札幌市で自薦登録が一部実現

 

 主婦などが登録する普通の登録ヘルパーのない札幌市で、在宅介護支援センターに登録する方法で「自薦」のしくみをホームヘルプ事業に導入する取組みが成功しました。特別な方法でなく、新しい制度を作ったわけでもありません。どの市町村でもまねできる方法ですので、ぜひ同じように取り組んでみてください。

(今まで、北海道のS市として報道してきましたが、今回、公開の許可を札幌市の交渉団体にいただきました。ただし以下の注意を守ってください。)

注意:札幌市に直接問合わせしないでください。皆さんの市の交渉の都合で、問合わせしたい場合は、必ず当会に電話してください。市に問合わせが可能かどうか札幌市の団体と調整します。問合わせには事前に交渉団体から市への根回しが必要になります。これをしないと迷惑をかけますので必ず守ってください。

以下、札幌市の団体の通信を転載させていただきました。

 

札幌 介助保障NEWS No.4

 

札幌市公的介助保障を求める会

 

今年3月末に行った札幌市障害福祉課との交渉において、「求める会」では、全身性障害者自らが推薦した介助者をホームヘルパーとして、その利用者専属に採用するということを、札幌市として認めてほしいという要望を出しました。

一方的に派遣されるヘルパーでは、全身性障害者の特殊な身辺介助や重度の言語障害がある障害者に対して、十分なケアが提供できないということを、具体的な事例をあげて要望しました。

そして、この問題は現行制度の問題というより、全身性障害者に対して個別の質の高いニーズに対応できるヘルパーをどうすれば派遣できるかという、委託先のヘルパーの採用と、介助コーディネイトの問題であることを強調し、制度を変えることなくできることだと強調しました。

この要望に対して、前障害福祉課長は、札幌市のホームヘルパ−の採用にあたっては、委託先との間に雇用契約があることを述べた上で、

 

 「在宅介護支援センターや在宅福祉サービス協会(札幌市の外郭団体)をはじめとするホームヘルプ事業の委託先さえOKならば、むしろ札幌市としては、そのような全身性障害者に必要なきめ細かなニーズに対応できる人材を採用し、よりよいコーディネートを委託先にしていただくことが望ましい、という立場だ。」

「委託先が採用する人材に対して、札幌市として民間組織や企業に対して、この人を雇えとか雇ってはいけないという権限はない。採用については関知できない。」 「全身性障害者が推薦した手慣れた介助者を、その人専属のホームヘルパー(非常勤)として採用することについては、委託先の雇用条件を満たしており、委託先さえOKならば、札幌市として反対する立場にはない」という返答を得ました。

 

つまり、委託先さえOKならば、自薦ヘルパー採用も可能だということでした。

 

この時の対市交渉をもとに、6月23日にAさんの派遣を委託されている白石区の在宅介護支援センターBの担当者と話し合いを持ちました。参加者は、当事者のAさん、「求める会」のメンバーで、Aさんの推薦する介助者に同行してもらいました。

担当のコーディネイターからは「私としては、このようなシステムが可能ならば、利用時間帯やサービス内容どれをとっても、Aさんにとってはより質の高いホームヘルプサービスになるので、ぜひやらせてもらいたい」という心強い返事でした。

またホームヘルパー2級の採用資格についても、「多くの利用者の介助をかけもちするのであれば必要だが、Aさん専属であり、しかももうすでにAさんからの推薦を受けて介助に手慣れているということであれば別段2級の資格は必要ありません」という回答でした。後は所長と協議した上で、札幌市にも相談して実施にふみきりたい、ということでした。

そして7月3日に支援センターのコーディネーターから返事がきたのですが、その返事は、「札幌市の本庁サイドでOKがでなかったので、(自薦ヘルパー採用と専属派遣は)実施できません。」というもので、3月末の対市交渉の合意をもとに話を進めてきた私たちは、とても驚いてしまいました。

即日、「求める会」のメンバーとAさんとで市役所に駆けつけ、今回の経過と事実確認をし、3月末の交渉での(前課長の)課長見解を無視するのかと、高田課長、大沢係長、嶋田主査に詰め寄りました。

全身性障害者の介助の質は、生命の危険にも及ぶものなので、みんなで真剣に自分たちの切迫した現状を訴えました。(実際に、Aさんは昨年夏、手慣れないヘルパーの介助によって骨折させられました。)

 

そして、「自薦ヘルパー採用と専属派遣」を札幌市が認めるまでは、ここを立ち退かないと言い張り、今回のような私たちと札幌市との信頼関係を損なうようなことが二度とないよう、札幌市の見解を文書にするよう強く求めました。

そして障害福祉課長名で以下の見解を文書にしてもらいました。

 

札幌市公的介助保障を求める会 様

 

本市が委託しております、ホームヘルプサービス事業におけるホームヘルパーの

採用にあたり、現在の利用者が推薦した者を含め各委託先において採用が適当と認められた者の採用について、市はこれを認めます。

 

 

このような経過のもと7月7日には、在宅介護支援センターBと札幌市との調整もすみ、Aさんの「自薦ヘルパー採用と専属派遣」の実施は、OKということになりました。

 その後、Aさんが入院するというハプニングがあり、実施は退院後の10月6日からとなりました。

Aさんによると、実施後は、今まで曜日によって固定されていた利用時間帯も、ヘルパーがAさん専属であるため弾力的な運用ができるし、何よりも介助に手慣れており信頼関係のあるヘルパーが派遣されるために、以前のような身辺介助をされる際の精神的緊張が少なくなったということです。

 

今後は、各委託先にこの方式を導入してもらえるよう、地道に働きかけていき、現在要綱で規定されている派遣時間上限の週24時間を撤廃していくことが、運動の目標となります。

 

 

自立生活サポートネット 安岡菊之進

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連絡先【ベンチレーター使用者ネットワーク事務所】

札幌市白石区栄通16丁目 清栄荘1-1左/Tel:011-852-9747

<E-MAIL> jvun@tky2.3web.ne.jp

<HomePage> http://www.tky.3web.ne.jp/~amanogaw/jvun/

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埼玉県浦和市で自薦登録が一部実現

 

 主婦などが登録する普通の登録ヘルパーのない浦和市で、新しい方法で「自薦」のしくみをホームヘルプ事業に導入する取組みが成功しました。特別な方法でなく、新しい制度を作ったわけでもありません。どの市町村でもまねできる方法ですので、ぜひ同じように取り組んでみてください。

注意:浦和市に直接問合わせしないでください。皆さんの市の交渉の都合で、問合わせしたい場合は、必ず当会に電話してください。市に問合わせが可能かどうか浦和市の団体と調整します。問合わせには事前に交渉団体から市への根回しが必要になります。これをしないと迷惑をかけますので必ず守ってください。

以下、浦和市の虹の会(TEL048−855−8438)に記事をいただきました。

 

解説(虹の会より)

◆現在、浦和市は、24時間の巡回型と滞在型を併用して行っている。が、上限があり、一日5時間程度ということになっている。

◆これまで、ヘルパーの質などについては問題が起こる度に利用者本人と虹の会で市役所に行ったりしており、そのたびに「推薦登録をやればこれら問題はいっさい起こらない」と言うことを伝えていた。

◆今年の4月から、これまでの漠然とした「推薦登録が必要」という要望の仕方ではなくて、「副会長である松沢に対する推薦登録の実現」という具体的な形を提示して話しあいを行っていた。結果、6月下旬には推薦登録派遣を委託業者(民間の会社)を通して行うことが決まった。(介助者は、形式的に会社に時給で雇われている、ということになる。)

◆開始は8月1日。派遣時間などについては、とりあえず7月までの時間と同様という形で始まった。

 

 

(以下は浦和市の「虹の会」の通信より転載)

 

浦和の介助保障施策に関する学習会・報告

ヘルパーの推薦登録を実現させる!

現在の派遣もこのままじゃダメ!

 

 去る9月10日、埼玉県障害者交流センターで、「浦和市の介助保障施策に関する学習会」を行いました。 当日は浦和市だけでなく、他の市からも来ていただき、総勢26名でヘルパー制度に関して情報交換やこれからどうしたらいいのかといったことを話し合いました。

 内容を取りまとめて報告します。        

 

 

*浦和市の状況について

 

 まず、浦和市の現状についての報告が佐藤・松沢から。

 浦和の介助保障制度は、ヘルパー事業とガイドヘルプ事業のみ。(全身性障害者介護人派遣事業は行われていない) ヘルパーに関してはすべてが委託で行われており、いまだ上限がある。 

 ガイドヘルプは月72時間・単価1280円と、今年度になって県内でもあまりいいレベルではなくなってしまった。(編注:鴻巣・川越・所沢・狭山・入間・朝霞・草加・蓮田などが、今年度より月120時間実施)

 こうした制度が伸び悩む状況の中ではあるが、一つ特筆すべきことがある。8月からヘルパーの推薦登録派遣が、虹の会の副会長である松沢に対して行われているのだ。おそらく県内では初めてのことだろうと思われる。

 松沢は、これまでもヘルパーの質の問題などで委託業者や市へ話をもっていったりしており、主治医からの「障害的にも介助者は固定したほうが望ましい」という指示も合わせて、市とは推薦導入の方向で話合いをしていた。 結局、市は、委託業者(民間)と利用者(この場合松沢)とヘルパー(介助者)の三者で合意がなされている、という約束の上で、松沢に関しては推薦登録派遣を認めたのだ。(どちからかといえば「消極的な導入」、という感じか。)

 

 

*浦和の推薦登録ヘルパー

 

 開始は8月から。

 これまでの行政(=委託業者)が派遣していた時間数がそのまま推薦登録派遣という形となった。(曜日によって時間が違うので一定ではないが月130時間強。)

 時間単価は1280円。

 ヘルパーとして登録した介助者はこれまで介助に来てくれていた人で一人をのぞき、特に資格はない。

 

 

*なぜ推薦登録にこだわるか

 

 次に「なぜ、私たちは推薦登録にこだわるのか」ということについて村山から話があった。

 現状では、24時間巡回派遣についても一回30分とかの単位でしかなく、また決められた時間にしか来ない。その時間には家にいなければならないので、生活が大変制限されている。

 また、内容的にもやってくれない介助があったり(ヘルパー外の介助者にはやらせているごく簡単なことでも)、自分が望まない形でのヘルパー交代があるなど様々な問題がある。もちろん、ヘルパーの質の問題もある。

 こうしたことを解決していける一つの方法が推薦登録派遣である。

 介助者を選ぶことで、介助者に対して、介助の内容に対して、責任を取ることができるし、その分、もっと自由に介助者を使うことができるようになる。

 そういう意味で、推薦登録が松沢にだけという形にせよ認められたことは、大変意義深い。

 

 

*お風呂はやめてくれ

 そして意見交換。出された意見をいくつか要約して報告。

 「私はいいんだが、奥さんが、『これ以上ヘルパーが増えるんじゃよけい気疲れするから週3回でいい』とか言ってて、そういうのが事業自体を縮小させている。」

 「推薦登録はいいと思うが、結局それだけ人を集められるかという問題もあると思う。」(当日はきちんと答えなかったが、事務局としては財源さえあれば人は集められると思っている。現実的に私たちもそれで集めている。これまでのボランティアを募集するのとは『全く』違う、ということは確かだ)

 「お風呂をやめてくれとか、毎日のシャワー浴はやめてくれとか、●●は医療行為だとか、業者が市役所の人を連れてくるという感じで一緒に来て、説得にかかろうとする。だから、私なんかは抵抗するけど、黙ってたら、どんどん禁止されるようになってしまう。」

 「お風呂の付添いがいると言われて、お風呂は結局ヘルパーでは入っていない。それから第一土曜日の午前中はミーティングだからとかで、派遣されない。業者と市と利用者で話し合おうと言っているのになしのつぶて。」

 「虹の会も浦和西部地区の委託業者と市と三者同席で何度か話し合ったことがあるが、結局、話合いが成立しないようなことになってしまった。私たちは、それ以降、市に対してのみの運動ということで動いてきた。」

 「推薦だけじゃなくて、現状のヘルパー派遣についても考えて行かなければならないと思う。」

 「松沢を含め虹の会の場合は、ヘルパー派遣に対する問題点をずーっと指摘してきたという経緯がある。ヘルパーの質が低いとか、もっと細かいことも含めていちいち市に話をしていたという経過がある。その中で、やはり推薦登録という形が一つの解決方法として出てきたんだと思う。」

 「知的障害なんですけど、市のヘルパーに来てもらうとしても、何をやってもらうのかというと…かなり難しい。特に外出とか、そういう援助がほしいと思うけど、現状の制度では拾えていない。推薦が通れば十分使える。」

 「肢体障害より、知的障害者のほうが推薦が必要かもしれない」という意見もありました。

 

 

*「障害者には派遣しない?」

 市内の人だけでなく、他市の人からもヘルパーの状況についての話があった。

 「私は鳩ヶ谷にすんでいるが、親も老齢になって、ヘルパーを派遣しろと言ったら、老人には出しているが障害者には出さないとか言っている。『来年から出す』ようなことを言っていたのに、異動があって、話が振り出しに戻ったりと、なかなか進んでいない。」(この鳩ヶ谷の件については、全く進んでいない市もあるんだ、という驚きとどよめきがあった)

 「春日部でも、推薦を申請したが蹴られた。介助者が学生だからダメとか言われた。」(松沢が登録した介助者のうち、数人は学生)

 

 

*「老人」とは別枠で

 「ヘルプ内容が、老人対象という感じがする。研修に障害者を呼ぶとか、そういうことが必要。」

 「制度の枠自体も、老人と分けさせる。例えば予算についても分けるとか、そういう風に障害者に対するヘルパーと老人に対するヘルパーを分けることが必要。」

 

 

*どんな運動を展開するか

 今回、この話合いを通してわかったことは、現状のヘルパー派遣というのは、かくも使えないものであるということ。

 ヘルパーの質や介助内容など、解決すべき問題は山ほどある。それを解決する一つの方法が推薦登録である。

 浦和市は、松沢に限って、という限定つきで推薦登録を認めている。ある意味では、推薦登録は始まったとはいえるが、まだ始まっていないとも言える。

 推薦登録を、市がきちんと認知し開けたものにすることが必要である。

 加えて、現状のヘルパー派遣を良くしていくために、個々の問題についても、積極的に取り組んでいきたいと思っています。

 当日も話が出ましたが、風呂の件や委託先による格差の問題など、言いたいことがあったら、ぜひ相談してください。一緒に市役所に行きましょう。

 

 

当日の話も含めて、要望書を市に提出します。

 

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相川宗一市長殿

松本五郎福祉部長殿

 

介助保障制度の充実を求める要望書

 

虹の会

会長 工藤伸一

 

 日ごろより障害者福祉の推進にご尽力頂きありがとうございます。

 私たち虹の会は、この浦和で障害者の地域での自立生活を進めるための活動を始めて15年目を迎えます。どんなに障害が重くても地域で暮らしたいという願いを実現させるために、介助保障制度や街づくりの問題にとりくんできました。

 この15年で状況は大きく変わってきています。確かに、以前に比べれば介助保障制度の面も整備されてきているとは思います。

 しかしながら、この浦和で、要介助の障害者が安心して暮らすには、よりいっそうの介助保障施策の充実が必要なのはいうまでもありません。

 現状の障害者の生活実態を基に、以下の点を要望します。

 

 

@ ホームヘルプ事業について。推薦登録派遣を希望する障害者に対しては、推薦登録派遣を実施すること。

 

 現在の浦和のヘルパー事業は、利用者にとって、本当に「一市民としての生活を保障する制度」なのか、というと、そうはなっていません。

 現状の問題をa派遣時間、b介助内容、c介助の質、の3点から述べます。 まずa派遣時間、について。現状の派遣時間は、利用者の要請に従って市が決めるわけですが、利用者の要請する時間の派遣が実現していない例が多くあります。

 これも市としては「利用者と話し合って決めている」というかもしれませんが、「その時間では委託先の会社で派遣できないと言われた。他の利用者との兼ね合いもあるから30分遅らせてくれ」「30分削ってくれ」と言われれば、利用者は「我慢」するしかありません。

 また、巡回や滞在の時間帯など、市の決めた線引によって、介助が分断されたり、本来必要な介助時間が実現しない例もあります。

 つまり、この「派遣時間の決定」に際しては、「利用者の意向」は意向として第一に考えられているとはいえ、決定については、結局「委託先や市の都合」によって決められているといっても過言ではない状況なのです。

 とはいえ、確かに、市の窓口の柔軟な対応で、利用者の希望に近い形での派遣が認められるケースも無くはないのですが、ほとんどは、利用者が「我慢する」ことで解決されているのが現状です。

 

 それに、そもそも、派遣時間を一定に決めるという行為が、市民としての生活を制限しています。

 毎日の生活は、天候や体の調子はもちろん、さまざまな社会生活上のつながりから変化に富むものであります。言い方を変えれば、「お客様」としてでなく社会に参加しながら市民生活をおくっている、ということは、毎日が変化に富んだ生活をする、ということとつながっています。

 逆に毎日が、自ら望まないのに「変化に富まない一定の生活を強いられる」ものであるとすれば、「社会生活・市民生活を制限されている」ということであります。

 そうした観点から、果たして、現状の浦和のヘルパー派遣は、「社会生活を制限していない」と言えるでしょうか。

 「あしたはヘルパーが来るから外出できない」「あしたは風呂の日だから行けない」こんな声は、利用者の間でごく「普通に」交わされています。この状況は、あきらかに「一定の時間にしかヘルパーを派遣しない現在のヘルパー事業」が要介助障害者の社会生活を「制限」しているといえます。

 「●曜日の●時から●時まで、食事の介助が必要」というような考え方での派遣形態は、実は「障害者はおとなしく家にいて、世話をしてくれる人を待って生活する」というノーマライゼーションからは程遠い考え方に基づいた派遣でしかありません。

 私たち利用者は「必要なときに必要な介助が受けられればいい」のです。

「●曜日の●時から●時まで」の介助が必要なのではないのです。

 今後は、市としても、派遣形態について、こうしたノーマライゼーションの考え方に照らして、発想を転換すべき時に来ていると思います。このまま、障害者を家に縛りつけておくのは、人権的観点からも許されるものではありません。

 

 また、しかしながら、こうした状況の中でも、自ら介助者を捜し、社会参加をできる限り実現しようと生きている要介助障害者は、浦和の中にもたくさんいます。

 例えば、ヘルパーの風呂の時間に外出が重なって、その時間に入れなかった風呂を、自ら介助者を捜すことで実現している障害者が、御存じのとおりたくさんいるのです。もちろん、風呂に入りたい時間にヘルパーが来てくれればいい(例えば「今日は外出するから、帰宅次第−いつもの3時間後−に来てくれ」というようなこと)のですが、そういう変更ができないために、一回断れば、風呂に入ることはできません。

 しかし、だからといって風呂に入らなかったり食事をとらなかったりするわけにはいかないので、現実には介助者を自ら捜す、ということになるわけです。

 逆にいえば、そういう介助者がいるのです。

 その多くはボランティアであったり、アルバイト(利用者が自腹を切る、とか、ガイドヘルプを利用するなど)的な人であったりします。その財源は細く、不安定で、十分な報酬が払えていません。

 こうした「ヘルパーが利用できないから、捜してお願いしている介助者」の存在を市はどう考えるのでしょうか。こうした「制度が拾えない部分を支えている介助者」−言ってみれば、ヘルパー以上に献身的に、利用者の生活に合わせて介助を行ってくれている介助者に対する処遇です。

 市が、「ヘルパーには金を出すが、同じことをしているこうした介助者に金を出さない」ということは、「障害者は決められた生活をおくって、ヘルパーが来るのを待っていろ」と言っているのと同じことです。それでは障害者の社会参加を進めようとしているとは言えません。(もちろん、現在の派遣上限がある状況では黙って生活することすらできないわけですが。)

 

 次にb介助内容、についてです。

 先に述べたように、介助内容はあらかじめ決められており、変更はできません。

 例えば、「その時間内で外出したい」という場合など、変更はできないので、結局ヘルパーを断って、ヘルパー外の介助者を依頼するという方法を取らざるを得ないのが現状です。

 また、「手足を揉むのは医療行為だからできない」「風呂は危険だからできない」「外出は危険だから、範囲(地理的な)を超えてはできない」などということが、さも当たり前のようにヘルパー派遣の現場では言われています。

 結局これも、ヘルパーではお願いできないので、自ら介助者を捜すなどして風呂に入いったり医療行為と言われることをお願いしているのです。そうした介助者には何の保障もせず、ヘルパーには保障するという市の姿勢は、まったく考え方が逆転しています。利用者にとってどんな人が一番介助者足りうるのかという観点ではなく、利用者をヘルパーに合わせようとしているのですから。

 おかしな話としては、「医療行為だからできない」と言われたために、そのヘルパーのいる時間内に、別の介助者を呼んで、その行為のみをその介助者にしてもらったという話もあります。その介助者はもちろん特別資格があるわけではありませんが、利用者との長年の付き合いで、利用者自身が信頼してお願いできる介助者です。

 ヘルパーの資格云々ではなく、「介助者・利用者の関係の中で、介助内容がその利用者に対してきちんと遂行できるかどうか」が問題なのだということを教えてくれる格好の事例だと思います。

 こういう意味からも、推薦登録は実施されるべきものであります。

 

 また、介助の内容はプライベートにかかわることが多いので、同性介助が基本です。今年夏から男性ヘルパーが採用されたようですが、こちらの希望通りに来てくれるわけではなく、結局、毎月のヘルパーの予定表が届いた後に、ヘルパーが来ない日の介助はヘルパー外の介助者に依頼しているというのが実情です。

 こうしたヘルパー外の人を認めること、これが推薦登録の一つの意味でもあるのです。

 最後にcです。ヘルパーの質については、これまでも何度も話をしてきています。

 「教え諭そうとする」「生活の中身に口を出す」ひどいのになると「幼稚語を使う」といったヘルパーもいるようで、障害者を「対象」としか見ていないヘルパーはまだまだいるようです。

 利用者の中には「時間的にはヘルパーを増やしたいけれど、疲れるから増やさないことにした」といった人も多くいます。

 介助者とは、利用者がプライバシーをさらしてもいいと信頼できる相手でなくてはなりません。そういう意味で、現在のヘルパーの利用者に対する対応は、利用者の立場に立って行われているとは到底思えません。(これはヘルパー個人の問題というよりは、研修の内容が問題だと私たちは思っています。)

 

 加えて、推薦登録派遣は、知的障害者にとっても大変有用な制度であります。

 現状のヘルパーは、質的に、身体障害者の介助すら信頼できる状況ではない

ことは、先に書きました(もちろんいいヘルパーはいるけれども、全体として)。

 こうした状況の中で、知的障害者自身が安心して介助・援助を受けられるヘルパーを確保するには、推薦登録派遣は必要です。

 

 さて、繰り返しになりますが、こうしたさまざまな状況を解決する一つの派遣方法が「推薦登録」であると、私たちは考えています。

 8月から、ヘルシーライフと松沢さんの間で話合いが成立し、ヘルシーライフを通しての推薦登録が実現しています。

 この導入で、ヘルパーとの人間関係で(なにしろ一週間に何人ものヘルパーが入れ替わりたち代わり入っており、また、本人の望まない交代が何度も行われていた。)悩むこともなくなり、また、時間的にも自分のスケジュールに合わせた介助を依頼することができるようになり、介助的には安定したということです。(もちろん、時間数的には足らず、松沢さんが使う全体の介助料は、赤字状態である。これは、昨年までの「ヘルパー派遣」を念頭において市に申請した時間数であり、「ヘルパーじゃなくて自分の推薦する介助者の派遣だったら、もっと時間数は多く申請したはず。」ということ。結局「ヘルパー」では疲れるから現状の時間数で申請していたということである。とはいえ、浦和には派遣上限はあるので、限界はあるが。)

 こうした推薦登録派遣を、希望する場合には松沢さん以外にも実現するようにすることが必要です。

 そのためには、ヘルシー(委託業者)と利用者に任せるのではなく、市がもっとこの推薦登録に関わって、形を整えるなどのことが必要です。

 少なくとも業者を通しての推薦登録は、業者に意味がないばかりか(金は流れるが)利用者にとっても意味がありません。市が直接運営するなり、また他の方法で整備することが必要であります。

 

 障害者自らが推薦したヘルパーを派遣するということは、ヘルパーを増やそうとする市としても十分に検討に値する内容のもののはずです。

 この「障害者自身が自分の抱えている介助者を登録ヘルパーとして推薦し自分用に派遣させる」方法は、東京、大阪、北陸、中国、九州などの全国で行われています。

 そして、この方式について、厚生省更生課(現障害福祉課)は、重度障害者への現状のヘルパー派遣の実施では以下のような問題があると、6年度の主管課長会議資料で言っています。

 1重度の全身性障害者には、障害者一人一人介護の方法が違い、一律の研修で養成された、1〜3級のヘルパーでは対応できない。

 2言語障害など「長期間介護をしている専任の介護人でないと、話が聞き取れない」などのコミュニケーション技術の問題を現ヘルパーでは解決できない。

 3重度障害者の介護には、裸を見せ、入浴、排泄、抱えるなどの重労働介護があるため、男性障害者には男性ヘルパーが必要であるが、現状では、行政が男性ヘルパーを確保することができていない。また、同様に、重労働介護ができるような体力と能力を持ったヘルパーを確保することができない。

 以上のようなホームヘルプ事業の問題を解決するために、厚生省更生課は平成6年3月の主管課長会議資料の指示事項(14ページ〜16ページ)で、上記1〜3のような問題に対処するために、という文の後に、以下のように書いて、いわゆる推薦登録方式のヘルパー制度を公式に「課として」認める形を取っています。

 『こうした者への派遣決定に当たっては、利用者の個別の事情を十分考慮し適任者の派遣をおこなうように努めること(中略)この際、身体障害者の身体介護やコミュニケーションの手段について経験や能力を既に有しているものをヘルパーとして確保するような方策も検討に値する』(この「検討に値する」という文は平成7年度の全国係長会議・平成8年の課長会議の指示事項では「積極的に図ること」に強化されています。)

 

 加えて、今年7月28日には、埼玉県福祉部長から各市町村長(障害福祉主管課)あてに「障害者ホームヘルプサービス事業の実施等について」という通知が出されました。 ここでは、上限の撤廃などとあわせ、「ホームヘルパーの確保に当たっては、介護福祉士等の有資格者の確保に努めるとともに、障害の特性に対する理解や利用者との間におけるコミュニケーションを必要とすることから、過去において障害者の介護経験を有するものの活用を積極的に図ること。」と通知が出されています。

 これは厚生省の動きに連動して、県が推薦登録派遣を積極的に図るよう市に働きかけているものです。

 

 こうした状況の中で、一刻も早く推薦登録派遣を、希望する人に開けたものにすることを私たちは求めます。

 

 

A ガイドヘルプ事業の時間数・単価アップを行うこと。

 

 ガイドヘルプ事業は、県単の介護人派遣事業から移行したものですが、他の市の介護人派遣事業と比べて、時間数がかなり少ない状況です。

 現在、県の介護人派遣事業の要綱からは上限項目は削除されており、128時間というのも、もう昔の話になっています。

 今年度、鴻巣・川越・所沢・狭山・入間・朝霞・草加・蓮田など、少なくとも11の市町村では上限が128時間。各市町村の上限の平均をとると100時間は越えるようです。にもかかわらず、浦和は72時間と、県内では、かなり低レベルということになっています。

 一度病院などに外出すれば、大きな病院だと一日仕事になってしまいます。(大きな病院でないと障害者ということで敬遠されてしまいがちであるということもあります)そうした介助を必要とする場合、月72時間というのは少ないことは明らかです。

 一刻も早く、県内トップレベルまで戻してもらいたいと思います。

 単価については、1280円ということですが、厚生省の示すヘルパーの手当基準までは最低引き上げることを求めます。

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