厚労省たんの吸引等の検討会の報告
内閣府で春より障害者団体が主流の制度改革推進会議が開かれて、医療的ケアの介護職員や教員などへの解禁が議論されたところですが、この間に、厚生労働省では独自の従来型の医療的ケアに関する検討会が開かれ、わずか1ヶ月で検討が終了し結論が出ました。これは推進会議の骨抜きの動きです。
まずは一般に報道されている内容がわかりやすいのでお読みください。
たんの吸引などの試行事業案を了承―厚労省検討会
8月9日配信
医療介護CBニュース
厚生労働省の「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(座長=大島伸一・独立行政法人国立長寿医療研究センター総長)は8月9日、4回目の会合を開き、前回会合で同省が提示した「たんの吸引等の試行事業案」を大筋で了承した。これに伴い、来年3月には全国約40か所の事業所で試行事業が実施される。
「たんの吸引等の試行事業案」では、事業を実施する施設として、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホーム、障害者(児)支援施設など(医療施設は除く)や、訪問介護事業所で「できる限り行う」と提案。また、全国約40か所の事業所で約120人の介護職員を対象に事業を実施する方針も示された。ただ、いずれの施設も、介護職員数人に対し、3年以上の実務経験を持ち、指導者講習を受講した看護師を配置するなどの条件を満たす必要があるとしている。
介護職員が手掛けられる医行為としては、「たんの吸引(口腔内と鼻腔内、気管カニューレ内部。口腔内については、咽頭の手前まで)」と「胃ろう・腸ろう・経鼻の経管栄養」としている。ただ、胃ろう・腸ろうの状態確認(1日1回)や、経鼻経管栄養のチューブ挿入状態の確認は看護職員が行うとした。
介護職員に対しては、「たんの吸引と経管栄養の両方を行う場合は、50時間の講義と、それぞれ5回以上演習」などの基本研修と、看護師の指導を受けながら所定の実習を行う実地研修が施される。なお、試行事業に参加できるのは、研修を終えた介護職員のうち、所定の評価基準を満たした職員だけと定められている。 (以下略)
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今回行われた検討会は、従来型の検討会のため、当初、官僚の作った案では、障害者は誰も委員に入っていませんでした。ぎりぎりのところで与党のバックアップで当事者が1名入りました。ALSで24時間介護利用の1人暮らしをしている人工呼吸器利用当事者である橋本操さん(さくら会/ALS協会)です。しかし、当事者がたった1名のため、厚生労働省の作った案を追認する形式の検討会で、ほとんど厚生労働省案を変えることができずに終わりました。
かろうじて、現在の吸引利用者が暮らせなくなるようなことにはならないように、政治家の助けを得て、厚生労働省との複数の障害者団体の検討会の外での交渉で、在宅障害者についてのみ研修時間を変えるなどの特例扱いをすることが決まり、厚労省案に盛り込まれました。施設等では50時間の追加研修などが必須になりましたが、在宅で特定の障害者の介護をするヘルパーには従来からの重度訪問介護研修(20時間)の中で研修をすれば良いという方法になりました(実習についてはまだ交渉が未決着)。
以下は、制度改正の結論が出た第4回(8月9日)の検討会の記録抜粋です。山井政務官と座長の発言を参照してください。
(NPO法人地域ケアさぽーと研究所の下川和洋氏の傍聴報告より抜粋)
厚生労働省の吸引検討会第4回(8/9)傍聴報告
人工呼吸器を着けた当事者の方々がたくさん参加されておりました。冒頭、山井政務官から挨拶があり、その中でこの検討会の性質分けに関する興味深い発言がありました。すなわち、
@高齢者に対しては、研修等一定の条件を元に、対象者は誰にでも対応して良いシステム
A障害者や難病の方には、現在の個別性の高い研修を元に対応していくシステム
の2本立てで考えていくという主旨でした。この件について、厚労省担当者からは、以前にもその主旨を説明したと言うことですが、委員にも唐突な感じがしたのかいくつも質問が出されていました。
その話に引き続いて、吸引等を医行為とするのかしないのか、誰でも認めるのか、メディカルコントロールに置く必要性などについて議論がありました。座長からは、「現在、地域の中で取り組まれている内容や生活の低下を起こすようなことはしないと再三確認してきた。」、「医行為と医行為でないものと単純に二分できない状況がある。一定のメディカルコントロールが必要な日常的なケア(=医療的ケア)という類型が必要である。」という主旨の発言がありました。この議論だけで1時間ぐらいかけていました。(以下略)
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障害者団体の厚生労働省や座長への働きかけで、現在は通知化されていない、吸引や経管栄養以外の医療的ケア(医療類似行為)が在宅で行われ、その上で多くの障害者が地域で社会参加して暮らしていることなどが理解された上での、座長発言だと思われます。
高齢者向け(不特定多数)と障害者向け(特定向け)で別の仕組みに
この検討会の結論は、3月以降に行われる実証実験を受けて、法改正が予定されていますが、その際には、高齢者施設などむけの仕組みである、不特定多数を対象に吸引や経管栄養を行う場合(追加50時間研修・演習・実習)と、在宅障害者向けの特定の障害者を対象に吸引や経管栄養を行う場合(重度訪問介護研修時間内での研修・演習・実習)との2つに分かれます。(次ページの表参照)
また、吸引と経管栄養(鼻から・胃ろう・腸ろう)以外は、従来通り、医師法17条にも通知にも何が医行為かを書いてないのでグレーゾーンとして障害者団体等の事業所等だけが各団体独自の責任で行うしかありません。
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(高齢者施設などむけ)不特定多数を対象とする場合 |
(在宅障害者向け)特定の障害者を対象とする場合 |
吸引や経管栄養 |
追加50時間研修と演習・実習をへて実施(新たに法制化) |
重度訪問介護研修(20時間)の中での研修(追加時間なし)と演習・実習をへて実施(新たに法制化) |
摘便など、上記以外の医療的ケア |
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従来通り、医師法17条にも通知にも何が医行為かを書いてないのでグレーゾーンとして障害者団体等の重度訪問介護事業所等だけが行う |
なお、在宅障害者の吸引等の場合、追加50時間研修を義務付けられるのは避けられましたが、演習や実習はこれから検討されるモデル事業を経て決定されます。そのため、この交渉は終了していません。
家族が行える医療的ケアは、重度訪問介護のような、家族よりも長く介護するヘルパーなら、家族同様に上手くなるまで何度でも練習するので、訪問看護よりもはるかに安全に医療的ケアが行なえます。(通常、重度訪問介護では1回8時間以上で週40時間ほど1人のヘルパーが介護に入ります)。
在宅で医療的ケアを使って暮らす重度障害者にとっては、現状の仕組みから研修などを強化されるとヘルパーが足りなくなり、命に関わります。
今後も全国の皆さんで議員等への働きかけ等にご協力ください。
次ページから、8月9日の検討会で出された厚生労働省案の原文抜粋を3ページ掲載します。その後に、ALSの当事者委員である橋本操氏の提出資料の中から注目すべき情報を掲載します。
8月9日 資料1
介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方
についての今後の議論の進め方及び具体的方向(修正案)
U 制度の在り方の具体的方向
1 対象とする範囲について
(1)介護職員等が実施できる行為の範囲
○ これまで運用により許容されていた範囲が縮小されないよう配慮するとともに、制度の迅速な実施を実現する観点から、まずは、これまで運用により許容されてきた範囲を制度の対象とする。
・ たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)
* 口腔内については、咽頭の手前までを限度とする。
・ 経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻)
* 胃ろう・腸ろうの状態確認、経鼻経管栄養のチューブ挿入状態の確認は、看護職員が行う。
○ 上記の整理は、将来的な対象行為の範囲の拡大の道を閉ざすものではない。
○ 上記の範囲の行為であっても、ターミナル期であることや状態像の変化等により介護職員等が実施することに適さない事例もあることから、介護職員等が実施可能かどうかについては、個別に、医師が判断するものとする。
(2)実施可能である介護職員等の範囲
○ 一定の追加的な研修を修了した介護職員等(介護福祉士、訪問介護員、保育士その他の介護職員とし、特別支援学校にあっては教員を含み得るものとする。)とする。
(3)実施可能である場所等の範囲
○ 一定のニーズはあるが、看護職員だけでは十分なケアができない施設等として、以下を対象とする。
・ 介護関係施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホーム、
有料老人ホーム等)
・ 障害者支援施設等(通所施設及びケアホームを含み、医療機関である
場合を除く。)
○ 特別支援学校についても、なお検討を進める。
○ いずれの場合についても、医療職と介護職等の適切な連携・協働が可能な場合に認めることとする。
○ 在宅においても、医療職と介護職等の適切な連携・協働が可能な訪問介護事業所(訪問看護事業所と連携・協働する場合を含む。)が実施できるものとする。
2 安全確保措置について
(1)医師・看護職員と介護職員等との連携体制の確保等の要件について
○ 現行の運用による対応も踏まえ、下記のような要件を設定する方向で検討する。
・ 本人・家族の同意
・ 医療職との適切な役割分担、継続的な連携・協働
・ 関係者による連携体制の整備
・ マニュアル・記録の整備
・ 緊急時対応の手順、訓練の実施等
○ 施設や研修等の監督、サービス提供体制の整備など、行政の関与のあり方についても引き続き議論を行う。
(2)教育・研修の在り方について
○ 介護福祉士を含め、一定の追加的研修等を行った者に限り認めるものとする。
○ 教育・研修については、基本研修及び実地研修とし、実地研修については可能な限り施設、在宅等の現場で行うものとする。なお、介護療養型医療施設において、実地研修を行うことも可能とする。
○ ケアの安全性を前提とし、現場で対応可能なカリキュラムとする。
○ 知識・技術の修得には個人差があることを考慮し、研修効果の評価を行い、評価結果を踏まえ必要な対応を行うものとする。
○ 不特定多数の者を対象とする安全性を標準とするが、特定の者を対象とする場合はこれと区別して取り扱うものとする。
(編集注釈:ここは在宅の障害者向けの制度を別基準で考えるという意味)
○ 教育・研修については、介護職員等の既存の教育・研修歴等を考慮することができるものとする。
3 試行事業について
○ 上記の制度のあり方の具体的方向等を踏まえ、不特定多数の者を対象と
し、また、試行事業としてより慎重な対応が必要との観点から、別添資料の
とおりする。
○ 具体的な制度、教育・研修のあり方については、試行事業の実施状況も踏まえ、更に検討を行う。
(厚労省資料抜粋は以上)
ALS当事者 橋本委員の提出資料より
東京都内の在宅人工呼吸器利用者249人の過半数がCILとALSの団体からの支援で生活しているという実態調査資料
現状の重度訪問介護の研修の仕組みの中ですでに充分な体制で行われているという説明資料です。
東京都における重度訪問介護従業者による吸引・経管栄養等の介護サービスの状況
(2010年6月30日からの1週間についての調査)
NPO法人さくら会
この資料は、都内で障害者自立支援法の重度訪問介護サービスを実施している事業所のうち、医療的ケアを実施している28事業所(CIL9団体、さくら会19事業所)に対する電話およびアンケート調査の集計結果(中間報告)です。
さくら会友の会とは、NPO法人さくら会に重度訪問介護従業者養成研修を委託している都内近県の介護事業所(現在25事業所)の集まりです。在宅人工呼吸療法の人に重度訪問介護従業者を派遣しています。
CIL(自立生活センター)の事業所は、障害当事者が運営し、障害者自立支援法に基づいた長時間の介助サービスを主におこなっています。
1、介護職員数、利用者数
|
CIL |
さくら会友の会 |
合計 |
何らかの医療的ケアを実施している |
210人 |
365人 |
575人 |
介護職員の数 全介護職員数 |
1,109人 |
645人 |
1,754人 |
人工呼吸器を装着している重度訪問介護の利用者数 |
44人 |
97人 |
141人 |
|
★ 東京都の在宅人工呼吸器装着者249人のうち、のべ141人がCILとさくら会友の会の事業所の重度訪問介護を利用しています。
★ 調査対象の28事業所では、およそ3人に1人の介護職員が医療的ケアを実施しています。
★ 短期間の研修システムにより、介護職員の増員も実現し、在宅人工呼吸療法の障害者も長時間の介護サービスを受けられるようになり、自宅で安心して暮らせるようになってきました。
2、現在、重度訪問介護従業者が実施している吸引および経管栄養等の利用者数
(n=214)
|
CIL(n=44)
|
さくら会友の会(n=170)
|
合計
|
口腔吸引 |
24人 |
119人 |
143人 |
鼻腔吸引 |
10人 |
104人 |
114人 |
気管吸引 |
28人 |
109人 |
137人 |
経菅栄養(鼻) |
3人 |
33人 |
36人 |
経菅栄養(胃ろう) |
16人 |
88人 |
104人 |
カフアシスト |
9人 |
25人 |
34人 |
人工呼吸器(NPPV) |
16人 |
12人 |
28人 |
人工呼吸器(TPPV) |
24人 |
104人 |
128人 |
その他 |
9人 |
4人 |
13人 |
※ CILについては重度訪問介護利用者のうち、人工呼吸器の使用している者についてのデータ。
3、重度訪問介護サービス1日あたりの提供時間数の利用者分布状況
(n=377)
|
CIL(n=207) |
さくら会友の会(n=170) |
合計 |
〜4時間まで |
39人 |
56人 |
95人 |
〜8時間まで |
50人 |
32人 |
82人 |
〜12時間まで |
46人 |
26人 |
72人 |
〜16時間まで |
32人 |
26人 |
58人 |
〜24時間まで |
36人 |
20人 |
56人 |
〜24時間以上 |
4人 |
10人 |
14人 |
4、常時吸引が必要な利用者一人あたりのヘルパーの数
(n=28)
|
CIL |
さくら会友の会 |
合計 |
1〜5人 |
3事業所 |
3事業所 |
6事業所 |
5〜10人 |
5事業所 |
12事業所 |
17事業所 |
10〜15人 |
4事業所 |
3事業所 |
7事業所 |
15人以上 |
1事業所 |
1事業所 |
2事業所 |
5、現在、重度訪問介護従業者養成研修講座20時間(医療的ケアに関する講義はそのうちの講義7時間+実習3時間)でヘルパー資格が取得できますが、研修期間の長さはどうですか?
(n=28)
|
CIL |
さくら会友の会 |
合計 |
割合 |
短すぎる |
2事業所 |
1事業所 |
3事業所 |
10.7% |
ちょうどいい |
6事業所 |
18事業所 |
24事業所 |
85.7% |
長すぎる |
1事業所 |
0事業所 |
1事業所 |
3.6% |
その他 |
0事業所 |
0事業所 |
0事業所 |
0.0% |
6、医療的ケア研修の在り方と実際: 医師・看護師との連携はどのようにして、とれていますか?
|
CIL
|
さくら会友の会
|
合計
|
割合
|
連絡ノートの作成 |
7事業所
|
19事業所
|
26事業所
|
92.9%
|
診療所や訪問看護STの24時間体制 |
5事業所
|
16事業所
|
21事業所
|
75.0%
|
定期的なカンファレンスの実施 |
4事業所
|
13事業所
|
17事業所
|
60.7%
|
合同での勉強会や研修会の実施 |
4事業所
|
13事業所
|
17事業所
|
60.7%
|
看護師とヘルパーが同時にケアをして技術を共有する |
5事業所
|
14事業所
|
19事業所
|
67.9%
|
利用者宅でのイベント開催などによる交流 |
1事業所
|
8事業所
|
9事業所
|
32.1%
|
懇親会など仕事以外での交流 |
1事業所
|
8事業所
|
9事業所
|
32.1%
|
その他 |
0事業所
|
0事業所
|
0事業所
|
0.0%
|
医療的ケアに関する書類:同意書を作成をしている |
8事業所
|
17事業所
|
25事業所
|
89.3%
|
★ 地域医療の基盤整備が進んだ東京の西北地域では、医療と介護の連携も進んでいます。
7、介護職員による医療的ケアが法令で定められていないことについてどう思いますか?
|
CIL
|
さくら会友の会
|
合計
|
割合
|
不安である |
0事業所
|
12事業所
|
12事業所
|
42.9%
|
不安ではない |
9事業所
|
2事業所
|
11事業所
|
39.3%
|
考えていない |
1事業所
|
3事業所
|
4事業所
|
14.3%
|
★ ALSの利用者の多いさくら会友の会の事業所は、63%が不安であるとの回答を寄せています。
★ 利用者に若い独居者が多く、事前に自立生活プログラムを実施しているCILでは、90%が不安がないとの回答を寄せています。
|
CIL |
さくら会友の会 |
合計 |
割合 |
ヘルパーの仕事として法律に位置付けてほしい |
7事業所 |
9事業所 |
16事業所 |
57.1% |
ヘルパーの仕事として法律に位置付けないでほしい |
1事業所 |
5事業所 |
6事業所 |
21.4% |
医者の責任をはっきりさせてほしい |
2事業所 |
5事業所 |
7事業所 |
25.0% |
看護師の責任をはっきりさせてほしい |
2事業所 |
3事業所 |
5事業所 |
17.9% |
利用者の責任をはっきりさせてほしい |
7事業所 |
9事業所 |
16事業所 |
57.1% |
ヘルパーの責任をはっきりさせてほしい |
4事業所 |
4事業所 |
8事業所 |
28.6% |
事業所の責任をはっきりさせてほしい |
3事業所 |
6事業所 |
9事業所 |
32.1% |
加算をつけたり、単価を上げたりしてほしい |
7事業所 |
12事業所 |
19事業所 |
67.9% |
医療的ケア研修を義務化してほしい |
5事業所 |
5事業所 |
10事業所 |
35.7% |
医療的ケア研修を義務化しないでほしい |
6事業所 |
4事業所 |
10事業所 |
35.7% |
地域医療の連絡体制をしっかりしてほしい |
5事業所 |
12事業所 |
17事業所 |
60.7% |
家族に対する指導や教育をしっかりしてほしい |
2事業所 |
10事業所 |
12事業所 |
42.9% |
医療的ケアのできる介護職の資格を定めてほしい |
2事業所 |
3事業所 |
5事業所 |
17.9% |
その他 |
0事業所 |
0事業所 |
0事業所 |
0.0% |
次ページからは、同じくALS当事者の橋本操委員の提出資料より、人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)の大臣等への要望書です。とても参考になる内容が含まれていますので、抜粋して掲載します。
【添付資料1】
2010年 6月18日
内閣府特命担当大臣 荒井 聰 様
厚生労働大臣 長妻 昭 様
文部科学大臣 川端 達夫 様
衆議院議長 横路 隆弘 様
参議院議長 江田 五月 様
人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)
会長 大塚 孝司
医療的ケア連絡協議会 代表 折田 涼
岸本 彩
在宅で行っている「医療類似行為」(医療的ケア)を 「生活支援行為」としてすべての介護者や教職員が実施できる
体制整備を求める緊急要望書
日頃より、人権と福祉づくりをすすめられていることに敬意を表し、感謝 申し上げます。
私たちは、地域社会の中で、日常生活において「医療的ケア」を必要とし ながら日々生活している当事者、当事者団体、家族・医師・看護師・教員・
介護者等関係個人・団体が集まり、「医療的ケア」を必要とする人々が安全で 安心な生活を送ることを保障され、地域社会の中であたりまえに自立して生
きられるよう、「医療的ケア」に関する諸問題を解決していくために力を合わ せ取り組んでいます。どんな障害があっても、日本国憲法25条で謳われて
いる様に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を有しています。よ って、必要なケアは当然のこととして、必要なだけ認められなければなりま
せん。
前政権下では、医師法第17条の「医師でなければ医業をしてはならない」 とする一文により、当事者や家族が行える「医療的ケア」さえも、たんの吸引
以外は、ホームヘルパー等の福祉職や教育職など、障害者や高齢者、難病者等 の生活を身近で支える人でさえ行うことはできないとされてきました。在宅し
て当事者や家族が行う時点で、医行為と区別して「医療的ケア」という言葉が 生まれたにもかかわらず、やはり法的には医行為の一環であり誰もがケアを行
うことが出来ないので、地域で生活する、また、子どもたちが地域の学校に通 学するといった、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が剥奪されて
きました。日々の生活は、当事者・家族ともギリギリのところで送らざるを得 ない状況にあることはご承知の通りで、既に自らの家族を死に至らしめる等の
悲惨な事例も報告されています。
2005年3月に、「在宅におけるALS以外の療養患者・障害者に対する たんの吸引の取扱いに関するまとめ」という通知が厚生労働省医政局より出さ
れました。この通知では、2003年の「ALS患者」に限定されていた「気 管カニューレ内のたんの吸引に限り」、「当面やむを得ない措置としてヘルパ
ーに認める」というものを、ALS患者に限定せず吸引を必要とする人すべて に拡大されました。しかし、対象行為がたんの吸引に限定されており、それ以
外の「医療的ケア」が全く検討されておらず、たんの吸引に関する見直しも行 われていません。当事者の生活実態が全く直視されていません。早急にすべて
のケアについて、家族だけで抱えなくてもよい体制整備が必要です。通常のケ ア・生活支援行為でなければ、一人ひとりが人間に値する生活を営むことがで
きません。また、2003年以降ヘルパーによるたんの吸引が行われるように なり、医療資格の有る無しに関わらず日常関わっている人による介護が、当事
者にとって一番安全で安心できる介護だと、私たちは実証してきました。むし ろ、医療従事者のいる病院や施設でのトラブルが続発しています。そこで、抜
本的な解決策を策定していただきたく、以下の点について要望いたします。
要望項目
1.病院以外で行っている「医療的ケア」には、呼吸管理(人工呼吸器の操作・口鼻腔や気管内のたんの吸引・気管カニューレの交換・酸素投与・パルスオキシメーターの着脱等)、水分・栄養管理(経管栄養チューブの挿入・注入・抜去、IVHの管理等)、服薬管理(座薬挿入・インシュリン投与等)、じょくそうの手当等、排泄管理(導尿、留置カテーテルの管理、摘便、人工肛門の処置等)等があります。在宅で行えるケアは全て、医行為ではなく「生活支援行為」として、すべての介護者や教職員が実施できるようにしてください。
2.必要なケアを、「生活支援行為」として安全に実施できるように、介護者や教職員の公的な研修制度を確立してください。
3.「いのちを守りたい」という施政方針である新しい政権により、新たな人権と福祉の枠組みづくりが進められるよう、強く要望します。
以上
【添付資料2】
2010/08/09
「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」検討委員のみなさんへ
人工呼吸器をつけて地域で暮らす子どもたちからの意見
人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)
★折田涼さんより(大阪府箕面市)
私は、生後6ヶ月から24時間人工呼吸器をつけて生活しています。21歳になりました。現在、週5日は親元を離れて、ヘルパーさんのサポートで自立生活を送っています。
気管内吸引をはじめ生活していく上で必要なケアは全てヘルパーさんにしてもらっています。必要な医療的ケアをヘルパーさんにしてもらうことによって安心で安全な生活を送っています。
「経管栄養のチューブをつなぐ」ことが、看護師さんでないといけないとなると、自由な生活は送れません。食事や水分補給などは一日合計6回になります。また、ずっと家にいるのではなく、外出もします。その度に、看護師さんが経管栄養を…というのは不可能だと思います。
たんの吸引や経管栄養のチューブを外すなどという一部の医療的ケアだけを介護職に認めるのではなく、必要な医療的ケア全てをできるようになって欲しいです。
私たちも医療的ケア講習会を開催していますが、研修時間は、医療的ケアの基礎知識と実習あわせて4時間ですが、基本的なことはそれで十分理解してもらえます。後は、個別の研修を積み重ねるしかありません。在宅での医療的ケアは、個別性が高く、個別研修を重視した、研修体制が必要です。
★岸本 彩さんより(大阪府箕面市)
ヘルパーさん2名の介助で、家から出て「ポムハウス」で折田涼さんとルームシェアをして2人で暮らしています。親がいてもいなくても、そんなことに関係なく、私は私の生活をしています。
吸引はもちろん、全て私のケアを良く知っていて、私の気持ちをわかってくれるヘルパーさんがいると安心です。
私は入院したり、施設に入っては生活できません。24時間必要なときに必要なケアをすぐにしてくれるヘルパーさんが傍にいる暮らし…地域であたりまえに好きなことをして、これからも暮らしていきたいです。
研修時間を50時間にする案があるとか…。そんな研修は必要ないかと思います。基礎的な知識の学びと、あとは当事者のケアをどうするのか個別に学べばよいと思います。経管栄養をつなぐのは看護師でなければならないとするのも、あまりにも生活実態とかけはなれています。
もっともっと私達のように地域で暮らしている当事者の実態を調べてください。そして、地域で暮らすためのハードルをあげるのではなく、下げる方向でいろんな意見を聞いて、もっと討論を深めてください。私達の暮らしを守るための検討会であってほしいです。
★佐藤 有未恵さんより(大阪市)
私は 23 歳です。0 歳のときから 24 時間人工呼吸器をつけています。3歳から在宅で家族と生活してきました。
在宅してからの20年、家族、ヘルパーさん、学校では教師が、吸引をはじめ生活にかかわるすべてのケアをしてくれ、今までやってきました。医療者でない家族・ヘルパーさん・教師がケアしてきたことで、危ない目にあったことはありません。いつでも近くにいる人がすべてのケアをできるということは、すごく安心なことです。
私の生活の中で、このケアは看護師しかしてはいけない、とか、吸引だけは認めるとか、細かく決めるのはやめてください。生活すべてを途切れることなくケアしてもらえなければ、私は自由に生活できません。
みなさんも自分の生活を想像してみてください。ご飯を食べたりお茶する度にいちいち看護師さんにきてもらわないといけない生活を。そんな不自由な生活を想像するだけで暗くなりませんか?
みなさんも私もおんなじ人間です。私だけ特別な生活をしないといけなくなるような決めごとをしないでください。生活すべてをうけいれるような改革を期待します。
私は 7 月から一人暮らしを始めました。これからの生活に夢がふくらんでいます。どうかよろしくお願いします。
★平本 歩さんより(兵庫県尼崎市)
私は、24時間人工呼吸器をつけて生活しています。24歳です。地域の保育園・小・中・高に通いました。小・中・高の12年間、学校にいる間ずっと、たんの吸引と経管栄養があるために、父が付き添っていました。その父が、4年前に亡くなりました。
現在、卒園した保育園に講師として行ったり、買い物に行ったり、映画を見に行ったり…と、母と同居していますが、ほとんどヘルパーさんのサポートで生活を送っています。普段の生活では、バス・電車等の公共交通機関で移動しています。新幹線等で、旅行もします。私は特定疾患に当たりませんし、私の住む県では、訪問看護療養費は、重度障害者医療助成の対象になっていないため、訪問看護は利用していません。けれども、必要なケアをヘルパーさんにしてもらうことによって、安心で安全な生活を送っています。
「経管栄養のチューブをつなぐ」ことが、看護師さんでないといけないとなると、自由な生活は送れません。食事や水分補給などは、一日合計
7 回になります。外出中や旅行中でもチューブをつなぐ度に、看護師さんの派遣が可能なのでしょうか。
たんの吸引や経管栄養のチューブを外すなどという一部の医療的ケアだけを介護職に認めるのではなく、必要な医療的ケア全てをできるようになって欲しいです。
私のケアは、私のことを一番よく知っている信頼できる慣れたヘルパーさんにして欲しいです。
(以下略)
2010年月刊誌7-8月号の抜粋記事
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