障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会(第6回)発言内容の要約

2003年8月26日

ご注意

 これは傍聴者の個人の要約メモですので、細かい発言内容に間違いや抜けも多いと思います。あくまで全体の流れの雰囲気を感じる参考にとどめてください。

 転用はお断りいたします。順次訂正していきますのでほかの方にお知らせする場合はホームページアドレスのみお知らせください。繰り返しますがこれは短時間で個人がまとめたメモですので、委員各自の発言内容を正確に反映できていませんので、これをもとに各委員に対し抗議や批判を行うようのないようにお願いします。

 正式議事録は厚生労働省ホームページに掲載予定です(各委員のチェックが入ったあとになりますので少し遅れての掲載となります)。

障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会(第6回)

2003年8月26日

(これは傍聴の内容を要約したメモであり、発言記録ではありませんので、その点ご留意ください。)

■江草江草座長((福)旭川荘理事長 )  

定刻になりましたので始めます。
 事務局から、出欠、進め方、資料について。

■事務局(高原障害福祉課長)

 出欠ですが、有留委員、竹中委員、森貞述委員、渡辺委員が欠席です。高橋委員は30分遅刻。
 傍聴については、今回は全員参加していただくことができた。
 今日の進め方だが、議事次第にありますように、第一は海外の動向について。順番は、アメリカ、スウェーデン、イギリス、ドイツで、おのおの20分程度話を聞かせていただいて、質疑を行う。その次に議題の2として、検討会の9月以降の進め方について、事務局から説明をして議論をする。
 資料ですが、資料1〜4までが今日の話の資料。冊子が河東田先生から出ている。資料5は今後の進め方。
 中西委員から資料の提供を受けているので、資料を配布している。資料の不足は事務局まで。

■中西委員(DPI日本会議)

 議事の資料は事前に配っていただかないと、知的障害のオブザーバーもわからない。できれば1週間前までに資料を送ってほしい。

■事務局

 できるだけ事前に配布できるようこころがけているが、時間の制約で当日配布になってしまった。できるだけ努力していきたいと思う。各委員におかれましても、資料をすみやかに提出いただけるようご協力お願いしたい。
 今日、独立行政法人化の委員会とぶつかってしまったので、3時から1時間ほど中座します。ご了承ください。

■江草座長

 関係者からのヒアリングを始めます。お手元の資料にしたがって、よろしくお願いします。まず、アメリカに関しては、末光さんからお願いします。20分ないし25分でお願いします。

■末光 茂 氏((福)旭川荘副理事長・川崎医療福祉大学(大学院)教授)

 限られた時間ですので、スライドを用意しました。資料1にもありますので、ご覧ください。
 今回、私に与えられました課題は脱施設化と地域生活支援に関する動向、アメリカを中心に話をします。私自身、すべてを網羅しているわけではないので、いくつかの側面の現象として受け止めてほしい。
 「脱施設化と地域生活」という本の第3章と第4章のコピーが1回目に配られたと聞いている。この本の特徴を列挙してみた。1996年時点で比較してまとめた。
 それぞれの国の先駆的なものの報告になっていて、それがその国のすべてでも平均でもない。北欧4カ国だけを取り上げてもこれだけ違っている。いずれも日本と比べると小さい。その中でもスウェーデン・ノルウェーのように施設をなくしているところもあるし、デンマークは一部残している。フィンランドは大規模入所施設の建設にようやくストップがかかった状況である。
 イギリスについても、国内格差がある。ウェールズ、イングランド、スコットランド、アイルランドの順で格差があるようだ。しかし、人口の大部分はイングランドに住んでいる。
 アメリカになると、大国であり、合衆国ならではの問題がある。人口は日本の2倍、面積は25倍。つまり人口密度は1/12。州の独立性は日本と比べて格段に大きい。実態にも大きな較差がある。
 1964年の公民権法、73年のリハビリテーション法、75年の発達障害者援助・権利法、78年の発達障害法をへて、1990年のADA法として実を結び、高い評価を受けている。
 また、自立生活運動は支援を受けながらの社会生活と言う点で、画期的であった。
 これは朝日新聞の3月9日の暮らし欄に用いられた図表。「脱施設化と地域生活」の本からアメリカとスウェーデンのデータを抜き出し、日本を付け加えた。(8枚目のスライド)アメリカについては、公立の入所施設しか数字に入っていない。
 次のスライドは、1970年以前、1950年までさかのぼった表を作った。(9枚目)アメリカの物については、全施設の入所者をカウントするために、公立施設の入所者数を1.5倍して推計を加えた。
 スウェーデンでは人口1000人で1.8人の入所施設が作られたあと、脱施設化が始まり、その割合が低下していった。アメリカでは1.5人を頂点に下がっている。ノルウェーはスウェーデンを後追いして施設整備し、施設縮小した。日本は施設入所者の割合が増加しているので、脱施設化に逆行しているように受け止められるが、実は後追い。これからが脱施設化の正念場ではないか。
 次のスライドはアメリカの入所施設。荒地の中に施設がぽつんと立っている。定員が2000人と言うマンモス施設。(10枚目)
 入所施設といっても日本と欧米の違いがある。欧米は医師と看護師が、ケアにあたる。日本は、指導員、保育師がケアにあたり、日本は生活支援中心の施設。そういう意味でまったく施設の意味が異なっている。
 州立施設は、当時の法律に定められた職員数が守られていなかったことも合って、処遇の劣悪さも問題になった。
 ノルウェーの中央施設の入所者の平均が228人、スウェーデンが80人。デンマークが483人。アメリカ・ニューヨーク州では、全施設を平均すると1250人だった。それに対して、日本の場合は、50から59人が最も多く、かつてのスウェーデンとノルウェーの中間に位置する。200人を超える施設は1%程度。400人以上の施設は例外中の例外。
 アメリカの場合、脱施設が進んでいるのは、100万人前後の州が多い。ニューヨークは人口240万人で例外。最大時で4725人の施設があった。100メートルにならぶ、平屋の建物にベッドが入っている。
 ニューヨークの脱施設化の詳細は、本の3章に書かれている。カステラニィが書いているが、順調に脱施設が進んだ理由について、脱施設=施設閉鎖ではない。地域生活移行の結果として、施設が閉鎖されている。脱施設化の全過程で施設は大きな力を発揮した。州内の全施設の閉鎖を同時に行おうとしたのではなく、ひとつずつ順次進めていく積み重ねであったと述べている。他の施設に対して、成功が安心と経験をもたらした。従来の入所施設サービスの協力、州知事の柔軟性、市民の理解と努力。保健医療サービスの確保なしでは成功しない。グループホームや地域プログラムを地域住民が歓迎した。
 州北部の田園地帯では順調に進んだのに対して、南部では反対運動があった。居住者の移転に親の理解を得ることの難しさ。施設職員の転職の問題。保健医療サービスを得るために、発達局がミニ病院を経営する必要もあった。財政出動等の工夫も示されている。
 日本と違い、アメリカは皆保険でないので、メディケア、メディケイドという複雑な制度で、格差が大きい。日本のように、いつでも、どこでも、誰でも平等に、ということはない。そのため、独自の対応、専門のミニ病院の設立が余儀なくされた。
 家族の代わりをするフォスター・ファミリーと言う独自の受け皿も大きい。グループホームへの移行だが、アメリカの場合、7〜15人のものも多い。ミニ施設という声もあり、問題もある。
 イギリスの調査では、施設に比べてグループホームのサービスの低下も言われている。
 ノルウェーでも、グループホームが農村部にあるということや都市部でも差別意識のために地域に溶け込めないということもある。 ノルウェーでは40年かけて、職員体制が日本の約5〜6倍。しかし、職員の問題があるとも言われている。職員の半数が入れ替わり質が確保されていないと言う意見もある。これは、北欧もアメリカも同様。
 コネティカット州は、トップクラスの州で全国平均の1.5倍。この州で、不審死が社会問題になっていると言われている。36例の不審死の原因は窒息、肺炎、転倒などによるもの。背景に、グループホームの世話人の質と量の問題がある。
 サービス内容に関して、2000年のアメリカの資料。1〜6人で暮らしている人が大半で、独居・小規模のグループホーム・フォスターファミリーなど。その次が公立入所施設、民間入所施設になっている。
 アメリカ全州での財政支出額の推移を見ると、右肩上がりで地域サービスは上昇している。入所施設は減っているが大きな落ち込みがない。
 脱施設化は各国の歴史、経済、国民の状況を踏まえ総合的に進める必要がある。入所施設を閉鎖し、グループホームを作れば言いというものではない。
 脱施設化は、ただ単に、施設を縮小すれば言いと言うことではないように思える。ニューヨークでは、まだ施設がのこっている。テネシー州のアーリントン発達センターは、連邦政府の閉鎖方針と州議会の存続決定との間で裁判で係争中である。他の州でも進んでいないところもある。施設職員の雇用の問題なども大きく関係している。
 施設やプログラムでなく、個人を基本としながら、柔軟性のあるサービスを創造する。地域とのつながりを強化し、住まいと支援サービスをわける。その実際は、第7章に紹介されている。
 二者択一でなく、本人が選べて、QOLを人を中心とした、人中心のプランニングで作っていく。積極的な日々がおくれるよなサポートが必要である。
 いずれにしても、アメリカの地域生活支援について、真の脱施設化と地域生活は、未完成である。破壊的なほど急激と移る人も、進行がおそいので苦しむ人と両方がいる。着実な歩みを期待している。

■江草座長

 ご質問、ご意見がありましたらどうぞ。10分ぐらいで終えたい。

■中西委員(DPI日本会議)

 施設閉鎖の過程で、政治がイニシアチブを取ることをおっしゃった、施設と親の説得が難しいともおっしゃった。もう少し具体的にいただきたい。

■末光 茂 氏((福)旭川荘副理事長・川崎医療福祉大学(大学院)教授)

 どの国でも同じで、この本では、イギリスとノルウェーの例が参考になる。家族に提案すると、施設に預かってもらっているからこそ、家族が安心して生活できているのに、なぜ家庭を破壊するのかといわれる。まず試してみましょう、ダメだったら施設に帰る道があると言うことでやった。ほとんど、95%ぐらいはやってよかったと、施設で続ける人は数%。最初は拒絶反応があったという人でも、大きく変わる。施設入所前の家庭の生活の大変さの記憶が強くあるのではないか。どの国でも証明されている。

■中西委員(DPI日本会議)

 結局、在宅のサービスが充実していないと、出るのは怖い。行政がそうした保障を与えたのか。サービスを充実したのか。

■末光 茂 氏((福)旭川荘副理事長・川崎医療福祉大学(大学院)教授)

 政府が保証する形をニューヨークでは取った。州の担当者が信用を得ている。行政の責任者、州知事、発達障害局、現場のパイプ役の人がいたのが大きかった。

■江草座長

 まだまだあるとおもいますが、次にスウェーデンについて。河東田さん。

■河東田 博 氏(立教大学コミュニティ福祉学部教授)

 手元に報告書とレジュメがありますが、そのまえに、スウェーデンの社会政策を理解してもらいたい。
 末光さんからも合ったが、海外から学ぶときにストレートに入れられない場合がある。習慣、文化がわが国とまったく違う。その背後に歴史的なプロセスがあったり、推進者がいたり、それらを報じたジャーナリストや法制度がある。しかし、私たちと同じ人間が作ったものである。特徴や考え方を押さえておきたい。
 1967年にノーマライゼーション理念を盛り込んだ法律が成立した。その上で政策が推進され、生活が豊かにって来た。
 それ以前は、わが国と同じような差別的な考え方や法制度を持っていた。これを忘れてはいけない。
 しかしながら、一度打ち立てられた理念も合わせて見ておく。82年の社会サービス法、今も改定されているが、第1条の目的、”国民の生活条件の平等”がサービスを支えていくきっかけとなっている。これがきちんと根底にあると言うこと、地域社会へ積極的に参加していくと言うこと、自己決定とプライバシーがもりこまれている。すべての社会的資源を必要とする人たちに示されたことが、社会的に大きな意味がある。
 誰でもハンディキャップになると言うハンディキャップ思想と、資産の再分配、環境を変えていくアプローチ。これらを学ぶことができる。  1994年から施行されている、LSS(一定の機能的な障害をもつ人々に対する援助とサービスに関する法律)についてみていく。この法は援護から権利の達成の概念の作り変えを行った。援助とサービスの内容、多様なサービスを示している。
 LSSの第9条は、助言や人的な援助、パーソナルアシスタントによる援助、アシスタント保障、直接給付を行う。ガイドヘルプ、レスパイと、ショートステイ、短期学童保育、日中生活活動の充実などが具体的な法律の中に示されている。余暇活動についてもLSSの果たした役割が多い。
 1998年末までの施設全廃が法律に示されているのがほかの国と決定的に違う。1997年には入所施設解体法ができ、特別病院、施設の解体を決定した。
 パーソナルアシスタントは身体障害だけでなく、知的障害者、重度心身障害者に広く適用されている。全国で重心の人が直接給付ができ、地域で生きていけるところまで発展させている。
 ハンディキャップオンブズマン法もできた。具体的な調整と対応を示していく。私たちがスウェーデンを訪れた時、日本からきた車いすの人を電車に乗せなかったことについて、ハンディキャップオンブズマンに訴えて、全面的に支援してもらい、先ほど勝つことができた。
 当事者代表制という取組みをしている知的障害の団体もある。主要な団体では、協同組合方式をとっている。そうした組織体も生まれている。この法律によってそうした発展も出てきている。
 スウェーデンでは、1986年の法律と94年のLSSの施行によって、99年12月末の段階でほぼ施設がなくなった。2000年1月1日では、施設には86人が入所している。統計からは入所施設の項目がなくなり、”その他”の項目で処理している。表向きは施設はまったくなくなったという形で数値を出している。
 なぜ、施設をなくしてきたかというと、さまざまな理由が示されている。入所者施設は当事者主体になりえない構造的な問題を抱えている。できるだけ、集中管理ができないよう小規模にしていく。自己決定や当事者主体を考えてきた結果、このような決定や対応になったと考えられる。
 ほぼすべての人が地域に移行したが、スウェーデンのグループホームのイメージはどんどん変わってきている。お配りした報告書の21pをみていただきたい。一人当たり平均40uのスペースを持とうとしている。広いスペースと言うだけでなくて、居間、台所、浴室がひとりで使えるようになっている。玄関も別々で表札がある。新しいタイプのグループホーム、そうした取り組みも進められている。
 報告書はこの3年間で、イギリスやドイツ、日本での面接調査の結果を分析した。今回はスウェーデンだけとりあげる。
 文献調査ではっきりしてきたことは、はじめから法律・制度があって取り組みが始まったのではなく、問題点の指摘があり、本人と向き合う中で、試行からはじまった。そうした試行的な取り組みの上に法律や制度が作られ、不十分な面にメスが入った。法律があってもそのとおりにはならないので、それなりの説明をし、理解を得る中で、進めていった。リーダーシップをもった施設庁、国の方針のもとで対応していった。
 ノーマライゼーション思想が大きく役にたっているのはもちろんだし、生活の質を高めていく取り組みや研究が進められてきていることや、マスコミの報道、社会の賛同を得ることで進んできた。
 親、職員以外でも、反対をされる方々も多かった。解体の作業が進むうちに、本人の顔も変わり、戻りたくないと言う。それを見た反対していた親や職員も理解し、受け止めていくようになったことが調査してわかった。
 多くのご本人たちは、いくつかの施設を転々としている。地域に移行しても、グループホームをいくつか変わったということもある。地域移行しても世話人と関係よくない。グループホームも変わっていく必要がある。
 しかし、施設時代のことをたずねると、彼らの表情が変わる。戻りたくないと言う。
 地域移行に関しても、1970年代の後半から出されているが、施設庁から言われたので半強制的に施設から出したと言う声もあった。1990年代の後半からは本人の意向や親の意向に対応して時間をかけながら地域に移行するようになったという声があった。本人の意向を尊重する。本人支援のあり方をしっかり検討する。安定させるためにはシステムをきちんと作っていく。やりながらシステムを作っていくと言うこともあるでしょう。細かなことは、資料で対応してほしい。
 収入ですが、地域生活を考える上で、大きな意味がある。知的障害者の月々の平均収入は年金に住宅手当が加算され、9984クローネ。一般市民の平均収入とほぼ同額。一般市民と同等、最低限度ではなく、同等の生活をする権利がある。そのかわり税金もその中から払っている。彼らは800クローネの税金を払っている。住民としての責任をまっとうしている。
 今まで申し上げたことをまとめると、これからの取り組みの参考になるかと思うので、図を用意した。入所から様々な形ででている。グループホーム、アパート。これを地域生活支援センターで支えている。
 なかなか地域に溶け込めない人たちがいる。地域生活がミニ施設化している実態がある。地域に出ても構造的問題を温存したままで生活している実態が浮かび上がってきた。地域にさまざまなメニューを用意するだけではなく、一般市民と同等の生活をどう実現するかを考えなくてはならない。こうしたことを念頭において、各先生方には、ご検討をお願いしたい。

■江草座長

 質問がある方は

■太田委員(日本障害者協議会)

 パーソナルアシスタントが知的障害者、重症心身障害者の人にも適用され成功している。どういうやり方で成功しているのか

■河東田 博 氏(立教大学コミュニティ福祉学部教授)

 ひとつはどんな方も地域で暮らすと言う考え方を持った、社会的に考え始めたということ。そのための方策を創意工夫の上で用意をしていった。
 重症心身障害者といわれる人たちは、その方たちも何らかの形で意思表示ができ、それをどのように受け止め、どのように生かしていくかを社会的に考えた。まず最初に、どんな人でも地域で暮らせると言う考え方をもってほしい。その際の工夫をしていってほしい。

■谷口委員(自立生活支援センターきらリンク事務局長)

 ひとつは、介護の問題ですが、知的障害の介護とくに見守り、指示についてはそうした概念をスウェーデンではどのようにとらえているのか。
 ふたつめは、グループーホームが小さな施設と言う話があったが、その辺を肯定的に捉えていいのか否定的なのか、施設と言う規定は感覚的なものなのか、何かコンセプトがあるのか。

■河東田 博 氏(立教大学コミュニティ福祉学部教授)

 たとえば、冊子の21ページのモデルを見ると、グループホームのモデルも60年代から年々変わってきている。新しいグループホームのあり方についても変わってきている。これは93年の状況。自分達の生活を障害者の生活におきかえてどうあればいいのか、住まいやグループホームのあり方を変えている。どんなものを付加しているかをすべて考えてきている。
 私は、21ページのモデルが示されれば、居間のグループホームのイメージが薄められていく。
 彼らがグループホームと言っているのは3タイプあって、24時間介護の必要な人のグループホームは利用者4人で、職員は6人。障害が重くなると、職員が10人、12人になる。
 本人中心の運営をしても、職員が多いと職員のグループができ、ミニ施設化していく。本当にひとりひとりの思いを実現させるためにはどのようなソフトの支援が必要なのかを考えなくてはいけない。
 地域に住んでも施設的な要素はぬけない。いつも何かのお世話をしているという感覚を捨てないと、本当に自己決定を考えていかないと、施設と同じ二の舞を踏んでしまう。質の高い討議を皆さんにはお願いしたい。

■中西委員(DPI日本会議)

 当事者の意志を中心としたサービスをスウェーデンはなぜできたのか、何が一番必要だったのか。
 パーソナルアシスタンス法があって、障害者に直接お金を渡すことを大胆にやった。施設サービスの対極として、本人にサービスを買ってもらう。自分自身のサービスを自分で買い調整して生活する、これほど対立することをやって、スウェーデンの福祉サービスが腐敗しないでいられる。
 私の提出した資料であるが、自分自身で介護者をやとった場合、サービスの満足度高い。働く人の満足度も高い。利用者との関係が良くなる。官僚的でない。感謝される度合いが大きい。利用者と介助者がともに喜びあえる仕組みである。

■河東田 博氏(立教大学コミュニティ福祉学部教授)

 まったくそのとおり。パーソナルアシスタントは身体障害者だけでなく、知的なハンディを持つ人も重症心身障害者にも広くいきわたって対応している。人間の尊厳を守るための重要な法律。この制度を利用する人が、2割近くになっている。既存のサービスへの不満の表れ。日本でも追求していかないといけない。

■江草座長

 加藤田先生は、これでご退席されます。ありがとうございました。次ぎに小川さんお願いします。

■小川喜道 氏(神奈川工科大学福祉システム工学科教授)

 短い時間ですが、お役に立てれば。
 介護保険に見るケアマネジメントは、イギリスのそのものに当たる。日本はやや形式的に作られているきらいがある。日本で実あるシステムを作る際にイギリスを振り返るのは意味がある。
 1995から96年にかけて、ロンドンの児童保険研究所にいた。CBR(地域に根ざしたリハビリテーション)と地域障害学を学んだ。
 ロンドンのある障害者宅を繰り返し訪問した。全盲、ほぼ車いすの人、そして複合した障害を持った人がいた。お母さんは仲間と一緒にレスパイトケアの仕事をしていた。繰り返し訪問した。
 本人、家族の体調、生身の人間は体調が毎日変わる。季節ごとに複雑に変化する中で暮らしている。それらを把握して初めて地域ケアを考えられる。日本に戻ってからからも度々訪問している。ケアマネジャーとも意見交換した。
 今日、配布した資料はイギリスの障害者団体と自治体が作成した資料。粗翻訳をした。コミュニティケア、ダイレクトペイメントの解説がなされている。
 ロンドンのピープルファーストの資料をみてもらうと、絵がある。中心に本人が居て、地域生活は多くの人間関係で成り立っている。家、デイサービスセンターの場、生活技術・料理。それに不自由する場合のコミュニティケアがある。
 コミュニティーケアは、種別や年齢で分けられるものではない。高齢者であろうが、身体、知的障害者、精神障害者。援助が必要なすべての人。日本のように切り分けた相談や制度と言うことではなくてすべてをひっくるめたかたちになっている。  コミュニティケアの法制度については、河東田さんの配布された冊子のほうが詳しくなっている。
 サービスの元になるのは1970年の慢性疾患および障害者法と地方自治体社会サービス法。サービス提供者と購入者の関係が大きく変化している。1996年に介護者に関する法律ができ、ニーズをアセスメントする。ダイレクトペイメントで補強されている。
 資料5pにいって、アセスメントとは何か。コミュニティケアにはアセスメントが重要。何が必要か、望まれているのか。
 日本では支援費は行政職がやっている。イギリスはソーシャルワーカー、作業療法士が行う。
 ロンドンピープルファーストの例。教育にかかわるテキスト・マニュアルには4つの項目がある。 1.反差別的対応の 2.障害の社会モデル 3.提供者と利用者の消費者モデル 4.エンパワメント(当事者のない内在的な力を援助する)  これらを日本では十分できているのか。
 しかし、イギリスのアセスメントは長期にまたされるという問題がある。4〜9ヶ月かかる。私の調査している地域は18万の人口で視覚障害1000人。まだアセスメントを待っている20人いて、1年以上の人も入る。優先順位があって跡にまわされることがある。
 6pはピープルファーストのアセスメントの資料。自分の意見を言えるようにあらかじめ考えてアセスメントにいきましょうという資料。ケアを考えるプランニングの時は自分の希望をノートに書く、テープにとっておく。自分のニーズを書いておいて事前にケアマネにわたす。などの当事者の取り組みついて考えられている。
 コミュニティーケアの問題点もある。 ・財政引締め ・インフォーマルケアへの依存 ・地域への強制 ・障害者の依存の強化 などがあげられていて、若干その傾向を感じる。
 イギリスは4つの地域にわかれるが、イングランドに集中している。資料9pはイングランドの1999年度の統計。
 コミュニティケアとしてのサービスを150万人に提供している。本人へのアセスメントは100万人。介助者へのアセスメントは25万人。利用者は65歳以上が大きくしめる。
 施設69,900人の大半は65歳以上。施設ケアは日本でいう施設でない。少ない人数で古い建物を、民家を改造して、レジデンシャルケアができるようにしている。
 下にダイレクトペイメントの資料があるが、ダイレクトペイメントを試行している自治体はここ2、3年ぐらいで増えてきている。年齢をきらずに使えるようになっている。それまで自立生活基金という制度あった。
 現在、ダイレクトペイメントを使っている人が4400人いる。65以上が1500人となている。当初は64歳までだったが、年齢をきらずに使えるようになっている。
 知的障害者も200人いる。知的障害者が5%しか使っていないのは問題という指摘ある。パーソナルアシスタントはイギリスでも身体障害者のみの制度ではない。
 表3はアセスメントを受けた推計数。高齢の人がコミュニティーケアを受けたことがわかる。
 表4はホームヘルプの推計。150万の総数の内、68万がホームヘルプを受けている。知的障害の人も12,800人ホームヘルプを受けたことがわかる  表5はデイケア。65歳の利用が多い。知的障害者5万人受けている。
 表6はレスパイトケア。病院などで受けることが多いが、自宅でのレスパイトも行われている。
 イギリスではコミュニティケアの活用のしかたについて議論が進んでいる。障害別、年齢別になっていないので、相談はワンストップになっている。私の調査している町は人口18万人で相談窓口がメインとブランチ3つがある。
 利用者のアセスメントシートと介護者のアセスメントシートが別になっている。日本では介護者のニーズが主となる懸念がある。ご本人のニーズが家族のニーズに引っ張られてしまうのではないか。
 ダイレクトペイメントについては、これまで日本で行ってきた全身性介護人派遣事業、自薦ヘルパーなどの利点を発揮した制度を作っていく必要があるのではないか。
 厚生労働省は代理受領について「利用者が立て替えをしない」「事業者が安心できる」「事務的に容易」という3つのメリットをあげている。
 しかし、イギリスでは両者を選択、併用することができる。利用者の声がある雑誌にのっていた。 「ダイレクト・ペイメントは多くの余分な仕事と余分なストレスや緊張を与えているが、私が今もっている質やフレキシビリティは私個人ばかりでなく、私の家族やライフスタイルに適合するようにデザインされたパッケージである」  多くの障害者はヘルパーがいれかわりたちかわりくることを望んでいない。 「私はこどもに対して母親の役割が果たせる。ダイレクトペイメント無しにはこのことはできなかった。私は、お弁当やおやつや食事やベッドをきれいにすることを手配することができる。私は、子ども達が落ち込むような日には情緒的サポートをするし、気づかい、愛するケアをすることができる。」 「ダイレクト・ペイメントは大変フレキシブルであり、私のレスパイトのニーズに対応している。しかし、すべての私のニーズに対してダイレクトペイメントを用いる責任を取りたくなかった。それはあまりにストレスフルだから。」  この制度の基本方針はサービス利用者をエンパワメントする方法、障害の社会モデルを採用している。サービス利用者の自立、自己決定をひきだし、包括的な情報提供をしている。その結果、障害者がマネジメントに積極的になる。ダイレクトペイメントは、その費用を搾取されないように安全なシステムを作る。
 ダイレクトペイメントは自治体が認めれば、福祉用具の購入や移動など施設サービス以外の購入にも使える。
 日本でもパーソナルアシスタントに近い制度として、日常生活支援ができた。しかし、研修要綱を見ると、パーソナルアシスタントとは違ってきている。パーソナルアシスタントは最初に雇用してその人をトレーニングする。そのための費用も入っている。日本では研修を受けた人から選択する。それは違うのではないか。
 イギリスでは選択とコントロールを与える。日本では行政側の処理の都合ではないか。
 イギリスのダイレクトペイメントは銀行小切手、給料支払簿などの管理など作業としては大変。それでも主体性を持ちたいということでやっている。日本では主体的な金銭管理が行われていない。
 生活は切り刻まれてもできない。本来の生活を取り戻す。ダイレクトペイメントは検討する意味がある。
 イギリスの視覚障害者協会がコミュニティケアについて書いた資料は、どの障害に当てはまるのでお読みいただきたい。
 資料3以降は、ダイレクトペイメント、ケアマネジメントについて。ケアマネジャーが聞かないといけないことや銀行振り込みされたもののどのように収支報告に書くやり方などの資料も載っている。何かの参考に。長くなりましたが。

■江草座長

 ご質問ありましたら。

■笹川委員(日本盲人会連合)

 人口18万の中で視覚1000人。数が多いのではないか。
   金銭管理の問題、視覚障害者は大きな問題。イギリスでは見えない人はどういう形で振込などの手続きをしているのか。

■小川喜道 氏(神奈川工科大学福祉システム工学科教授)

 数字は端数まで把握しているが、今日は手元にない。住民登録約18万、視覚障害者は約1000人。ただ、私が調査した地域は特殊な地域で、貧困の障害者、高齢者が多い地域。公営住宅も多い。
 ダイレクトペイメントは小切手が基本。3000円未満は現金でもOKだが、3000円以上は小切手を使う。スーパーで買い物をするにしてもカードか小切手が基本。普通のコンビにでも小切手を切っている。
 視覚障害者ともお会いしたが、簡単なサインをしている。小切手を使うのは障害者のかたでも問題なくできる。

■大濱委員(全国脊髄損傷者連合会)

 ダイレクトペイメントよくわかった。16ページの比較表だが、利用者の責任について説明してほしい。

■小川喜道 氏(神奈川工科大学福祉システム工学科教授)

 パーソナルアシスタントを募集するときに、広告をだしたり、身近なところで集めたりしている。雇用法にもとづいて、一定の休暇とか、年次休暇とかをきちんとしなくてはならない。そういう責任を障害者が負うことになる。適当な使い方をするのではなくて、雇用の基準にのっとっていなくてはいけない。日本の場合だと労働基準法にそってということだと思う。ダイレクトペイメントさまざまな変化を報告しなくてはいけない。
 日本ではダイレクトペイメントがないので、ヘルパーについて書いていることもすくない。障害者とヘルパーとの関係を日本で考えると、身体や財物を破損するなどの重大事情発生時の解約できるということぐらいしか見あたらなかった。

■太田委員(日本障害者協議会)

 障害者の自立や独立と言うことを考えたときに、ダイレクトペイメントは重要だが、この制度を社会がどのようにして受け入れていったのかを知りたい。社会が受け入れていった過程について教えてほしい。

■小川喜道 氏(神奈川工科大学福祉システム工学科教授)

 社会というと大きい話なるので、法として成立させた、行政が取り入れていったと言うプロセスでいうと、背景に障害者の運動があった。1988年に自立生活基金が設立された。これがスタートで、500人ぐらいでパーソナルアシスタントを使い始めた。
 日本では1970年代から、重度障害者介護人派遣事業をやっていたのだから、日本のほうが早い。障害者がふさわしい人を雇用するという経過は日本は長い。
 コミュニティーケア法が93年に施行されるときにシフトして基金が制度にのった。若干基金の制度が変わっている。イギリス障害者団体協議会がパーソナルアシスタント、自立生活基金、ダイレクトペイメントを働きかけて動いてきた。巷でどの程度知られているかは疑問だが。

■中西委員(DPI日本会議)

 もともとは施設の障害者が、施設に40万かかるなら自分達によこせという主張から始まった。最初は20人くらいの制度で、それから増えていった。コミニュニティケア法に障害者がのりたくなくて、ダイレクトペイメントができた経緯がある。

■江草座長

 小川先生への質問ということで、深い議論は別の場でお願いします。

■佐々木 氏(ピープルファースト東京)

 ピープルファースト東京の佐々木と申します。ロンドンのピープルファーストの活動について、わかる範囲で教えてもらいたいと思います。

■小川喜道 氏(神奈川工科大学福祉システム工学科教授)

 英国知的障害者協会には何度も足を運んだが、ロンドンピープルファーストについては、資料のみ。来週の日曜日からダイレクトペイメントのことを調べにイギリスにいく。少し、調べてきてフィードバックするということで。

■ピープルファースト東久留米

 10ページのところで、ホームヘルプの予算はどういうところから出ているか。

■小川喜道 氏(神奈川工科大学福祉システム工学科教授)

 SSD(社会サービス部)からでている。
 イギリス全体の予算の執行は非常に複雑。保健省と社会サービス部から分け合っている。作業療法士でいえば、おのおの別々のところから出ている。コミュニティケアの予算は社会サービス部からホームヘルプは基本的に出されている。

■江草座長

 ありがとうございました。
 次に田中先生、ドイツの状況について。田中先生よろしくお願いします。

■田中耕太郎 氏(山口県立大学社会福祉学部教授)

 2時間近く会議始まっているが皆さんおつかれと思うが、資料4に「ドイツにおける障害者施策の展開と介護保険」という資料をつけた。障害者施策と介護保険ということでレジメを出している。
 ドイツについては年金、医療保険、介護保険は詳細に説明されている。ドイツはもともと障害施策は地方自治体でやっていて、まとまったものがなかった。研究の蓄積がなかった。しかし、ここ数年、ドイツの障害者施策はダイナミックな展開をしている。それを説明して、今後の介護保険との関係について、ドイツはどうなっていて、どういう課題がでてきているかについて、日本の状況を念頭において説明したいと思う。
 社会法典という大きな法律があって、第9編に障害の定義がなされている。障害の定義は、身体障害・知的障害・精神障害において社会生活が阻害されている状態。日本の基本法と同じような考え方である。区分も3障害で同じ。具体的な認定については援護庁がガイドラインに基づく認定をしている。日本と違うのは10から100までの10刻みで判定するが、原則として50以上の人が重度障害者としてサービスの対象になる。重度障害者601万人で人口8200万人8%強。数字で見ると日本より障害の概念が少し広い。知的障害者は25万人。
 ドイツの障害者施策の基本的なものは、2度の対戦を通じてできてきた。ドイツは年金、医療などの社会保険が進んできた。リハビリテーションも社会保険の中でやっている。
 生活保護の中の特別扶助。一般の生活保護とはすこし、緩められていて、特別なニーズのある人たちに対して、やや措置制度的なかたちで、狭義の生活保護から独立しつつも措置的なサービスを支える資源がある。
 リハビリテーションは、医療リハ・職業リハ・社会リハまでのサービスをリハビリ給付として提供し、労災・年金・医療保険、社会扶助のさまざまな制度から提供している。
 作業所での福祉的就労よりも、重度障害者の雇用を義務付けて一般就労を広げていくと言うのが特徴的。福祉的就労の場としては、作業所が実態としては大きな機能を持っている。
 ドイツの障害者施策は、アメリカのADAのように機会の均等を重視するのか、結果の平等を重視するのかというと、いわば後者。社会法的なアプローチ、結果的な不利益を社会給付によって補填するという考えが中心だったドイツに、ここ数年、質的に違う機会の均等、差別禁止・バリアフリーと言う新たなパラダイムを伴った制度改変が進んでいる。
 94年に、ドイツでは憲法改正があり、従来の伝統的な法の下の平等の項目に、障害による差別禁止を追加した。その後90年代後半から2000年代に入って、具体的な施策が出てきている。98年に社会民主党が緑の党と連立したが、重度障害者の失業克服に取り組み、これまでの給付調整法についても見直ししている。その結果を社会法典第9編に盛り込むという意欲的な行いをやっている。
 障害者の雇用促進について、ドイツの法定雇用率は6%で日本より高い。実際には、3.7%で未達成。日本と同じように未達成のところからは納付金を取っている。これは雇用を促進すると言う意味での実効が上がらなかった。 新しい法律をつくり、納付金に傾斜を付けた。その取り組みで雇用率があがり、2004年まで経過措置として5%に雇用率を下げた。
 重度障害者の作業所についても、法律上も明記されているが、一般就労への移行を目指しているが、実際には難しい。
 リハビリテーションが重視されていて、担い手は社会保険制度。社会扶助(生活保護)の中の障害者統合扶助もそれを担っている。もともとは介護も高齢者を含めて介護扶助が担っていたが、この部分が急増してきた。ドイツの生活保護は中央政府のお金が入っていない。州と自治体で担っており、その財政負担が困難になってきた。これがドイツの介護保険の中心的な動機のひとつ。介護保険が入って、介護扶助の負担が減った。
 しかし、障害者統合扶助は増えてきている。今のドイツの特別扶助の7割近くが障害者統合扶助が占めている。
 日本でも議論が行われているが、生活保護のあり方でいうと、ドイツでは日本の4倍近い保護率。福祉的就労の作業所、パーソナルアシスタント、特殊教育などのさまざまなニーズに障害者統合扶助が出ている。17万人が作業所で働いている。
 今日の全体の中心的な議題である、地域移行のあり方だが、2000年時点で、障害者統合扶助の対象になっている入所施設は16万人分が設置されている。動向としては99年よりは微増している。
 新しいアプローチとして、2002年5月から、障害者平等化法ができ、差別禁止、バリアフリーアプローチ、ドイツ語手話の義務化が盛り込まれた。これが物理的、情報的バリアフリーにどういう形で効果が出るかはこれからの動きを見ないといけない。
 日本のように役所が画一的な義務付けをするアプローチではなく、目標設定の段階から、事業者団体と当事者団体が具体的な目標を作るところから議論をするというアプローチがとられている。日本から見ると変かもしれないが、ドイツでは、社会的パートナーと言われ、労使関係においても使用者団体と労働組合が協議し、当事者が交渉していくアプローチが社会の中に根付いている。役所がきめるのではなく、当事者がパートナーとして協議する当事者交渉方式が障害施策の分野でも行われている。柔軟と言うプラス面と、強制力がないというマイナス面がある。
 介護保険と障害者の点について整理した。ドイツでは、ほぼすべての住民・国民が介護保険に加入している。赤ん坊、子供も入っている。医療と介護が重なる形で、年齢の区別なく入っている。所得が高い4%は医療保険・介護保険に入っていない。
 介護の基本的な概念は、ドイツも日本も共通。
 ダイレクトペイメントの話が出たが、日本との比較でダイレクトペイメントについて触れると、ドイツでは現物給付と金銭給付を選択できる。組み合わせて併給することも含めて、利用者本人、当事者が選択できるという仕組みになっている。
 基本的に要介護に関する年齢の差別はない。ドイツは2段階方式、最初は在宅が対象で、次ぎに施設を対象にした。
 最初から1.7%の保険料を上限として財政的な制約があるところからスタートしたので、障害者施設は介護保険から除外した。しかし、反対があって、最終的には入所型の障害者施設の費用の10%、上限256ユーロ(約3万円)を出すと言う中途半端な形になった。
 日本の介護保険は、人によって受けられたり受けられなかったり、わかりにくい。
 ドイツは、教育から職業訓練、リハビリテーションという若い障害者のニーズの中で、介護保険は介護しか重なってこない。ほかの分野との連携が問題になる。障害者施設の扱いや痴呆高齢者の介護サービスをどう扱うかについては、今も課題を抱えつつ現在に至っている。
 日本では違う事情がある。プラス、マイナスがある。ドイツはもともと介護保険で介護の1部をはらって、足りない部分を生活保護でカバーする。
 日本は措置の制度が広くあって、ドイツのようにカバーするというものではない。それをどう調整するのか。
 日本は金銭給付ができない。若い障害者の場合はこれをどう整理するか。それを考えないといけない。

■太田委員(日本障害者協議会)

 私も、傍聴している人の多くも検討会にでられるのは、車いすに乗って、支援費の移動介護や日常生活支援を使ってきていると思う。ドイツにおいては、外出の介護はどうなっているのか。

■田中耕太郎 氏(山口県立大学社会福祉学部教授)

 いわゆる介護にかかわった移動の支援については、保険の対象になるところもある。ただ、ドイツの介護保険においては対象も範囲も割り切ったもので、社会扶助が基本にある。介護保険を越える部分については社会扶助がそうした点をカバーするのに大きな役割がある。

■江草座長

 それでは、今後の進め方について。

■高原障害福祉課長

 それではお手元の資料5をご覧ください。
 今日で、この検討会、6回目を迎えたわけですが、2〜6回目までは情報共有化の作業を進めてきたわけですが、9月以降は実質的に議論を進めていく必要がある。事務局としての資料を資料5として提出した。検討会自体は来年度にかけて議論をじっくりと進めていくことにしているが、年内には一巡目の議論を行いたい。二巡目以降は一順目の議論をふまえて改めて整理する。
 大きく分けると3つの項目がある。 ・地域生活を支えるためのサービスメニュー、サービス体系のあり方 ・ービスのニーズと組み合わせて適切に供給していくためのシステムのあり方 ・サービスの供給を支えるための基盤、財源、人材 以上の、大振りな3つな検討項目にそって議論する。
 サービスメニューについては必要なコスト、自助、共助、公的サービスについて、実際にサービスがどのように提供されているかという課題について議論を進めていきたい。
 検討項目をはなれるが、次回9月8日は、今週末には概算要求がまとまる。概算要求についても事務局から報告させてほしい。
 前回、支援費制度の施行状況に関するデータを収集するということで、実際調査を行っているが、抽出調査ということで、一部の自治体を対象にしているものは第8回、9月30日の検討会で報告をしたい。
 サービスを適切に供給していくためのシステムのあり方だが、相談、ケアマネジメント、サービス調整などが課題。10月に入ってから、システムの議論をお願いしたい。  10月下旬の回には、全国調査について報告したい。
 精神障害者の地域生活支援のあり方についても検討会を発足させるので、その状況について、情報共有の意味で報告したい。
 実際の事業実施で自治体の側から見た現状と課題について、市長会・町村会・知事会の3団体からご意見を伺いたい。
 多少ダブった議論になるかもしれないが、財源・人材の基盤、現状と課題について検討して、年内で一巡したい。
 年内に社会保障審議会障害者部会が開催されると思うので、検討会の議論の状況については報告をしたい。

■江草座長

 ただいまの説明について。

■中西委員(DPI日本会議)

 今後の検討の進め方について、サービス体系のあり方だが、今までヒアリングをしてきて、そのことをまったく分析するということがなく先へ進むのは不安。
 諸外国の事例を聞いて、サービスメニューのあり方について先進的なものができてきたのだから、日本でどう作っていけるかということを議論すべき。
 利用状況についてはデータを見ればわかるので、もう少し深い議論をしていくべき。
 自分の提案では、地域でのネットワークのあり方や知的障害者の地域移行、自立生活の事例検討なども含めて、具体的にやっていったほうがいい。そういう内容を含め、具体的にワーキンググループを作って検討会にもちあげている。
 システムのあり方については、サービスがあって初めて出てくる。ケアマネジメントについては、サービスメニューが知的障害者はない。現行のサービスの中で議論をするのは問題がある。ケアマネジメントについてはこれまでのケアマネジメント検討会の中で4年もやってきたのだから、それを参考にすればいい。
 地方自治体3団体のヒアリングについては、これまでも聞いてきたし、中身を踏まえて議論できるはず。実際にはサービスが広がっていないということははっきりしたのだから、その原因を探るべき。
 サービスの供給の基盤のあり方は早急に実施すべき。財源問題についても、今年度の予算獲得はどれくらい進んでいるのか不安である。サービスレベルが低下した地域の問題、地方の過疎の地域の問題、よいサービスを持っているために近隣から流入してきて財政を圧迫しているという問題などをここで議論しないと解決しない問題。

■高原障害福祉課長

 多岐にわたる問題を検討する。ワーキンググループについては、以前も提案いただいた。グループ別に検討するかどうかだが、月に2回ペースで精力的に議論いただいている。情報を共有していただきながら、幅広くご議論いただきたい。検討会の場を精力的に開催することで議論を深めていきたい。
 今後の望ましい先進事例の分析についても、まさにそのとおりだと思っている。私たちの考え方も違わない。現状をきちんと整理する。データにもとづいて整理して進めていきたい。調査を急いで秋口に順次データを示して進めていきたい。そういう形で議論を進める。

■安藤委員(全日本聾唖連盟)

 検討会の性格付けが最初からよくわからない。社会保障審議会に障害者部会がある。そこで基本的な問題を決定する。
 今回の検討会については、ホームヘルプサービスの上限に絞ったことになるかと思っていたが、地域生活支援全般にわたっている。しかし、結局は、障害者部会に報告するという。
 この検討会の結論は、障害者部会が認めなくても一定の影響力を持つのか。
 この検討会のゴールはどこにあるのか。  私、最初の時に、中西さんにこの検討会に理念をもちこむのはどうかといういったが、その後の位置づけはあいまいなままである。この検討会が予算とか施策にどう関係していくのか。

■高原障害福祉課長

 この検討会の発足の経過から、ホームヘルプサービスの国庫補助基準が具体的な検討テーマ。検討会での結果を施策に反映させる。  しかし、ホームヘルプの国庫補助基準のあり方を議論するだけではなくて、当然、地域生活を支える施策のあり方を全体的にどう考えればいいのか、オープンに議論していただく必要があるのではないかと申し上げた。
 議論の中で、国庫補助基準に限らない分野に意見を頂戴する。それをこの場でどこまで決定できるのかについては、国庫補助基準とは違う部分がある。
 社会保障審議会の障害者部会に報告し、その中で決めていただく分野があるでしょうし、検討テーマに応じて、どこまで結論めいたものをまとめていくかについては、テーマによって濃淡がある。

■大濱委員(全国脊髄損傷者連合会)

 濃淡があるというのがよくわからない。新たなサービスメニューが必要という結論が出た場合、障害者部会と検討会との関係での縛りがあるのか。
 また、財源についても義務的経費、裁量的経費という区分がちがうという結論になれば、どうなるのか。

■高原障害福祉課長

 まず、この検討会は局長の私的検討会として設置されている。ここの意見を参考にして、障害保健福祉部が施策を考える際の参考にさせていただく。幅広く議論をいただいて参考に。
 審議会は法律に基づいて設置されている機関だし、権限が明確なので、審議会で議論いただくべき事項については審議会にゆだねて議論をしていただく。適宜報告をするというのはそういうこと。

■京極委員(社会福祉事業大学学長)

 私は障害者部会長なのですが、中間報告を障害者部会にしないと、開店休業になってしまう。部会もこの検討会の結果を尊重する。現場の意見が反映されたすばらしい検討会、それを受けてどうするのか。
 ヘルパーの上限問題が契機になったが、介護保険とのからみなどいろいろと課題がある。そういうことも材料に入れながら、突っ込んでいただいたほうが審議会としても受け止めやすい。この検討会のメンバーにも部会の委員がいる。
 時間が限られているので、いつまでも議論はできない。事務局が出した3つのテーマに基づいて議論して、中西さんの意見も組み合わせていけばどうか。必要なテーマがあったら、ヒアリングするのもいいし、事業を運営している人もいるので、資料も提供してほしい。週間のケアプランも出してほしい。
 コストを抜きに政策を議論しても難しい。事務局からも詳しい資料をだしてもらって。

■江草座長

 大変いいまとめをいただきました。我々の議論を、障害者部会でも大いに参考にして、審議会と検討会は違いますから、そこでやっていただくということであろうかと思います。

■太田委員(日本障害者協議会)

 私の記憶によれば、第2〜4回の議事録があるが、5回目以降は概要しかない。

■事務局

 事務作業が遅れている。今日、第4回の議事緑を配布した。第5回については、今作業をやっている。

■江草座長

 今後の日程について

■高原障害福祉課長

 9月は2回予定している。最初が9月8日の月曜日14時から。厚生労働省内の会議室。この会議においては、サービス体系のあり方について、議論をするということで、事務局で工夫した資料を作る。
 京極委員が指摘された資料、検討会の委員にも個別にお願いしてデータをいただきたい。6月にまとまった高齢者介護保障の研究についても高橋委員から報告をいただく。概算要求についても報告する。
 9月30日は午前中ということで予定している。10時から12時。
 10月についても2回日程をちょうだいしたい。現時点で考えているのは10月14日の午後、28日の午前。
 議事概要については早急にまとめてホームページで出したい。

■江草座長

 今日は休憩もとらずにすみません。これで閉会します。

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