高原障害福祉課長は、議論の推移によって検討会としてまとめを出す可能性を明らかにし、「場合によっては第2順目あたりから、ワーキンググループをつくる必要があるかもしれない」との新しい見解を示した。
第9回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会が10月14日(火)厚生労働省で行なわれた。この日は「地域生活を支えるサービス体系の在り方について(ホームヘルプサービス等居宅支援サービスについて)」をテーマにフリーディスカッションの形で行なわれた。事務局から「居宅支援3事業に関する主な意見等」という今までの検討会で出された意見、各団体が提起してきた意見などをまとめた資料が出され、これに基づいて意見交換がされた。この資料は、「1.議論が必要な具体的なニーズ」として、(1)居宅支援全般、(2)ホームヘルプ、(3)デイサービス、(4)ショートステイ、等と整理され、「2.その他」として(1)地域生活支援に関する理念等、(2)生活ニーズに応じたサービス提供の在り方、(3)財源の確保、サービス量の確保、等の項目が挙げられ、それぞれの項目に意見・考え方などがアトランダムに記されていた。
その資料の説明を受け「視覚障害の人たちが支援費を受ける場合の事務手続きの問題、署名をどうするかといった問題」など、今まで指摘したにも関わらず抜け落ちているものが少なくないことを、複数の委員が提起した。また、太田は「義務的経費にすべきとの問題や、扶養義務者の費用負担の問題、ホームヘルプという概念の見なおしという重要な問題がすっぽり抜け落ちている。厚生労働省にとって都合のいい意見を中心に抜き出したようにも思える」と発言した。これに対して事務局は「決してそのようなことはなく、今回は3事業のニーズを中心にまとめたものであり、今言われた問題はもっと大きな問題というように認識している」と答えた。さらに他の当事者委員から、「説明の中でボランティアによるサポートも検討というニュアンスも多くあったが、現在不足しているサービスの供給体制の在り方を議論するのがこの検討会の役割ではないか」という指摘も出された。
中西委員からは「この資料では抜け落ちているものを具体的に出していくことが重要」という意見が出され、"入院中のヘルパー派遣"や"当事者仲間のリーダー育成"など5項目が提起された。
その他の委員からは、「事業者が利用者を囲い込まないような、社会的に認められうるシステムにしていく」ことや「市町村の自主性が発揮できるしくみにしていく」こと、さらには「類型の単価の見なおし」や「類型そのものを柔軟性のあるものにしていくこと」などの意見が出された。また「ショートステイやレスパイトサービスは下手をすると施設サービスと変わらなくなってしまう」という意見や、「移動介護が一般の交通機関の利用しか認めてないのは困る」あるいは「施設から在宅へ具体的な財源配分を変えていくことが重要」などという発言もあった。
大谷委員からは「介護保険との関係についても考えていきながら、今の支援費で障害者のニーズにどれくらい応えられているのかを検討し、公的なサービスである以上、市民を納得させられる根拠や客観的基準は必要であるように思える。また代替的サービスについても検討していかなければならない」との発言があった。
また、高橋委員は「権利擁護の仕組みについて具体化を急ぐ必要がある」と発言した。
安藤委員や太田などが再三にわたり「検討会としてワーキンググループをつくっていく必要がある」を主張し、それに対して冒頭で記したような高原課長からその可能性を示唆する答えがあった。
板山座長代理は、「今後議論を進めていくにあたり、スケジュールを明らかにしていく必要がある」と提起した。
さらに板山座長代理は「精神障害者の地域生活支援の在り方に関する検討会」が発足し、その副座長に就任したことに「本来は一緒にこの問題を検討すべきだと考えていたが、人数の問題もあり、別々となってしまった。ふたつの委員会が連携をとりながらやっていきたい」と抱負を述べた。
最後に大熊委員から、"施設にいたい人もいる"という発言を受けて、「ケア付き共同住宅など施設ではない居住の場が国際的な流れであることを押さえておく必要がある」との発言があった。
(1) 地域生活支援に関する理念等
@ これからの施策は、施設サービスから在宅サービスの充実へシフトさせることが必要
A 障害者のホームヘルプは、自宅における介護だけではなく、自立して社会で暮らすということをサポートすることである
B 自立に向けたサービスの在り方を考え、提供していくことが重要
C エンパワメントの視点が重要
D 障害者の介助サービスは、障害者のニーズに応じて時間、対象、サービス内容の3つについて無制限であるべき
E パーソナルアシスタント、ダイレクトペイメントの検討が必要
F ホームヘルプサービスの国庫補助基準は、NPOを含め提供基盤が整備されている都市部のサービス状況と町村のサービス状況に格差があることから、一律の基準ではなじまない
(2) 生活ニーズに応じたサービス提供の在り方
@ 公的サービスを弾力的・柔軟的な運用をすることで利用者のニーズの多くに対応可能
A 公助のみでサービス賄うことは,一人施設化(世界一小さい入所施設)。ケアマネジメントの手法を利用しながらインフォーマルサービスを加えるほうが、生活の幅に広がりがでる
B 現状で用意されている公的サービスの範囲を越えてニーズがある場合は、それを県や市町村に認識してもらい、欲しいサービスがなかったら作ってもらうように活動しなければならない
(3) 財源の確保、サービス量の確保
@ サービス提供事業者について、特に町村部について事業者の確保が必要
A 日常生活支援のサービスを提供する事業者数が少なくその確保が必要
B 移動介護の単価は低いため、移動介護を行う事業者が少なく、その確保が必要
C 地域に移行するためには、ショートステイ事業を増やすことが必要
D ショートステイがないため、市の単独事業でグループホームの寮を使って対応している
E 全身性障害者の居宅支援に関するニーズの内、ホームヘルプサービスとして公的に提供すべき内容と範囲について検討し、市町村が行う支給量決定の勘案基準等の策定を図る」ことが必要
F ガイドヘルパーについて、身体介護を伴う場合と伴わない場合の判断を含む最低限の基準を定めることが必要