国会に上程された法律案の変更点・注目点

  1月25日の審議会で出た法案要綱と国会に上程された法案ではかなりの変更があります。
  施設入所前の市町村が費用負担する住所地特例が限定的に記載されました。学生等の親の居住地が負担する制度もなくなっています。
  認定審査会の名称が「市町村審査会」に変わりました。
  地域生活支援事業の国庫補助率は100分の50以内と記載されました

 以下、国会に上程された法案の注目点を抜粋して解説します。  全文はホームページに掲載しています。

移動介護問題について

 法律案では、「重度訪問介護」(日常生活支援)と「行動援護」には「及び外出時における移動中の介護」との記述がありますが、「居宅介護」(ホームヘルプ)にはその記述がありません。
  このため、最重度障害者について、身体介護や家事援助で外出することは要望しても難しくなったといえます。

第五条 この法律において「障害福祉サービス」とは、居宅介護、重度訪問介護、行動援護、療養介護、生活介護、児童デイサービス、短期入所、重度障害者等包括支援、共同生活介護、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援及び共同生活援助をいい、
(中略)
2 この法律において「居宅介護」とは、障害者等につき、居宅において入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。
3 この法律において「重度訪問介護」とは、重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者につき、居宅における入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与することをいう。
4 この法律において「行動援護」とは、知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。

 

 厚生労働省は「地方で身体介護と家事援助を利用している重度障害者は、外出時には「重度訪問介護」を使えばよい」といっています。身体介護と重度訪問介護の併給調整は緩和される可能性もあります。

包括の記述とグループホームの記述

9 この法律において「重度障害者等包括支援」とは、常時介護を要する障害者等であって、その介護の必要の程度が著しく高いものとして厚生労働省令で定めるものにつき、居宅介護その他の厚生労働省令で定める障害福祉サービスを包括的に提供することをいう。
10 この法律において「共同生活介護」とは、障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。

共同生活介護とはケアホームのことです。グループホームの介護あり版です。
ホーム内で介護職員を配置します。ヘルパー制度等は使えません。

16 この法律において「共同生活援助」とは、地域において共同生活を営むのに支障のない障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談その他の日常生活上の援助を行うことをいう。

共同生活援助とはグループホーム(ヘルパー制度の利用はできなくなる)のことです。

自立支援給付の中身

第六条 自立支援給付は、介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費、特例訓練等給付費、サービス利用計画作成費、高額障害福祉サービス費、特定障害者特別給付費、特例特定障害者特別給付費、自立支援医療費、療養介護医療費、基準該当療養介護医療費及び補装具費の支給とする。

「自立支援給付」の中にヘルパーなどの介護給付や、施設日中部分などの訓練給付などが含まれます。15000円などの自己負担上限を越すと返還される高額障害福祉サービス費もこの中に含まれます。(ただし、高額福祉サービス費は事業所が代理受領します。介護保険とは違い、1度自己負担を支払って後から申請して上限を超えた額の返還を受ける・・・という方法はとらないようです)

気になる条文

第九条 市町村等は、自立支援給付に関して必要があると認めるときは、障害者等、障害児の保護者、障害者等の配偶者若しくは障害者等の属する世帯の世帯主その他その世帯に属する者又はこれらの者であった者に対し、報告若しくは文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる。

 自己負担の上限やサービス提供に際して必要なのでしょうか。かなり利用者に対して失礼な書き方になっています。めぐんでやるから何でもせよといわんばかりです。
  別の条では提出などに応じない場合は罰金があることも記載されています。

大問題の審査会について

第十五条 第二十六条第二項に規定する審査判定業務を行わせるため、市町村に第十九条第一項に規定する介護給付費等の支給に関する審査会(以下「市町村審査会」という。)を置く。

第十六条 市町村審査会の委員の定数は、政令で定める基準に従い条例で定める数とする。
2 委員は、障害者等の保健又は福祉に関する学識経験を有する者のうちから、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が任命する。

第十七条 都道府県は、市町村審査会について地方自治法第二百五十二条の七第一項の規定による共同設置をしようとする市町村の求めに応じ、市町村相互間における必要な調整を行うことができる。
2 都道府県は、市町村審査会を共同設置した市町村に対し、その円滑な運営が確保されるように必要な技術的な助言その他の援助をすることができる。

第十八条 この法律に定めるもののほか、市町村審査会に関し必要な事項は、政令で定める

 審査会の委員は市町村の障害福祉担当課が決めることになります。市町村は医療関係者のほか、たとえ障害者団体関係者が入るとしても、市町村の意見に沿った人物が入ります。
  市町村の障害福祉の当初予算を超えるような決定を出す委員は選ばれるはずがありません。
  このため、このような市町村が選ぶ外部委員会を設置すると、サービス水準の低い市町村では、その低い水準が固定化され、将来にわたってサービス水準がのびなくなります。

(障害程度区分の認定)
第二十一条 市町村は、前条第一項の申請があったときは、政令で定めるところにより、市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害程度区分に関する審査及び判定の結果に基づき、障害程度区分の認定を行うものとする。
2 市町村審査会は、前項の審査及び判定を行うに当たって必要があると認めるときは、当該審査及び判定に係る障害者等、その家族、医師その他の関係者の意見を聴くことができる。

(支給要否決定等)
第二十二条 市町村は、第二十条第一項の申請に係る障害者等の障害程度区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の厚生労働省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下この条及び第二十七条において「支給要否決定」という。)を行うものとする。
2 市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、市町村審査会(中略)の意見を聴くことができる。
3 市町村審査会、身体障害者更生相談所等又は前項の厚生労働省令で定める機関は、同項の意見を述べるに当たって必要があると認めるときは、当該支給要否決定に係る障害者等、その家族、医師その他の関係者の意見を聴くことができる

 審査会については、法案より下線部分を削除するように求めていたのですが残ってしまいました。(審査会は障害程度区分のみを行うようにせよという要望)。
  市町村は、たとえ人工呼吸器利用者で24時間介護が必要な最重度障害者が24時間介護を求めて交渉しても「審査会が決めたことであるから」と低水準のサービスのまま逃げることができます。すでに今でもそのような市町村が多い中、ますます厳しいことになることが予想されます。
  皆さんで地元議員への働きかけをお願いします。

住所地特例について

  入所施設に入った場合のみ、入所前の住所の市町村が費用負担する特例があります。今回、法律でこまかく記載されました。
  学生の住所地特例は廃止されました。

第十九条 (中略)
2 支給決定は、障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする。ただし、障害者又は障害児の保護者が居住地を有しないとき、又は明らかでないときは、その障害者又は障害児の保護者の現在地の市町村が行うものとする。
3 前項の規定にかかわらず、第二十九条第一項若しくは第三十条第一項の規定により介護給付費等の支給を受けて(略)障害者支援施設、のぞみの園又は第五条第一項若しくは第五項の厚生労働省令で定める施設に入所している障害者(中略)(以下この項において「特定施設入所障害者」と総称する。)については、その者が障害者支援施設、のぞみの園、第五条第一項若しくは第五項の厚生労働省令で定める施設又は同法第三十条第一項ただし書に規定する施設(以下「特定施設」という。)への入所前に有した居住地(継続して二以上の特定施設に入所している特定施設入所障害者(以下この項において「継続入所障害者」という。)については、最初に入所した特定施設への入所前に有した居住地)の市町村が、支給決定を行うものとする。(後略)

 なお、課長会議の発表では、グループホームは「5条の1項の省令で定める施設」になるようです。療護施設などと同じ扱いになります。

政令市・中核市は事業所の指定を行わず

 指定を受け付けるのは都道府県のみになりました。指定都市や中核市は事業所指定を行いません。

第三十六条第二十九条第一項の指定障害福祉サービス事業者の指定は、厚生労働省令で定めるところにより、障害福祉サービス事業を行う者の申請により、障害福祉サービスの種類及び障害福祉サービス事業を行う事業所(以下この款において「サービス事業所」という。)ごとに行う。
(中略)
4 都道府県知事は、特定障害福祉サービスにつき第一項の申請があった場合において、当該都道府県又は当該申請に係るサービス事業所の所在地を含む区域(第八十九条第二項第一号の規定により都道府県が定める区域とする。)における当該申請に係る指定障害福祉サービスの量が、同条第一項の規定により当該都道府県が定める都道府県障害福祉計画において定める当該都道府県若しくは当該区域の当該指定障害福祉サービスの必要な量に既に達しているか、又は当該申請に係る事業者の指定によってこれを超えることになると認めるとき、その他の当該都道府県障害福祉計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、第二十九条第一項の指定をしないことができる。

また、グループホームなどは、障害者福祉計画よりも数が多くなる地域では、指定しないこともできるようになります。

地域生活支援事業の具体的な記述はなし

 地域生活支援事業の具体的な記述はこの法律にはありません。
 具体的には以下のような記述のみで、ガイドヘルパー制度が移行する移動支援事業は事業の名称しか書いていません。

(市町村の地域生活支援事業)
第七十七条 市町村は、厚生労働省令で定めるところにより、地域生活支援事業として、次に掲げる事業を行うものとする。
一 障害者等が障害福祉サービスその他のサービスを利用しつつ、その有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、地域の障害者等の福祉に関する各般の問題につき、障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の厚生労働省令で定める便宜を供与するとともに、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のための関係機関との連絡調整その他の障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行う事業
二 聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき、手話通訳等(手話その他厚生労働省令で定める方法により当該障害者等とその他の者の意思疎通を仲介することをいう。)を行う者の派遣、日常生活上の便宜を図るための用具であって厚生労働大臣が定めるものの給付又は貸与その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業
三 移動支援事業
四 障害者等につき、地域活動支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業
2 都道府県は、市町村の地域生活支援事業の実施体制の整備の状況その他の地域の実情を勘案して、関係市町村の意見を聴いて、当該市町村に代わって前項各号に掲げる事業の一部を行うことができる。
(後略)

 なお、地域生活支援事業は市町村が行う事業です。市町村は事業を委託することもできるようにする模様ですが、全国2700市町村のほとんどでは市町村の天下り先の社会福祉協議会などに委託されると考えられます。

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