東京都では365日随時ヘルパー研修が可能に

障害者団体事務所や自宅で随時、研修が行えるようになる

 今年度から、障害ヘルパー研修は民間企業や団体が実施し、都道府県等が研修1回ごとに指定を行う方式に変わっています。(介護保険のヘルパー研修は2000年度からすでに変わっている)。民間企業や団体は研修1回ごとに必要な書類をそろえて都道府県等に指定申請をして、指定を受けてからでないと研修を実施できません。
 昨年度までは東京都内では全身性障害者介護人派遣事業の利用者約1000人のほか、自薦登録ヘルパーの利用者約1000人が、ヘルパー研修を受講していない介助者を自薦登録ヘルパーとして行政などに登録し自分で介助方法を教えるなどの方法で自分専用のヘルパーとして利用していました。東京都障害福祉部ではこれらの利用者の生活を変えないように、介助者確保ができる環境が早急に必要と考えており、日常生活支援と移動介護研修を急いで申請受付開始したいと考えています。しかし、都ではヘルパー研修の指定申請受付・審査事務は障害福祉部でも高齢福祉部でもない、在宅福祉部が担当しており、指定申請事務の要綱作成などが遅れています。
 東京都では東京都自立生活センター協議会がヘルパー研修問題の交渉を行っています。交渉では、「これからは介助者は無資格者を求人し、面接・採用後すぐにその都度ヘルパー研修を(定員1〜2人程度で)2日間で行い、3日目には介助に入れていく時代になる」という考え方を東京都障害福祉部に伝え、今までの大規模定員のヘルパー研修のイメージから頭を切り替えてもらっています。(日常生活支援や移動介護は20時間以下ですので2日間で研修実施できます)。交渉の中で、いくつかの重要な点が確認され研修指定申請事務の要綱に反映される予定です。

 まず、障害者団体などは日常生活支援などのヘルパー研修を、1年間、毎週(たとえば毎週土日に)行うとします。その場合1年52週、52回分の研修の申請書を1年の始めに1回にまとめて申請できます。定員を1〜2人に少なくすれば、狭い事務所や障害者の自宅でも研修実施できるので、会場の予約などは不要です。また、研修実施の5日前までに変更届を出せば日程やカリキュラムの変更も可能です。(つまり365日いつでも実施可能)。研修参加者がいない場合は開催しなくてもかまいません。研修の報告書は1ヶ月に1回まとめて出せばよいことになり、事務負担も少なくなりました。(変更届では、指定を1度受けた研修について、日程、カリキュラムの変更のほか、講師の変更、会場の変更、実習先の変更、受講料などの学則の変更などが5日前までの届出で変更可能です)。
 通常、20時間の日常生活支援研修は2日間で研修終了します。50時間の3級研修は4〜5日間で研修終了します。このため、毎週実施の申請内容で毎年度始めに52回分の申請をしておけば、変更届とあわせ、365日いつでも研修を随時行えることになります。なお、日常生活支援と移動介護では厚生省基準どおり、実技は実習で変えられることになっています。このため、日常生活支援の場合は、9時間が講義(うち8時間は通信研修も可能)、11時間は障害者の自宅で実習とすることが可能です(注:都では実習は1日8hまでしか認められない)(支援費のヘルパー指定事業者の実習受け入れ証明書添付でOK)。
 ほかに改善した点などは、講師基準が都の当初の案より若干緩和されました。日常生活支援では「医学等の関連する領域の知識」の講義を1時間行う必要があります。東京都は1〜3級研修ではこの講義は看護師や医師が必要ですが、日常生活支援では、3年以上の実務経験のある介護福祉士もできるようになりました。ほかの部分の講義は、介護福祉士が団体に1名いれば研修実施可能です(一部は3年経験の日常生活支援の介助者でも可)。
 移動介護の場合は、「障害者福祉に係る制度とサービス」という講義項目があります。1〜3級研修ではこの講義は担当行政職員や社会福祉士や施設管理者などが必要でしたが、移動介護では支援費のヘルパー指定事業所の管理者でもかまわないように改善されました。ほかの部分の講義は、介護福祉士が団体に1名いれば研修実施可能です。
 なお、介護福祉士がいない団体の場合は、講義部分を通信研修で行い、他の介護福祉士のいる障害者団体に添削講師を依頼するなどすれば、自前で研修を行うことが可能です。レポート課題の内容や模範回答、テキスト・サブテキストは各団体の理念で設定できます。
 今回は、3級研修については従来から要綱があったため、講師基準などは変更されていません。これからの交渉課題となります。

今後、東京都内の障害者団体では介助者補充時にはこのような流れになると思われます。

今後の介助者補充時の流れはこうなる

1週前  求人広告
5日前  研修の日程や講師の変更届提出
1日目  面接・採用
2日目  日常生活支援研修1日目 講義9時間+実習3h(障害者自宅可)
3日目  日常生活支援研修2日目 実習8時間(障害者自宅可) (修了書発行)
4日目  支援費のヘルパーとして介護に入る

(3級研修の場合は研修期間が4〜5日になります)

 15年度については、特例で申請から1ヶ月で日常生活支援と移動介護の研修を行えることになっています。16年度からは申請から開始までに4ヶ月(2回目以降は2ヶ月)かかるので、年度の始まる前に(1月末に)事前に52回分などの一括申請をしておかねばなりません。年に1回も研修を行わなかった場合、団体の指定も取り消されますので、また新たに行うには4ヶ月かかります。このため、各団体とも、日常生活支援などの研修は15年度中に1回以上行っておかないと大変です。
 他の道府県でも、365日随時ヘルパー研修ができるように交渉を行ってみてください。

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参考に厚生労働省令110号の障害ヘルパー研修のカリキュラムを再掲載します (解説:各講義の大まかな「科目」だけが定められており、研修内容は各団体や講師の理念や流儀にまかされています。このため、研修は各障害者団体が主体的に行うことをお勧めします。外部の講師を呼ぶのはお勧めできません)

別表第五(第四号関係)  (編注:全身性障害者ガイドヘルパー研修)

  科目 時間数 備考
講義 障害者福祉に係る制度及びサービスに関する講義 移動の介護に係る制度及びサービスに関する講義を行うこと。
身体障害者居宅介護等に関する講義 居宅介護従業者の職業倫理に関する講義を行う事。
全身性障害者の疾病、障害等に関する講義  
基礎的な移動の介護に係る技術に関する講義  
障害者の心理に関する講義  
演習 車いすでの移動の介護に係る技術に関する演習  
合計 16  

別表第七(第六号関係)  (編注:日常生活支援研修)

  科目 時間数 備考
講義 身体障害者居宅介護等に関する講義 居宅介護従業者の職業倫理に関する講義を行う事。
  全身性障害者の疾病、障害等に関する講義  
  基礎的な介護技術に関する講義  
  家事援助の方法に関する講義  
  医学等の関連する領域の基礎的な知識に関する講義  
演習 全身性障害者の介護技術に関する演習 11 車いすでの移動の介護に係る技術に関する演習を行う事。
合計 20  

別表第三(第二号関係)  (編注:3級ヘルパー研修)

  科目 時間数 備考
講義 福祉サービスを提供する際の基本的な考え方に関する講義  
障害者福祉及び老人保健福祉に係る制度及びサービス並びに社会保障制度に関する講義  
居宅介護に関する講義 居宅介護従業者の職業倫理に関する講義を行うこと。
障害者及び老人の疾病、障害等に関する講義  
基礎的な介護技術に関する講義  
家事援助の方法に関する講義  
医学等の関連する領域の基礎的な知識に関する講義  
演習 福祉サービスを提供する際の基本的な態度に関する演習  
基礎的な介護技術に関する演習 10  
事例の検討等に関する演習  
合計 50  


東京都の障害ヘルパー研修要綱

すべてPDF画像です.


東京都の日常生活支援研修の実施についての解説

2003-8-4
自薦ヘルパー(パーソナルアシスタント制度)推進協会

東京都と交渉していた日常生活支援研修の要綱がまとまり、実施できることになりました。

T 申請・報告について

1.指定申請の受付窓口

 福祉局障害福祉部在宅福祉課 (TEL 03−5320−4146)  

※最終的な窓口は生活福祉部地域福祉推進課指定指導係となるが、平成15年度は在宅福祉課が調整に入って、スムーズにできるようにする。  
※申請に必要な書類については「東京都障害者(児)居宅介護従業者養成研修事業者指定要領」の2p及び参考様式、申請書見本を参照。

2.事業者指定申請、研修指定申請、実績報告、変更届について

@事業者指定申請

本来は、最初の事業者指定申請は4ヶ月かかるが、平成15年度については特例で1ヶ月で対応する。(要綱に明記 附則2)

 ※事業者指定申請については、なるべく今年度中にやっておいたほうが良い。(移動介護研修の事業者指定についても同様。)事業者指定は1度しておけば、以降、年間に1回研修を実施することで継続して有効。

 (8月中開講の場合は、8月の申請で2〜3日で指定を出しています)
 法人でない基準該当事業者などでも研修申請可能です。

A研修指定申請

  • 本来は、研修指定をする期間は2ヶ月間であるが、15年度については、この規程は外す。                           (要綱に明記 附則2)
    本来は初めて行う団体は事業者指定(4ヶ月)と研修指定(2ヶ月)で4ヶ月(※募集開始の4ヶ月前)かかるが、15年度については1ヶ月程度で実施できるよう都が対応する。
     (8月中開講の場合は、8月の申請で2〜3日で指定を出しています)

  • 研修指定は年間分の指定とする。(すでに指定が取れた団体はいずれも、8月から3月末までの33週分(毎週実施)の申請書を出しました)
     この際に研修毎の指定関係書類(カリキュラムや研修毎の会場確定、研修毎の担当講師の確定等)は必要無い。申請時のカリキュラムは予定のものを提出(たとえば、毎週研修を行う場合、何曜日は何時から何時まで何の講義を行うかといった大まかな予定のみで、その表には講師名も入れなくてよい。講師名は各科目ごとに年間を通した一覧表で出す)。
    ※例えば、毎週1回(年52回)実施することでまとめて申請を出して、人数が集まらなければ中止することが可能。  

B実績報告

  • 年間の研修指定を受けた後、月に1回実績報告を提出する事により、適正に実施されている事を確認する。
     
  • 実績報告上の報告事項
       実施日時、カリキュラム(実際に実施したもの)、担当講師、研修会場、修了者名簿等、従来の研修指定申請時必要とされた書類は、すべて事業実施後提出する。
       実績報告書は1枚。添付書類(修了者名簿等)は研修毎の書類が必要。
     
  • 変更届
       実施報告における確認という形式なので、柔軟に運用する。(変更届は研修実施の5日前までの提出で、日程、カリキュラム、講師、会場、実習先、などの変更が可能)


U 研修内容と講師基準について(※通学の場合)

区分 科目 時間数 備考 講師基準
講義 身体障害者居宅介護等に関する講義 ホームヘルプサービス概論 居宅介護従業者の職業倫理に関する講義を行う事。
  • 介護福祉士、1級ヘルパー
  • 訪問介護、居宅介護事業所の管理者(所長)(管理者は資格なしでなれます)
  • "その他"の項目で当事者講師が認められる場合あり
  • etc
ホームヘルパーの職業倫理
全身性障害者の疾病、障害等に関する講義  
  • 介護福祉士、1級ヘルパー
  • "その他"の項目で当事者講師が認められる場合あり
  • etc
基礎的な介護技術に関する講義  
  • 介護福祉士、1級ヘルパー
  • 3年以上の実務経験の日常生活支援従業者
  • 3年以上の実務経験の2級ヘルパー   
  • etc
家事援助の方法に関する講義  
医学等の関連する領域の基礎的な知識に関する講義  
  • 3年以上の経験と関連領域に関する知識を有する介護福祉士
  • 看護士
  • 保健士
  • etc

    ※医師、看護師等の医療関係者に限定しない
演習 全身性障害者の介護技術に関する演習

※基準該当を含む居宅介護指定事業所のホームヘルプの同行訪問への振替でも可能。(※演習に必要な会場・備品等の要件が大幅に緩和)
11 車いすでの移動の介護に係る技術に関する演習を行う事
  • 介護福祉士、1級ヘルパー
  • 3年以上の実務経験の日常生活支援従業者
  • 3年以上の実務経験の2級ヘルパー  
  • etc
[演習に必要な会場・備品等]
  • 会場は受講者1人あたり概ね1.65u(たたみ1畳強)
  • 介護用ベッド、浴槽
  • 車いす、ポータブルトイレ(受講生10人対して1台以上)

    (障害者の自宅で行えば全部そろっています。4畳半でも3人定員の研修が可能)
合計 20    

 ※講師基準については実施要綱の別表1、研修の実施方法については運用基準を参照。(講師1人で3教科までなど)
 当事者講師についても、講師基準「その他」の項目において、当事者講師を広く認める。

解説は以上。

 

研修申請書の見本をWORDファイルで提供します

  • 日常生活支援の研修の申請書の一式(実技11時間のうち半分程度を実習で行う内容の例です。すべて実習にしたい場合は変えて使ってください)
  • 移動介護研修の申請書の一式
  • 3級研修(通信)の申請書の一式

 パソコンメールで申し込みください web@kaigoseido.net まで

 都道府県に対して研修問題で交渉を行う団体か、障害当事者団体に限ります。団体プロフィールをつけてください。住所、電話、団体プロフィール、交渉予定をつけてお送り下さい。 交渉を行って頂ける団体には無料で提供します。その他は有料です(月刊誌封筒の注文表を参照)。

 
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