4/14に第8回社会保障審議会障害者部会が開催されました。

自薦ヘルパー推進協会本部事務局  

 今回は、
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■就労支援
@就労支援における福祉工場、授産施設、小規模作業所等の役割
A福祉的就労から一般就労への移行の在り方(雇用との連携等)
■住まいの確保
○住まい(生活の場)の在り方
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のテーマで議論がなされました。

 今回も介護保険と障害者施策の話は全くでませんでした。

 まず、障害者の就労状況について、事務局から資料説明がありました。

■障害者の就業状況について
・就業年齢の人数は身体障害者125万、知的障害者26万、精神障害者149万 人。就業しているのがそのうち、身体障害者52万、知的障害者13万、精神障害者 61万人。(就業は広い意味で、雇用、自営、授産、作業所をさしている)
・身体障害者は就業している人が42%いるが、そのうち36%が雇用・自営。  知的障害は他障害とくらべると授産のシェアが多い。自営よりも雇用のほうが多 い。
 精神障害者は、41%の就業で身体とかわらないが、常用雇用が少なくてパートタ イムが多い。

■福祉施設から一般就労への移行状況
・盲、ろう、養護学校の卒業生の進路の資料では8%が進学、就職が2割弱。過半数 は、社会復帰施設(作業所も含む)に行っている。
・社会復帰施設からの就業を理由に退所する割合は全体でみると1.1%。就職より も他施設への移行での退所が多い。
・就職した人の在所期間については、精神障害者では3年未満の人が多い。知的障害 者の場合には逆に入所系の施設では5年以上が多い。比較的長く施設にいて、それか ら就職している。

 続いて、丹下委員(NPO 障害者雇用部会)、斉藤委員(全国社会就労センター協 議会)、藤井氏(きょうされん)から意見発表がありました。

 丹下委員は経済団体の立場から、企業が障害者雇用を進める際に求める施策につい て話をされました。企業の障害者雇用を進める動機付けとして、「企業の社会的責 任」と「法定雇用率による雇用義務」をあげていました。しかし、最近話題になって いる法定雇用率未達成企業の情報公開については、「納付金制度は企業に対するペナ ルティの制度ではない。企業が障害者雇用を進めることを考えて、それが何らかの理 由でできない時に納付金を納付する制度である。納付金を払うことにうしろめたい気 持ちになるのもおかしい。多くの企業が雇用率未達成ということで名前がでることに ついて困惑している。」という見解も示していました。
 福祉との連携については「企業の求人と紹介がスムーズにつながること」「仕事と 人材とのマッチングと見極める期間」「雇用後に退職した場合のフォローと次の就職 につなげる機関」「居住の場と作業施設、就労支援組織と授産作業施設などの機能分 化」「就労相談の一元化」などをあげていました。
 精神障害者の雇用については、新たな雇用よりも、企業で雇用されている人が精神 障害をもった場合どのように継続して雇用できるかが現在直面している課題として挙 げられました。

 斉藤委員は、入所授産施設を通所授産施設に切り替え、生活支援とあわせて取り組 んできた経緯を踏まえた話をされました。その経験から「通過施設として一般雇用に 送り出したが、企業で身心ともに疲れて、退職して戻ってきてしまっている。健常者 のように自分の意思ではなく、企業から退職をせざるをえない障害者がいる。それを フォローする仕組みが日本にはない。」「企業に勤めると住む場所、福祉サービスの 支援がなくなる。暮らしの支援がないと、就労がなりたたない。独自に3名の生活支 援のスタッフを確保し、定期的相談・買い物・調理・子育て支援などを、障害者の仕 事が終わる5時以降に生活支援スタッフが各家庭をまわって支援している。」との指 摘をされました。

 きょうされんの藤井氏は、就労・介護は手段であって、目的は安心・安全・安定な 地域生活であるとし、これを「日中・働くこと・社会参加」「住まい」「人的な支 え」「所得保障」の4つの課題に整理して話をされました。
 増え続ける小規模作業所については、「就労施策は一般就労を頭におきながら、福 祉工場、授産施設、デイサービスを作ってきた。作業所はこれのどれにも対応してお り、一般で就労できる人から重症心身障害者のデイサービス的な利用もある。既存の 施策の量と質の不備から作業所が必要で、質と量が整備されてくると、これほど多く の作業所は必要なくなる。」との考えが示されました。
 また、これまでの労働は「雇用・自営」「職業訓練」、福祉は「福祉工場・授産」 「アクティビティ」をやってきたが、今後は労働も福祉も4分野の全てをどうグラ デュエーションをつけて行っていくかであると述べました。

 このように、発表者のこれまでの取り組みからの視点を反映した意見発表でしたの で、各委員よりその視点の違いについての意見もありました。
「企業側と施設側の見方が違っていて、近づいてきてはいるが、企業は利潤追求、施 設は発達保障・生活保障で、これは基本的に違う。この溝をどう埋めるかが重要であ る。障害があるから職業能力に欠けている部分があるという見方ではなく、障害があ るがゆえに得意な分野がある、いろんな仕事の組み合わせで可能性がでてくる、そう いう発想でないとどこまでやっても溝は埋まらない。」
「労働には「収入」「労働力」「生きがい」という要素が含まれている。労働とは何 かをみないと障害者の労働権の問題はわからない。」
「企業に競争があるのはわかるが、社会的責任もある。欧米では公的な受注をしてい くためには一定の条件を満たさないといけない。競争は値段だけでなく、アファーマ ティブなことも含めての競争である。」
「福祉的就労と一般雇用があるが、その中間的な仕組みも必要である。全ての人は雇 用されるという考えのもとで、一日の午前中だけ働くなど様々な形態を雇用に取り組 んで行く。就労のための個別支援計画、第三者評価も必要ではないか。」

 引き続いて、住まいの問題については、知的障害者・精神障害者の公営住宅単身入 居の問題、公営住宅を活用したグループホームの設置、住宅を借りる際の保証人の問 題、家賃補助制度(生活保護住宅扶助の単給)、在宅就労者における住宅と就労の関 係などが課題としてあがりました。

 3時間半で会議でしたが、就労支援と住まいを扱うには短すぎるという意見が複数 の委員から出され、今後の部会の中で再度検討の時間を設けることになりました。

 次回は4/28の午後に、「ケアマネジメント等の在り方」「サービスの計画的な 整備と財源(配分)の在り方」について議論されます。ケアマネジメントと財源とい う介護保険と障害者施策の問題について絡んでくるテーマであり、注目されます。

※障害者部会全体の議論については以下をご覧下さい。傍聴メモですので取 り扱いご留意ください。


ご注意

 これは傍聴者の個人の要約メモですので、細かい発言内容に間違いや抜けも多いと思います。あくまで全体の流れの雰囲気を感じる参考にとどめてください。

 転用はお断りいたします。順次訂正していきますのでほかの方にお知らせする場合はホームページアドレスのみお知らせください。繰り返しますがこれは短時間で個人がまとめたメモですので、委員各自の発言内容を正確に反映できていませんので、これをもとに各委員に対し抗議や批判を行うようのないようにお願いします。

2004.4.14 14:00〜17:30
社会保障審議会・障害者部会(第8回) 傍聴メモ

※このメモは傍聴者作成のメモであり、議事録ではありませんので、取り扱いご留意ください。

自薦ヘルパー推進協会本部事務局  

京極部会長

 第8回を開催します。委員の出席状況と資料説明を。

間課長補佐(企画課)

 4月1日で人事異動があった。新たに着任した者を紹介する。金井 国立施設管理室長(前社会参加推進室長)。江波戸 社会参加推進室長。大島企画官、坂崎 社会復帰対策指導官。欠席は小林、西島、福島委員。
 お手元の資料は、資料1:論点整理。資料2:前回までの議事概要。資料3:障害者の就業状況について。資料4:福祉施設から一般就労への移行状況。資料5:丹下委員提出資料。資料6:斉藤委員提出資料。資料7:藤井氏提出資料。資料8:障害者の住まいの状況について。資料9:地域生活支援検討会における住まいの確保に関する意見について。
 次回は4月28日開催。

京極部会長

 今後の障害者施策の大きな方向についての議論、前回は、ライフステージ等に応じたサービス提供について議論した。論点整理をご覧ください。今回は就労支援と住まいの確保を中心に議論いただく。
 まずは就労支援について。事務局の説明だけでなく、丹下委員、斉藤委員、きょうされんの藤井さんから意見発表を予定している。

間課長補佐(企画課)

 資料2は、前回同様、いただいた意見を事務局のほうで整理したもの。太い字が前回出された意見である。
 資料3:障害者の就業状況について。 p1は就業形態別に見た就業状況の推計である。就業は広い意味で、雇用、自営、授産、作業所をさしている。
 就業年齢の人数は身体障害者125万、知的障害者26万、精神障害者149万人。就業しているのが身体障害者52万、知的障害者13万、精神障害者61万人。これをもう少し詳しく見たのが2p以降である。
 2p。身体障害者は就業している人が42%いるが、そのうち36%が雇用・自営。知的障害は他障害とくらべると授産のシェアが多い。自営よりも雇用のほうが多い。障害の特性がでている。精神障害者は、41%の就業で身体とかわらない。しかし、常用雇用が少なくてパートタイムが多い。障害特性がでていると考えている。
 資料4:福祉施設から一般就労への移行状況。 1pは盲・ろう・養護学校の卒業生の進路の資料。8%が進学、就職が2割弱。過半数は、社会復帰施設(作業所も含む)に行っている。 次のページにいくと、社会就労センターの調査で、授産施設で働いている人の希望調査である。45.7%と一般雇用への高い希望がある。特に精神障害者だけを見ると64.5%とさらに高い。その一方で授産に入りたくて地域で待っている人もいる。
3pは社会復帰施設からの就業を理由に退所する割合の資料である。これは資料に誤りがあったので、再配布させていただいた。全体でみると1.1%が就職を理由として退所している。特に身体障害者更生施設、知的障害者入所授産施設、精神障害者通所授産施設における退所率が高い。 まとめると、5割くらいが養護学校の卒業後に施設に行き、そのうち1%が一般雇用に移っているという流れになっている。
4pは退所の理由についての調査結果。総じて就職よりも他施設への移行で退所という理由が多い。
5pは退所者のうち就職を理由とする者の割合である。知的障害者の入所授産・福祉工場、精神障害者の通所授産は退所者のうちの就職者の比率が2割以上と他と比べて多い。
6pは就職した方の在所期間を示したもの。3年未満の人は精神障害者では多い。知的障害者の場合には逆に入所系の施設では5年以上が多い。比較的長く施設にいて、それから就職している。
7pは就職以外の理由で退所した人の在所期間である。精神障害者は3年未満が多く比較的移行が早い。身体・知的の入所施設は5〜10年が多い。
8pは全退所者の在職期間である。参考までに。
9pも参考データとして、国立の身体障害者リハビリテーションセンターの理療教育課程の卒業生の進路がどうなっているか。71%のかたが何らかの就業、開業をされている。10pは一般リハビリテーション過程の卒業生の進路。こちらも半分弱が就職している。

京極部会長

 続いて委員からの発表をお願いする。事務局資料への質疑は全体の討議で。
 まず、丹下委員から発表して、その後で、質疑。一人15分程度でお願いします。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 企業で仕事をし、経済団体で働いてきた立場で発言する。働くことのできるかたは働くことで自立すべきである。多くの企業も同じような考えをもっているが、今日の話はあくまでも個人の意見として話す。
 最初に企業と人ということについて。企業の人間は福祉の世界のことは知らない。福祉サイドの人も企業のことを知らない。広く福祉の人にそもそも論を知っていただきたい。
 企業の本質は付加価値、継続性の追及である。手元の資料をご覧ください。
 企業は、人、物、金で構成されている。これが上手くいかないと、競争に負けて、雇用も出来ない。その中で、人が最も重要な要素である。個人の能力をいかに発揮させ、処遇するか。勤労者の立場では自己啓発、生産性が常に問われる。障害者にとってこの条件は厳しい。しかし、雇用したからにはハンディに考慮して戦力として活用したい。雇用率のために誰でもいいから雇用するということはありえない。
 企業には様々な仕事、多種多彩な人がいる。誰であれ、雇用の能力、レベルと方向性、貢献できる仕事はある。
 日本の企業は人間関係を重視している。雇用した人をなるべく雇っていきたい。積極的に見捨てようとは思っていない。これは障害者も健常者も関係ない共通の考え方である。
 経済が暗転して、きつい経済環境におかれている。全体としては実雇用率は上がっている。企業にとって、障害者雇用に積極的に取り組むような引き金になった。
 資料p2の雇用状況は、制度上の(重度者をダブルカウントする)カウントではなくて、雇用されている頭数をカウントしたデータである。平成10年と15年を比較して雇用が進んでいるといるというデータではない。障害者を雇用している企業数では300人未満の会社が多く、2/3をしめている。しかし、300人未満の会社の雇用率はこの5年で下がっている。一方、300人以上の企業では雇用を維持している。これは特例子会社の影響もあるが、300人以上の会社の動向が鍵であると言える。
 未達成率という欄があるが、これは各グループのどれもこの5年間で高くなっている。未達成と言っても1人だけ欠けているという企業も多い。そういうところは頑張れば未達成率をクリアできる。 しかし、従来実績がない、これから雇っていく企業の増加が大事である。
 平成10年と15年との比較をすると、300人以上の企業は改善が進んでいる。300人未満は厳しい。思いはあってもなかなか実現できずにいる。300人以上の規模でいっそうの改善がされて、それを先導者として300人未満の企業の改善も進めていきたい。
 企業が障害者を雇う動機について2つある。ひとつは理念的なことである。就労可能な在宅の障害者は人口の4〜6%という推計がある。相当な数の障害者がいる。国民が受け止めないといけない問題である。雇用労働の中で民間企業の占める割合は高い。企業が積極的にやるべきである。こういう考え方が大企業では定着しつつある。年々増えている。CSR(Corporate Social Responsibility)−企業の社会的責任、これをきちんと考える企業が増えている。近代的な企業があるべき当然の姿を株主、消費者から期待されている。企業もそれを受け止めている。そういう概念の中に障害者雇用がウェイトを高めている。
 次に、雇用義務の履行。これも立派な動機のひとつである。企業は企業イメージ、社会的評価を重視しており、障害者雇用の意味は大きい。職安の指導。雇用促進法の改正で除外率の削減により、雇用率が低下する。これで奮起している。
 情報公開、厚労省としてどのような施策をとるのか。多くの企業が雇用率未達成ということで名前がでることについて困惑している。
 今後の障害者雇用を需要と供給のバランスで考えると、頭数では雇用されている障害者は約18万人である。1.8%の義務をクリアするためには約30万人雇用しないといけない。12万の雇用不足。求職登録者は15万5千人いる。しかし、企業も誰でもいいというわけではない。むしろ、求職者のプールをふやして、多くの障害者に入ってきてもらうべきである。 企業が求人を進めたときに供給が可能かどうか。また、企業の障害者に対する期待にこたえられるようにできるのか。この2つを議論の共通のコンセプトとして欲しい。
 企業の行うべき努力については、今回のメインテーマではないので割愛して、次に福祉との連携について話をする。
 求人に対する速やかな反応が重要である。企業の採用計画に対応できないと、企業の求人意欲に水を差す。職安、養護学校との密接な連絡が望まれる。
 求職者情報の問題がある。求職者の情報を企業は重視している。仕事と人材とのマッチング。求職者の情報は、良い方、まじめな方という評価ではなく、その人が何ができるのか、社会人としての訓練ができているのか。ハローワークからの情報にはこういう情報はなく、それをどうやって知るか。
 仕事と人材のマッチングは難しく、健常者でも同じである。企業が求める仕事と人材がフィットするか見極める期間が必要である。厚労省のトライアル雇用の制度は良い制度だと思う。十分な見極めの時間が欲しい。
 ジョブコーチの問題。雇用後に退職した場合のフォロー。次の就職につなげる機関が必要である。
 企業の立場から期待している真の就労支援ネットワークとは何か。問題解決のためにあって欲しい、福祉と就業サイドのネットワーク。職安、地域職業センター、就業生活支援センター、職業開発センター、福祉工場・授産施設。盲・聾・養護学校などのネットワークが重要である。
 ハローワークが専管する体制は重要だが、しかし、広い地域の中で全ての問題を扱えるか。ハローワークは求人・求職を調整して、雇用率を高めるのが本来の役割である。これまではハローワークは求人の開拓を主にやっていきた。今後は求職の開拓が必要ではないか。
 障害者就業生活支援センターは定着し、機能も発揮しつつある。民間の就労支援組織との役割分担をすべきである。
 授産施設については、これまで就労支援は授産施設が立ち上げてきた。これは評価している。授産施設に関して、福祉法では就労支援の役割が位置づけられていない。雇用促進法でも位置づけがない。授産、就労支援、職安の連携が法的には位置づけられていない。今の状況は意欲がある職員がボランタリーに動いている。障害者個々人の情報を把握する。企業が最も求めていることである。
 福祉分野と雇用セクターの制度的な連携が抜け落ちてきた。就業支援と就業安定の機能がパートナーとしてやっていかないといけない。
 企業が期待していることは、施設に機能の重複があるなら整理すべきである。居住の場と作業施設との機能の分担が必要である。就労の可能性がある人は、就労支援組織に登録して道を開く事を義務として定める。就労支援組織、授産・作業施設との機能を分化させる。授産とは別の組織にする。就業安定の組織も就労支援の位置づけを明確にする。
 障害者一人一人が雇用が可能であるかどうか見分ける。そして積極的に求職登録する。障害者の情報を提供してもらう。
 ジョブコーチが本人と企業にサービスを提供する。
 再就職への支援も必要である。
 ハローワークについては、本来この部会のテーマではないが、あえて言う。ハローワークを雇用促進法に位置づける。それにより可能性をひろげる。ハローワークだけが苦労するのではない。
 就労についてどうすればいいかの判断が、様々な機関でされている。しかし、もっと全国的な機関で一元的に判断できないか。全国的なサービス格差の解消にもつながる。障害者職業センターの構想には当初そういうことがあったのではないか。
 福祉と労働の結びつきを考えると、機能の重複がないか、税金の有効活用。雇用にでられる人は雇用、そうでない人は福祉。そういう見極めが財政負担も減らし、支援費の財政問題にも寄与するのではないか。

徳川委員(身体障害者施設協議会)

 私は京都で活動しているが、京都で障害者の職種の調査をした。建設業界の雇用率が高い。金融業会は低い。原因はわからない。金融業界には障害者に対する偏見があるのかもしれない。このあたりを調べればヒントになるかもしれない。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 京都府の例ほど全国的なデータでは業種別の格差は極端ではない。

笹川委員(日盲連)

 先ほどの話で納付金制度にはふれられなかった。納付金制度が雇用を推し進めているのではないか。
 障害者に100%の労働能力を求めるのは無理。企業としてはどこまで求めるのか。マイナス分についてなんらかの助成制度。それがあれば雇用は進むのでは。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 納付金制度はヨーロッパから導入したが、これは企業に対するペナルティの制度ではない。企業が本来、障害者雇用を進めることを考えて、それが何らかの理由でできない時に納付金を納付する制度である。 残念なことに、必ずしも障害者雇用に努力できていない企業がある。納付金が多い事は問題がある。
 しかし、納付金はペナルティではないので、納付金を払うことにうしろめたい気持ちになるのもおかしい。その企業がなぜ雇用を進められないかを説明できるかどうか。
 障害者を健常者なみと考えていない、ハンディは承知をしている。人間の能力を今の企業の管理制度の中で的確につかんでいくか。障害者の能力判断、企業の課題である。
 わが国は障害の故に労働能力をどれくらいを失っているか明確ではない。ADLについては明確だが、労働能力ついては明確ではない。これを別の角度でとらえていかないと。

京極部会長

 企業によっては納付金払っているのでそれでいいという所もある。納付金制度については将来的にいろんなやりかたがあるのではないか。
 職業能力・労働能力というときに、今は職業リハで対応している。しかし、個々の技術は企業に入ってから学ぶことも多い。技術より仕事への姿勢を見につけることが大事ではないか。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 雇用率と納付金の二つの制度で運用されている。個人的な見解として、障害者を雇用しにくい産業についての調整は必要。いかに努力しても雇用が遂行できないと言う場合に、それを支援をする別の制度があってもいいのではないか。
 フランスでは障害者施設を活用することで、みなしの雇用率とする制度がある。  

京極部会長

 職業能力は職場で身につく。企業によって仕事の内容が違うので、現場で覚えるしかないことも多い。職業能力よりも会社で働く心構えなど、そういう訓練が意外になされていないのではないか。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 おっしゃる通りで、千の企業があれば仕事の内容はそれぞれである。企業を業種でくくれても、仕事の内容はばらばら。企業に入ってからの訓練は大切。企業はそれに集中して障害者を内部で育てていきたい。
 この人は何ができるのが、何が不得手なのか。学校、就労支援機関である程度の訓練をしていただければ、企業の本音としては、就業は進む。

新保委員(精神障害者社会復帰施設協会)

 各機能の役割をきちんとして欲しいということだった。それは我々も取り組んで、キャリアパスを図れるような施設のありかたを考えたい。どうやって一般雇用に結びつけるかは大きな課題である。
 ひとつ気になるのは精神障害者の雇用は3Kの現場が多い。ハローワークが雇用拡大のために企業を回る事が大事ではないか。その前提にたって、零細企業とハローワークと連携できる仕組みが必要ではないか。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 ハローワークは、雇用義務の対象となる15人以上の企業で精一杯。それ以下は手が回らない。本来は等しくやらないといけないが、しかし、実際問題として難しい。ハローワークを中心とした障害者雇用への協力体制ができていない。職場開拓は就労支援事業の機能で取り組むべきではないか。
 協力体制の中で、3K以外の仕事にも精神障害者が進出していけるようにするのが重要だと思う。

?委員

 精神障害者の雇用義務についてはどうか。
 企業のモチベーション、雇用率を通じてできている。精神障害者は雇用義務がない。今後の大きな課題ではないか。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 厚労省でも議論されていると聞いている。私個人としては、精神障害は基本的には雇用の対象として十分可能になってきている。しかし、いろんな対応があるにしても、病気であることを考えると、企業が受け入れるときに、医学分野と企業との連携が欠かせないのではないか。しかし、企業が頼りにする、相談する医師の数が全国的に12000人しかいない。企業が雇用するときに大きな不安となっている。
 企業の中の勤務にどうとけこんでいくか。精神障害者は全体的に長時間の勤務難しい。短時間の勤務をどういう人事制度で迎え入れるのか。企業が考えないといけない課題である。
 企業が今、考えているのは、現在在籍している労働者で精神障害をもった人への対応が先で、これをどうするのか悩んでいる。

永井委員(世田谷文化生活情報センター)

 障害者の職業判断について、日本の障害者のネガティブリストは外国に比べて厳しいのではないか。医学、薬の進歩で、可能性は広がっている。たえず見直していく必要がる。
 千のキャラクターがあり、ひとりひとりをおっかけていく。労務関係のNPOも活用しながら。(ネガティブリストには)こういう病気をもった人は運転できないというのがある。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 欠格条項の話だと思うが、それについては解決の方向で向かっている。しかし、それでも問題は残る。ご本人がどうやって乗り越えていくか。  

永井委員(世田谷文化生活情報センター)

 個々人をパーソナルにみていくことについてはどうか。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 雇用促進法に、精神障害者の定義があって、“症状が安定し、就労が可能な状態にあるもの”ということになっているが、だれがどのような視点で判断するかはかかれていない。全国一律の判断基準で企業が受け入れられるものであって欲しい。

江上委員(全家連)

 私はH13年の10月までは、北九州の工場で2000人の中で働きながら家族会の活動をしていた。従業者の5%が精神障害者で一緒に働いていた。
 今、企業にいる精神障害者を企業内でケアをしながら戦力として考えていくのか。
 精神障害者の雇用率のカウントについてはどう考えられているのか。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 企業内に入社されて障害がでたというかたの実態は詳細にはわからない、的確な答えかどうかわからない。
 それまで培った人間関係の中で、周辺の同僚に知られることなく治療したいという心境があると思う。それについては大切で、プライバシーの問題、それを企業がシステムとしてどうとらえていくのか、正確な答えを見出せずにいる。
その問題の中には精神障害者の中にはいろいろいて、元来、入社以前から要素はあったが、入社後に発病した人もいる。一過性のかたもいる。そういう見分けは企業には難しい。実態をほりさげていくことが良い事かどうか。これは現在行われている厚労省の研究会のほうで企業に示唆を欲しい。

京極部会長

 あと、2人、いますので。このあたりで。
 次に斉藤委員の発表をお願いします。

斉藤委員(社会就労センター協議会)

 今、丹下委員から提言があった。企業は数ではなく質を求めているということであった。現在の厚労行政では、はじめて省内を横断する形で就労問題に取り組んでいる。大変重い意味合いをもっている。今日まで未解決の一般就労につながらない人への仕事の創出、小規模作業所、福祉施設に対する官公庁の優先発注に期待している。
 私も自分で会社を経営しているので、企業の立場もわかる。
 資料の16pを見ると雇用率が改善されていない。p17では、平成7年度と平成14年度の卒業者の就職率も大きく下がっている。養護学校の卒業生が就職できない。一般の高校生の就職も厳しく、それと比例して、養護学校の卒業生の就職も悪化して、社会福祉施設へ行く者が増えている。
 雇用市場が縮小している。事業所数、従事者数、会社企業数が減っている。法定雇用率未達成企業の情報公開をした。果たしてこの公表がどのくらい有効性をもっているか精査しないといけない。
 私は身体・知的の授産施設、福祉ホームを経営している。最初は小規模作業所から始まった。わが国の入所施設はプライバシーがない。それを問題だと思い、入所を廃止して、通所授産と生活の場を作った。働く場として通所授産施設を考えている。
p9は利用者の入所前の状況である。最初は通過施設として、一般雇用に送り出した。しかし、一般雇用しても、企業で身心ともに疲れて、退職して戻ってきてしまっている(企業離職者が約半数)。養護学校卒業生も23名いる。能力開発校からきている人もいる。
 健常者のように自分の意思ではなく、企業から退職をせざるをえない障害者がいる。そそれをフォローする仕組みが日本にはない。欧米では保護雇用の仕組みがある。
p10は所得の状況。生活をするために働いて賃金を得るわけだが、平均賃金は約96000円という状況。  住む場所の問題、また、福祉サービス。企業に勤めるとそういう支援がなくなる。暮らしの支援がないと、就労がなりたたない。これは実践でも証明されている。
 町の中で生活をするために20箇所の住宅を借りた。14箇所の福祉ホームも確保した。5名のかたが結婚することができた。これに対して国も都も何もしてくれない。我々は独自に3名の生活支援のスタッフを確保した。定期的相談、買い物、調理、子育て支援。障害者の仕事が終わる5時以降、生活支援スタッフが各家庭をまわって支援している。
 授産施設では費用徴収と所得税をダブルで徴収されている。人によっては得た収入がほとんどなくなる。
 長年、寮にいたために一人で生活するのは不安と言うことで、2人で家を借りて生活している人もいる。
 居住環境は駅、飲食店、市役所からなるべく近いところに借りている。1件の家を借りるのに23件の不動産を回らないといけなかった。
 入所授産から通所授産に変更することで年間7800万円の公費が減収となった。
 授産施設の約70%が1・2級の障害者。授産の中身が精査されているのか。セルプ協が行った調査をもとに議論されている。このような調査は本来行政がやるべきである。的確な情報を国がとって、仕事に結びつく人がどれだけいるのかを考えるべきである。
 授産は安いにしても給与を払っている。一方、更生施設は給与をはらわずに作業をさせている。更生施設でも賃金を払う施設がでてきた。作業をして賃金を払っていないのはおかしいという考え方。授産施設と更生施設とどう違うのか、ここをちゃんと見ていって欲しい。

堂本委員(千葉県知事)

 本来なら行政がやるべきこととというのはその通りで、遅まきながら千葉では就労を希望している障害者にどういう仕事が向いているのか、キャリアセンターとして、訓練、ジョブコーチをしている。工業団地の中に開設したが、早くも就職できた人が2名いる。ジョブコーチが一緒についていっている。
 企業は障害者を就労むき、福祉就労向きという選別をしていくことを期待しているようだが、それでは障害者の可能性をふさいでしまう。企業の中で障害者は緊張している。ジョブコーチが入ることでそれをやわらげる。企業の中でのあいさつも含めて、訓練、慣れの中で能力をつけていく。
 行政がやっていかないといけないことが多い領域である。難しいと感じているのは、かつて、厚生省と労働省がわかれていて、2分されていた。特に精神障害者は谷間におちていた。これがずいぶんと改善されてきた。唯一不便さを感じたのは最近地方自治体が就労もできることになったが、これまで労働は国が、福祉は自治体がというようにアンバランスがある。生活と労働の両方を地域がきちんとやっていく。労働と福祉は国と地方との関係がまだ難しい状況である。千葉ではハローワークと連携しているが、それは意図的にやらないとできない。就労して地域でくらすための仕組みを検討する、これは行政に申すことである。私たちは三障害一緒のキャリアセンターを作った。次の取組みはその近くに暮らしを担保していけるのか。民間でされるのは大変だとうかがった。全て行政では出来ない。民間と行政のパートナーシップで上手くやっていく。工業団地に作ったので企業ともうまくやれている。npoとも一緒になりながら進めていく。

安藤委員(聾唖連盟)

 丹下さんにも関連した質問。障害者の就労のキーワードは職場、暮らしの環境をどう整備するかで、企業が求めるものとして戦力の話がでたが、入社してすぐ即戦力となることはない。その一定の期間、投資が必要である。障害者が入る場合にその投資がされないまま戦力を期待されるのは不公平。施設から一般雇用にいってもその半数がもどっているのは環境に問題がある。
 福祉の理念は日本は国際的にみて高い。しかし、企業の理念はどうか。障害者が社会参加するための社会的理念をもっと高めて行く。どう環境を整備していくかの整理が必要である。
 企業としての環境整備がどれくらい進んでいるのか。また、一般雇用から施設に戻ってくる際の事情はどうか。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 企業が受け入れるときに費やす手間は障害のある、なしは関係ない。そのことで感じる負担感は企業にはない。企業にはいろんな仕事があって、とけこめる。障害者にはその柔軟性をもって欲しい。企業としてハンディキャップも含めて一人前の戦力として考えている。

斉藤委員(社会就労センター協議会)

 身体障害者の場合、バリアフリー対策が多くの企業でされていない。聴覚障害とのダブル障害の人もいるが、手話通訳が企業にいない。孤立してしまう。

京極部会長

 保護雇用という言葉があるが、日本は一般就労と福祉的就労と二分されている。外国では、普通の企業でもジョブコーチなどをつけて給料を支払っている。授産、更生、福祉工場、支援を受ける中での一般雇用。この流れが見えていない。このあたりを整理する必要がある。

村木企画課長

 福祉的就労、一般就労の定義があるかというとない。保護雇用という言葉も日本の中では使ってこなかった。福祉施策と雇用施策の両方から支援がある分野もある。機能と施策の概念整理をする必要がある。

徳川委員(身体障害者施設協議会)

 今の話を聞くと、企業側と施設側の見方が違う。大分近づいてきてはいるが。企業は利潤追求、施設は発達保障・生活保障で、これは基本的に違うわけで、これにどう橋をかけるか。
 ひとつ気になったところ、障害があるから職業能力に欠けている部分があるという見方になっている。 そうでなく、障害があるが故に得意な分野がある。知的障害者で継続的な作業に秀でた人がいる。いろんな仕事の組み合わせで可能性がでてくる。そういう発想でないとどこまでやっても溝がでてくる。

京極部会長

 それではきょうされんの藤井さんより発表を。

藤井(きょうされん)

 私どもは共同作業所のあつまりである。
 現在の状況をひとことで言うと、閉塞感と格差感がある。これをどう払拭するか。
 就労、介護は手段であって、目的は安心、安全、安定な地域生活。これを考えるのは4つの課題、「日中・働くこと・社会参加」「住まい」「人的な支え」「所得保障」である。健常者は仕事で所得保障が得られるが、障害者はそうでない人もいる。このほかに、医療、バリアフリーなどがある。これらは全ての障害にとって共通である。
 現状の働く問題を9項目挙げる。
・慢性化している雇用率の未達成。ヨーロッパでは、人口の比例分は法定雇用率を作っている。日本は1.8%で法定雇用率は低いが、達成されていない。
・雇用政策にみる障害種別の格差
・増えない福祉工場。
・通所型授産、更生施設が増えている。10種類の通所施設がある。
・激増する小規模作業所。
・通所授産施設と更生施設の利用者のボーダレス化。
・施設利用者の非流動化。
・低賃金、低工賃 ・在学時と卒業後、入院時と退院後の不連続性。
 これだけ見ると今後の方向性が見えてくる。  縦割り行政の不備がある。養護学校を卒業した後、相談にいったところが、労働系か福祉系かでその人の人生が変わってしまう。
 企業の障害者分野への参画が弱い。大企業ほど法定雇用率の未達成が多い。常態化している。一般の国民はおかしいと思う。法定雇用率はダブルカウントしたり、短時間雇用者をカウントしてみたり、工夫をしているにもかかわらず、あがっていない。
 社会資源が少ない。精神障害の分野はそれが特に凝縮されている。社会福祉施設の数が少ない。授産、福祉工場が圧倒的に足りない。
 最近の日本では右肩上がりは珍しいが、作業所は右肩上がりで増えている。一般の授産施設がないからである。通所授産施設がない自治体は3/4にのぼる。通うにも通えない。精神障害者はもっと少なくて焼け石に水の状態。
 小規模作業所はどういう機能を果たしているか。今日の就労施策は一般就労を頭におきながら、福祉工場、授産施設、デイサービスを作ってきた。作業所はこれのどれにもかぶっている。一般で就労できる人もいる。デイで重症身心に近い人もいる。既存の施策の量と質の不備があったから作業所が必要だった。質と量が整備されてくると、これほど多くの作業所は必要なくなる。いかに量と質をあげていくかが大事である。
 働くということは「本人の意識」「労働能力」「支援の体制」、この中で働く事が決まっていく。15pに働く体系について現状を図示してみた。「雇用・自営」「職業訓練」「福祉工場・授産施設」「アクティビティ」の4分野。これをどうグラデュエーションをつけていくか。これまでの労働は「雇用・自営」「職業訓練」、福祉は「福祉工場・授産」「アクティビティ」をやってきた。今後はそうでなく、労働も福祉も4分野を全てやらないといけない。
 保護雇用をどうするか。決め手は人的なケア。ジョブコーチだけでなく、ジョブサポート、雇用後のケアが必要である。
 絶対数をどうするか。社会資源が貧困である。新しい公共事業という位置づけでもないとできない。小規模作業所ですらない地域もある。 重度重複の人への対応。精神障害者の非雇用・非医療の場も必要。
 こういった提言はかなり前からあった。90年代に授産施設の在り方検討会で提言され、京極先生が座長だった。95年にはアクティビティセンターの答申もあった。
 方向性は議論するが、実効がともなわない。きょうされんができて、25年、更生課長8人、企画課長6人。14人の担当者がかわって先送りになっている。
 これをほうっておいてこの審議会はないのではないか。日本における一つの障害者政策の発展のバロメーターである。
 就労支援は、所得保障・社会参加に有効である。この国にふさわしい施策をお願いしたい。

武田委員((福)桑友)

 精神障害者は医療ととの密接な連携が必要。診療所との連携が必要。 障害者プランがあって、グループホームは目標値を達成している。授産も同じである。プランの数値は十分でない事はわかっているが、数値を達成している関係でそれ以上できない。一方で、診療所は医者がいれば簡単に開設できる。 デイケアと作業所との差について考えるとそんなに大きな差がない。デイケアは高コスト。作業所はローコスト。ローコストの作業所はできずにハイコストのデイケアができる。
 日中の活動、いろんな人が量が足りないと言っているのに、できない状況がある。斉藤委員、藤井さんは我々の気持ちを代弁してもらった。
 まず、何から着手するのか。政策提言はでそろっているというが、何を強調するのか。

藤井(きょうされん)

 89年に福祉八法が変わって、障害者基本法、障害者プランとずっとやってきた。その中で、入所施設は増えてきたわけで、効果がなかった。立法体系を含めて法律を考えないといけない。
 精神障害者は精神保健福祉法では、精神障害者=精神疾患となっている。医療の根拠はあるが福祉の根拠はない。部分的にいじっても、5、6年たつとまた同じ問題が出てくる。
 一歩前進、二歩後退はやめたい。精神保健福祉法の定義の改正、障害種別を越えた地域福祉支援法の制定など、今は大きな転換点、それを手がけて欲しい。
 これまでの答申のポイントは機能分化をきちんとすること、そして、その間の流動性を作ること。本人、企業も安心する。機能分化と流動性。厚生省と労働省の統合効果をだす。キーワードは統合効果である。

猪俣委員(自治体病院協議会精神科特別部会)

 浅野知事が施設の解体宣言した。知的障害者が地域で生活するのにどうするかを出発点として考えて行く。精神も同じで、病床の削減、地域生活をどう援助するのか、それが出発点であるという基本的な理念をもって考える事は今回の審議会の意味である。
 しかし、各論に対してはかなりの部分が論議されている。それは京極先生もわかっている。厚労省の担当者も認識されていると思う。いかに実効体制が構築されるか、それをどう作るのか。議論の出発点にもどるか、そういう姿勢で藤井さんの話を聞いた。

京極部会長

 障害者は保健医療福祉でなく就労も含めて広義のサービスが必要である。障害別の縦割り、労働と福祉の縦割り、その縦割りをなくして行く。これまで、いろいろやってきたが縦割りの組織形態でやっていても埋没してしまった。
 介護保険制度も介護に関する縦割りへの問題意識があって、医療と福祉を両方をいれて作った。 税金に基づく制度は、そういう(縦割りの)宿命をもっているのではないか。

それでは、全体として就労に関する在り方について、意見を。

堂本委員(千葉県知事)

 藤井さんの小規模作業を10年以上前に見に行った。本質は同じで今も変わっていない。どう実行するかの時期に来ている。統合効果をだして欲しい。自分が知事になって思うのは障害者のキャリアセンターを作って、ジョブコーチをやって、専門学校、産業界のネットワークを作っている。今、はたと気付いたのは、なぜ、実効があがらないのか。先に進まないのか。国では先端的なヨーロッパの考え方でやっているが、次は市町村である。
 介護保険の話がでたが、市町村に対しては大きな変革を作った。就労は市町村が受け入れにくい。県のレベルでできても、地域が、市町村が動いていかないとだめである。藤井さんはどう考えられているのか。京極先生にも聞きたい。1.8%は低い数値。もっと実効性があがる方法を。就労をしたい障害者は多い。

徳川委員(身体障害者施設協議会)

 同じ労働の問題ではあるが、それぞれの立場がちがう話だった。
 労働とは何か。賃金を得る。作業ができるようになる。生きがい。収入と労働力と生きがいといういろんな要素が含まれている。労働とは何かをみないと障害者の労働権の問題はわからない。
 療護施設については労働は対象となっていない。療護施設でも近くの会社の仕事を1ヶ月かかってやって、たった10円の収入だが家族も含めて喜んでいた入所者の例があった。療護だから、授産だからではなく、労働権の問題として考えて行く。

松友委員(育成会)

 貴重な意見、特に企業の立場からの意見は良く分った。もっと率直な意見をききたい。
 一つだけ意見を。根本的なパラダイムの変換、積み上げではできないということがわかってきた。登校拒否は義務教育があるゆえの問題で、義務教育がなければ登校拒否はなくなる。
 企業の雇用について、企業の社会資源としての存在理由。企業に競争があるのはわかる。しかし、アメリカでみると、社会的責任論、社会の中で行動をやっていく中で企業は雇用、公的な受注をしていくためには一定の条件を満たさないといけない。欧米では企業の環境問題に対する貢献などにも厳しい。競争は値段だけでなく、アファーマティブなことも含めての競争である。それが株価にも影響していると聞く。これについて、考え方を教えて欲しい。
 知的障害者の状況は制度ができると進んでいる。経営者の社会的な貢献への哲学、それがないと企業も前進しないのではないか。障害者雇用の革命的な転換を図れないのではないか。

亀井委員(名張市長)

 先刻、堂本委員のほうから市町村が労働をやらないといけないと激励があった。福祉八法改正以降の動き、サービスの統合、地域特性がテーマであった。基礎的自治体の意識がなかったことは率直に認める。しかし、意識も高まっていることも事実。国や都道府県は最終的な頼りにできないということもわかってきた。
 いろんなアイディアももっている。中央政府にお願いするのは、制度を作るのではなく、規制緩和の方向。そうすると知恵をだして政策をやっていく。特区、三位一体、地域再生対策債。ナショナルスタンダードはシンプルであって欲しい。これから基礎的自治体はがんばる。

京極部会長

 住まいについての議論もあるので、一言ずつ、今日の発表者から。

藤井(きょうされん)

 精神障害者に対する施策は55、6種類ある。パッチワークである。どう整理するか。大きな機能でわけていく。
 施設の体系を簡素化しても、施設の数が少ないとそこに殺到する。仕事の場としてつくっても、他のニーズをもつ人が入ってくる。体系の整理と量の問題はセットでやっていく。
 そろそろ機能の適正な再編と同時に量を増やして行く。

斉藤委員(社会就労センター協議会)

 就労者をどう作るのか。一般企業だけでなく、障害にあった就労の形。そこから所得保障がある。これがあたり前の形だと思う。

丹下委員(NPO 障害者雇用部会)

 CSRの話を簡単にしたが、かつて企業が社会的責任を口にしたとき、メセナという概念で現れた。そのときの社会的責任と今とは違っている。企業が社会の構成員として注目される中で、企業の自覚がでてきた。その中で障害者雇用のウェイトが高まるのは当然のこと。
 藤井さんのいったグラデュエーション。機能分化は境目をつくることではない。グラデュエーションは必要で、それをだれが担当するかをはっきりさせる事が重要。

間課長補佐(企画課)

 障害者の住まいの問題について資料8をご覧下さい。 身体障害者の状況は持ち家が3/4をしめる。入所施設も一つのすまいということでこのグラフにいれている。
 知的障害者については、自分の家とアパートで62%。入所している人が多くて28%。グループホーム2%。
 精神障害者については、自宅に81%。入院を住まいというのは抵抗があるが、入院されているかたは13%。
 住まいの問題の時に公営住宅がテーマになってくる。公営住宅についてはグループホームとして使えるようになっている。知的障害者、精神障害者、高齢者のグループホームを運営する法人に住宅として使用させることができる。空いている部屋をグループホームとして使える事ができる。
 もう一つ議論になるのは公営住宅に単身入居できるかどうか。公営住宅法で入居者資格があって、世帯で入居が原則になっている。高齢者、身体障害者のかた、その他必要のあるかたは単身でも入れることになっている。しかし、常時の介護が必要な人でそれを受けることが困難な者については認められていない。
 単身入居の対象者に知的障害者、精神障害者は入っていない。これは国土交通省とどういうサポートがあれば可能なのか議論している。
 資料9は在り方検討会で住まいに関してでた意見である。抜粋して説明する。
 知的障害者の親が自分の家をグループホームにしていきたいと意見がある。知的障害者、精神障害者の単身入居を認めてほしいと言う意見がある。
 精神障害者のあり方検討会でも意見がでている。一つは保証人の制度をなんとかして欲しい。保証人がいないと借りられない。保証人を誰が引き受けるのか。 公営住宅の単独入居の話もある。
 制度上は可能になっているが、公営住宅のグループホームの活用、また、グループホームじたいの整備の話がでている。

高橋委員(立教大学)

 住まいの問題については、家賃補助、住宅手当が必要ではないか。日本の最大の問題は公的な住宅手当がないことである。
 建設省がオイルショックの前に住宅手当の検討をしていたが、オイルショックでつぶれた。地域生活をきちんとするには家賃補助の仕組みをきちんとする。それで相当な問題が解決する。
 生活保護の住宅扶助を単給にして、ミーンズテストをやめて簡単なインカムテストでだす。財政上の問題はあるが、これができないか。住まいの中身だけだなく、手当ての問題も検討して欲しい。
 バリアフリーの問題も避けて通れない。持ち家、アパートの状況は、家族同居とそうでない場合はどうなのかが気になる。もう少し深めた議論のためにはもっと素材が必要である。

笹川委員(日盲連)

 今日の資料で、就業率の資料があるが、身体障害者でまとめられている。視覚障害者の実態がわからない。回収してだしなおして欲しい。
 総合化はけっこうだが、そのために内容が見えなくなってしまっては困る。荒っぽい資料なら、ださないほうがいい。
 住宅の問題を話すには時間が足りない。就労問題でも発言できていない。もう少し時間を考えて欲しい。いつも消化不良で胃が痛い。藤井さんに聞きたいこともある。それを一つ検討して欲しい。
 住宅は就労とかかわっている。重度障害で多くの人が在宅就労をしている。それに対する厚労省の対応はできていない。そこを含めてきちんとやって欲しい。こんなことなら次回でてきたくない。

京極部会長

 次回以降議論する場もあるので。ご意見としてうけたまわった。

嵐谷(日身連)

 就労の話をしたかった。自立・自営の部分はどうなっているのか。そこにきりこんでいない。肢体障害の当事者としては全く違う角度での就労がある。それは次回にでも討論させて欲しい。就労と住宅は絡んでいる。

岡谷委員(看護協会)

 就労と住まいの問題、どういうサービスをしていくか重要なのでもっと議論を。
 就労もそれぞれの障害でおかれている状況、違う部分ある。ここは三障害が集まっている。違いも見えてくる議論も必要である。
  公営住宅に知的障害者、精神障害者の単身入居の問題で国土交通省との議論をしているとの報告があったが、その内容についてもう少し説明して欲しい。

村木企画課長

 住宅問題は大変大事である。国土交通省の住宅局と議論をはじめたところで、この審議会の議論も国土交通省になげていきたい。
 サポート体制がきちんとあって、住まいの問題が解決される。国土交通省は大家さんの立場として、近隣の住民との関係、安全に安心して住んでもらうためのソフト面の問題意識を一番もっている。

北岡委員(滋賀県社会福祉事業団)

 就労について発言したかったことを。
 就労を考えたときに、福祉的就労と一般雇用があって、一般雇用できない人とそうでない人がいる。福祉的雇用の賃金と企業の賃金は格差がある。この中間的な仕組み、福祉工場、充実していく必要がある。
 2つめは新しい考え方、福祉工場に類似するかもしれないが、地域の企業で働くための個別支援計画を義務化する。企業の中で働く事を明確に打ち出す。施設内の仕事は限定される。施設以外で働くということも福祉の分野で意識を持つ。
 企業、就労につないで行く、そこをちゃんとやっているか第三者評価を新しくやっていく。
 全ての人は雇用されるという考えのもとでやっていってはどうか。一日の午前中だけ働くなど、様々な形態を雇用に取り組んで行く。施設から就労に押し出して行くという前回話した考えかたが必要である。

京極部会長

 今日は3時間半とったが、2つのテーマを一緒にやるのは難しかった。笹川さんからご意見あれば。

笹川委員(日盲連)

 障害によって条件がかわる。通所授産への通所のサポートの問題。授産の中で視覚障害者の仕事は何をしているか。
 在宅就労についてどう考えているか。

藤井(きょうされん)

 視覚障害者のデータはあるが、今日はもっていないので、後日お送りします。
 福祉的就労という言葉はやめたほうがいい。80年代から使われ始めた言葉。
 本人の意思、能力、通所・通勤の問題。労働に対する支援。労働のアシスタント。生活支援。住まい、所得保障の問題がある。 医療関係では、てんかん、透析、精神障害の通院についてはこれを有給にするような配慮が必要である。
 障害種別で考えると、労働の課題においては障害種別は関係ない。しかし、支援については障害種別は大事だと思う。単純に統合化でない。

京極部会長

 時間もありますので今後の進め方。日程も含めて事務局から説明いただいて今日のところはこれで。

間課長補佐(企画課)

 今日のテーマについてまだ議論したいという意見があったので、部課長と話して別の時間帯をつくることを考える。  笹川委員からの資料要求は後日提出する。
 次回は、ケアマネジメントとサービスの計画的な整備と財源の問題。これは時間を長く取って、4/28の午後から、霞ヶ関ビルで行う。

京極部会長

 今日は二つの論点、就労支援と住まい、時間がなくてすみませんでした。
 全体として、障害者の地域生活を支援するサービスであるという考え方がでてきて、それによって、全体的な障害保健福祉施策も展開できると思う。

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