離島や農村部における重度障害者の24時間重度訪問介護(自薦ヘルパー利用)

 

発表者 日本ALS協会鹿児島県支部 里中利恵

    全国広域協会 大野直之

 

ファシリテーター NPO法人自立生活センターてくてく 川ア良太

 

鹿児島県の離島や過疎地など10箇所以上で24時間介護保障が1年で実現。

鹿児島のALS患者会と全国広域協会の連携で

 

全国広域協会 大野直之さんから

1番目に権利擁護活動として県内の全市町村で24時間介護が受けられる地域を作ることが必須です。

(24h介護サービスの不足によって日本で人工呼吸器をつけずに諦めて死ぬ人が過半数もいること)

 

2番目にそのためには地域の様々な障害種別の団体と連携すれば、介護で困っている団体の役員とは一緒にやることができるかもしれないと言う事。

例えばALS協会でも他の地域では福島や北海道の帯広や石狩地方なども同じような動きがあります。

重心の団体と組んでこれをやろうと言う動きも九州のCIL1部で始まっています。

 

3番目に具体的な実践方法として

情報提供と権利擁護の事業として(介助サービス事業ではなく)

重度訪問介護24時間交渉や自薦ヘルパーなど確保と育成の「方法」を様々な患者団体や障害者団体に伝えることをもっと進めていきたい。

ちなみに鹿児島での弁護団交渉とその後の報告シンポジウムを日本ALS協会鹿児島県支部の里中さんが聞いて、長時間派遣が必要な重度訪問介護は地域の人に担ってもらうのが一番で、そのためには地域の人、行政に理解してもらうため、当事者団体である自分たちが担う方がうまくいくのではないかときのお話。

 

東京のALSの自立生活をして飛び回っている橋本みさおさん

(東京の自立生活センターなどの24h交渉や自薦ヘルパーのノウハウを学んでALSで最初に取り入れた人です)などALS協会の役員も見ていたから鹿児島でもやろうと思ったというのが元々だそうです。

 

鹿児島県のALS患者は約130名おり、50名近くは鹿児島市在住で、半数以上は県の中でも地方や離島で暮らしております。鹿児島市は事業所がたくさんありますが、2018年まで地方や離島では24時間の重度訪問介護のような長時間介護は全く使っていませんでした。

 

 

 鹿児島県の離島や本土の(都市部を除く)過疎地域では、重度訪問介護の制度利用が全くない地域でしたので、重度訪問介護を長時間連続で提供できる事業所もありませんでした。

 

ALS協会鹿児島県支部は、患者と、患者の家族を中心としたボランタリーな団体でしたので、療養相談などを長年患者・家族会として行っていましたが、介護問題の解決ができずにいました。まず、鹿児島から沖縄までの間に広く点在する離島や本土の過疎地の患者のいる地域を回り、役場、患者に関わる医者・訪問看護・リハビリなど専門職の皆さん、地域の皆さんへのプレゼンや勉強会などを重ねると同時に、患者や家族に、24時間の長時間ヘルパー利用に備えての心構えも伝えていきました。離島にヘルパー研修講師を本土から派遣したり、離島から本土に飛行機できてもらったり、丁寧に種まきをしました。

 

そして、自前でのヘルパー事業運営まで手が回らないことから、2018年に、全国広域協会と連携して、24時間重度訪問介護を鹿児島の離島や本土の過疎地で始めることにしました。

それまでは鹿児島の過疎地で重度訪問介護の支給決定が出なかった最も大きな原因は、

24時間のサービス提供ができる重度訪問介護事業所がなかったことです。

そこで、全国広域協会からの拠出金で無資格等のヘルパーを求人して確保し、給与を払いながら重度訪問介護従業者養成研修(21.5時間)を受講してもらい、教育した上で、本土から離島等に数ヶ月などの単位で派遣し、ALS専属のヘルパーとしました。

 

離島で毎日24時間の重度訪問介護を支給決定してもらい、島でもヘルパーになりたい人を募集し、重度訪問介護従業者養成研修を受講してもらい、毎日24時間の介護を交代制で常勤4〜5人程度で介護できるようにしました。ヘルパーが揃ったら、本土から派遣したヘルパーは本土に戻ったり、他の離島の患者の立ち上げ支援に回ったりします。

本土の過疎地である北部や西部、本土南部の大隅半島や薩摩半島の地域でも、同様に、無資格者を常勤中心に雇用して給与を払いながら資格をとってもらい、介護方法を教えて、ヘルパーになっていく方法を取りました。

 

事業所については、最初は、奄美大島の患者は鹿児島市の事業所にヘルパーを登録し、阿久根市の患者は、福岡県の事業所に登録、沖縄の隣の与論島の患者は東京の事業所にヘルパーを登録しました(法的には問題ないですが、市町村の了解のもと行いました)

介護がスタートして数カ月後に、全国広域協会が、鹿児島県にALS専門の事業所をつくり、全利用者がこの事業所の利用に移りました。

 

患者会の頑張りで、1例目の24時間介護スタートからたった1年で10例以上の24時間介護体制をつくりました(離島の5市町を含みます)

また、24時間の重度訪問介護の申請中や支給決定後の介護サービス準備中事例も7例あります。ほとんどのケースは健常者の家族と同居のケースで24時間かそれに近い重度訪問介護が支給決定されています(1人暮らしは離島の2ケースのみ)。

 

患者会は、いま、長年の準備が一度に花開き、今、目が回るように忙しい状況だそうです。

 

多くのヘルパー(男女)が離島や過疎地で雇用され、まとめていくために、中心メンバーとしても、これまでのボランティア仲間ではない、志を共にできるような仲間集めに苦労しているところだそうです。離島に支援に何度も飛行機で行くために、今までは寄付募集のコンサートなどを行ったりしてボランティアで活動していたのですが、ヘルパー事業所の収入で交通費をまかなえるようになり、各地や全県で飛び回って患者や家族やヘルパーを支えるスタッフも、ボランティアではなく常勤雇用の給与が出るようになったので、新しく人材求人できるようになりました。

 

 いままで目の前の患者をなんとかしたくても、どうすることもできなかった、市町村や地域医療の人たちも、全く新しい24時間重度訪問介護での在宅生活が始まるのを目にして、目からウロコが落ちるような感想だそうです。もちろん、ALSの皆さんは、各地域で主治医や訪問看護、訪問リハなどの支援も受けて在宅生活をしています。

鹿児島の患者会が支援中のALS患者リスト(重度訪問介護24時間申請または準備中事例など)2020年4月現在 (離島の2人が1人ぐらし、ほかは家族同居ケースです) 

 

市町村(島名) 重度訪問介護支給時間 障害区分 呼吸器と胃ろうの状態  備考

 

奄美市(奄美大島)     744時間    区分6                         死亡

 

出水市(本土・県北)   744時間    区分6     呼吸器装着・胃瘻       未退院

 

与論町(与論島)       744時間       区分6    呼吸器装着・胃瘻

 

阿久根市(本土・県北) 744時間       区分6     呼吸器装着・胃瘻

 

奄美市(奄美大島)     744時間       区分6     呼吸器装着・胃瘻       独居

 

南九州市(本土・薩摩半島)744時間    区分6   呼吸器装着・胃瘻

 

龍郷町(奄美大島)     620時間       区分6     呼吸器装着・胃瘻

 

天城町(徳之島)       505時間       区分6     胃瘻

 

さつま町(本土・県北) 744時間       区分6   呼吸器装着・胃瘻

 

鹿屋市(本土・大隅半島)578時間      区分6   NPPV・胃瘻            死亡

 

徳之島町(徳之島)     744時間       区分6     呼吸器装着・胃瘻       独居

 

さつま町(本土・県北) 744時間       区分6     NPPV・胃瘻

 

与論町(与論島)       744時間       区分6

 

いちき串木野市(本土・県北)744時間  区分6     呼吸器装着・胃瘻

 

出水市(本土・県北)   600時間       区分6     呼吸器装着・胃瘻

 

南九州市(薩摩半島・県南)744時間    区分6     呼吸器装着・胃瘻

 

伊仙町(徳之島)                                 呼吸器装着・胃瘻       申請中

 

奄美市(奄美大島)                               胃瘻                   申請中

鹿屋市(大隅半島・県南)              区分6                            申請中

 

薩摩川内市(本土・県北)                         胃瘻                   申請中

 

奄美市(奄美大島)                                                      申請中

 

 

 

市町村名(島名)

支給時間

区分

 

備考

1

奄美市(奄美大島)

744

6

 

死亡

2

出水市(本土・県北)

744

6

呼吸器・胃瘻

未退院・50

3

与論町(与論島)

744

6

呼吸器・胃瘻

 

4

阿久根市(本土・県北)

744

6

呼吸器・胃瘻

 

5

奄美市(奄美大島)

744

6

呼吸器・胃瘻

独居・20

6

南九州市(本土・薩摩半島)

744

6

呼吸器・胃瘻

 

7

龍郷町(奄美大島)

620

6

呼吸器・胃瘻

 

8

天城町(徳之島)

505

6

胃瘻

 

9

さつま町(本土・県北)

744

6

呼吸器・胃瘻

 

10

鹿屋市(本土・大隅半島)

578

6

NPPV・胃瘻

40代・死亡

11

徳之島町(徳之島)

744

6

呼吸器・胃瘻

独居

12

さつま町(本土・県北)

744

6

NPPV・胃瘻

 

13

与論町(与論島)

744

6

 

 

14

いちき串木野市(本土・県北)

744

6

呼吸器・胃瘻

 

15

出水市(本土・県北)

600

6

呼吸器・胃瘻

50

16

南九州市(薩摩半島・県南)

744

6

呼吸器・胃瘻

50

17

伊仙町(徳之島)

 

 

呼吸器・胃瘻

申請中

18

奄美市(奄美大島)

 

 

胃瘻

申請中

19

鹿屋市(大隅半島・県南)

 

6

 

申請中・20

20

薩摩川内市(本土・県北)

 

 

胃瘻

申請中

21

奄美市(奄美大島)

 

 

 

申請中

 

 

注:744h=24時間✕31日   40歳以上のケースでは、介護保険の訪問介護もあわせて利用

 

以下にALS鹿児島県協会 里中様からの情報です。                

 

東京ではじめて藤岡弁護士の話を聞いたのは ALS協会での勉強会で、その当時私もまだ理事ではありませんでしたが、理事以外の参加者は一人だけでしたのでやはり重度訪問介護に関する意識が低いのだな・・・とは感じていました。

せめて各都道府県の事務局長は 制度をよく理解しておくべきと思いますがALS協会では この重度訪問介護への理解がまだ偏っているように思います。

 

私は個人的にてくてくの岩崎さんや吐合さんと お付き合いがあっても、いつも一緒におられる介護者について深く考えたことも疑問を持ったこともありませんでしたが(今考えると別と考えていたのでしょうかね)

しかし橋本さんや岡部さんなど ALS協会の相談役や理事である患者の介護者を見ていて大きな疑問と鹿児島の患者・家族を思い返し悲しい気持ちになっていました。

 

鹿児島市の自立支援協議会の委員を引き受けていた時に、重度訪問介護の予算が確保されていても、事業所や介護者がいないことを知り調べてみると鹿児島県に重度訪問介護従事者研修の要項そのものがなかったりこの研修事業を受けているところも無かったので、これでは育ちようも無いと思いました。

 

私達は 研修要項を作っていただき 昨年度までは 基礎・追加+第3号研修今年度より 統合過程ということで 指定事業を受け研修を行いながら各地域で介護者を育成していますが依然として 名前だけは連ねながら人手不足を理由に重度訪問介護を実施してくださる事業所はほぼありません。

 

藤岡先生や長岡先生のお話を伺った時 弁護士ってすごい・・・と思いましたが、鹿児島での報告会の準備のお手伝いをした時に 自分でもできそう・・・と言うより これは自分たちが行政(支給決定)と地域の人(介護者発掘と育成)に理解していただけるように頑張らなければいけないのではないか? そしてその方がうまくいくのではないか?と思いました。

頑張って訴えた人だけが受けられるとか 財政貧しい市町村で一人だけで終わらないため 

次に繋がる大事な道なのではないか?と思い先にお話ししました地域の学習会、行政交渉、研修事業と頑張っているところです。

 

ALS患者の呼吸器装着率は 3割を切ります。

ほとんどの方は 死にたいと思っているわけでは無いと思います。

呼吸器を望まない理由が何なのか?ということは 大きな問題です。

理由が解決できるような問題なら、それは解決すれば良くて、そのお手伝いができる当事者団体でありたいと思っています。

そのため 必ず誰かと一緒(保健師やケアマネ、訪問看護師などの中から一人、二人)に

その確認というか聞き取りを丁寧に行うことも心がけています。

 人として 尊厳は守られるべき!!と 私も強く思いますが必ず支援者(介護者)が必要な私達が 当然の権利だ!!と主張しても特にコロナ渦でみんなの生活が大変な時に耳を傾けてはいただけません。

16年支部活動を行ってきて最も大切にしてきたこととしては「心にかけてもらえる団体に」・・・ということです。

 

他県支部にも声かけをしていますが、ALS協会はボランティア団体で都道府県支部は 本部や行政に依存していますがもはやそんな力は本部にも行政にもありませんので自分たちで道は切り開いていかないといけないと思います。

種まきが面倒で大変だ・・・と言われてしまっていますが、単独地域でやるより 絶対、都道府県単位で行う方が 大変だけど効果的だと思います。

鹿児島はある意味離島が大変だけれど都道府県交渉には、このような大変な部分が大きな武器にもなるとも思っています。

 

 

大野さんから

北海道・福島ほかでも

 

地域のALS患者会が全国広域協会と連携して24時間重度訪問介護を地域で作り出す取り組みは、各地で広がってきています。

北海道の帯広地域では、患者の家族である東 洋(アズマヒロシ)さんが中心に、4市町村で6人のALS患者の自薦ヘルパー支援をしています。そのうち4人は24時間介護です。

北海道は石狩地区(札幌の近く)でもALS患者家族の松山裕子さん(恵庭市・東広島市)が同様の活動をしています。

 福島県では、ALS患者家族の長谷川智美さん(郡山市)が活動しています。太平洋側の南相馬市や県南部の石川郡などで24時間の重度訪問介護の支給決定が出て、これから介護体制を組み上げるところです。

富山県、新潟県、長野県、徳島県等でも、重度訪問介護の24時間介護体制を作りあげ、これから他の患者や家族の支援をしていきたいというALS患者や家族がいます。

 全国障害者介護保障協議会と傘下団体の全国広域協会では、地域のちいさな患者団体や個人で、同じ様に問題解決に取り組みたいという方を支援しています。公益活動でしたら、資金含め、様々な支援を行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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