介護保険と支援費の統合問題特集
介護保険と支援費の統合の結論、延期
1月には、厚生労働省障害保健福祉部長は、3月までに結論を出したいとの趣旨の発言を行っていましたが、主要障害者8団体の合意が得られず、時期がずれ込んでいます。審議会の障害部会や介護保険部会のスケジュール、介護改革本部のスケジュールから、6月までが、めどと考えられています。
審議会の障害部会では、介護保険統合賛成の委員(精神障害関係の事業者など)が大幅に増員され、月2回ペースの集中審議が行われています。
ヘルパー2階建て制度になる可能性が高まる
介護保険が1階部分で、障害ヘルパーが2階部分に
厚生労働省の障害保健福祉部長、障害福祉課長、1月22日に2階建ての趣旨を発言
新聞でも報じられていますが、厚生労働省の塩田障害保健福祉部長と高原障害福祉課長は1月22日にそれぞれ、広島市と滋賀県のシンポジウム会場で、長時間介護の必要な障害者に対しては、介護保険で足りない部分は障害ヘルパーを上乗せして2階建て制度で対応するという趣旨の発言をしました。
障害保健福祉部の内部では、長時間必要な人にはきちんと対応していくという合意がなされたため、このような発言が表に出たということです。現時点で2階建て方式で行くという合意が完全にされているわけではありませんが、現段階で長時間介護に対応可能な実現可能性のある方法は2階建て方式が最も現実的ということのようです。おそらく、今後は2階建て方式の中で、複数の方式を検討し、その中で制度をどのような形にしていくかの検討が進むものと思われます。
現状の2階建て制度は
現状の制度では、65歳以上の全身性障害者などは、介護保険を1階として、その上に支援費のヘルパー制度を2階として使っています。
この方法は2000年度の介護保険開始時にはマイナーなイメージでしたが、2003年度に支援費制度が始まったことにより、今では、全国の障害ヘルパー利用者の17%は65歳以上となっており、介護保険に上乗せする形で障害ヘルパーを2階建て利用しています。
この2階建て方式を、「65歳以上」から、そのまま「全年齢」に拡大するという方法は、現行の制度なので、1つの大きな案となります。(以下、「現行2階建て方式」と記述します)。
しかし、この「現行2階建て方式」では、全国3300市町村の9割の市町村で、介護保険のヘルパー時間だけで充足してしまい、2階部分の予算が0になってしまうという大きな問題が発生します。財政難の折、予算が0になったものが復活することはまずありません。
つまり、この「現行2階建て方式」では、日本の9割の市町村で、今後、1日3時間以上介護の必要な障害者は、施設や親元から地域に出ることが永久にできなくなってしまいます。
別の方法の2階建て制度
一方、2階部分の制度を「新たな時間数決定方式」をもつ障害ヘルパー制度として1から組み立てなおす方式も、今後、そのなかで複数の方法を検討されることになります。
その中には、「このような障害者ならこの時間数を2階部分で出すべきである」と全国共通の時間数決定のガイドラインをつくり、それを遵守するように市町村にお願いしていく・・・という方法もあります。
この方式は、現在、長時間の利用者がいない地域でも、たとえば、家族と同居の最重度全身性障害者でも、ある程度はヘルパー利用時間を強制的にのばす効果があるかもしれません。財源は、施設支援費予算が介護保険に入るので、税金負担が半分で済むので、その浮いた予算を2階建てヘルパー制度にまわすことが可能です。そうすれば、予算は0ではありませんから、重度障害者が突然1人暮らしをはじめても、補正予算などで長時間のヘルパー時間を確保できる可能性もあります(ただし、2階部分の予算規模が、現在の障害ヘルパー制度より小さくなっていれば、長時間のヘルパー時間が受けられる可能性は現行制度よりも低くなる)
- この方法の欠点は、
- (1)市町村が国の言うことを無視して2階建て制度を行わない可能性があること。
- (2)三位一体改革で、数年後に国の補助金はすべて廃止され、補助金システムそのものがなくなってしまう可能性があり、そうなると、自治体は2階建て制度はやらなくなること。
- (3)全国共通の時間数決定のガイドラインというものは、現状の先進自治体(24時間介護保障の実現している自治体)の時間数決定の考え方よりどうしても(かなり)水準が下がってしまう。
- (4)今までは、1人暮らしをはじめた最重度障害者が市町村と交渉をし、命にかかわるという現状の中で市町村も補正予算を組んで、ヘルパー制度を伸ばしてきたという全国での実績と歴史があるが、この方法で予算がとれなくなる可能性がある(水準の低いガイドラインを作ると、それ以上に制度が伸びなくなる)。
ということです。
(1)の対策として、全国の市町村はその障害者の人数を把握し、数値計画を作り、それに基づき予算措置をしていく・・・ことを法律で義務づけするという方法があります。(強制的な義務付けは困難を乗り越えないとできない)
(2)の対策としては、2階建て部分も介護保険の法律の介護保険特別会計の中に入れてしまうという方法があるかも知れません。(かなり難しい)
(3)の全国共通ガイドラインですが、最高1日24時間の人数をどう規定するか(現状では24時間保障の市でも10万人に2〜3人程度)、12時間の人数をどう規定するか、8時間の人数をどう規定するか、などが予算との関係で決まってしまいます。施設予算が半分浮くといっても予算は有限ですので、すべての要望に対応はできません。それをどうするか、検討課題です。また、家族と同居の障害者に手厚くすると、1人暮らしの障害者に十分な時間数が出せなくなり、24時間ヘルパーを使えるのは、人工呼吸器利用者だけになってしまいます。現在24時間介護保障の市で毎日24時間のヘルパーを使っている脳性まひ・頚損・筋ジスなどの障害では24時間は利用できないことになります。
(4)の問題も、交渉して伸ばしていけるような対策が必要です。 果たして、これらの問題が解決できるかどうかが、課題となります。
お知らせ
全国障害者介護保障協議会の交渉団体会員募集(正会員にあたる)
- 介護保険との統合問題の一般に出せない情報など、交渉団体会員専用メーリングリストで専用情報を配信し、ご意見を随時募集します。
- 障害当事者団体で自立生活者がいる団体(個人も団体として加入できます)は交渉団体会員に変更をお願いします(申し込みはお電話・メールか、資料注文用封筒で。)
- 相談会員と同じサービスを3名に対して1団体6000円で行います。
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(試算) 全国で1830億円(国予算915億円)で最高20〜24時間のヘルパー制度が可能
現在の支援費入所施設予算は(国・地方合わせ)約6250億円であるが、上限なしのヘルパー制度を運用している自治体の事業費(925万人で130億円)を全国人口比で考えると1830億円となる。施設予算の3分の1以下ですむ。
下記表の22自治体(合計人口924万人)では合計130億円の事業費(15年度11ヶ月実績)で、最高20〜24時間介護保障の制度が運用されている実績がある。1億2000万人の人口に当てはめると、1830億円(1年間=12ヶ月事業費)で最高20〜24時間のヘルパー制度が全国で可能。(国予算は2分の1負担なので、915億円でよい。それに対し、現在のヘルパー国予算は約400億円。入所施設国予算は3127億円)。
なお、東京都内は他県から引っ越してくる1人暮らしの長時間介護の必要な障害者が多いので、全国平均より多く費用がかかる傾向がある。
最高20〜24時間の障害ヘルパー制度がある市区の予算総額
*最高20〜24時間/日の介護保障の実現している市区
市区町村名 |
15年度ヘルパー事業費 |
人口 |
政令指定都市2市
(2003年4月から24時間保障開始) |
4,438,371,814 |
3,664,973 |
東京都内の20市区
(93年〜2002年度に24時間介護保障開始) |
8,546,845,223 |
5,583,478 |
合計 |
12,985,217,037 |
9,248,451 |
(16年度国庫補助要望資料より作成。11ヶ月予算である。)
(上限なしでヘルパー制度を運用している市町村数は東京都以外はもっと多い(政令市は 6市、一般の市は人口8万人台から各地で点在する)が、 人口の大きい政令市2市の
み計算した。)
(2004年3月22日 福祉新聞より)
障害者85%が反対 支援費と介護保険統合"待った" JIL調査
当事者の85%は支援費制度と介護保険の統合に反対――。
全国自立生活センター協議会協議会(JIL‐中西正司代表)が当事者対象に行った緊 急アンケートで明らかになった。「統合に賛成」は、3%だった。「分からない」と
した人も大半は「介護保険も支援費も先行きは不安」と見ており、「統合しか術はな い」といった厚生労働省の論調に"待った"をかける要素となりうそうだ。
緊急アンケートはJILが2月下旬からインナーネット上で行ったもので、2週間と いう短期間ながら六百八十人の回答を得た。「介護保険と障害者施策についての論議
をどう思うか」と理由(複数回答)も問いかけたところ、全体の85%に当たる五百七 十五人が「統合に反対」と答えた。うち90%が「そもそも障害者と高齢者の介護
ニーズが違う。同一のシステムに乗せるには無理があるから」と指摘している。
介護保険に統合された場合の生活を想像し、反対派は「社会参加が保障されなくな るのでは」「要介護認定のようにADLで判定されれば利用時間は切り下げられるので
は」などの不安を示している。「介護保険には支給限度額があるから」「保険料や一 割負担が払えない」などの意見が多い。
また、介護保険制度がリハビリを重視して要介護度を軽くすることで介護給付費を 抑える方向に進んでいることから、「社会生活のために必要なだけ介助者を付けると
いう障害者の考え方とは方向性が違う」という意見が多い。「介護保険の財源も将来 的には行き詰まる可能性が高い」と見る向きもある。
さらには、「分からない」と答えた七十人(全体の10%)のうち四十三人はその理 由を「介護保険制度と支援費制度のどちらも先行き不安だから」とした。賛成とも反
対とも言い切れなかった様子が分かる。
一方の賛成派は二十二人で、全体の3%だった。理由は「支援費のサービスが毎年 減っていくことを考えると、介護保険で4時間分の財源が確保されることが第一」と
した人が10人で最多。「今のままの介護保険に吸収されるようなら反対だが・・・」 と前置きした上で、「障害者が入ることで介護保険制度が良くなるなら賛成」「介護
保険で精神障害者のサービスが始まるなら、支援費制度に精神障害者が入るまで待つ より良い」といった意見もあった。
ただ、議論の入り口でも賛否両論ある。アンケートでは、「障害者サービスを国の 責任ではなく保険で行うことは根本的に誤り」と統合の発想そのものに批判的な声が
大多数だったが、「統合して国民的課題としてのあるべき介護制度を構築すべきだ」 との声もあった。
この問題をめぐっては、多くの当事者らが「財源が厳しいから統合を」と厚労省か ら提案された印象を持っており、主要な当事者団体も慎重に議論すべきとの姿勢を貫
いているのが現状。JILは支援費制度を評価しており、「財源が安定しないのは在宅 支援が義務的経費ではなく裁量的経費だから。財源の確保は、施設と在宅で8対2の財
源是正からだ」と財源論にはクールだ。
第5回(2004年2月27日) 障害者8団体と厚生労働省障害福祉部との話し合いの報告
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月27日の午後4時より行った。
前回の厚労省との話し合いでは、介護保険と支援費の関係について、支給限度額や 要介護認定、ケアマネジメントに関する問題が話し合われたことを受けて、そのやり
とりの中で疑問点があるのでさらに議論を深めたいという意見がだされた。 また、滋賀県で開催されたアメニティフォーラムや新聞報道などで厚労省が「全身性
や強度行動障害など特別のニーズがある人に対しては、税財源で上乗せのサービスを 行う」と発言していることが報告され、この点についても議論していくことになっ
た。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と話し合いを 行った。
最初に、特別のニーズに対する上乗せサービスについて意見が交わされた。障害者 団体側からは、
- 介護保険に税財源でサービスを上乗せする仕組みにした場合、生命維持に必要な基 礎部分である介護保険を越えるサービスを市町村が行わない可能性が高い。
- 介護保険が基礎部分になった時に支援費制度はどうなるのか。
- これまでの政策を転換して、基礎部分を市町村が担い、重度障害者などの基礎部分 を超えるサービスは国が責任を持つという考え方はどうか。
- 介護保険の導入の時に、介護保険以外のサービスはあまり増えなかった。障害者を 統合して、介護保険で対応できないサービスを確保できるのか。
などの意見が出された。
これに対して厚労省からは以下のような考えが示された。
- 財源は、税・介護保険・医療保険・自己負担しかないので、介護保険の上乗せを考 えた場合、税で行うことが有力な考え方である。
- 現在の65歳以上と40歳以上の特定疾病の障害者に行っているように介護保険を基礎 にして支援費制度を上乗せで使う方法をとることもできるし、それ以外により良い方
法があるかについても考えている。
- スウェーデンのように市町村が基本的な部分を行って、それを越えるものを国が行 うという考え方はわかるが、国が全額負担する場合、極めて限定された人に限定され
た使い方になり、自由度は狭まるのではないか。
- 介護保険の導入の時は、介護保険本体を大きくしてそれ以外のサービスを増やすと いう視点はなかった。障害者の場合は事情が違って、介護保険以外のサブシステムが
重要だと考えている。
これらのやりとりを受けて、二階建てをとる場合の具体的な仕組みとその将来的な 安全性が担保されないと、地域で重度な障害をもって生活している人の不安は拭えな
いので、もっと判断のための材料が欲しいということを伝えた。
続いて、厚労省よりニーズを顕在化させる仕組みとしての市町村障害者計画の必要 性について資料をもとに説明がなされた。高齢者には、市町村に老人福祉計画、老人
保健計画、介護保険事業計画が義務づけられており、市町村が計画策定を通じてニー ズを把握するよう仕組まれている。市町村障害者計画は現在義務づけされておらず、
計画を策定しても数値目標まで掲げているところは少ない。今後は市町村障害者計画 を義務づけし、市町村障害者計画を積み上げて国の障害者基本計画を作っていくこと
などの必要性について議論がなされた。
また、前回から議論されている特別のニーズへの対応としてどういう介助を必要と している人にどれくらい費用がかかっているのかという論点については、障害者は高
齢者に比べて数が限られており、現在の障害者の統計や支給決定の内容から十分把握 できるのではないかという意見もだされた。
知的障害者の分野からは、グループホームについて支援費では出身地の市町村が支 援費を支給しており、介護保険ではグループホームのある居住地の市町村が被保険者
になっていることの違いに対する懸念も示された。
次回は3月5日(木)17時から、引き続き介護保険と支援費との関係を考えると ともに、障害福祉施策の立場から研究者の北野誠一氏からの意見も伺う予定である。
第6回(2004年3月4日) 障害者8団体と厚生労働省障害福祉部との話し合いの報告
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを3月4日の午後4時より行った。
今回は研究者の北野誠一氏の話を伺うとともに、前回からの厚労省との話し合いの 中での疑問点についてさらに議論を深めていくこととなった。
また、3月3日に開催された社会保障審議会障害者部会の中でも介護保険と障害者 施策についての議論がなされており、その報告も行われた。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局から 渡辺企画官、宮崎課長補佐の出席のもとで話し合いを行った。
最初に、北野誠一氏から「支援費制度と介護保険制度の展望」とした資料をもとに以 下の話がなされた。
- 支援費と介護保険を語るときに、ケア・介護・介助・支援・パーソナルアシスタン トという言葉を用いるが、人によって言葉のイメージが違っている。それぞれの言葉
の定義をした上で議論しないと内容が深まらない。
- 介護保険法は“介護”の明確な定義がなく、サービスのメニューを列挙することに とどまっている。知的障害者福祉法が“知的障害者”を定義していないのと同様、介
護を定義せずに法律が成立していることが様々な問題を生んでいる。
- 世界障害者問題研究所ではパーソナルアシスタントの定義を「本人が選んだ生活に おいて、通常は本人がする(はずの)ことを、障害があるために他者が直接援助する
こと」としており、この定義は全ての障害者・高齢者の持つニーズに対して普遍的な 定義である。
- “自立”概念はさらに違っており、共通の定義を作る必要がある。「福祉自治体ユ ニット改革への提言」での自立概念は“残存能力の維持・向上”で医療・リハビリ
テーション的な定義である。一方、10年前に出された「高齢者介護・自立支援システ ム研究会報告書」の自立論は当時としては画期的であり、重度の障害を持つ高齢者も
外出し、社会参加し、生活を楽しむことが介護の基本理念とされている。ただ、在宅 での生活のイメージが中心で、障害者のように社会にでていって活動するというビ
ジョンが弱かった。このビジョンをもたないと高齢と障害をあわせたサービス、地域 生活支援保険には結びつかない。
- 今、厚労省では様々な検討会をやっているが全体のビジョンを示すことが重要であ る。生活保護の検討会では、扶養義務規定、他人介護料、住宅扶助の単給、救護施設
の問題がある。障害者者総合福祉法の制定も必要である。医療保険も見直されてお り、介護保険と統合して高齢者医療介護保険の構想もあり、この構想と高齢者と障害者の統合の構想はどのような関係になるのか。
また、権利擁護についても、消費者保護基本法の改正が検討されており、団体訴訟 制度の導入が検討されている。この流れで、障害者差別禁止法も真剣に議論すべきで
ある。知的障害者入所更生施設の指定基準にも地域移行計画の作成が義務付けられ た。これの実効性を担保するためには差別禁止法が重要である。手話通訳などの情報
保障にとっても差別禁止法は重要である。
費用負担で応益負担を求めていくなら、所得保障がセットであり、就労支援を進め ていく必要がある。法定雇用率と差別禁止法は法的に両立できる。
- 介護保険の問題については、要介護認定の仕組みと介護給付額の2点が決定的な問 題である。要介護認定で、痴呆、知的障害者、コミュニケーションの支援をするとし
たら、細かい設定が必要となる。また、要介護認定は施設での介護時間の調査であっ て、施設なら入浴介護は食事介護より時間が短くてすむが、在宅では入浴のほうが時
間がかかる。
- 支給限度額の中でのサービスの選択となると、痴呆専用デイサービスは単価が高く て利用時間がすくなるという質と量がトレードオフになる。
- 要介護度5の認定に、一人暮らしの重度障害者を想定していたら、もっと支給限度 額は高くなっていたはずである。介護保険の守備範囲を明確にして、一人暮らしの重
度障害者をモデルとして想定しないなら、他にどういうシステムを想定するのか示す べきである。
- グループホームの単価を他の国の単価と比較した場合、アメリカではグループホー ムの単価は12通りあり、一番高い単価は100万近くになる。民間のサービスがグルー
プホームをやっているので、単価が低いと契約をしてもらえない。低い単価だとサー ビスの質が落ちて、人権侵害がおこる。
しかし、アメリカ方式にすると、同じ単価(同じ障害)の人ばかりになって、ノー マライゼーションに反する。日本のように、個人ごとに支援費を出すのは世界的にす
ぐれた制度である。グループホームでも一人一人のニーズに応じて、ホームヘルプ、 ガイドヘルプをつけられる日本方式のよさをいかして欲しい。
- ケアマネジメントの問題は、民間の事業所がケアマネジメントをやっており、公正 中立を担保できていない。また、知的障害者、聴覚・視覚障害者、精神障害者、重度
身心障害者の全部をケアマネできる人はいないので、様々なものがあって消費者に選 択をまかせるのがいい。カナダのブリティッシュコロンビア州は幅広いコンサルティ
ングの仕組みをもっており、サービスの自己管理モデルから一部自己決定・自己選択 モデル、専門職への委任モデルまで、幅広い仕組みをもっている。日本の介護保険の
ケアマネジメントは多くある選択肢の一つであり、当事者主導の自立支援マネジメン トの可能性も問われている。
続いて、間課長補佐より、資料に基づき費用負担について、措置制度・精神障害者 ・支援費制度・介護保険を比較しながらの説明があった。
措置制度、支援費制度はサービスにかかる費用の負担は援護の実施者である市町村で あり、市町村に対して国及び都道府県が補助をする仕組みになっている。利用者負担
の範囲は障害者本人と扶養義務者である。負担額は応能負担で費用徴収表によって決 まっていて、限度額がある。
介護保険は保険給付については保険者である市町村であり、保険給付以外が利用者負 担となる仕組み(保険給付が9割であるので、残りの1割が利用者負担)になってい
る。利用者負担の範囲は利用者のみである。負担額は応益負担であり、介護保険の利 用者負担にも限度額がある。
応能負担の仕組みでは扶養義務者からの費用徴収の問題がでてくる。また、サービ スを使っている人と使っていない人との差をどう考えるかも問題である。
高齢者サービスが措置制度であった時には応能負担であり、多くの人は利用者負担 を払っていなかった。介護保険導入時には、それまで使っていた人で生計中心者が住
民税非課税者の場合は、1割の利用者負担を3%、6%と段階的に引き上げる経過措 置を行った。さらに生計中心者が市町村民税世帯非課税者等の場合に、社会福祉法人
が市町村と相談して利用者負担を半分もしくはゼロにでき、その一部を国と都道府県 が補填する仕組みも作った。また、生活保護の介護扶助のみ適用する単給の仕組みも
ある。ストック、フローはないが、生活保護を受けるまででもないという人をどうす るかは課題で、所得保障との話とも絡んでいる。
その話を受けて、障害者団体側と厚労省とで以下の意見交換がなされた。
障害者団体からは
- 北野さんが話された「介護」「自立」の定義や要介護認定、ケアマネジメントの指 摘をどう考えるか。
- 介護保険の利用者負担は本人負担のみと言うが、利用者負担の減免では生計中心者が 非課税という条件があり、扶養義務の考えがでてくる。支援費は扶養義務者の対象に
親が外れたが、介護保険では親元で暮らす人は減額にならない。
- 地域生活移行をどうするかが重要な政策課題であって、親元から、施設から地域へ 具体的にどういう道筋がつくれるのか。
などの意見がだされ、これに対して厚労省からは以下の意見がだされた。
- 「2015年の高齢者介護」の中では痴呆性高齢者のケアを考えて、これからの介 護は生活全体を見ていくとしている。サービス体系、ケアのメニューについも考えて
いかなければならない。若い障害者と高齢者を比較すると社会に対するかかわり方は 違うかもしれないが、高齢者も外出や社会的自立の観点は必要である。
- 要介護認定の仕組みは客観的にニーズを図るものであり、介護保険の大きな成果で ある。その基準は障害者を考える際にはデータをもとに見直す。高齢者介護においても、緊急時の対応、医療ニーズへの対応などの課題があって試行錯誤している。
- ケアマネジメントの課題は認識として持っていて、一人のケアマネージャーがあら ゆる障害のマネジメントを行うのは難しいのではないか。専門家がチームを組んで解
決する体制が重要である。
- 減免には税をあてているので、扶養関係が問われてくる。住民税非課税と生活保護 世帯の間にもいろんなかたがいるので、障害者をいれる場合は低所得者をどう考える
かを議論しなければいけない。
- どの制度かを問わず、地域生活支援を進めていくことは重要である。現在、施設に 入っている人が施設を出る時は、皆さん並々ならない決意をしている。そのきっかけ
は、地域での障害者の仲間と出会いであり、そういった機会をどう作り、また、出た いと思った時のサポートやシステムをどう作っていくか。施設の人が外にでて、地域
の人と交流する仕組みをガイドヘルプやそれ以外の方法も含めて考えないといけな い。
これまで厚労省との6回にわたる討議において双方の意見交換を行ってきたが、今 後も引き続き、週1回のペースで話し合いを行うこととなった。次回は、障害者団体
側で現時点での質問をとりまとめて、それをもとにさらなる議論を続けることとなっ た。次回は3月11日(木)を予定している。
第7回(2004年3月11日) 障害者8団体と厚生労働省障害福祉部との話し合いの報告
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを3月11日の午後4時より行った。
前日の10日の午前中に障害者8団体の会合を持ち、各団体の検討の状況や厚労省 との話し合いを今後どのように進めていくべきかを意見交換したところ、各団体とも
判断するための必要な情報が不足しているという認識では共通し、それぞれの団体の もつ課題を集約して質問として厚労省に投げかけていくこととなった。この話し合い
を受けて、事務局で「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」「今後の障害者施 策の基本的な方向性に関する質問事項」の2種類の質問書を作り、本日の話し合いで
厚労省に提出することを確認した。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局から 渡辺企画官の出席のもとで話し合いを行った。
最初に障害者団体側から、「これまで話し合いを続けてきたが、もう少し具体的な 内容が見えてこないと判断をすることができない。障害者8団体の会員だけでなく、
多くの障害者と関係者がこの議論に関心を持っている。8団体で現時点の課題につい て集約して質問書を作成したので、現段階での考えを示していただきたい。」と要望
を述べるとともに、2つの質問書を提出した。
ついで、JDの太田氏より「今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事 項」、DPIの中西氏より「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」についての
内容の説明を行った。
これを受けて厚労省からは、障害者施策の基本的な方向性については、
- サービスの給付を世帯単位から個人単位に変えていくことについては、民法との関 係があって障害者だけ個人単位にするということはすぐにはできないが、方向性とし
ては日常的なサービスを利用する、負担することについては個人単位にじょじょにシ フトしていくのではないか。個別法が変わる中で民法が変わるということもあるだろ
う。
- 障害の定義については、個別の法律についてはその法の目的にあった形で障害を定 義していくことが良いのではないか。これまでのように、障害者手帳にサービスが付
随するのではなく、必要がある人にサービスを給付することが重要だと考える。
- 所得保障については就労施策が重要であり、現在、厚生労働審議官をトップに省内 で検討会を行っている。また、利用料負担についての低所得者対策はしっかりやるべ
きだと思う。無年金問題についても坂口大臣の私案もでて、現在検討している。
- 住宅については所管の省庁と意見交換もしており、福祉のサポートについても明確 にしながら、具体的に政策のイメージを固めていこうと動いている。
- 総合福祉法については、三障害で同じ施策を進めていく中で、もっと具体的な法律 が見えてくるのではないか。特に精神障害者の福祉が課題で、現実的な積み重ねをし
ていくことが必要ではないか。
介護保険と障害者施策の統合に関する質問については、
- 社会保障審議会の介護保険部会では被保険者の問題は4月末に議論する予定であ る。委員から障害者部会での議論について聞きたいという意見もでている。介護保険
も自治体、健康保険、事業者などの様々な関係者がいる。今の段階で個々のサービス をどうするかは決まっていない。現行の15種類のサービスに加えて、「2015年の高齢
者介護」の報告書にもあった痴呆性高齢者へのサービス、小規模・多機能サービスな ども検討する。介護報酬報酬と関係するところが決まるのは2006年になる。
- 理念の問題も、介護保険は「自立支援」がキーワードで始まったが、これからはそ れに加えて「尊厳」をキーワードとしていく。要介護状態から抜け出すことだけでな
く、介護サービスを受けながら日々の生活を過ごすことを考え要介護の状態での尊厳 を支える方向で介護保険を見直していく。高齢と障害の目指すところは共通してい
る。
- 要介護認定についても、客観的なニーズ判定のシステムは必要であるが、その基準 が変わらないかというと、去年も痴呆性高齢者に対応できるように変えている。障害
にあったシステムを実証データをもとに段階的に作っていく。
- 授産については日中活動の場から就労の場まで多様な活動をしている。その中身を 整理して、介護保険だけでなく就労支援施策とも絡めて検討していくことになる。
- ガイドヘルプは重要な制度であり、使いやすさも含めてどのような形が良いのか考 えている。ガイドヘルプだから、社会参加だから介護保険に入らないということでは
ない。
- 手話通訳については、通訳者の人材がいないという声もいただいていて、養成の問 題とも関係している。
- 精神障害者の医療と福祉の範囲については、今の精神障害者施策は、本来は福祉で 支えるところまで医療で支えており、現在の精神医療の一部が介護保険に移ることも
あるかもしれない。精神障害者のサービスの在り方を考え、地域に戻るためのしか け、サービス体系を含めて見直しを図る。 ・補装具や日常生活用具については議論が十分ではないが、補装具はそのかた個人に
あうもので、介護保険は標準的なものをレンタルしている。現状でも個々人にあわせ たものが必要な場合は補装具をだしている。
- 団塊の世代が高齢者になってくると、高齢者も障害者と同じように権利として主張 するようになる。今の障害者サービスのノウハウも高齢者に必要となり、サポートの
レベルも変えていかないといけない。障害者の現場の実践の中で磨かれてきたものが 高齢者のケアにいきると思う。
などの意見がだされた。
今回議論できていない点も多くあり次回も質問書の事項について議論するととも に、さらに自立生活センターと高齢者生活協同組合とで行った共同調査の結果から障
害者と高齢者のサービス利用の違いについても議論することとなった。
(以下、当日提出した2種類の質問書)
平成16年3月11日
厚生労働省 障害保健福祉部長
塩田幸雄 様
今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事項
平素より障害者福祉の向上にご尽力いただき感謝申し上げます。
ご承知のとおり、2000年にわが国の社会福祉制度は大きな転換点を迎えました。社会福祉基礎構造改革のもと、それまでの措置制度から「契約」による福祉サービスを提供して、提供者と利用者の対等な関係を構築し、利用者主体の制度を作るという、方向性の大きな転換がはかられました。その制度上の仕掛けとして「支援費制度」が今年度より施行され、様々な改善すべき点はあるものの、制度の利用当事者からは高く評価されています。
しかし、昨年末ごろより、制度の基礎的な理念の問題を抜きにした財政的な論議から、障害者施策と介護保険の統合が言われ始め、最近ではマスコミ等でも大きく取り上げられています。
私たちはこの問題に関連して、厚生労働省側と様々な意見交換の場を持ってきましたが、話の中身が介護保険統合問題に終始し、施策を支える基礎的な理念や展望が全く見えてきていません。介護保険制度が障害者の地域生活や社会参加を保障するものとなりうるのかという点に関して大きな疑念を持っており、財政論のみの理念なき統合の議論をみると、政府の障害者施策の方向性について非常に危惧せざるを得ません。
こうした問題意識から、障害者施策の基本的な課題について以下のとおり要望いたしますので、できるかぎり早急にご回答下さいますようお願いいたします。
記
1. 障害者政策の給付単位について、障害者の自立した地域生活を推進するために、世帯単位から個人単位に変更すること。
2. 障害の定義・認定のあり方については、いわゆる三障害だけではなく、あらゆる障害を包括できるものにし、日常生活や社会生活の支障の度合いをきちんと反映できるものとすること
3. 憲法に保障された基本的人権を実質的に保障するため、障害者の年金政策など、所得保障をきちんと行うこと。特に無年金障害者をなくすための施策を早急に行うこと
4. 脱施設化を進め、地域生活を支援していくため、公営住宅の整備、グループホームなどの整備、家賃補助の制度化、バリアフリー化に向けた改造施策などの多様な住宅政策をとること
5. わが国における障害者の劣悪な就労状況を改善するため、多様な就労の場を用意し、ひとりひとりに合った就労支援システム、社会参加システムを構築すること
6. 国の障害者施策の土台となる包括的な社会サービス法、あるいは総合的な障害者福祉法などの制定に向けた研究に着手すること
要 望 団 体 |
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社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 |
会長 兒玉 明 |
日本障害者協議会 |
代表 河端 静子 |
特定非営利活動法人 DPI日本会議 |
議長 山田 昭義 |
社会福祉法人 日本盲人会連合 |
会長 笹川 吉彦 |
財団法人 全日本聾唖連盟 |
理事長 安藤 豊喜 |
社団法人 全国脊髄損傷者連合会 |
理事長 妻屋 明 |
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 |
理事長 藤原 治 |
財団法人 全国精神障害者家族会連合会 |
理事長 小松 正泰 |
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平成16年3月11日
厚生労働省 障害保健福祉部長
塩田幸雄 様
介護保険と障害者施策の統合に関する質問
日頃より障害者福祉の向上にご尽力いただき感謝申し上げます。
さて、介護保険と障害者施策の統合の是非について、1月29日から6回にわたる検討の場を障害者8団体と厚生労働省との間で持ってきました。しかしながら、まだなお多くの課題があり、さらなる検討が必要であると考えおります。また、私たち障害者8団体の会員のみならず、多くの障害者及びその関係者もこの問題について大きな関心を持っています。つきましてはこれまでの検討の内容を踏まえ以下の質問をさせていただきますので、現段階におけるお考えを早急に示していただけますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
記
(全体施策との関係)
1. 介護保険を障害者施策に適用する場合、現行の全ての障害施策について、介護保険の対象になるもの、支援費の対象となるもの、措置の対応となるもの、その他の各種施策での対応になるものがあると考えられるが、その全体像についてどう考えられているのか。
一例としてあげれば、
・支援費の居宅サービス・施設サービス
・通所授産施設・小規模通所授産施設・小規模作業所、就労支援施策
・ガイドヘルプ(移動介護)
・手話通訳
・日常生活用具、補装具
・更生医療
・精神障害者の福祉と医療との範囲
など、現行の全ての障害者施策について示していただきたい。
2.介護保険を障害者施策に適用した場合、支援費制度はどうなるのか。
3.障害者の地域生活支援システムという観点から、介護サービスを底上げしていく展望があるのかどうか
4.介護保険(メインシステム)及び介護保険以外の施策(サブシステム)の組み合わせについて、高齢者施策の現状では介護保険以外のサブシステムが十分機能していない。介護保険を障害者に適用した場合、サブシステムは高齢者施策以上に重要になってくるが、これについてどのように考えられているのか。
(理念について)
5.現状の障害者施策と介護保険において、「自立」「社会参加」などの概念が違うと思われるが、これについてどのように考えられているのか。
6.介護保険を障害者施策に適用した場合、今後の施設からの地域生活移行についてどのような方向性・展望をもたれているのか。
(利用者負担について)
7.障害者を統合する場合に保険料や利用者負担の低所得者に対する方策について、現行より新たなものを考えているのか。
(申請・契約などの利用援助について)
8.視覚障害者・聴覚障害者については、支援費においても手続き支援、コミュニケーション支援が不十分であり、申請や事業者との契約ができないためにサービスを利用しづらい状況がある。現行の介護保険には、手続き支援、コミュニケーション支援の点でさらに不安があり、これついてどのような対応を考えられているのか。
(要介護認定について)
9.介護保険の79項目のアセスメントでは、全身性障害・知的障害・精神障害・視覚障害者・聴覚障害者・言語障害等、多様な障害のアセスメントを行う際に十分ではないと思われるが、これについてどう考えられているのか。
また、障害者にとって重要な社会参加のニーズのアセスメントについてどう考えられているのか。
(ケアマネジメントについて)
10.現行の障害者ケアマネジメントと介護保険の居宅介護支援では理念・手法・従業者の養成などに多くの違いがあるが、これをどのように考えられているのか。
11.サービスがケアプラン通りに行われる介護保険に比べ、支援費のサービス利用は比較的自由度が高くなっているが、これについてはどう考えられているのか。
(支給限度額について)
12.介護保険の支給限度額ではサービスが不足する障害者がでてくるが、この対応として具体的にどのような方策が講じられるのか。
税による二階建ての仕組みが検討されているという報道もあるが、税による二階建ての仕組みをとる場合、税部分の財政安定化を図るために具体的にどのような方策が講じられるか。
13. 要介護認定が仮に3ないしは4の場合であっても、税による二階建てサービスが展開し得るのかどうか
(ホームヘルプサービスについて)
14.介護保険ホームヘルプは本人への支援のみに限定されるため家事援助の不適正事例が定められているが、障害ホームヘルプでは障害者が自立して生活するための援助が目的のため子育て支援や家族も含めた家事援助も認められている。これについてはどう考えられているのか。
15.視覚障害者の透析利用者の身体介護を伴うガイドヘルプについて、介護保険の中でどう対応するのか。
16.現行では精神障害者のホームヘルプサービスの認定に医者がかかわっているが、介護保険ではどうなるのか。
17.介護保険ではホームヘルパー資格3級以上を必要とするが、支援費では日常生活支援、ガイドヘルパー(視覚障害・全身性障害・知的障害)の障害独自の資格制度があり、これについてはどう考えられているのか。
(グループホームについて)
18.グループホームについて支援費では出身地の市町村が支援費を支給しており、介護保険ではグループホームのある居住地の市町村が被保険者になっていることの違いがあるが、これについてはどう考えられているのか。
19.介護保険のグループホームは他の居宅サービスとの併給ができないが、支援費のグループホームはホームヘルプ、ガイドヘルプの併給ができている。これについてはどう考えられているのか。
(給付方法)
20.給付方法についてダイレクトペイメントの導入の意思があるか回答を要求したい。
要 望 団 体 |
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社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 |
会長 兒玉 明 |
日本障害者協議会 |
代表 河端 静子 |
特定非営利活動法人 DPI日本会議 |
議長 山田 昭義 |
社会福祉法人 日本盲人会連合 |
会長 笹川 吉彦 |
財団法人 全日本聾唖連盟 |
理事長 安藤 豊喜 |
社団法人 全国脊髄損傷者連合会 |
理事長 妻屋 明 |
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 |
理事長 藤原 治 |
財団法人 全国精神障害者家族会連合会 |
理事長 小松 正泰 |
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障害連事務局FAXレター NO74 2004.3 18(木) より転載
NO74 2004.3 18(木)
千代田区神田錦町3−11−8
武蔵野ビル5階障害連事務局
TEL03-5282-0016 Fax03-5282-0017
編集人 太田修平
障害保健福祉部との勉強会(第8回)
先週に引き続き、8団体(日身連、JD、DPI、日盲連、全日ろう連、脊損連合、育成会、全家連)が共同で出した質問書に対する回答と、それに基づく意見交換となった。
第8回目の勉強会は、老健局のメンバー同席のもと、3月18日(木)の夕方行なわれた。
低所得者に対する利用者負担の配慮のあり方について、「障害者が介護保険に入るとしても、一割負担の原則には変わりはない」としながらも、何らかの措置は必要となるだろうと障害保健福祉部と老健局のメンバーは述べた。その内容については「これからの問題」とした。また、「扶養義務の範囲については見直していくことも必要」とした。
団体側は「やはり所得保障が重要である」や、「利用者負担ができないから十分な介護を受けられないことがないように」などと発言をした。
障害保健福祉部は「社会参加のための介護が一定必要である」とした。そのための方法論として、"介護保険で行うのか""別立てで個別給付を行うのか""事業費方式で行うのか"
色々と考え方はあるとした。
「介護保険との統合について、対等合併か吸収合併なのか」という質問が再三だされたが、明確な回答は得られなかった。
障害保健福祉部側は、「今後、障害者部会や介護保険部会でだされた方向性に対し、各団体と協議を重ねていきたい」とした。
4月30日(金)この介護問題の公開ヒアリングを8団体は企画し、厚労省にも参加してもらうことになっている。
毎週木曜に行われている8団体と、厚生労働省障害保健福祉部との勉強会ですが、3月25日(木)は無念金問題の判決で対応に追われたため、中止されました。代わりに8団体で今後についての会議が行われました。4月1日は予定通り行われ、再度、要望書12番の支給限度額(2階建て問題)についてや、今後の進め方などについて、話し合いが行われます。
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3月2日 社会保障審議会障害者部会の報告
この部会はこれまで、年2〜3回開かれることが通常でしたが、今回は6月までに 5回連続して開催されることになっており、介護保険と障害者施策の関係について議
論がなされるのではないかということが言われていました。
昨年の12月の委員会で委員の任期も終了し、今回は新たな委員も選出されていま す。
まず、障害者部会の審議事項について以下のように示されました。
障害者部会の審議事項について
1.審議事項
○ライフステージ等に応じたサービス提供の在り方、ケアマネジメントの在り方、雇 用施策等との連携、財源のあり方等、支援費制度や精神保健福祉施策など障害者施策
の体系や制度の在り方に関する事項
○「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の規定により本審議会の権限に属さ れた事項
○「心神喪失等の状態で重大な互い行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」 の規定により本心議会の権限に属された事項(処遇改善の請求による審査に係わる事
項を除く)
2.当面のスケジュール
○3月2日に開催。以後2週間に1回程度のペースで開催を予定。
○当面、障害種別を越えた(三障害共通の)障害者施策の体系や制度の在り方につい て介護保険制度との関係を含めて議論し、大きな方向性について6月を目途にとりま
とめ
○障害種別ごとの個別の法律改正事項等は秋以降に議論。
(参考)これまでの審議事項
○平成15年度から実施される障害者福祉サービスの新たな制度(支援費制度)の施行 に向けた議論
○「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の規定により本審議会の権限に属さ れた事項
この後、障害者施策の状況について、資料の説明が厚労省よりなされ、具体的な審 議に入りました。
まず、安藤委員(聾唖連盟)から 「障害者部会の審議事項で、"今後の大きな方向性をとりまとめ"とあるが、これは 介護保険への統合の是非をとりまとめるということだと思う。肝心の障害者団体が結
論でていないし、時間的に難しい。支援費制度がはじまって一年で、支援費の理念に そって改善していく事が先決ではないか。介護保険との統合の検討については、余裕
をもって審議していくことが必要である。」
との意見が出されました。
また、福島委員(東大助教授)からも、 「安藤委員がおっしゃったように支援費が始まって一年足らずの状況である。支援費 の制度設計をしてきたが計画性に甘さがあり、審議会のメンバー、行政側、障害者団
体側それぞれに責任がある。今後、新しい制度設計をする時には同じ事を繰り返さな いように慎重にすべきである。結論ありきでなく、きちんと議論する事が必要であ
る。
支援費制度と介護保険との基本的な枠組みの検討がなされるのなら、昨年から障害 者の地域生活支援の在り方検討会で精力的に検討されてきているし、また、障害者8
団体で介護保険の勉強会をしていると聞いている。この部会の中で障害者団体のヒア リングをする場を設けて欲しい。全部の団体が無理なら、少なくともここに委員をだ
していないDPI、JDからヒアリングして、それ以外の団体はヒアリングに相当す る発言をしていただきたい。介護保険との関係は大きな分水嶺である。障害者団体の
意見を聞く事は重要である。」 との意見が出されました。
このように、最初は介護保険との統合については、支援費の現状分析を踏まえ慎重 に審議する必要があるという意見が出される一方で、続いて高橋委員(立教大学教
授)からは
「支援費が導入された時点と、今とは全く判断が異なる。三位一体の改革を過小評価 した発言が多い。今後、一般財源化の方向に支援費が行くことは支援費の発足時には
認識されていなかった。支援費の情勢判断、実態把握が甘かったということもある が、何よりも大きなのは三位一体改革であり、この認識を皆で共有したい。」
との発言があり、
京極部会長
「三位一体改革では国は金をださず、市町村が全てやれということである。支援費を 充実するといっても根本がなくなる。これを急いで議論していかないといけない。当
初はここまで厳しい認識が無かった。三位一体改革と介護保険はリンクしている。三 位一体改革が終わって障害者福祉について何かしようとしても、財源が国から市町村
に移った後になってしまう。ただ、支援費のエンジンが苦しいから、介護保険のエン ジンをということではない。」
間課長補佐(企画課)
「三位一体の改革は、3年間で4兆円を地方に税源委譲し、地方交付税も減らすとい うことで、自治体が裁量をもってできるようにすることである。民主党のマニュフェ
ストでは18兆円全てを地方に移管すると主張している。市町村からも一般財源化の 希望がある。現在のサービスの地域格差をそのままに、一般財源化するとこれがどう
なっていくのか。差が拡大するのか縮小するのか。そういった観点でのご議論をお願 いしたい。」
などの三位一体改革に関する発言がなされ、議論が財源論から介護保険の検討をせざ る得ないという方向に流れました。また、精神障害者の関係者からは、三障害で介護
保険に入って安定的な財源確保を望む声がでました。
このような議論の中、安藤委員から再度、
「審議事項のスケジュールとして6月をめどにとりまとめるというタイムリミットが ある。いろんな立場からの意見を集約しないといけない。介護保険の見直しもあり、
法改正も必要である。これは政府全体で考えないといけない問題であり、三位一体改 革との関連も考えないといけない。介護保険との統合を一年、二年延ばすという選択
はなくて、統合決定ということで迫ってきているように感じる。支援費も見切り発車 という反省があり、介護保険も見切り発車にならないか不安である。」
という意見が出され、これに対して、村木企画課長より
「大きな方向を6月にと申し上げたので、委員に圧迫感を与えたことはお詫びする。 仮に介護保険統合になったと仮定すると、介護保険部会でも6月までに方向性を決定
する。両方が並行して進めている。6月をめどに区切って、その後、高齢と障害と共 通の場の議論をし、そこから経済団体などの声も聞きながら、議論をすすめていく。
法律は来年の通常国会にだす。6月は区切りであるが最終決定ではない。
三位一体改革で財源委譲される残りの2兆円の内容については、夏の予算編成の前 に経済財政諮問委員会からでてくる。障害者福祉の方向が固まっているかが重要で、
三位一体改革で地方に財源を渡していいのか、そうではないのか。できるだけ皆さん のコンセンサスを作っていただいて、6月をめどに議論いただきたい。」
とのやりとりもありました。
また、高齢者と障害者のサービスを同じベースで考えるべきか否か、三障害のそれ ぞれの障害に固有な部分と共通する部分についての意見も交わされました。
今回の議論は各委員の一巡の議論を経て終了し、厚労省に現在設けられている各種 の検討会についての報告が障害福祉課、精神保健福祉課からなされて終わりました。
次回は、今回委員からでた問題を事務局が整理し、また要望された資料も用意する ということで、今後の議論を進めていくこととなりました。
福島委員から出た障害者団体からのヒアリングの提案も厚労省で検討されることに なりました。
※詳細はホームページの傍聴メモをごらんください。
3月17日 社会保障審議会障害者部会報告
自薦ヘルパー推進協会本部事務局
前回の3/2の部会ででた様々な意見を集約し、事務局で論点整理したものと、今後のスケジュール案が出てきました。
論点整理(案)
1 基本的な方向性
2 障害者の自立支援のための保健福祉施策の体系の在り方
- (1)ライフステージ等に応じたサービス提供
- @保健福祉サービスの機能の現状
- A地域生活を支援するために今後重視すべき点
- Bライフステージごとに重視すべき点
- (2)就労支援
- @就労支援における福祉工場、授産施設、小規模作業所等の役割
- A福祉的就労から一般就労への移行の在り方(雇用との連携等)
- (3)住まい対策
- ○住まい(生活の場)の在り方
3 ケアマネジメント等の在り方
@ケアマネジメントの範囲
Aケアマネジメントを担う者の在り方
B権利擁護の在り方
4 サービスの計画的な整備と財源(配分)の在り方
@ニーズを把握して計画的にサービスを整備する仕組み
A障害者施策に関する財源配分の在り方(福祉・医療・所得保障)
B障害者施策に関する財源構成の在り方(利用者負担、保険料、公費)
C支援の必要度等に応じた効率的な財源配分の在り方
今後の進め方(案)
3月17日(水) 第6回
- 論点整理(案)
- 基本的な方向性
- 障害者の自立支援のための保健福祉施策の体系の在り方(ライフステージ等に応じ たサービス提供)
3月30日(火) 第7回
- 障害者の自立支援のための保健福祉施策の体系の在り方(ライフステージ等に応じ たサービス提供)
4月14日(水) 第8回
- 障害者の自立支援のための保健福祉施策の体系の在り方(就労支援・住まい対策)
4月28日(水) 第9回
- ケアマネジメント等の在り方
- サービスの計画的な整備と財源(配分)の在り方
5月〜6月
本日はまず、厚労省から論点整理(案)の説明がされました。介護保険という文言 は一切入っていませんが、今日の議論の中では、4月28日(第9回)でケアマネジ
メントとサービスの整備と財源の話をする中で介護保険について扱うそうです。ま た、この時期には介護保険部会のほうでも被保険者の範囲について議論されることが
予定されおり、4月下旬から障害者部会・介護保険部会の両部会で障害者施策と介護 保険の論議がオフィシャルにスタートします。障害者部会の議論では、障害者施策に
ついて全体的な議論をしながら、その議論の中で、介護保険を適用するかどうか、適 用する場合の範囲について絞り込んでいくことになりそうです。
また、前回、提案のあった障害者団体からのヒアリングも5月の一巡目の議論以降 に行うそうです。
また、今日の議論では厚労省より「主な機能別に見た障害保健福祉サービスの体 系」という資料が示されました。ここの中で、通所・入所の施設サービスについて"
生活支援機能""生活訓練機能""就労・就労支援機能""医療ケア機能""居住機 能"という機能分類にわけて説明されました。今後の議論として「デイサービス」
「通所更生施設」などの制度になっているサービスについての議論をするのでなく、 施設がもつ機能について分解し、施設・在宅の二元論でなく同じ位置づけで議論をし
たいということが示されました。
この厚労省の説明に対して、委員からは「施設サービスが予定していた機能が果た せていない。機能だけでなく、水準も問題で、療護施設は居住機能はあるが、雑居で
あり水準は貧しい。生活訓練、就労支援の機能が果たせていないのなら、ただの居住 機能しかない。」という厳しい指摘もでました。
また就労支援については、「就労支援は重要であり、サービスの大きな機能として 別に考えてはどうか」という意見と「就労支援は一般雇用だけを指すのか。企業で働
かない働き方もある。仕事とは呼ばなくても地域で暮らしている障害者が果たしてい る役割もある。就労が全面にでることの問題点がある。」という両論の意見がありま
した。
介護保険との関係については以下のやりとりがありましたので紹介します。
※障害者部会全体の議論についてはホームページをご覧下さい。
安藤委員(聾唖連盟)
「議論をはじめる前に基本的なスタンスを確認したい。前回の議論で厚労省、政府全 体の哲学の話がでた。障害者団体としては支援費の理念は問題なく足りないのは財源
だけである。支援費のスタートする前は三位一体改革の話はなく、三位一体改革につ いても様々な議論がある。介護保険との統合やむなしということで進めるのか、そう
ではなくて障害者は一線を画して別に考えていくのか。それによって論語の方向性が 変わってくる。
介護保険を前提にするのなら、手話通訳は支援費に入っていないが、それはどうなっ ていくのか。この点がはっきりしないとどう考えていっていいかわからない。」
村木企画課長
「障害者の生活を支えるのは社会参加などの幅の広いニーズがあり、議論しないとい けない。基本的な施策、サービス体系、ケアマネジメントについて、障害者に必要な
施策は何か、それにふさわしい財源の在り方をご議論いただきたい。障害と介護保険 の統合を前提に話を進めるのではなく、議論のなかで必要な道具として、支援費、介
護保険についての議論が整理されてくるのではないか。」
安藤委員(聾唖連盟)
「課長の気持ちはわかるが、現実的な判断が必要だ。タイムリミットが6月である。 介護保険との統合がやむをえないという認識で進めていくのなら、それにしぼった集
中した議論をしないといけないのではないか。」
村木企画課長
「時間の限られた中で、論点を整理して、哲学はこれまでの審議会の議論を活用し て、現時点で必要なテーマを絞る。まず1順目の議論して、財源も、介護保険につい
ても議論していただく。」
京極部会長
「安藤委員の危惧もわかるが、障害者施策についてお金がないから介護保険というの は狭い議論になる。全体をみて判断して、この部分は介護保険、この部分は別に手厚
くという議論をしていく。介護保険だけでは狭い議論、歪曲化された議論になる。全 体的な議論から絞り込んでいくのがいいのではないか。」
嵐谷委員(日身連)
「介護保険と支援費の統合に問題があるということだが、厚労省は大枠から絞り込ん でいって、介護保険と支援費を統合するという考え方なのか。いろんな障害者の立場
で論点が違う、こんなことでやっていればまとまらない。」
斉藤委員(社会就労センター協議会)
「支援費は制度発足して1年たたないうちに問題を起こしている。しかし、介護保険 も総費用が6.1兆円ある、2010年には8兆を越えるのではないかという話も聞
く。」
渡辺企画官(老健局)
「平成14年の5月に見通ししたものは、名目の金額だが、2010年度で8兆円。 2025年で20兆円。経済(国民所得)にしめるウエイトは2010年で2%。2
025年で3.5%」
斉藤委員(社会就労センター協議会)
「2010年に8兆円になる。今後、ホテルコストの徴収や、利用者負担があがる。 支援費制度が介護保険に流れた場合、利用者の負担が増える。ここを認識しておかな
いと。」
京極部会長
「介護保険部会の議論では2割負担という意見もあるが、少数派で1割負担を堅持す るという事が言われている。老齢年金で支払う事が介護保険の制度設計の基礎になっ
ている。2割になると、年金で払えない。ただし、ホテルコストについては、在宅と の関係で負担のバランスから見るとどうか、払わざるをえない。どちらかというと、
2割負担とホテルコストの負担を比較すると、ホテルコストではないかという、全体 の空気がある。」
武田委員((福)桑友)
「介護保険が8兆円になっていくということの負担の問題がある。しかし精神障害者 は補助金であって、義務規定が無い。税金は決まっていて、障害の分野の税金は今後
大きなところにとられていくのではないか。障害全体をどう確保するのか。自己負担 の問題があるが、障害者であっても所得があれば払うのは仕方がない。低所得の問題
は障害、高齢も同じ。それはそういう視点で議論していくことではないか。」
京極部会長
「現状では40歳以上の特定疾患の人は介護保険からサービスを受けられるがそれ以 外の人は受けられない。しかし、保険料は払っている。こういうしきりがいいのかど
うか。」
高橋委員(立教大学)
「介護保険の議論の仕方だが、先ほどの厚労省の説明は介護保険のスキームを活用し た高齢者ケアについて聞いたということ。高齢者ケアは介護保険だけではない、他の
サービスもある。障害者サービスと介護保険の議論をする際には、障害者全体の議論 して、介護保険のスキームはどこに有効なのか。介護保険でできない問題もある、所
得保障、住宅は介護保険ではできない。制度の接続の問題を整理して議論しないとい けない。」
渡辺企画官(老健局)
「40歳から64歳の2号被保険者については給付では限定されている。介護保険部 会で4月に被保険者の範囲を議論するときに、障害者部会での議論を聞かせていただ
いて、介護保険部会でも議論いただく。」
安藤委員(聾唖連盟)
「障害者福祉を介護保険に統合する際に、障害と高齢の理念がずれている。整合性を 考えて、法そのものを改正しないといけない。介護保険の中の障害部門、高齢部門が
必要である。介護保険そのままに障害者を当てはめることはできない。介護保険への スタンスを決めないと議論できない。」
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