東京都内のほとんどの市と区で最高24時間保障

国の障害ケアマネジメント理念を持つ自治体に

 東京都には23の特別区(福祉分野は市と同じ基礎自治体)と26の市があります(町村は山間部や離島のみに存在)。2003年の支援費制度の始まる前には最重度の全身性障害者の1人暮らしがなかった市や区が4割ほどあり、それらの自治体では最高24時間のヘルパー制度が存在しませんでした。現在では、23区26市のほとんどで最高24時間365日の滞在型ヘルパー制度が実施されています。(全国の政令指定都市の過半数でも同様です。)  自治体に24時間365日のサービスを受ける障害者が1名いるだけで、市区町村の障害福祉担当職員も、国の障害ヘルパー制度の理念(個々の障害者に合わせて自立した生活ができるように支給決定を行う。時間数の上限はない)を理解して、最重度以外のさまざまな障害者にも、障害ヘルパー制度の理念にのっとり、個々人が自立して生活できるような時間数の決定を行うようになっています。
 たとえば、健常者の家族と同居の場合であっても、個々の家族の状態などを自治体職員がきちんと出向いて聞いて、どのようなプランであれば生活ができるか、適切に判断して支給決定を行っています。最重度障害者で健常者の同居家族が1名だけの場合や家族が疾病や他の障害を持っている場合など、かなり長時間のサービスを認める事例も出てきています。
 自治体職員は平均3年で異動します。特に、24時間の滞在型サービスを使う障害者が出てから3年以上たつと、障害福祉担当課の職員は、着任したときから「ヘルパー制度に上限はない」「個々人の状況に応じて支給決定できる」「自立した生活ができるように支給決定」の原則を実務の中で日々目にすることになりますから、課の全員が障害ケアマネジメントの理念を理解するようになります。それによって、最重度以外のすべての障害者に対しても、同じ原則で適切な支給決定を行う自治体になっています。(注1)
 このような自治体の変化は、90年代中ごろから東京の24時間介護保障の確立した一部の市部を中心に見られました。厚生省は障害ケアマネジメントを作るにあたり、モデル市町村の1つに東京の24時間介護保障の確立している市も選んで作っています。

運動体の動きと全国展開

 当会では、この実績を元に、東京都以外の全国各地で、最重度の全身性障害者の1人暮らしのヘルパー制度交渉のノウハウ支援を行い、現在では北海道から九州まですべての地方で24時間365日の介護保障を行う市町村が点在するようになりました。これらの市町村の中でも、古くから24時間保障を行っている市町村では、最重度の1人暮らしの障害者以外にも、個々人に応じて適切なヘルパー時間数を決定していく自治体になってきています。  現在、全国の市町村数は平成の大合併により、1800市町村ほどになっていますが、このすべての市町村で最重度の1人暮らしの障害者の自立支援を行い、24時間365日のヘルパー制度を作ることで、日本全国で、障害の重度軽度に関係なく、家族状況にも関係なく、自立した生活ができるような支給決定が行われる自治体になると思います。

(注1)
 東京都内では障害ヘルパー制度は記事のとおりですが、介護保険の担当課では、「介護保険はニーズのすべてをまかなうものではありません」「足りないサービスは役所に頼らず自己責任で」といった考え方で運営されており、ヘルパー制度の細かい運用の方法についても、介護保険と障害で格差が生じています。その中でも、一部の市では、介護保険対象年齢になってから障害を持った高齢障害者でも、最重度で、健常者の家族がいない場合や1名しかいない場合などは、障害ヘルパーの上乗せで最高24時間365日に近いサービスを決定している例もあります。

国の動き(ヘルパー制度の上限撤廃)

 厚生省は90年からヘルパー制度の上限を撤廃し、94年度から2002年度までは主管課長会議で、毎年厳しい口調で都道府県に対して、「障害ヘルパー制度にいまだに上限を設けている市町村があるが、直ちに撤廃させること」などと指示を出しています。現在も、もちろん変わらず、ヘルパー制度には上限がないことを毎年何らかの方法で自治体に対して周知しています。
 2003年度からは支援費制度に変わり、ヘルパー制度に国庫補助基準が導入されました(自立支援法では国庫負担基準)が、これは、個々人の上限を規定したものではなく、市町村全体で国庫補助の上限を決めるものです。厚生労働省も自治体に対して、何度も個々人のサービスに上限はないし、国庫補助もつくと説明しています。(国庫補助基準を個人の上限額と勘違いして、それ以上のサービスを行うと市町村の全額負担になると勘違いする市町村が支援費制度スタートの2003年度はたくさんあった)。
 ヘルパー利用時間の多い障害者のみにサービス提供していると、市町村全体で国庫補助基準を事業費がオーバーしますが、短時間ニーズの障害者にも満遍なくサービスを出していれば、市町村全体で国庫補助基準を事業費がオーバーすることはありません(24時間365日のサービス利用者がいても、市町村のヘルパー事業費の全額が国庫補助対象になる)。
 事実、最高24時間365日のサービスを行っている全国各地の市町村では、東京都以外では1箇所も国庫補助基準を事業費がオーバーする事態にはなっていません。(東京都内では4市区がオーバーしたが、これは東京都外から最重度の1人暮らしの障害者が多数転居してきている地域のため。このような問題はあるので、引き続き国に国庫負担基準の改善の要望中)。
 厚生労働省は支援費制度スタートと共に国庫補助基準を導入した後でも、ヘルパー制度に上限はないことや、障害ケアマネジメントの理念の周知を図っています。次ページの資料(国の検討会の厚生労働省作成資料)では24時間のサービス利用の事例を掲載しています。   (2ページ先に続く)



厚生労働省作成資料

  障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会(第7回)平成15年9月8日 (平日の大学とそのあとの3時間は学生ボランティアに、それ以外は24時間ヘルパー制度利用の事例 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/09/s0908-6b.html#3 )

(ケース2)  全身性障害者(20才・学生)筋ジス 家族:なし(単身)
 1.  サービスの利用
(1)支援費制度におけるサービス

(2)その他のサービス
補装具、日常生活用具、特別障害者手当、障害年金 各種相談事業



(つづき)

 自立支援法になっても、国庫負担基準の仕組みの基本は同じで、
・国庫補助基準の名称が国庫負担基準になった(50%が確実に国の負担になり、国の予算不足で48%補助になるということはなくなった)。
・国庫補助基準の計算根拠が、一般・移動利用者・全身性の3ランクだったのが、自立支援法の国庫負担基準では16ランクになった。
の2点しかありません。(詳しくは2006年2・3月合併号を)

 なお、自立支援法施行3年後には障害程度区分(区分1〜6)ごと、サービス種類ごとに別計算にするという当初案もありましたが、現在では、政治状況も変わり、3年で今のやり方を変えたいと考えている与党議員も厚生労働省職員もいませんので、区分ごとの別計算になることはない見込みです。

 自立支援法になっても、いまだに国庫負担基準を個々人のサービスの上限と勘違いしている市町村があります。また、国庫負担基準が市町村ごとの合算計算ということを理解できずに、個々人の国庫負担の上限と勘違いして、この基準を超えたサービスは全額市町村負担と考えている市町村もあります。
 厚生労働省も、都道府県などを呼ぶ課長会議等の場で、何度も説明していますが、自立支援法になっても、市町村全体で国庫負担基準総額よりもヘルパー事業費が少なければ、全額が国庫負担対象で、その50%が確実に国の負担になります。全国的には、ヘルパー事業費の全額が国庫負担対象になる市町村がほとんどです。この場合、その市町村の中に毎日24時間のヘルパーを使っている障害者がいたとしても、そのサービスの全額は国庫負担対象です。
 国庫負担基準があるからといって、サービス水準に一律の上限などを設けることは法の趣旨に反することです。(自立支援法では「自立した社会生活ができるような援助を行う責務」が市町村に課せられている)

国庫負担基準の市町村での計算方法

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