2003年制度改正「支援費制度の事務大要」出る

8月23日支援費制度担当課長会議資料(支援費制度の事務大要)の解説

 

 8月23日に厚生労働省で都道府県等の課長を集め担当課長会議が行われ、支援費制度の事務大要が示されました。今月号でその資料の全ページを掲載します。

 事務大要とは、大まかな事務の流れについて原案を示したものですが、今回の大要は、多方面から異論のない内容は詳細に記載され(利用申請の書式など)、そうでないものは(ヘルパー資格問題など)全く記載されないか、検討中とだけ記載があるなど、部分的な印象の内容になっています。予算に関係するものも(14年後半決定のため)掲載されていません。

今回の事務大要で掲載されなかった主なこと

 ・ヘルパーの資格問題・研修問題(一切記述なし)

 ・事業者指定基準(13年10〜12月に決まるので、「検討中」としか記述なし)

 ・利用者負担の基準(今後決めていくということで、具体的記述なし)

 ・一時間ヘルパー単価等(14年8月〜12月の予算概算要求のあとに決まる)

 

今回の事務大要で掲載されたこと

一.市町村事務             (ページ数は大要のページ番号)

1.支援費を支給する実施者(市町村)について・・・7P

 注目点として、「実施者は居住地の市町村(法9条)であり、居住地とは住民票の有無ではなく、将来にわたり起居を継続することが社会通念上期待できる場所である」という考え方が示されました。

 入所施設(更生・授産・通勤寮)入所者は、訓練終了後、元の家に戻る建前のため、入所前の市町村が支援費を支給する(従来通り)となっています。療護施設は法の別規定があり同じく入所前の市町村が支援費を支給する(従来通り)となっています。

 一方、居住施設との位置付けの知的障害者グループホームはホーム所在市町村が支援費支給することになり、グループホームが集中立地する市町村で問題が起こりそうです。

 ホームヘルパー等在宅施策については、一切触れられていません。2003年委員会の交渉では、ヘルパーの実施主体の事業費の負担(4分の1)を変更し、出身市町村が一部出すように要望していた項目ですが、これも、上記の考え方が示されたことから、従来通りの方法でいきそうです。

2.支援費の申請から受給証交付までの事務・・・9P

 基本的に制度の利用方法は、市町村に申込するところまでは、従来と全く同じ方法になります。障害者がヘルパーやデイサービスなど、サービスの種類ごとに申込み、提出する必要書類(課税証明等)も従来と全く同じです。

3.サービスの利用から支援費の支払いまでの事務・・・14P

ここは事業者と市町村のあいだの事務のことです。事業者は月末集計、翌月はじめに市町村に請求、その月のうちに支払いを受けます(原則)。つまり、介護保険のように2ヶ月遅れで振り込まれるということはなくなりました。朗報です。

4.基準該当居宅支援に関する事務・・・・16P

介護保険と同様、基準該当の事務が規定されていますが、ほとんどの市町村では基準該当は採用しないと思われますので、解説省略。

5.転入・転出時の事務・・・・20P

他市町村からの転居の場合、転居日当日からヘルパー等を利用できるよう、事前協議も行えることが国の文書ではじめて規定されました。(現在、申請日(転居日)からヘルパー制度を利用できない市町村では、いまから交渉しておけば転居当日からの利用が可能になるでしょう)

6.支給量変更時の事務・・・・25P

障害者はいつでもヘルパー時間数増減の変更申請できます。また、申請がなくても市町村の職権でも変更できます。

7.障害程度区分変更時の事務・・・26P

これは施設の入所者事務なので略

8.略

9.措置を行う場合・・・・29P

家族の死亡など、緊急時は従来の措置方式でサービス提供できます。

10.苦情対応・・・・30P

事業者の質が悪い場合、市町村は障害者の相談に応じることはできますが、市町村からの強い指導は望めなくなります。事業者を変えるしかありません。すべての事業者で十分な介護を受けられない最重度障害者の場合などは、行政に責任を強く問えなくなります。

11.施行前準備・・・・32P

15年4月の施行前に支援費支給量決定を全利用者に行うなど、市町村の準備の説明です。

二.都道府県(指定都市・中核市)事務   (ページ数は大要のページ番号)

1.指定事業者・施設の指定・・・・35P

事業者の指定は、14年4〜6月から事業者向け説明会が行われ、7〜9月から指定が開始される。事業者指定は指定都市・中核市も行う。

2.事業者の指定の申請書類・手続・・・・39P

指定基準は、法人であることは決まっていますが、人員基準・設備基準は検討中。

 

三.支給決定に関すること   (ページ数は大要のページ番号)

1.支給決定の基本的考え方・・・・41P

基本的な考え方として、支援費では、ヘルパーやデイサービスなどのサービス「種類」ごとに支給決定を受けるため、Aヘルパー事業者をBヘルパー事業者に変更するのは市町村に申請を行わずに自由に行えます。同時に使うのも自由。

 ただし、施設やデイなど、数が少なくて、市町村が調整を行わないと収集がつかないようなことになる場合には、市町村による調整が残ります。

2.支給決定の際の勘案事項について・・・42P

 ヘルパー等の時間数(=支給量)決定には、従来通り、同居家族の状況なども関係することになりました。これにより、1人暮らしの方が家族同居よりは時間数が多くなります。(介護保険では家族は関係なく、本人のADLだけで決定され、1人暮しの人は全然足らない状況。逆に家族同居者はあまっている)。

 法律では、厚生省の定める何項目かの「勘案事項」をもとにヘルパー等支給量を決定する・・・となっていました。この勘案事項に、「介護する家族の状況や、障害者の利用意向の具体的内容、おかれている環境、他のサービスの利用状況」などが含まれました。

 今回は、予算自体は全く増えない制度改正ですから、妥当な選択だと言えます。

3.支給期間について・・・・53P

 支給期間が終わると、支給量の再調査が行われ、新しい支給量が決定されます。施設・グループホームは3年、ヘルパー等在宅は1年以下で各市町村が自由に期間を決めることとなりました。交渉しなくても、毎年ヘルパーの時間数が増えていく可能性があります。一方で、やる気のない市町村は全会の時間数をそのまま決定するでしょう。

4.支給量を定める単位期間について・・・55P

 ヘルパー等は、「1ヶ月200時間」といった風に決定されます。今月使い残しても、来月にその分は利用できません。1か月の範囲なら、月の前半に少なく使って後半にたくさん使う等は自由になります。曜日や時間帯も自由に決められます。

5.障害程度区分・・・・56P

 施設入居者の区分のこと。重度は高い単価で施設にお金が入る仕組み。この区分はADL・要介護状況だけで決まる。市町村は県の更生相談所に意見をもらうこともできる。

6.相談支援体制の充実&あっせん・調整、要請について・・・58P

 介護保険はケアマネが相談にのりますが、障害施策では障害者による自己プランとなります。それに必要な、制度・指定事業者の情報提供は、市町村窓口や障害者生活支援事業などの「相談事業者」だけではなく、身障相談員や児童相談所など多様な主体が相談の担い手になることが期待されています。つまり、任意団体の障害者団体も、相談の担い手になるには資格等なく自由に参入できます。一方で収入もありません。

 施設が足りない場合の市町村によるあっせん調整には、施設等は「できるだけ協力しなくてはならない」という表現になっています。

四.事業者・施設指定基準に関すること

1.2.指定基準について

 「指定基準はヘルパー要綱や在宅サービスガイドラインを元に基底することになる」と書かれています

 

別冊の部分

 別冊部分は、大要ではなく、「支援費基準(ヘルパー事業者支払い1時間単価)と利用者負担」の予算関連2点(14年秋の概算要求のあとでないと決まらない)について、現時点での議論・意見をまとめたものになっています。(ヘルパー事業者支払い1時間単価は、この国の基準を下回らない範囲で、各市町村が自由に決めます。1市町村1単価です。利用者負担は、逆に、国の基準を超えてはいけません。)

注目点

P6・・・介護、家事、移動介護の3つの区分は確定している様です。このほか複合型などの検討がこれからあります。

P18・・支給量の増大に応じて著しく負担が増えない様にという意見が掲載されています(収入のある、長時間ヘルパー利用障害の問題)

今後の厚生労働省 支援費制度関係の予定

 厚生労働省での次の予定は以下のようになっています。

・10月〜12月には事業者指定基準案の提示があります。

大要の6Pに詳細が載っています

 

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