ダイレクトペイメントなど海外の先進事例の報告を受ける
−第6回在り方検討会開かれる(厚労省)−
「どんな障害の人でも地域で暮らすことが可能であることの認識が必要」。これはスウェーデンの事例を報告した河東田博さんの言葉。
「第6回障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」は8月26日(火)厚生労働省内の会議室で開催された。事務局の高原障害福祉課長は、「今回は傍聴申込者全員が傍聴できています」と、冒頭報告した。それでも50名以上は傍聴者がいた。
この日は海外の動向についてのヒアリングで、末光茂さん((福))旭川荘副理事長・川崎医療福祉大学(大学院)教授、河東田博さん(立教大学コミュニティ福祉学部教授)、小川喜道さん(神奈川工科大学福祉システム工学科教授)、田中耕太郎さん(山口県立大学社会福祉学部教授)の4名が報告にたった。
はじめの末光さんはアメリカについて報告した。「1964年の公民権法に始まり、1990年のADA成立という法制度の変遷を通して、知的障害の分野では1970年前後をピークにアメリカでは、脱施設化がはじまった。アメリカの施設は日本よりはるかに大規模で、ニューヨーク州の知的障害の全施設の平均入所者数は1250名であるほどだった。日本では施設入所者が増えつづけているが、アメリカもスウェーデンなども、1000人あたりの人口で施設入所者が1人に達したのを境に脱施設化が進んでおり、現在の日本は1人に達するかどうかという状況なので、これからということであろう。脱施設化イコール施設閉鎖ではない。地域の基盤整備が重要である。アメリカでは住民の反対運動や施設職員の労働問題もあり施設閉鎖の動きが止まっているところもある。いずれにせよ本人本位の考え方が重要である。"ある人にとっては痛いほど遅い進歩"であり、"ある人にとっては破壊的なほど急激な動き"と現在のアメリカの脱施設化は映るであろう。」などと発言した。
つづいて河東田さんがスウェーデンについて報告した。「1980年あたりから法律が徐々に整備されていき、施設から地域移行が進んでいった。現在、入所施設で暮らす知的障害者はいないに等しい。当初は家族や施設職員は、施設解体に消極的であった。しかし地域移行が進むにつれ、家族や職員の不安感は遠のいていった。現在、グループホームやパーソナルアシスタンス制度によるサポートがある。グループホーム自体常に変化している。今、グループホームといっても、それぞれの部屋に玄関や浴室などがある家と同じ機能をもっているものもある。パーソナルアシスタンスは知的障害や重症心身障害とよばれる人たちにも適用されている。サポートを受けている約15%の人たちがパーソナルアシスタンスを受けている。障害者の収入は年金手当などを含めて勤労者平均収入と同じぐらい。ただ、税も負担している」などと報告した。
さらに質問に答える形で「グループホームは職員が集団をつくってしまうことから、障害者の自己決定の保障という観点から問題がある」と語った。
小川さんはイギリスについて報告した。「1993年にコミュニティケアが施行された。様々な障害をもつ人たちが地域生活を送れるようにするシステムである。その際アセスメントが重要な役割を果たす。仲間をまじえてのミーティングも行うことができる。1997年からダイレクトペイメントが始まり、現在では全ての自治体で行われている。ダイレクトペイメント方式を選択した場合、障害者には介助者の労働条件など、責任が課せられる。介助者への給与は多くの場合小切手で支払われる。日本においても、障害者が主体的に社会的責任を負える介助のあり方を考えるとき、制度導入が検討される必要がある」と述べた。
最後に田中さんがドイツについて報告した。ドイツの障害者施策は戦傷病者対策などから始まった。一般就労に力を入れている。近年憲法が改正され、障害による差別禁止条項が入った。障害者平等化法が制定され、不利益取扱の禁止やバリアフリーの義務付けなどが行われている。介護は介護保険で基本的には行われている。国民全員が介護保険の被保険者となっている。給付は現物給付と現金給付の選択制となっている」等と発言した。
さらに質問に答え、「障害者の外出介護については、介護保険で行うのではなく、"障害者統合扶助"という日本の生活保護に似た制度で行われている」とした。
続いて事務局の高原障害福祉課長から検討会の今後の議論の進め方について「9月中は地域生活を支えるサービス体系のあり方について議論を行い、10月はサービスを適切に供給していくためのシステムのあり方について議論をお願いしたい。10月下旬には、全国調査による支援費制度の施行状況について、データに基づいた議論ができるのではないかと考えている。そして11月にサービス供給を支える基盤のあり方について行っていただき、年内に開催予定の社会保障審議会の障害者部会に報告をしたい」と説明があった。
それに対して、中西委員から「ワーキンググループをつくるべきである」「海外の先進的な取組みを分析した上で先に進むべきである」との意見が出された。これに対して高原課長は「できるだけ全体で討議し、共有化を進めていきたい」「先進的な取組みの分析については同じ考えである」と答えた。
さらに、「上限問題を中心に検討会では議論されるのかと思っていたが、広範にわたっている。検討会のゴールはどこにあるのか」や、「検討会の結論はどこまでしばられるのか」という質問も出された。
高原課長は「局長の私的懇談会という位置づけである。検討会の議論は施策の参考にさせていただきたい」と答え、さらに社会保障審議会障害者部会長の京極委員は、「コストの問題も考えていかなければならないが、障害者部会としてもできる限り参考にさせていただきたいと考えている」と発言した。
次回第7回検討会は9月8日(月)午後2時から 厚生労働省
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