「審査会」の問題 ヘルパー制度が今後伸びていかなくなる

 この案には大きな問題が2つあります。
 1番の問題は、ヘルパー時間は市町村が設置する独立機関の「審査会」が決めるという案です。
 審査会の委員は3000市町村がそれぞれ決めますが、介護保険と同じような人選になります。つまり、医師会や看護協会や大学教 授が過半数になり、ここで決められた時間数は、24時間の介護が必要な1人暮らしの障害者で命にかかわる人が、市町村の部長や課長と交渉しても、決定時間をかえられません。厚生労働省は障害に応じて3段階の標準的な金額を示すとしており、「審査会」はこの水準を参考に時間数を決めていくことになります。3段階の最高水準でも、現在の国庫補助基準(3ランクある)の全身性障害者の月125時間(約20万円)から大きく変わるとは考えられません。
 「審査会」の決定は、たとえば、市長や市議会与党でも変更できません。これでは、最重度の1人暮らしの障害者による時間数を伸ばす交渉は、一切できなくなり、ヘルパー時間数の低い地域は、永久にその水準から変更できなくなります。
 30年以上の1人暮らしなどの全身性障害者の運動により日本の介護制度は改善されてきましたが、この制度が導入されると、今後は制度改善の運動はまったく出来なくなり、日本の介護保障制度水準は低迷固定化します。これは、すべての障害者にとって不幸なことになります。 (厚生省案には、審査会は、10月12日の審議会の資料1の6pの下の表、資料2の7p「審査会の設置等によ る支給決定の透明化」、資料3の7p、21行目「2)利用決定の透明化」の丸2、に出 ています。10月12日の配布資料は、ホームページ参照
 この案が通ると、これからヘルパー制度の水準の低い市町村に1人暮らしして介護制度 を伸ばす交渉を行う最重度障害者が、生活できなくなります。  日本のほとんどの地域では、まだ24時間介護保障はもちろん、24時間介護の必要 な1人暮らし障害者に対して、1日12時間保障も実現していません。
  「審査会」は最大の問題点を持っています。

審議会障害部会11月12日資料より


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「審査会」の問題点

・審査会方式では、ヘルパー制度の水準の低い地域は、今後も低い水準のまま、固定化する。何十年も水準が低いまま改善しなくなる。

 市町村で、ヘルパーなどの制度の水準が上がるときというのは、最重度の障害者の両親が入院するなど、緊急の事態に対し、当事者からの交渉が市町村に対して行われ、行政が緊急性を判断し、障害福祉担当の部課長が、議会や助役や首長を説得して、補正予算を組むなど、行政の内部主導で動かないと、大幅なアップはできないものである。このようにして、1人が長時間のサービスを利用開始すると、数年立てば、障害福祉担当課の職員も全員異動し、それがその市町村の決定水準となっていき、ほかの障害者も、介護がたくさん必要な状態になれば、個々人が自立して生活するのに必要な適正な時間数のヘルパー制度などが受けられるように変わる。これに対して、外部委員の審査会は、すでに決められている障害福祉の当初予算の範囲内でしか、サービス水準を決定できない。このため、サービス水準の低い地域では、永久に制度が改善されなくなる。

・審査会方式が導入されると、市町村が制度が伸ばせない言い訳に「審査会で決まったから」を使うようになり、制度が伸びなくなる。

 1970年代から、現在まで、障害者の運動は、全国で交渉を行い、市町村の制度を改善してきた。障害者の運動がなければ、現在のような障害ヘルパー制度はなかった。海外でも同様に、当事者による改善運動により制度は改善されてきた。北ヨーロッパでも障害者の運動によって24時間の介護が受けられるようになった。 しかし、審査会のような外部委員がヘルパー時間数決定権を持つようなシステムになると、障害者が市町村と交渉して制度を改善していくことが不可能になる。(福祉制度は、障害者1人が交渉して、制度を改善させれば、ほかの同じニーズを持つ障害者全員が制度を受けられるようになる)。しかし、審査会が導入されると、市町村の障害福祉担当課の課長や部長は、たとえ、非常に水準の低いサービスしか行っていなくて、障害者が困っていても、「審査会で決めることです」「審査会で決まったことですから」と逃げることができ、交渉ができなくなる。

障害者給付審査会についての対案

・審査会の権限は、ヘルパー時間数を増やすように暴力を使ったり、口利き、コネ、などによる、不正な時間数決定をなくすための行政監視機能・オンブズ機能に限定すべきである。

・ヘルパー時間数は市町村が責任を持って決め、審査会はその決定された時間数が同程度の環境の他の障害者と比べて飛びぬけて多くなりすぎていないかを見るだけに限定すべきである。また審査会はサービス利用計画に対する意見をつけるべきではない。

理由

・障害者個々人の生活実態を直接把握していない審査会が障害者個々人が生活可能なヘルパー時間数などを決定するのは不可能である。(介護保険審査会はかなりラフな決定しかできない)

・障害者の個々人の生活状況を直接見て聞いて把握する市町村が、サービス決定の責任を持つべきである。(障害ヘルパー制度は「大変な生活状況の障害者」にとっては、最後の砦である。無責任な外部の民間委員が机上の議論で決定した結果、その障害者の生活が維持できなくなり死亡したら、誰の責任になるのか。)

・市町村には「その障害者が自立して生活できる」ようにサービスをマネジメントして決定する責任がある。

・身寄りがないなどの、生活に困難をかかえる障害者は市町村の担当者に説明し、それによって、市町村は自らの責任でヘルパー時間数を決定している。審査会が優位にサービス時間を決定することになれば、市町村は障害者の命に対する責任をもてない。 

・介護保険のような乱暴な決定方法では命にかかわる。介護保険は家族の介護の一部分を保険で肩代わりする理念の制度のため、障害制度のように「1人1人の障害者が自立して生活できるようにサービスを決定」される仕組みではない。介護保険の決定方法では、利用者の生活実態を見ないので、審査会による要介護認定の結果、サービスが余る利用者も多く出ている。逆に全く足りない結果になる場合もある。老人の大多数は、家族と同居や、現役のころの貯金があるので、足りなくても問題ないという制度設計になっている。(サービスが余る利用者はヘルパーを家政婦代わりに使ったり、タクシー代わりに使うなど不適切事例を発生させている)。このように審査会方式は問題である。

・支援費と介護保険の大きな違いは、支援費のヘルパー時間は、障害者のADLだけではなく、家族状況などにより、大きく時間数が違ってくる。同じADLでも1人暮らしの場合と大家族同居の障害者では生活を維持するのに必要なヘルパー時間は大きく違う。実際、1人暮らしの場合は最高24時間の介護も受けることがある。

・支援費のヘルパー時間は100人の利用者がいれば、100通りの決定を出す必要がある。介護保険は要介護1〜5と要支援の6段階だけ。
  支援費の決定は、細かく利用者のことを把握していないと無理である。

・介護保険の審査会は最近は医師会も嫌がる仕事で、引き受け手がいない。このため、障害老人について無知な関係ない診療科の医者がいやいや委員になるといった実態で、審査会が機能していない。

・この上、支援費まで審査会を作るといっても、小規模市町村は委員を独自に集められない。介護保険の審査会の60分のうち、最後の5分を障害の審査会と名を変えて実施することになる。これでは障害者のことをわかっている委員による審査は不可能。

・審査会を広域連合や県に委託する方法では、現場から離れるので、ますます机上の議論になり、その障害者の生活実態にあった決定ができない。

・海外でも、市町村がヘルパー時間数を決定している。国民は、民間機関ではなく公的機関(自治体)が決定するほうが公平だと考えている。

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