2001年3月6日の厚生労働省障害保健福祉部主幹課長会議資料の解説

 厚生労働省障害保健福祉部の13年度主幹課長会議は3月6日に行われました。注目点の解説を行ないます。また、課長会議では、2003年から導入される支援費制度の「Q&A集」も配布されました(全文は後のページに掲載)。この解説も行ないます。

 

今年度主幹課長会議資料の注目点

障害ヘルパー予算

 4500人分アップ(12%アップ)の41700人分に。障害ヘルパーは、障害者プランの最終年の2002年(平成14年)度まで長期計画で毎年計画的に予算を増やしていく項目です。

 平成13年度国庫補助基準単価は、12年度と変わらず以下の通りです。

区  分

単 価 案

(注)

1 滞在型の1単位は1時間程度

2 巡回型の1回は30分程度(深夜帯は20分程度)

3 移動時間を含む

滞在型

身体介護

3,740円/1単位

家事援助

1,470円/1単位

巡回型

昼間帯

1,870円/1回

早朝夜間

2,340円/1回

深夜帯

3,740円/1回

 

いわゆる「自薦」ヘルパーについての記述

 昨年と同様、障害者自身が確保している介助者など(介護経験を有する者)をホームヘルパーとして積極的に活用するよう指示されています。

(ア)略 訪問介護員(ホームヘルパー)の確保に当たっては、介護福祉士等の有資者格の確保に努めるとともに、障害の特性に対する理解や利用者との間における円滑なコミュニケーションが必要であること、同性によるサービス提供の要望があること等の観点から、在宅の障害者等の介護経験を有する者の活用を積極的に図るなど、障害者個々の要望に対応できるよう努めること。

 *障害者自身が確保している介助者(その障害者独自の介助方法をきちんと身につけている同性の介助者)が登録ヘルパーや非常勤ヘルパーとなった場合には、「適任者の派遣」(この原則は要綱の基本事項に書いていると厚生労働省が説明している)ということで、登録した障害者自身に派遣させることは交渉で十分可能です。

ガイドヘルパーも同様

 上記の文書は、ガイドヘルパーも同様であると書かれています。この部分は昨年、書き加えてもらいました。

 なお、このことは、外出介助員(ガイドヘルパー)についても同様である。

 

ヘルパー派遣時間数の上限撤廃の指示

 ヘルパー派遣時間数の上限時間数(例えば、どんなに重度の1人暮らし障害者がいても最高週21時間など)がある自治体に対しては、上限撤廃の指示が出ています。(厚生省の課長会議では毎年上限撤廃を指示してもらっています)。時間数を伸ばす交渉をする際にはこの項目を使ってください。

(イ)サービス量の上限については、撤廃するようこれまで関係市町村への指導をお願いしてきたところであるが、未だに制限を設けている市町村に対しては、一般的なサービス量の制限を設けないよう引続き指導する(略)こと。

なお、上記の文書のすぐ下には自薦の交渉に使える文書が入っています。

 重度の障害等のために介護ができる者がいない等の理由で必要なサービスが提供できないということがないよう、サービス供給体制の充実を図ること

 現状の市(や委託先)が確保しているヘルパーだけでは自分の介護がきちんとできない場合、上記の項目を示して、自薦の交渉に利用できます。

障害等級によってヘルパー時間数を画一に決めない

 このことは、身障では前々からの大原則ですが、現在は知的障害にも適用されています。

(ウ)サービスの提供に当たっては、その提供量を、障害等級によって画一的に決定するのではなく、個々の障害者ごとの身体状況等を総合的に検討した上で(略)判断すること。

 なお、この文章は介護保険対象の1級の全身性障害者(等)に障害ヘルパーを上乗せできるという規定の補足として、今年度ここに書かれました。(「全身性障害者」枠で介護保険に障害ヘルパーを上乗せできる障害者の範囲は、1級の「両手+両足」障害のほか、同様に長時間の介護の必要なその他の障害者も含まれるとされています。つまり「2級の全身性障害者」や「片手と両足の障害者」なども長時間要介護の実態があれば対象になります。要は等級ではなく要介護時間の実態に沿ってヘルパー時間数を考えるようにという意味です)。

 

ガイドヘルパーについて

 ここからの3枠はガイドヘルパーに対する記述です。

 まずは毎年同じ文書で始まります。ガイドヘルパーのない地域では交渉に利用できます。

イ 外出介護員(ガイドヘルパー)について

 外出時における移動の介護を行う外出介護(ガイドヘルプサービス)事業は、重度の視覚障害者及び脳性まひ者等全身性障害者の社会参加を促進する観点から重要な制度なので未だ実施していない市町村に対して本事業を周知し、積極的に実施するよう指導願いたい

 (以下は上記の続きの文書です)。

 また、外出介護(ガイドヘルプサービス)の事業運営要綱上に利用目的が例示されていることをもって限定的に実施している市町村が見受けられていたことなどを踏まえ、昨年7月7日付で運営要綱の改正を行ったところである。外出介護(ガイドヘルプサービス)の実施に当たっても、訪問介護(ホームヘルプサービス)と同様、利用目的を限定的にとらえることなく、実施主体である市町村が個々の障害者ごとの要望やその必要性を判断し、柔軟に対応するよう関係市町村に助言指導願いたい。

 要綱改正前には、通年長期で利用できる「日常生活上必要不可欠な外出」の例示として「医療機関や公共機関などの」と厚生省要綱が例示していたことが原因で、ほとんどの自治体で「日常生活上必要不可欠な外出」=「市役所と病院」とされていました。厚生省の考えでは「日常生活上必要不可欠な外出」とは、個々の障害者の生活実態に応じて、いろいろありうる(例:1人暮し障害者の日々の食料品買い物など)というものでした。

 そこで、厚生省では12年7月の要綱改正で「医療機関や公共機関などの」という例示をやめました。ここではその解説を書いているわけです。

 

知的障害の外出介護も同様

 (以下は上記の身障ガイドヘルパーの続きの文書です)。

 なお、このことは知的障害者ホームヘルプサービス事業における「余暇活動等社会参加のための外出時における移動の介護」に係るサービスを提供する際においても同様であるので、御配慮願いたい。

 身障のガイドヘルパーと同様、知的のホームヘルプ要綱内部での外出部分も、利用目的を限定することなく、個々の障害者に応じて柔軟に対応するようにという文書です。

 

ホームヘルパー養成研修事業について

 本通知については、平成12年度を持って廃止する予定であるが、平成13年度以降においても、(略)障害者施策として訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修事業を実施することとしており、改めて通知を発出する予定であるので、了知願いたい。

 ヘルパー研修事業はいままで老人保健福祉局主導の要綱で実施されていましたが、介護保険開始に伴って、高齢施策からは国庫補助金がなくなりました。高齢施策の研修は、各事業者が都道府県の研修事業指定を取り、受講者からの受講料のみで実施するという形になりました。これに対し、障害施策では国庫補助の継続を行うため、13年度から障害のみの研修要綱ができます。

(注:1〜3級ヘルパー制度自体は共通なので、どちらの研修を受講しても両施策で利用可能)。

 

 また、現にホームヘルパーとして活動している人には、優先的に研修が受講できるようにするように、との指示文書もあります。(障害施策の研修でしたら、都道府県が予算を付け、国庫補助を利用すれば受講料無料で受講できます)。

 

介護保険制度との適用関係

 昨年(12年)の課長会議資料や、その後の3月末の通知、そのほか、この1年に介護保険側で決まったことなどに関連しての記述があります。ほとんどは月刊誌でお知らせした内容です。

 1点、新しく書き加えてもらいました。

 「65歳を超えて、新たに施設や病院を出て自立する全身性障害者や、65歳を過ぎてから親の介護が受けられなくなった全身性障害者の場合も、新たに介護保険ヘルパーに上乗せして、障害ヘルパー制度を利用できます」と、わかりやすく書いてもらいました。

 現在、介護保険ヘルパーだけでは足りないという方は、どんどん市町村の障害福祉課に交渉をしてみてください。

 

日常生活用具

 盲人用カナタイプなどが廃止になります

 各品目の単価の見直しも、昨年に引き続き、実勢価格にあわせて変更する予定です。

 

 

 これらの課長会議文書の企画課・障害福祉課の資料ページを含む全部分の冊子の複製は、今年度も販売します。010−870−222全国障害者介護保障協議会

 

 

 

主幹課長会議で配られた

2003年からの「支援費制度Q&A」の解説

 

 今回の主幹課長会議では「支援費制度Q&A」も都道府県等に配られました(このあとのページに、全文を掲載)。

 まず、支援費制度に移行するのは、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイ、授産施設(政令で定める施設に限る)、療護施設、更生施設、などになります。

今のうちに交渉しておかないと、制度が伸びなくなる恐れも

 支援費制度に移行するにあたり、今までの利用者のヘルパー時間数などは減らさないようにすると書いています。が、これから利用する人や、今時間数が足らないので交渉している人には悪影響が出るかもしれません。

 というのも、厚生労働省は障害ヘルパーの時間数の基本的な基準を作るそうです(基準作成には、障害等級に着目するのではなく、介護の必要な時間に着目すると言っていますが、どのようなものになるか、未知数です。また全国市町村でサービス水準が高いところから低いところまで全然違う実態をふまえつつ、基準を作るので、こういう障害なら具体的に何時間というものではないようです)。2002年ごろには、都道府県が(基準に沿って各障害者のヘルパー時間数決定する窓口担当者の)研修を行います。2003年4月以降は、その基準に沿って、全国の市町村の窓口職員が時間数決定を行っていくことになります。このような基準ができてしまうと、(厚生労働省の思惑とは外れて)、多くの市町村がそうであるように、マニュアルに沿って時間数を決めていこうという市町村が続出する恐れがあります。これは、現在、ヘルパー制度が低い地域では上昇の力になるかもしれません。ところが、現在、24時間に近い介助が必要な単身障害者などは、例えば、今、1日8時間程度のヘルパー時間数を受けている方(まだまだ介護制度の時間数は全然足りないが、周りの障害者に比べると時間数の多い方)などは、2003年以降は交渉しても制度が伸びにくくなるかもしれません。今から交渉して制度を伸ばしておきましょう。(1市で最低1人は24時間介護保障を利用できるようにしておけば、前例があるからと言うことで、あとから自立する人なども同じ制度を利用できるようになります)。

 

事業者を自前で持っておけば利用は柔軟になる

 支援費制度の場合は、「月150時間ヘルパーを使えますよ」と市町村に認められた障害者は、事業者との合意があれば、この150時間を自由な曜日・時間帯に利用できます。例えば、月の前半は友人と旅行に行き、後半に150時間をまとめて使う、といった使い方もできるようになります。各事業者は月末締めで、翌月初めまでに市町村に報告すれば、支援費を代理で市町村から受けられるので、利用者は1ヶ月の範囲でしたら自由にサービス時間を変更できます。

 これは現在の大阪市や兵庫県などの(月単位で上限が決まっている)全身性障害者介護人派遣事業とほぼ同じです。

 ただし、障害者が集まって、自分たちでヘルパー事業者を作っておかないと、こういった自由はかなえられないでしょう。(一般事業者からのヘルパー派遣の場合は、派遣されるヘルパーの都合が優先されるので、週間プランを1回決めたら早々動かせるものではないので)。障害者2〜3人で共同でヘルパー事業所を作っておくことをお勧めします。

ヘルパー1〜3級は必要になりそう

 Q&Aでは、ヘルパー研修修了者が要件になる方向で検討、と書いています。

 義務化されると、最重度障害者にとっては自薦介助者が確保できず非常に危険です。厚生労働省では、「この制度になると、事業者応諾義務がでる。それにはヘルパーの質の確保が必要」(今までの市からの直接委託と違い、1回県が指定を出せば、市町村は事業者に対して細かな監督をしなくてよくなるので(自由化)、ヘルパーの質などの別の縛りがないと問題が起こる)と考えているようです。

 

*以下は、Q&Aには載ってないですが、支援費方式の現段階での情報を掲載します

事業者への支援費単価は市町村ごとに変わる

 ヘルパーの支援費の基準単価は市町村ごとにかえていいことになっています。ただし最低基準を国が決めます。この最低基準は、現状の国庫補助単価(昼間介護型3740円/時)から、そんなに大きく下回ることにはないだろうということです。

 利用者負担も市町村ごとに決めていいことになっています。ただし、最高基準を国が決めます。今の、所得に応じた負担の仕組みから大きく変わることはないようです。(検討中で決定ではない)。

ガイドヘルパーは別単価

 ガイドヘルパーは、今は、ホームヘルパーの介護型が使われていますが、2003年からは別単価になり、もう少し下がるようです。(検討中で決定ではない)。

 

ホームへ