国庫補助基準の仕組みと調整金

 調整金は下の図のように、重度障害者数が全国平均を超える市町村に国庫補助と県補助として補助されます。一見、非常に良い制度のように見えますが、サービス水準が高い市町村では、実質の国庫補助率は50%を下回ります。

シミュレーション1
  区分3(重度)の国庫補助基準(下の表でいう「標準的な費用」)を月20万円(現在のヘルパー制度の国庫補助基準とほぼ同じ)と仮定します。たとえば、20XX年、人口1万人の町には全国平均では10人の重度障害者(区分3?)がいるとします。この年、西日本の人口1万人のA町には、20人の重度障害者(区分3?)がいます。区分1・2の障害者は0人とします。A町では国庫補助基準ぴったりのサービスを提供しました。この場合、A町の事業費は月400万円です。国の補助は本来、200万円ですが、全国平均を超える10人の事業費については、町の負担部分100万円が調整金でまかなわれます。つまりA町の自己負担は10人分の100万円ですみます。重度障害者の数が平均である町と同じ負担で済むことになります。

(グランドデザイン案 参考資料23pより)

グランドデザイン案では、1人暮らしの重度障害者が増えた場合は、国庫補助はわずかしかされません。

シミュレーション2    サービスが国の基準を大きく超える場合

シミュレーション1のA町で1人暮らしの利用者が増え、国庫補助基準の2倍の月800万円のサービス(20人の重度障害者が平均8時間の日常生活支援ヘルパーを日中のみに利用した)を提供しました。国の補助は本来、200万円ですが、全国平均を超える10人の事業費については、町の負担部分100万円が調整金でまかなわれます。町の負担は500万円になります。つまり800万円のうち300万円しか国庫補助されないということになります。(下図)

注1:全身性障害者の現在のヘルパー国庫補助基準は日常生活支援(日中)月125時間分(月約21万円)。現在は支給決定者の数で計算する方式。改正後にどうなるかは不明。
注2:重度障害者の数というのが区分3の数と同じ意味かどうかは不明。

2002年度までは、このA町の例では800万円の事業費のうち、50%の400万円が国庫補助されていました(県の補助は25%の200万円)。それに対し、グランドデザイン案では、義務的経費化すると言えども、わずかしか国庫補助されません。この国庫補助基準は、支援費制度開始前の2003年1月に全国的な抗議行動の末に、暫定的に設けられたものであり、非常に問題があります。今回、グランドデザイン案でこの国庫補助方式が確定すれば、2度と、2002年度以前の状態には戻らなくなるといえます。非常に問題のある案です。

(グランドデザイン案 参考資料21pより)

 グランドデザイン案では、国庫補助は従来のヘルパーの国庫補助の方式とほぼ同じ方式を全ての障害施策に拡大します。
 つまり、1人1人の費用の上限はないですが、市町村全体では国庫補助の「上限」があります。その「上限」はその市町村の障害区分1〜3の人数によって決まります。

 たとえば、ある町には区分3の障害者が10人だけいる(区分1・2は0人)とします。区分3の基準額(障害程度3の標準的な費用)が月20万円(注)と仮定すると、区分3の障害者の半数が入所施設(月40万かかる)に入所すると、その町は国庫補助枠をすべて使い切ってしまい、残りの半分の障害者はヘルパー制度をほとんど使えなくなります(国庫補助が一切使えなくなり、全額、町の負担になってしまうので)。
 つまり、施設入所の多い市町村ではヘルパー制度が伸ばしにくくなってしまいます。 (注:現在の全身性のヘルパー国庫補助基準額とほぼ同額の20万円で仮定。義務的経費は毎年3%までしか増額できないため、全国で利用が増えれば、予算不足で、さらに基準額が引き下がる可能性がある。)

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