国庫負担基準の市町村での計算方法

 いまだに国庫負担基準の計算方法を理解しない市町村があり、「個々人で国庫負担基準を超えると全額市町村負担となると勘違いしている」という話をよく聞きます。国庫負担基準は個々人の持ち物でも権利でもありません。単に市町村全体で国庫負担額を決めるための計算式で、数字は平均利用実績を元に作られたものです。平均を超える利用者もいれば下回る利用者(こちらの方が多い)もいます。障害者団体は、このページを理解していない市町村に見せて、県を通して国に確認してもらうようにしてください。

A町の例 ヘルパー利用者13人の場合

利用者  区分  サービス 利用したヘルパー事業費  国庫負担基準
A1さん 区分6 居宅介護    5万円      18万6800円
A2さん 区分6 重度訪問   10万円      29万5900円
A3さん 区分6 重度訪問   90万円      29万5900円
A4さん 区分6 居宅介護    5万円      18万6800円
A5さん 区分6 居宅介護    6万円      18万6800円
A6さん 区分6 居宅介護    7万円      18万6800円
A7さん 区分6 重度訪問   12万円      29万5900円
A8さん 区分6 重度訪問   10万円      29万5900円
A9さん 区分6 重度訪問    8万円      29万5900円
(区分6の小計 153万円   222万6700円)
A10さん 区分5 重度訪問   10万円      23万8500円
A11さん 区分5 重度訪問   25万円      23万8500円
A12さん 区分5 居宅介護    3万円      12万9400円
A13さん 区分4 居宅介護    4万円       8万1100円
市町村合計 195万円     279万7740円

 
 A町の場合、利用したヘルパー事業費の合計額より国庫負担基準の合計が大きいため、ヘルパー事業費の全額が国庫負担の対象となる(195万円の50%が国負担となる)。また、区分間流用がなくなり、区分ごとの別計算に制度が改正されたとしても、各区分内でヘルパー事業費の合計よりも国庫負担基準の合計が大きいため、ヘルパー事業費の全額が国庫負担の対象となる。
 A町の場合、個々人ごとで見ると、国庫負担基準を超えている利用者(下線)が2名いるが、これらのサービスも全額が国庫負担対象になる。

・国庫負担基準について詳しくは、2006年2・3月合併号をご覧ください。

■国庫負担基準の表(2006年2-3月合併号16p記事)へリンク 

国庫負担基準で自治体の欠損が出ないようにする方法

・国庫負担基準は財務省の要求で仕方なく導入したものです。障害者団体も地方自治体も国庫負担基準の廃止(2002年度以前のように、ヘルパー事業費の全額を国庫補助対象にすること)を目指しています。

・国庫負担基準は、1つの市町村にヘルパーを平均よりも多く使う人も、平均よりも少なく使う人も満遍なくいると、事業費が国庫負担基準をオーバーすることがありません。
 市町村は、長時間ニーズの利用者にだけサービス提供するのではなく、月に数時間だけのヘルパー利用のニーズのある障害者にもヘルパー制度を周知して、広く利用してもらうことで、国庫負担基準オーバーすることはなくなります。

・例えば、ヘルパー制度を使っていない障害者が、月に1回通院するのに通院介助を月に1時間だけ使う場合、このような区分6の障害者が10人いれば、国庫負担基準が市町村全体で月182万円アップします。
市町村で国庫負担基準ぎりぎりまで事業費が達しそうな場合は、短時間しかニーズのない障害者にもヘルパー制度の利用を市町村が積極的に進めるなど、いろいろな対策があります。
市の全ての障害者に、病気などのときに使えるように、あらかじめ1人数時間の支給決定を行っておき、緊急時にすぐにヘルパー制度(短時間)が使えるようにしている市町村もあります。
障害者団体も、このような方法を市町村に情報提供することにより、事業費が国庫負担基準をオーバーする市町村が出ないように注意してください。

 なお、小規模の市町村の事業費が国庫負担基準オーバーして、国庫負担が欠損した場合、都道府県の地域生活支援事業で、欠損の全額を補填する制度も行うことが可能です。ただし、予算規模がもともと小さいので、東京都の一部自治体のような1自治体で数千万円を超えるような欠損が出ても、補助は不可能です。数十万円までの補填が可能性のあるラインです。いずれにしても、県にこの補填を実施するように各県の障害者団体が事前に県に交渉をすることが必要です。

HOMETOP戻る