支援費の介護保険統合問題その後
先月号で特集した介護保険との統合問題ですが、その後1ヶ月で目立った進展はなく、表面上はのんびりとした厚生労働省障害保健福祉部企画課長ほか数人と障害者主要8団体の介護保険関係の学習会が毎週木曜日に行われています。企画課長は「まずは介護保健制度に関する学習会を行い、共通認識を作りたい」「提案できる案はまだ、まったく作っていない」といい、障害者8団体は統合を前提とはせずに、まずは厚生労働省の話を聞くという態度でこの会合に望んだのですが、いつまでたっても、厚生労働省の案を聞けず、団体内部に持ち帰って討議するための検討資料もまったく入手できない状態です。この状態に対し、いくつかの団体からは、「引き伸ばしの策略ではないか。気がつけば統合が決定しているのではないか」と危惧する声もあります。これに対し、課長からは「決して引き伸ばしをしているわけではない」という発言がありました。また、課長補佐からは「制度設計は(条件がそろえば)すぐできる」という趣旨の発言もありましたので、本当に具体案は作っていないのかもしれません。ただ介護保険でまかなえない水準の長時間のヘルパー利用者には(介護保険がカバーする部分をどのように変更したとしても、介護保険を超える部分は)「2分の1,4分の1,4分の1」(の国・県・市の予算分担)で対応するしかないということは、示されました。
以下、毎週木曜日の学習会の報告を紹介します。(この文書は8団体の確認を経て、共同で配信されているものを、そのまま掲載させていただいています。8団体=日身連、育成会、DPI、JD、背損連、日盲連、日聾連、全精連)。
介護保険に関する障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年1月22日)の報告
1月16日の障害者7団体への介護制度改革本部の説明の場において、塩田障害保福祉部長から「支援費制度の理念の実現、発展のために、介護保険を活用する前向きな議論をしたい」との呼びかけを受けて、障害者7団体は連携を深めること目的に今後週1回ペースで集まることに合意し、その第1回目の話し合いを1月22日に行った。同時に村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合い(情報共有と意見交換)を行った。今回から全家連の正式な参加により、3障害8団体としての話し合いを進めていくことになった。
厚労省に対して、各団体が16日の話を持ち帰って検討した結果、現在の情報で結論を出すことは難しく、介護保険への統合を前提とせずに8団体がまとまって厚生労働省と率直に意見交換をしながら、その是非を判断していきたい旨を伝えるとともに、現状のサービスが維持できる仕組みと、施設から地域生活に移行することが目標で、それをベースに現状よりも障害者施策が一歩でも進むような話をしたいという発言が出された。
続いて厚生労働省から配付資料に沿って介護保険法改正の審議の進行スケジュールと議論に要する事項について説明があり、質疑が行われた。
8団体側からは、「財政状況が困難であることは理解するが、支援費制度は未だ課題が多い。スタートして1年を経過したばかりで検証もしておらず、介護保険と一緒にしてもうまくいかないのではないか」「現状の支援費制度においても十分にサービスが受けられていないので、今後どうなるのか多くの障害者が不安に思っている」などの発言もあった。
厚生労働省からは、当事者の考えが今後の政策決定に大きなウェイトを占めること、介護保険法の附則で5年後の見直しが法文上明記されていること、したがって介護保険と障害者施策の関係を検討する上では当事者団体の意見を聞き、地域生活を実現するためにはどの手段をとるのが有効なのかという観点から一緒に検討をしていきたい、ということが述べられた。
障害者団体側は厚労省に対して、今後障害者8団体と週1回ペースで話し合いを行い、実務レベルの情報も含めた具体的な情報提供を求めた。また、次回は厚労省と障害者団体がもつそれぞれの課題の共有化を図るために、介護保険制度及び介護保険法についての理解を深めるための情報提供を受けつつ、互いの意見交換を行う集まりを持つことになった。
障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年1月29日)の報告
1月22日の障害者8団体の協議において、今後障害者8団体で週1回ペースで話し合いを行い、その際に厚労省に対して介護保険の見直しに関してなされている検討について実務レベルの情報も含めた具体的な情報提供を求めていくことを決定した。そのことを受け、第3回目の集まりを1月29日にもった。
当日は午後3時から会議を始め、まず8団体での協議を行った。介護保険と支援費の相違点や介護保険を障害者施策に適用することに対して懸念される事項について、また、介護保険のメリットをどう考えるかについて事務局で作成した資料をもとに意見交換を行った。
その中で、厚労省と協議をするのにあたって、各論から入るのではなく、まず、障害者福祉施策の抱える基本的な課題(扶養義務、障害認定、所得保障、総合福祉法の確立等)をきちんと押さえ、その上で地域生活支援に必要なサービスの介護保険と重なる部分と重ならない部分を仕分けた上で、重なる部分に介護保険を適用することが良いのかどうか判断するという議論の方向性がだされた。
そのように、基本論・総論・各論と整理して話を進める中で、障害者団体が指摘したことに厚労省が答えるにとどまるのではなく、介護保険に障害者の介護保障をどうリンクさせるのか厚労省が描く全体像についての情報を求めていくことになった。
続いて、午後4時から村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合い(情報共有と意見交換)を行った。
最初に村木課長から、介護保険に吸収合併ではなく障害福祉施策としてどう打ち出していくのかについて協議したいとの言葉があり、当面2月までに協議を行うテーマとスケジュールが示された。
また、厚労省からこれからの障害者福祉の基本的な方向性について、資料をもとに説明が行われた。厚労省は、これからの障害者福祉は地域で暮らすことを前提に、
障害者種別や年齢を超えた地域ケアをできるだけ身近なところで受けられること
就労や住まいの問題も含めての支援の在り方を考えること
地域のニーズを的確に把握するための仕組みが必要であり、また、今後、地域移行の中で新たなサービスを受ける人が増えるためにサービスの伸びのスピードに耐えられる仕組みが必要であること
税と保険では財政弾力性に違いがあり、これからは財政の弾力性ある仕組みが求められること
特区における取組みも含め、地域の実情に応じたサービスを生み出す仕組みが必要であること
などをあげた。
また、自治体から国への要望として「安定的な財源確保」「ケアマネジメントの制度化」「支給決定基準の策定」などがあり、一方で障害者福祉の補助金について廃止し地方に財源移譲を求める声が大きいということもあげられた。
障害者団体側からは、 "障害者種別を越えたケア"という理念は重要だが、福祉法はそれぞれ身体・知的・精神と種別に分かれている。法律が別でサービスだけ統合ということではなく、障害者団体は従来から障害者総合サービス法を制定するよう提案してきている。
平成7年に障害者プランができて7年間の計画が終わったが、知的障害者の入所施設は増えていて、精神障害者の社会的入院は横ばいである。市町村障害者計画は91
%の市町村で策定されたが、現状が変わったという実感がもてない。 扶養義務制度を変えない限り、いつまでも親が子供を見るということで、公的責任をあいまいにして最後は家族の責任としている。これは逆に本人の自立意欲を阻害している面があり、扶養義務問題について、政治も含めてどう提起していくのか考えなければならない。
障害認定や等級問題についても、医療モデルで決まっていて、それがサービスに結びついている。知的障害者、精神障害者の認定の方法にも問題がある。
総合的な障害者施策、所得保障など古くから指摘されてきた問題で、問題意識だけではだめで、それをどう施策にしていくかが重要である。
などの意見がだされた。
議論は当初の予定を大幅に越えて6時過ぎまで続いたが、これらの問題意識を障害者団体と厚労省の双方が共有し、次回以降の介護保険と支援費制度の具体的な問題について協議する中でも議論の念頭においていくことを確認して、今回の話し合いを終了した。
最後に障害者団体から介護保険と支援費制度を比較して懸念される点についてまとめた第一次資料を提出した。
次回も引き続き、厚労省と障害者団体がもつそれぞれの課題の共有化を図るために、介護保険制度及び介護保険法について互いの意見交換を行う集まりを持つ予定である。
障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年2月5日)の報告
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月5日の午後3時より開催した。
前回に厚労省と行った「これからの障害者福祉の基本的な方向性」についての議論を踏まえて、今回の厚労省との話し合いは「介護保険の現状と今後の方向性」について、高橋紘士氏(立教大学教授)より話を伺い、質疑を行うことで進めていくことを確認した。
各団体の中で介護保険と障害者サービスについての検討がなされており、その中の論点として、介護保険と支援費制度のアセスメントの違い、給付の上限と上乗せ・横出しサービスの問題等の課題があがったことの報告がなされた。精神障害の立場からも、介護保険の"自立"の概念を障害者に適用することの問題点も提起された。それらを受けて、次回については、厚労省側から引き続き介護保険について学者から話を聞く場を設けたいという提案を受けていたが、厚労省の考えを聞き、障害者団体側がもつ問題点を議論する方向にしたいという意見がだされた。
また、早急にそれぞれの団体が課題を出し合い、今後の検討における共通の認識を作っていくことが確認された。
また、この間の動きとして、厚労省が1月末に各自治体に示した"ホームヘルプサービスの国庫補助配分予定額""居宅生活支援サービスの事業運営上の工夫について"と、それを受けての自治体の反応についての情報交換を行った。
午後4時からは、村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合いを行った。
高橋紘士氏に加え、老健局から渡辺企画官(総務課)、宮崎課長補佐(介護保険課)が出席され、それぞれから介護保険制度についての説明が行われ、その後、質疑を含めた議論がなされた。
高橋氏は「介護保険と障害福祉」と題する資料に基づいて話をされた。概要は以下のとおりである。
税方式か保険方式かではなく、必要とされる介護のニーズにどう機動的に対応するかという仕組みとして介護保険をとらえる。一般財源は政治的な仕組みとして配分が決まるが、介護保険は福祉にしか使われない特定財源である。
介護保険導入によって、3年間で高齢者人口の増加分をはるかに越えてサービスが増加した。保険はニーズの増加に応じサービスを増やすのになじむ仕組みである。
介護保険は赤字が発生すれば財政安定化基金から借りて運営し、次期のでどう見直すかを議論できる柔軟な仕組みをもっている。
介護保険は市町村が必要なサービスを考え、保険料を決め、運営する地方分権の仕組みにのっとっている。
従来の福祉は問題がおきた時に救済するという仕組みだったが、介護保険はあらかじめ必要なサービスを明らかにし、標準的なサービスを提供する仕組みである。
介護保険の現在のケアモデルも転換が必要で、地域生活移行を痴呆性高齢者を中心にして考える。地域に小規模、多機能型のサービスを作り出していく。
介護保険は標準的なニーズに対するサービスであり、介護保険では提供できない特別なサービスについても整備する必要があるが、中心部分として介護保険は機能する。
国民が保険料を負担するということは重要なメッセージであり、サービスを自分のこととして考え、自分たちで仕組みを支えていくという価値の転換が行われること
が、議論の大きなポイントである。
続いて宮崎課長補佐により、「介護保険制度の現状と今後の方向性」と題する資料に沿って介護保険制度の目指した理念と現状、そして今後の課題についての説明が行われた。概要は以下のとおりである。
介護保険創設時の考えとして「社会連帯」「地方分権」「自立支援と在宅サービスの充実」「利用者本位」「公平な負担と給付」の5つの視点があった。
介護保険制度の実施状況として、全体では利用者が150万人から300万人に増加し、特に在宅サービスの伸びが著しい。また、財政規模も3兆円でスタートして現在5兆円になっており、ニーズに合わせて費用をまかなっている。給付が増えるにしたがって負担も上昇している。
介護保険制度に対する評価は、評価している人が発足時の4割だったが、現在は6割に増えた。
今後の課題としては、「制度の持続可能性」「サービスの在り方」「サービスの質の確保」「予防・リハビリテーションの充実」があげられる。
これらを受けて
現在の要介護認定の仕組みでは身体的な障害以外の多様な障害が評価されていない。これを今後どうするのか。
介護保険は標準的なサービスを提供する仕組みという話があったが、個別ニーズにどう対応するのか。 障害者サービスは個別ニーズの重要性が大きい。
今後、介護保険の費用は高齢化の中で拡大していくと推計されているが、いずれ財源問題にぶつかるのではないか。障害者がその中に入っていくのは不安がある。
介護は日常生活・社会参加・労働のそれぞれの場面で必要であり、介護保険でどこまで担い、それ以外をどうするのかを考える必要がある。
今日の説明では、介護を受けながら地域で暮らすことを"自立"と言っていたが、介護保険の仕組みでは介護を必要としないことを"自立"と呼んでいる。"自立"をどちらの概念でとらえるのか。
などの意見が出され、現在の介護保険の仕組みを前提とせずに、現在の課題をどう介護保険の中で解決し、あるいはそれ以外の仕組みでどう対応するのかについての意見交換がなされた。
今回の議論を踏まえて、次回は12日に再度「介護保険制度の現状と今後の方向性」について、池田省三龍谷大教授から、市民活動として社会運動として介護保険をどうとらえるかをテーマに勉強会を開催するとともに、障害者団体の持つ課題も含めて議論することとなった。
障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年2月12日)の報告
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月12日の午後4時より開催した。
前回の厚労省の話し合いでは、「介護保険の現状と今後の方向性」について高橋紘士氏(立教大学教授)から話を伺い、ディスカッションを行った。今回も、先に池田省三氏(龍谷大学教授)から介護保険の話を伺うとともに、障害者団体の持つ課題も含めて議論することとなった。
前回からの課題であった障害者団体側の今後の検討における共通の認識を作っていくための作業として、23日に勉強会を行うことを確認した。事前に各団体から課題をあげてもらい、障害者団体に共通する課題とそれぞれの団体の固有の課題について、事務局で論点整理をすることとなった。
午後5時からは、村木企画課長をはじめとする障害福祉部と、前回に引き続き老健 局から渡辺企画官(総務課)、宮崎課長補佐(介護保険課)の出席のもと話し合いを行った。
まず、池田省三氏が「介護保険−その思想とシステム−」と題する資料に基づいて話をされた。概要は以下のとおりである。
介護保険の思想と理念は理解されていない。介護保険は普遍主義、自立支援、共助の思想でできている。介護保険のニーズ判定は、個々の要介護度のみで行い、所得や家族の有無とは関係がない。利用者の選択と契約に基づき、行政処分ではない。普遍主義は費用負担ついても適用され、全ての人が1割を負担する。
介護保険は、予算主義(あらかじめ決まった中での配分)から決算主義(出来高による財源確保)に転換した。普遍主義を担保するには決算主義にしなければならない。
在宅サービスを利用している人の金額は支給限度額の約4割だが、それでもドイツより水準が高い。在宅サービスの支給限度額は特別養護老人ホームに入ったのと同じ金額に設定している。また、35万円は平均的な勤労世帯(年収600万円世帯)の可処分所得と同水準である。介護保険では現在の支給限度額ではあまり問題がおきていない。限度額を越える人は市町村が独自にやるか、自己負担でサービスを買っている。
介護保険は全てのニーズをみたせるわけではなく、1割の自己負担できない人、痴呆で契約が難しい人などの問題がある。制度はメインシステムとサブシステムがあって、その補完関係である。介護保険のメインシステムは普遍主義でできていて、そこででてくる問題にはサブシステムが用意されている。
特定ニードへの支援をどうするか。配食サービスは保険給付になじまない。しかし、配食サービスが必要な人がいるので自治体が実施している。軽い痴呆でお金の管理が必要な場合は地域福祉権利擁護事業がある。虐待がある場合、措置で対応することもできる。
自立支援の考え方は、魂の自立が人間の尊厳であるということ、人間は何者にも支配されず、自らの意思で決定する。これを回復するのが介護保険である。これまでの福祉は、家族モデル(依存)と病院モデル(管理)しかなかった。サービスの利用料は無料・低廉ので、あくまでも与えられるサービスだった。介護保険は自己決定が先にあって、必要な社会的な支援が受けられる仕組みである。
従来は、心身機能の低下によって自己決定できなくなり保護になっていた。自己決定を実現することが、介護保険が目指すケアである。自己決定を回復するとケアは上手くいく。良質な介護事業者はそれを考えている。痴呆性高齢者は自己決定がないがしろにされているために、それが問題行動として現れる。痴呆性のケアは自己決定の回復が重要なテーマになる。
ケアの対等関係は、費用を自分で払うという事で担保される。有償ボランティアはお金を払うことで使いやすくなった。障害者の主張するダイレクトペイメントと共通する。
障害者と介護保険が出会えば、支援型の介護ができるので、期待している。支援型介護は高齢と障害とで共通した理解ができる。
自助、互助、共助、公助については、個人ができることを行政が行ってはけない、 市町村ができることを都道府県が、都道府県ができることを国がやってはいけないということ。問題が起きたときにまず解決を迫られるのは本人(自助)で、次に家族・友人(互助)である。しかしこれには限界があり、全てが解決できるわけではないので、次に共助が必要となる。ヨーロッパでは教会が担っていて、日本ではかつては村落共同体が担い、都市化が進む中で企業、労働組合などの職域コミュニティが担ってきた。それでも解決できないことについては行政(公助)の支援で行う。
日本は共助と互助の区別がついていない。措置制度が介護保険に替わったのではなく、介護保険は失われた共助システムを作った。家族は本来の役割に立ち戻る事ができた。介護保険が全てをやるわけではなく、介護保険でカバーできないものについては公助がカバーする。
介護保険料は約3200円。訪問介護は4020円で、介護保険は40歳以上の人が月1回訪問介護をしていることと考えられ、その分を保険料として負担しているということになる。
介護保険は、本来、保険者の規模が大きいほうが財政が安定する。諸外国では全て国が保険者である。しかし、本当の地域ケアシステムは市町村しかできない。北欧型の福祉は市町村が責任を持っており、日本も同じである。国家が責任を持つのでなく、地域がケアをする。考え方によっては、日本はドイツの介護保険を使いながら、北欧システムを実現できている。
続いて、老健局の宮崎課長補佐から前回、障害者団体側からでた質問について、資料をもとに説明がなされた。
前回、自立の理念が2つあるという話があったが、介護保険法の自立の理念は、"その有する能力に応じ自立した日常生活を営む"という意味での自立である。要介護認定の自立は法の理念と意味が違っていて、本来は"非該当"が妥当な表現だと考える。
介護保険制度は4年目を迎え、15年度から要介護認定を改定している。痴呆性の高齢者の認定が低く出ているという批判があったので、改めて痴呆の評価をより適切に出来るようにした。概ね7割のかたが納得してもらえている。また、推計されたケアと実際のケア時間が比例しており、要介護認定のシステムは改善されてきている。
痴呆性高齢者のケアをどうしていくかが大きな問題であり、要介護認定を受ける人の半分は痴呆が見られる。高齢者の1割が痴呆をもつという調査結果もあり、ケアの転換も必要である。痴呆性高齢者のケアは尊厳の保障、生活をもとにケアを組み立てていくという指摘を受け、日ごろ、住み慣れた場を基本としてケアを組み立てていく。介護保険を変えていかないといけない部分である。
支給限度基準額については、平均利用率は概ね35%〜50%であり、限度額を超えた部分については、各保険者で独自に行っている。上乗せを行っている保険者は27保険者であり、約1%である。実施している市町村の数が少ないのは第1号保険者の保険料を財源とするため、保険料にはねかえってくることの影響もある。また、身体障害者手帳をもっている場合は、支援費から給付を受けていることもある。
横出しを実施している保険者は、介護保険の枠内については、市町村特別給付(寝具乾燥、移送サービス、配食サービス等)として115保険者、保健福祉事業(介護者相談、健康づくり事業等)として158保険者である。全体の4〜6%で取り組みとしては多くない。これ以外にサブシステムとして市町村が実施しているところは多い。
これらを受けて、参加者とのディスカッションがなされ、
家族(互助)については、障害者運動は家族介護が得られなくても、重度であっても一人暮らしできるように進めてきた。介護保険のサービスメニューを検討していた
時に、一人暮らしの重度の障害をもつ者のメニューは検討されていなかった。自助と互助がまだ分離されていない問題がある。
障害者が求めるものは社会参加、生活支援であり、介護に限定されない。社会参加のサービスが保険制度になじむのか。
介護保険は、その前に10年間のゴールドプランがあって基盤整備がされてできた。障害者のサービスも、まず基盤整備に取り組むべきではないか。
介護保険もこれから改善されるものであり、支援費と統合してどこまで整理できるのか先が見えない。
社会政策は法律・システム・財政の視点が必要で、障害者福祉は法律が弱い。福祉法が3障害にわかれている、障害認定制度や所得保障が不十分である。財源論だけでは崩れる要因になる。大事なのは扶養義務で、これが公的責任をあいまいにしている。国民的な議論になるが、せめて厚労省の中で自立を理念とするなら扶養義務の問題を考えて欲しい。
などの意見が出された。
質疑の中で池田氏から介護保険と障害の統合については三段階があるということで、「来年、介護保険法が提出されて、その翌年が介護保険の第3期になる。そこに障害者サービスをいれられるかというと無理である。時間的な経過で3つのステージがある。支援費は財政面の問題があり、まずこれを緊急的に財源で支える。次に、サービスの供給体制がおいついていないので、高齢者と障害者のサービス提供者を統合することのメリットがある。第三ステージは保険給付をどうするのかを考え、障害者の吸収合併でなく、対等合併を行う。要介護認定、支給限度額、介護保険でできないサービスをどうするかを考える。そういう意味の三段階の統合のステージがある。」との考えが説明された。
前回、今回と2回にわたって介護保険を中心とした議論がなされた。これを踏ま え、次回は19日に介護保険と支援費の関係について、具体的に障害者団体側と厚労省で議論していく予定である。
(8団体文書は以上)
(以下は障害連FAXレター2月19日情報より)
第4回の介護保険勉強会が行われる
厚労省障害保健福祉部と障害8団体(日身連、JD、DPI、全日ろう連、日盲連、脊損連合、育成会、全家連)との介護保険に関する勉強会の4回目が、2月19日夕方厚労省で行われた。この日も、老健局が同席した。
この日は、障害保健福祉部の企画課より、障害者保健福祉施策と高齢者保険福祉施策の制度上の比較を中心に説明があり、質疑応答となった。
説明の中で、「介護保険は市町村を単位とするサービスとなっており、より身近なところで支えあうシステムとなっている」とした。そして、「市町村の介護認定審査会が要介護認定を行い、ある程度客観的判定が行われているのではないか」とした。
「支援費制度にしろ、介護保険にしろ、今後の障害者介護施策については、社会的合意を得る上でも客観性をもった基準としなければないのではないか」とも述べた。
さらに「検討会の課題ともなっているが、今後、長時間介護が必要な人たちについては、それはどういう人たちで、どういうサービスが必要であるか、ということを明らかにすることが求められているのではないか」とした。
団体からは「客観的基準ということで、上限が設定されることがあれば、地域での自立生活が困難になってしまう人が多くなってしまう」という発言や、「介護保険になったとき、
施設から地域に新しく出る障害者にきちんとしたサービスが保障されるか疑問である。かえって今の介護保険では要介護5の半数以上が施設で暮らしている実態をみたときに、障害の重い人たちは、施設に逆戻りせざるを得ない状況になってしまうのではないか」という疑問の声が次々と出された。
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