国土交通省との道路運送法についての懇談の報告
2005年3月23日、介護保障協議会で、国土交通省との道路運送法についての懇談を行いましたので報告します。
国土交通省参加者
自動車交通局 旅客課 新輸送サービス対策室 調査係
会場:第2衆議院会館会議室
紹介議員:大口善徳議員
事前に1〜5の質問を用意し、回答をもらい、懇談を行いました。
国としては、なるべく利用者が困らないようにしていきたいという立場でした。
1 障害者が所有している自家用車に障害者1名とヘルパー1名が乗り、この車をホームヘルパーに運転させて買い物外出する場合は、道路運送法の規制対象になるのでしょうか。(外出先で車椅子を押してもらうなどの時間は支援費ヘルパー制度対象時間ですが、運転中は無料でやってもらっています)
回答
国土交通省:道路運送法の対象外です。(運転手が自分で車を提供する=車と運転手がセットの場合が道路運送法の対象です)
2 上記の1と同じ条件で、障害者が障害者団体から自主的に借りてきたリフトカーをヘルパーに運転させた場合、道路運送法の規制対象になるのでしょうか。
回答
国土交通省:道路運送法の対象外です。ただし、有料で車を貸す団体はレンタカーの許可を取る必要がありますので注意してください。
(解説:レンタカーの許可は、車が1台程度なら特別な難しい基準はなく、許可がとれますとのこと。たくさんの車を持っている場合は管理者の設置などが必要)
追加質問
介護保障協議会:障害者団体は昔からリフトカーの貸し出しをしているが、最近になってNPO化してヘルパー事業も自らの法人でやらなければいけなくなったが、このような場合、同じNPOがリフトカーの貸し出しを行っており、同じNPOがヘルパー派遣も行っている場合がある。このような場合でも、障害者が車の貸し出しを自ら予約し、ヘルパーはヘルパーでそれとは関係なく派遣されてくる場合、どうなるか。
国土交通省:道路運送法の対象外となる。
介護保障協議会:車の名義もそのNPO法人で、ヘルパー事業もそのNPO法人が行うという形だが、対外的には同一と見られないでしょうか。
国土交通省:内部できちんと分けていれば大丈夫です。
介護保障協議会:たとえば、利用者がそのNPOのヘルパーに「来週はリフトカーを借りてきてください」と頼み、ヘルパーがNPO事務所に戻ってリフトカー貸し出しの係の机にいって代理で貸し出し申し込みするなどして、翌週にリフトカーを持って利用者の自宅に行くような場合、ヘルパーはヘルパー事業のヘルパーとして利用者の自宅に行くわけだが、こういう事例でも大丈夫なのですか。
国土交通省:NPO内部できちんと書類や帳簿を分けていれば法の対象外です。車の貸し出しは、ヘルパーの事業とはきちんと分けておくことが必要。
ただ、通報の電話などが陸運支局にあった場合、調査には行かざるを得ないので、注意して対外的に説明できるようにきちんと分けておく必要がある。
3 無料で福祉移送サービスを行うボランティア団体から運転手とリフトカーを派遣してもらい、外出する場合。運転手のほかに、障害者1名とヘルパー1名が乗り込み、車に乗って移動します。この場合は道路運送法の規制対象にならないと思いますが、このヘルパーの事業所が地域の福祉を推進する目的のNPOであり、福祉移送を行うボランティア団体に恒常的に助成金を出している場合はどうなるのでしょうか。一体的とみなされて規制対象になるのでしょうか。
回答
国土交通省:助成金を出しているからといって、有償にはなりません。お金を取っていなければ、無償は無償です。
4 全国に5000人ほどいる在宅の重度全身性障害者は一般事業所のヘルパーでは特殊な介護に対応できないため、昔から、駅前や大学などでビラまきを行うなどして、自分たちで介護者を確保して、介護方法を自ら教え、自分たちのヘルパーとして登録して介護を受け生活してきました。介護者は他の仕事を持つものや学生など、いろいろです。介護だけで生計を立てるものはまだまだ少ないです。これらの介護者を一般的には自薦ヘルパーと呼んでおり、2003年3月までの自薦ヘルパー等の介護経験者には「みなしヘルパー資格」を発行され、現時も正式ヘルパーとして稼動しています。
自薦ヘルパーは一般的には1人の在宅最重度障害者に30〜50人おり、中には月に1回だけ介護に入る介護者もいます。いままでは、重度障害者が自薦ヘルパーを使って通院や社会活動のために外出する際は自由に自薦ヘルパーに運転してもらって移動ができました。最重度全身性障害者は体温調節機能障害もあり車での移動は必要不可欠です。
しかしながら来年4月からはこの介護時間中の運転行為は道路運送法違反で処罰されると聞いています。(現在は自薦ヘルパーも民間ヘルパー事業所のどこかに所属する形をとっている)。たとえ自薦登録先のヘルパー事業所が80条許可や4条許可を取ったとしても、30〜50人の自薦ヘルパー全員に高額の研修を受講してもらうことは不可能であるし、ほかの仕事を持っている人がほとんどなので、自動車学校などで行うといわれている講習の時間もとれません。いったいどうすれば重度全身性障害者が今までと同じ生活ができるのか、解決方法を教えてください。
(口頭補足:岡山の特区の事例では、2種免許を持っていない普通免許の運転手に、必要な研修は、NPO団体の内部研修が2日間、その後、自動車学校で行う公安委員会指定の研修が2日間で、これに数万円かかっている)
回答
国土交通省:国土交通省としては研修はいろいろなものを認めている。公安委員会の研修受講は1例であげているだけであって、 NPO団体の内部研修でもかまわない。研修内容は運営協議会で決める。岡山は初期の特区ということで、多めに研修を行ったのではないか。
いま、(国土交通省で)スタンダードな研修テキストを作っている。4〜5月には出来上がる。このテキストを使った研修であればNPO団体の内部研修でかまわない。
このテキストを読んで学んだと言うことでもかまわない。どのような研修が必要かは地域の実情に応じて運営協議会が決める。
介護協議会: それは読んでレポート提出などでもOKということか?
国土交通省:それでもかまわない。
5 その他の確認
・ 18年4月までに運営協議会が立ち上がらなければどうなるのか?
(県は市町村がやるべきといい、市町村は交通担当者がいないので動かない。市に要望しても、わからないのでやりたがらない)
・ セダン特区について
回答
国土交通省:厚生省と協議して県に対して市町村をまとめて進めるように言っていく。今、全市町村にアンケートを送る準備中。
・団体の決めている料金体系(車庫から車庫まで)とタクシー料金の2分の1以下の基準の考え方について
回答
国土交通省:運営協議会で認められれば、車庫から車庫までの料金でもかまわない。
・任意団体の個人名義の車は4条や80条許可をとるNPOが借りて使えるのか
回答
国土交通省:可能。ヘルパー個人から借りるのと同じ手続き。
その他
ヘルパー事業を行っていない任意団体やNPOなどが完全無料で行う移送サービスは、道路運送法の対象外ですが、完全無料とは、実際に1円ももらう規定ではいけないそうです。ガソリン代程度なら無償とみなすという誤解が一部であることに対しては、読み間違えやすいQ&Aがあるのが原因でしょうとのことでした。なお、規約等にも書かずに、実際にも強制せずに、任意にもらう謝礼はいくらでも大丈夫だそうです。
大口議員の政策秘書によると、
地方で県で80条の運営協議会への取り組みがない地域では、公明党の県議会議員に言ってくださいとのことでした。県に言ってくれるとのこと。党として取り組むように、全国に流す予定だそうです。
(神奈川の様に、県が市町村を地域ごとに県内を6ブロックぐらいに分けて、県が市町村をブロックごとによんで、強制的に会議して県内の各ブロックごとに複数市町村セットで運営協議会を立ち上げる方式が1番現実的です。2000市町村ばらばらに要望しても事実上無理です。大阪など、何県かも神奈川方式をまねて始めています)
まとめると、 18年4月以降は、
・障害者が自ら借りた車なら規制対象外です。
・車の貸し出しは、任意団体CILで行い、ヘルパー事業はNPOで行うという形がいいです。セダンでもかまいません。 (同じNPOで車の貸し出しを行うと、タクシー会社などから密告電話が陸運局にあると、陸運局はNPOに調査に来てしまいますので、余計な手間が増えますので、お勧めできません。)
・障害者自身の車なら規制対象外です。
地方なら駐車場代がかからないので、中古車は0円で売っている時代なので、自分で買う方法(生保の人も団体事務所に週4日通うなら可能)や、障害者2〜3人で任意団体を作り、費用を出し合って車を共有するという方法もあります。セダンでもかまいません。
・80条許可を取らない限り、ヘルパーの車は使えません。(しかもセダン特区でない限り、普通のセダン車等はだめです)
こういう利用者のいる団体は、80条許可のための運営協議会やセダン特区について、県や市に交渉する必要があります。
さらに詳しくは、2004年3月の以下の情報を参照ください。
http://www.kaigoseido.net/sienhi/04/0217isou.htm
国土交通省の問答集はこちら
http://www.kaigoseido.net/souteimondou-kokudokoutuusyou.pdf
レンタカー業の申請見本や説明は
http://ogb.go.jp/okiunyu/info/rent/05_2.pdf
http://www.mlit.go.jp/chubu/jidosya/ryokaku_kouji/kyotsuu_266_138.htm
国土交通省資料冊子の「福祉輸送に関わる取り扱い規定集」(88ページ) 3.4MB PDFファイル
http://www.kaigoseido.net/fukusi-yusou.pdf
道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について.pdf
平成18年9月29日 国土交通省 事務連絡 「道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について」 (障害者自身の車をヘルパーが運転する場合は道路運送法の規制対象ではないことが書かれています。また、ガソリン代などの実費謝礼なら無償扱いにするという新たな取り扱いが通知されています)
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