"経営優先"か"ニード優先"か、議論のとば口に入る

〜第8回地域生活支援在り方検討会行われる〜

 9月30日(火)の第8回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会は、ある程度議論に時間が割かれた。会議の終了間際「今日はいい議論が行われたと思う。支援費制度を考えていくときに、事業者の立場からの経営優先の考え方と、サービス利用者の立場に立ったニード優先の考え方とどう折り合いをつけていくかが今後の課題である」という総括的な意見が出た。
 この日は「地域生活を支えるサービス体系の在り方について」をテーマに、佐藤委員と村上委員から報告があり、討論が行われた。
 まず佐藤委員は、自身が携わるファミリーサポートセンター昴のこれまでを紹介した。同センターは、レスパイトサービスを全国に先駆けて行った。現在はその延長線上の移送及び一時預かり(宿泊含む)等の生活サポート事業と、ホームヘルプ・ガイドヘルプなどの支援費制度の事業を行っている。支援費制度の移行により、それまでの三倍の時間数の派遣となっている。きちんとニードに対応しきれていない部分も出てきているが、効率よく派遣体制を組み、利用者に合わせてもらうようにすれば、相当の収益性があることも見えてきた。そのために利用者を囲い込み、定型的な地域福祉サービスを提供してしまう危険性があることを指摘した。
 さらに事例を紹介する中で、「自薦ヘルパーを登録したい」という利用者がいたが、資格を持っていないなどの理由で「断った」と述べた。
 続いて村上委員は、大分県下における障害児通園事業運営に関する調査票集計結果を披露し、「支援費では単価が低いため、収入減少・経営困難を招いている」などと述べた。次いで大分市におけるデイサービスの状況の説明が行われ、「高齢者ではデイサービスを受ける人は比較的軽度な人が多いが、障害者では重度な人たちが多いのが特徴である」と述べた。これからの地域支援のあり方については、「男性ヘルパーや知的障害者のガイドヘルパーを増やしていくことが必要であるが、何よりも本人と周囲をエンパワーする方向が求められる」と述べ、「ヘルパーやケアマネージャー、コーディネーターなど専門家に囲われた暮らしは、施設を極小化したようなもので、住民・隣人、公的サービス、私的サービス、ボランティアなど多様な支え合いによる暮らしが望まれ、ケアマネージメントが重要となってくる」などと述べた。
 これに対し質疑の中で太田は「多様な支え合いという考え方は賛成できるが、もっと大きく捉え、所得保障、住宅、交通などの社会資源の充実という観点が必要」と述べた。
 また「支援費で追加すべきサービスは何か、緊急の場合どうするのか」との質問が出され、佐藤委員は追加すべきこととして、一時預かりや公共交通機関によらない送迎サービスなどをあげ、村上委員は緊急時には携帯電話で対応をしているなどと述べた。

 最後に事務局から報告事項として「抽出調査による支援費制度の施行状況について」があった。これはあらかじめ93の市町村を選定し、有効回答の76市町村分をまとめ、調査項目により、54〜78市町村分をまとめたものである。
 この調査で明らかにされたことは、自治体によって支援費の施行状況について大きな格差が生じていることである。例えば身体介護についていうと、一人当たりの利用時間数の平均が100倍以上の格差として数字で表されているのである。様々な要因が考えられ一概には言えないものの、激しすぎる格差である。この格差はもちろん身体介護だけではなく、他の類型でも現れている。
 この調査について「政策担当者としては予測通りだったのか」との質問に対して「ある程度予測通りだったが、今後なぜバラつきがあるのかという分析が必要とされる」と高原課長は答えた。さらに介護保険サービスと併用して支援費によるサービスを受けている人がいることについて「もっと詳細に調べ、障害状況についても把握していく必要がある」と述べた。

 なお渡辺委員は、日経新聞社の政府の審議会、検討会に対する方針により辞任され、今回より山路憲夫委員(白梅学園短期大学福祉学科教授)が就任された。

 次回はホームヘルプサービスのあり方を中心に議論することとなった。次回10月14日(火)午後1時半〜午後4時厚生労働省18階専用第22会議室

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