場によって読み方が変わってくる。どちらでもとれるものでは、障害者部会の見解も問われる。座長はどのように介護保険部会で説明するか確認したい。

○京極部会長
 現実的な選択肢として検討せよと投げかける。両論併記をとっているのではなく、限りになく賛成に近い。

○安藤委員(聾唖連盟)
 賛成に近いという方向なら、部会で確認が必要だ。

○京極部会長
 "賛成"という表現はいいすぎた。いろんな意見がでたことが伝える。しかし、向こうで検討してもらうためには、現実的な選択肢としてという表現を使う。

○福島委員(東京大学)
 安藤委員の質問への部会長のお答えはかなり重要なポイントがある。限りなく賛成というのなら、とりまとめには賛成できない。
 介護保険を利用する際にどういうパターンがあるのかを今後を検討する。その時にあらためて、賛否をとうべきである。現段階で限りなく賛成はおかしい。部会長個人の意見でないととりまとめを支持できない。

○京極部会長
 部会長の失言ということで理解を。中間とりまとめでは今までの議論をすべてもりこんだ。これほどの大きな方向性をだしたのは厚労省でいままかつてないことである。
 介護保険を私たちの現実的な選択肢として検討しなくてはならない。これまでの議論は入口にしかすぎない。介護保険のメリット、デメリットある。市町村も含めて、国民的な議論が必要。さしあたりは介護保険部会にだすが、医療関係、市町村、いろんなかたがたにボールを投げる。私たちももっとつっこんで議論する必要がある。

○高橋紘士委員(立教大学)
 介護保険部会になげることで、介護保険部会との共同作業となるのかどうかはわからないが、障害者を介護保険でこう考えようという、障害者団体にも判断材料がでてくる。

○嵐谷委員(日身連)
 当事者の意見が有効である。投げかけて帰ってきた球をどうするかという論議になってているが、将来にわたって障害者施策はどうなるかという議論をして欲しい。国民の理解と共感を得る、障害者施策トータル的な部分をもう少し論議した上で、この話をすすめていって欲しい。もっと材料がないと判断できない。

○斉藤委員(社会就労センター協議会)
 介護保険制度に就労は入るのか。

○京極部会長
 そこは明確には議論していない。授産が介護施設なのかどうか、福祉工場は介護施設ではない。個別の施設体系はこれから議論する。

○徳川委員(身体障害者施設協議会)
 上乗せ・横だしの議論はされていない。介護保険と障害者施策の関係ではこれは重要なことである。高齢も障害も人間として同じニーズをもっている。それを含めた新たなものをつくる。単に介護保険にあるものを利用するだけでなく、国民全体のありかたについて新しい社会保障を作る。

○高橋紘士委員(立教大学教授)
 高齢ケアも介護保険だけでなく、介護保険以外のサービスを別立てで行っている現実がある。これは今の介護保険制度を前提とした議論である。
 介護保険そのものが将来がどうなるのかというのはその次の議論である。現状の制度を前提として、介護保険も持続可能な制度として厳しい目が注がれている。ピッチャーがキャッチャーに投げて、それが投げ返されてきてから議論が始まる。

○京極部会長
 今度の介護保険の見直しでは、介護保険部会でも生活支援保険にするという議論はしていない。今回の見直しでなく、次の見直しになる。介護保険部会では介護保険をどう定着するかという見直しを今やっている。生活支援保険は議論としては将来あるが、当面の議論でない。
 今日の意見を聞いて修正をした上で、最終的なものを委員にみてもらった上で、介護保険部会にだしたい。介護保険部会では、障害者部会からボールをなげるという意味で今日の議論をふくめて説明したい。

 以上のような議論がなされ、障害者部会では統合を決定したわけではないが、「現実的な選択肢の一つ」として介護保険部会で検討をしてもらうために、部会長メモとして中間とりまとめを28日の介護保険部会に提出することになりました。
 また、障害者部会は本日でいったん終了と思われていましたが、あと1〜2回開催し、介護保険部会の状況をみながら、また、障害者団体・市町村・医療関係との協議をしながら、最終的な中間とりまとめを行うことが示されました。
 これまでの部会の議論の中では「介護保険自体を大きく改革して地域で生活するための支援を行う制度にする」という介護保険改革を念頭においた賛成意見がありましたが、部会長からは「介護保険部会では、介護保険をどう定着するかという見直しを今やっていて、生活支援保険にするという議論はしていない。生活支援保険は議論としては将来あるが、当面の議論でない。」という否定的な見解が示されました。また、介護保険との統合で小規模通所授産、無認可作業所の問題が改善されるとの期待もありましたが、今日のやりとりの中では通所授産を介護保険にいれるかどうかはトーンダウンした議論がなされています。

 また、支援費の今年度の予算が170億円の不足がでるという報道についての質問が委員からありました。これに対して、障害福祉課長は「今の段階で不足の確たる数字はない。新年度始まって3ヶ月、利用の伸びの状況もある、4月から工夫もしている。適切にデータをとる努力をしている。昨年は初年度であったので緊急避難的に確保し、当面は回避できたが今年は同じような流用は困難である。補正予算も困難である。不足した財源確保は、4月から加算の算定の合理化、長時間の単価の逓減などの対応をしている。今年度の状況を見ながら更なる運営上の工夫を対応する。」と答え、追加的な財源確保を否定しています。

なお、審議会各回の全体の発言メモは介護制度情報ホームページに掲載しています。

障害者福祉・介護統合へ
 保険料徴収、20歳以上に拡大も 社保審部会了承 

(産経新聞 6月26日)

 介護保険制度改革の焦点である高齢者介護と障害者福祉の統合問題について、厚生労働相の諮問機関・社会保障審議会の障害者部会(京極高宣部会長)は二十五日、部会長が示した「統合は選択肢の一つ」とする中間まとめ案を大筋で了承し、統合を事実上容認した。まとめ案は部会長案の形で二十八日の同審議会介護保険部会に提出される。障害者部会が事実上容認したことで、介護保険改革論議は障害者施策との統合に向け大きく踏み出すことになる。
 ただ、統合をめぐっては(1)現在の障害者福祉はほとんど税金で賄われており、統合後の障害者の負担が重くなる(2)高齢者向けと障害者向けではサービス内容が大きく異なり、適切なサービスを提供できない恐れがある(3)若年層も対象になることに伴い、保険料徴収対象も「四十歳以上」から「二十歳以上」に拡大する方向で検討するが、対象拡大が実施されれば保険料の半分を支払う企業側の負担も大きくなる−などの問題点が指摘されなお曲折も予想される。
 障害者部会に示された「今後の障害保健福祉施策」をめぐる部会長の中間まとめ案では基本的な方向性として「就労、教育なども含め幅広く自立と社会参加を進める」とともに、身体、知的、精神の「三障害共通の枠組みとすべきだ」とした。今後の制度の在り方では「障害は誰もがなりうるもので、誰もが年老いていくことを考えると障害種別や年齢にかかわりなく支え合う地域福祉の考え方が重要」と指摘。
 その上で介護保険制度との関係については「給付と負担のルールが明確である介護保険制度の仕組みを活用することは、現実的な選択肢の一つ」とし、統合を事実上受け入れる考えを示した。
 これに対し、この日の部会では「障害者支援費制度をもっと充実させるべきだ」などの意見や表現の修正を求める意見も出されたため、二十八日の介護保険部会には部会長案の形で提出し、京極部会長が慎重意見も残っていることを報告することとした。最終的な「中間まとめ」は改めて作成する。「統合を選択肢の一つ」としたことで、今後の介護保険改革議論では統合を前提に具体論や細部についての詰めの議論が進む見通しだ。
 厚労省は、両部会や経済界、地方自治体などの関係者の意見を踏まえて、七月末をめどに介護保険制度改革の考え方をまとめ、平成十七年の通常国会に改正法案を提出したい考えだ。



問題になった「要介護5では、電動車椅子は想定しにくい」という部分を含む通知ですが、以下のようになりました。

 6月17日に厚生労働省老健局振興課長通知(老振発第0617001号)「介護保険における福祉用具の選定の判断基準について」が出ました。
 パブリックコメントで示された初期の案とほとんど変わらずに通知が出ています。
 問題になった「要介護5では、電動車椅子は想定しにくい」という部分を含む文書です が、以下のようになりました。(全文はホームページを参照) 「※ 個別の利用者の生活状況や解決すべき課題等によっては、使用が考えられる場合もある。」という記述が入っただけの解決となりました。

1.2 普通型電動車いすの場合

電動車いすは、自走用標準型車いすを操作することが難しい人が、主に屋外を効率的かつ安全に移動するために使用する福祉用具である。電動車いすには標準型とリクライニングや座席昇降などの多機能なものがある。また、車載などに有利な折りたたみや分解ができる軽量型の電動車いすもあるため、用途に合わせた選択が可能である。

使用が想定しにくい状態像

□歩行:つかまらないでできる
□短期記憶:できない

【考え方】車いすは、歩けない人や長時間歩くことが困難になった人が利用する福祉用具である。したがって、つかまらないで歩行している場合の使用は想定しにくい。普通型電動車いすは、主に屋外を効率的かつ安全に移動するために使用する福祉用具である。したがって、重度の痴呆状態のため短期記憶等が著しく障害されている場合は、電動車いすの安全な操作方法を習得することは困難と考えられることから、使用は想定しにくい。


使用が想定しにくい要介護度

□要支援   □要介護5

【考え方】車いすは、歩けない人や長時間歩くことが困難になった人が利用する福祉用具である。したがって、歩行がつかまらないでできる場合が多い「要支援」、重度の痴呆状態のため短期記憶等が著しく障害されている場合の多い「要介護5」での使用は想定しにくい。

※ 個別の利用者の生活状況や解決すべき課題等によっては、使用が考えられる場合もある

 



「障害者支援費170億円不足」の記事(6/22朝日新聞(夕刊))についての厚労省の見解

6月22日の朝日新聞(夕刊)で、厚生労働省が2004年度の障害者支援費制度におけ るホームヘルプサービスの国庫補助金が170億円不足する試算を出したことが報じられました。これについて同省障害福祉課では、障害者団体など関係者に対して、以下の文書連絡を行いました。


(厚生労働省資料)
平成16年6月22日付け朝日新聞(夕刊) 「障害者支援費170億円不足」の記事について

  • 平成16年度の居宅生活支援費については、平成15年度の実績をもとに、今後のサービ スの伸びを勘案して試算すると、昨年度の不足額を上回る見込みとなると考えている。
  • しかしながら、支援費の施行状況については、平成15年度の実績がとりまとめられた段階であり、現時点では平成16年度の不足額について、確定的な不足額は明らかでない。
  • 今般、報道された不足額については、平成15年度最終月の実績に伸率を掛けた粗い推計の結果である。
  • 居宅生活支援費については、今後、執行状況を適宜確認しながら、更なる運用上の工夫を行うことが必要であると考えている。
  • また、障害者が安心して必要なサービスを利用できるようにするため、制度がより安定的かつ効率的なものとなるよう、中長期的な財源の在り方を含め、関係審議会等の場等において、更に検討する必要がある。
  • 今後とも、当面の制度の運営や今後の見直しの検討を進め、あらゆる機会を通じ必要な予算の確保に向けて、最大限の努力を行う所存であるので、引き続きよろしくお願いしたい。

参考   <6/22朝日新聞・夕刊・一面記事>

■障害者の在宅サービス補助、約170億円不足の見通し
     04年度在宅分:2年連続制度危機 厚労省試算■

 身体・知的障害者を対象にした障害者支援費制度で、04年度の国の在宅サービス の補助金が当初予算で約170億円不足する見通しであることが22日、厚生労働省 の試算でわかった。財源のめどはたっておらず、障害者の生活や市町村財政への影響 は避けられそうにない。03年度に始まってから2年連続100億円を超える大幅な 不足で、制度は早くも存続自体が危ぶまれる状況だ。

 不足が見込まれるのはホームヘルパーを派遣したり、グループホームの運営を支援 したりする市町村のサービスで、費用は全額税金で賄う。2分の1を国が補助し、都 道府県と市町村が4分の1ずつ負担する。
 支援費制度で障害者がサービス内容を選べるようになって需要が掘り起こされ、利 用が進んでいなかった知的障害者・障害児のサービスなどが急増。厚労省が昨年11 月から今年2月までの利用実績をもとに、04年度に必要な補助額を試算したとこ ろ、当初予算の約602億円より約170億円多い約770億円となった。
 不足見込み額が最も多いのはホームヘルプサービス。当初予算で約342億円計上 したが約480億円必要になる見通しで、不足額約140億円は全体の8割を占め る。
 同省は4月にホームヘルプサービスの報酬単価が引き下げられたことなどで不足額 は25億円前後減ると見込んでいるが、残りの約145億円をどう補うか、めどは たっていない。
 03年度も当初予算で516億円を計上したが、128億円が不足。省内のほかの 予算を流用して約114億円分穴埋めした。障害福祉課は「(2年連続の)流用は極 めて困難で、制度上補正予算も難しい」としている。財源が確保されなければ不足分 は自治体財政で賄うことになるため、サービス支給を抑える市町村も出かねず、障害 者の生活にも影響が出そうだ。
 04年度予算で在宅サービスは増額されたが、サービス需要に追いつかない状態。 それでも在宅の身体・知的障害者約380万人のうち、制度を利用しているのは1割 に満たない。05年度以降も需要はさらに伸びる可能性は高く、制度の抜本的な見直 しが迫られる。

<キーワード>
障害者支援費制度:障害者が自ら必要なサービスの支給を申請して事業 者を選び、契約する仕組み。市町村がサービスの内容や事業者を決めていた措置制度 を改め、障害者の希望や選択を重視する目的で03年度に導入された。精神障害など は対象外。

2面 <解説>

「脱施設」へ明確な姿勢を
 障害者支援費の補助金が2年連続で大幅に不足する見通しとなったことについて、 厚労省は「予想を超える利用増が原因」と説明する。
 しかし、同省は制度導入の際、介護保険の時と異なり、細かいサービスの必要量や ニーズに関する実態調査をしていない。潜在的な需要を把握せず、財源確保の見通し をつけないままの見切り発車を懸念する声は導入当初からあったが、具体的な対応策 は打たれてこなかった。
 国は03年度からの新障害者プランで「障害がある人も、ない人と同じように地域で 生きる」という理念を掲げた。支援費制度も、入所施設中心の政策を変えて「脱施 設」 を進める一環として始まった。
 地域での受け皿作りを進めるためにも在宅サービスの充実は重要で、入所施設向け の予算を在宅にシフトすることがかぎだ。だが、約3500億の支援費予算のうち、約6 割超が入所施設関連に使われ、在宅は20%に満たないという予算配分は04年度でも変 わっていない。
 現在、精神障害者を含む障害者福祉と介護保険制度の統合が省内で議論されてる。 一緒になれば財源が確保され、需要増も賄えるというのが大きな理由だ。
 しかし、障害者福祉には就労支援など介護保険では対応できない部分もある。統合 すれば、すべて解決するわけではない。国が本気で 脱施設に取り組む気があるのか。支援費の不足問題は、国にその答えを突きつけてい る。(寺崎省子)

(朝日新聞・夕刊 2004年06月22日)



ホームページ掲示板コーナーより

Q 泊まりがけでの外出

 障害者の方たちが集まるイベントに泊まりで参加(全介助の必要な方)をしたいとの要望があります。移動介護では日をまたがる活動はできないのは理解していますが、どの時間まで移動介護での請求になるのでしょうか?日常生活支援では自宅以外の介護はダメですよね。 自宅〜ホテル着まで? たとえ ホテル着だとしたら、そこから 食事介助・排泄介助・入浴介助・モーニングケア等を行う必要がある場合はボランティアになるのでしょうか?

A これは、自治体により、ばらばらです。

    1. まず、全部日常生活支援でOKの自治体があります。東京などに多いです。
    2. ホテルまでは移動で、ホテルの中は日常生活支援でいいと言う自治体もあります
    3. ホテルまでの往復の移動だけ可能という自治体も。
    4. 1泊2日になると、移動介護自体も一切認めないという自治体もあります。 まずは、お住まいの市町村にたずね、納得がいかない場合は、交渉することになります。

Q 自治体の日常生活支援の乱用  

   K市では、新年度障害福祉課の人事を一新し、財政課、介護保険経験者らを配し、露骨な支給量見直しを迫ってきています。その中で安易な日常生活支援の乱用が横行しています。時間数が伸びるのならともかく、日常生活支援に変わるわ時間数は減るわで最悪の状況になっています。市の論理は月125時間、単価のある連続1.5時間以上を目安となるものとし、日常生活支援の算定の根拠としています。

 連続1.5時間以上の身体介護型サービスをすべての利用者で日常生活支援に切り替えているということでしたら、省令違反の可能性もありますので、実際の介護サービスの中身に注目しないといけません。
 日常生活支援は介護・家事に加え、見守り時間が多分に含まれているということでかなり低い額に設定されています。身体介護と日常生活支援では2倍以上の単価の差があるのはこういった理由によります。  一方、省令では市町村は国の決めた単価以下でホームヘルプサービスを行ってはいけないことになっています。
 ですから、毎日朝・昼・夜に2時間の身体介護を使っていて、その2時間(120分)の内容が110分身体介護、5分家事援助、見守り5分などのような場合には、明らかに日常生活支援ではなく身体介護中心型で決定しないと、法律違反ということになります。
 なお日常生活支援の場合は、トータルでの「身体介護時間数、家事援助時間数、見守り時間数」を足し合わせて考えますので、夜は身体介護だけだが、昼は家事や見守りりが多いという場合には、全部が日常生活支援になることもありますので、注意が必要です。
 以上を踏まえて、実際に何分ずつ「身体介護時間数、家事援助時間数、見守り時間数」がある障害者が日常生活支援にされているのかをご連絡ください。法律違反があれば具体的に国とも相談して対応しましょう。

Q 知的障害者の移動介護従事者要件について

 ホームヘルパー(訪問介護員・居宅介護従事者)資格があればできると聞いていますが、3級でも可能ですよね。某県では(公ではないのですが)2級以上を暗に唱っているようなところがあります。国からのそれについての通知などがあれば教えてください。

A 3級でかまいません。

  ホームページの支援費制度のページの右列の下の方の、「支援費で必要な資格の一覧表(確定版) 2003/4/18 」をご覧ください。根拠省令にリンクもついています。



全国ホームヘルパー広域自薦登録協会のご案内

(介護保険ヘルパー広域自薦登録保障協会から名称変更しました)略称=広域協会
フリーダイヤル  0120−66−0009
フリーダイヤル FAX 0037−80−4446

自分の介助者を登録ヘルパーにでき自分の介助専用に使えます
対象地域:47都道府県全域

介助者の登録先の事業所のみつからない方は御相談下さい。いろいろな問題が解決します。

 全身性障害者介護人派遣事業や自薦登録ヘルパーと同じような登録のみのシステムを支援費ヘルパー利用者と介護保険ヘルパー利用者むけに提供しています。自分で確保した介助者を自分専用に制度上のヘルパー(自薦の登録ヘルパー)として利用できます。介助者の人選、介助時間帯も自分で決めることができます。全国のホームヘルプ指定事業者を運営する障害者団体と提携し、全国でヘルパーの登録ができるシステムを整備しました。介助者時給は今までの制度より介助者の給与が落ちない個別相談システムです。

利用の方法
  広域協会 東京本部にFAXか郵送で介助者・利用者の登録をすれば、翌日から支援費や介護保険の自薦介助サービスが利用可能です。東京本部から各県の指定事業者に業務委託を行い支援費の手続きを取ります。各地の団体の決まりや給与体系とは関係なしに、広域協会専門の条件でまとめて委託する形になりますので、すべての契約条件は広域協会本部と利用者の間で利用者が困らないように話し合って決めます。ですから、問い合わせ・申し込みは東京本部0120−66−0009におかけください。
 介助者への給与は介護型で時給1500円、家事型1000円、日常生活支援で時給1300〜1420円が基本ですが今までの制度の時給がもっと高い場合には今までの時給になるようにします。また、夜間の利用の方は時給アップの相談にのります。介助者は1〜3級ヘルパー、介護福祉士、看護士、日常生活支援研修修了者などのいずれかの方である必要があります。ただし、支援費制度のほうは、14年3月まで自薦ヘルパーや全身性障害者介護人派遣事業の登録介護人として働いている場合、県知事から証明が出て永久にヘルパーとして働けます。2003年4月以降新規に介護に入る場合も、日常生活支援や移動介護であれば、20時間研修で入れます。

詳しくはホームページもごらんください http://www.kaigoseido.net/2.htm

自薦介助者にヘルパー研修を実質無料で受けていただけます

 広域協会では、障害当事者主体の理念の3級ヘルパー通信研修も行なっております。通信部分は自宅で受講でき、通学部分は東京なで3日間で受講可能です。3級受講で身体介護に入ることができます。
 日常生活支援研修は、東京会場では、緊急時には希望に合わせて365日毎日開催可能です。2日間で受講できます。東京都と隣接県の利用者は1日のみの受講でかまいません(残りは利用障害者自身の自宅で研修可能のため)。日常生活支援研修受講者は全身性移動介護にも入れます。3級や日常生活支援の研修受講後、一定時間(規定による時間数)介護に入った後、参加費・交通費・宿泊費を全額助成します。

このような仕組みを作り運営しています
仕組み図

お問合せは TEL 0120−66−0009(通話料無料)へ。受付10時〜22時 
みなさんへお願い:この資料を多くの方にお知らせください。 介護保険ヘルパー広域自薦

登録保障協会 発起人(都道府県順、敬称略、2000年4月時点)

名前 (所属団体等)
花田貴博 (ベンチレーター使用者ネットワーク)
篠田 隆 (自立生活支援センター新潟)
三澤 了 (DPI日本会議)
中西正司  (DPIアジア評議委員/全国自立生活センター協議会)
八柳卓史  (全障連関東ブロック)
樋口恵子  (全国自立生活センター協議会)
佐々木信行 (ピープルファースト東京)
加藤真規子 (精神障害者ピアサポートセンターこらーる・たいとう)
横山晃久  (全国障害者介護保障協議会/HANDS世田谷)
益留俊樹  (NPO自立生活企画/NPO自立福祉会)
川元恭子  (全国障害者介護保障協議会/CIL小平)
名前 (所属団体等)
渡辺正直  (静岡市議)
山田昭義  (DPI日本会議/社会福祉法人AJU自立の家)
斎藤まこと (名古屋市議/共同連/社会福祉法わっぱの会)
尾上浩二  (障害者総合情報ネットワーク)
森本秀治  (共同連)
村田敬吾  (自立生活センターほくせつ24)
光岡芳晶  (特定非営利活動法人すてっぷ)
栗栖豊樹  (CILてごーす)
佐々和信  (香川県筋萎縮性患者を救う会)
藤田恵功  (土佐市在宅重度障害者の介護保障を考える会)
田上支朗  (NPO重度障害者介護保障協会)
 
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