第5回地域生活支援検討会行われる

−自閉症関係者などからのヒアリング等−

 「支援費の居宅生活支援サービスについては、概算要求段階で、現行の国庫補助基準等を確保し、従前のサービスが低下しないように努めている」と河村社会・援護局長は述べた。
  これは、委員会の冒頭、中西委員から「概算要求の時期にあって、この検討会の成り立ちの経緯が、1月のホームヘルプサービス上限設定問題に端を発していることから、他の議題より先行してでも、この検討会で居宅生活支援費が今年度を下回ることがないように、きちんと議論をすべきで、また厚労省としての姿勢を聞いていく必要がある」との発言があり、それに応えた形で検討会の終了間際に見解を表明したものである。
  さらに、河村局長は「国庫補助基準の見直しについては、必要あれば支援費施行後の状況を見ながら、この検討会で議論してもらうことになる」とも述べた。しかし一方、「大きな動きとして政府は骨太の方針で補助金の削減を打ち出しており、厳しい状況であることは間違いない。今年度についてもホームヘルプサービスの予算については、平年度ベースで15%増をしている。ご理解いただきたい」と付け加えた。
  中西委員からは同じく冒頭「知的当事者をオブザーバーではなく、きちんと委員にするという問題についても解決していない」との指摘がされた。事務局は「オブザーバーでも発言したい場合は手を上げてもらえば座長の指名により発言できるようにしたい」と答えたが、中西委員は「納得できる回答ではない」とした。しかし、議事運営上の都合によりヒアリングが先に行われることになったため、会議の終了寸前に太田が「この問題は解決していないと認識している」と発言した。
  これを受けて、河村局長は「この検討会は22名という大きな規模となっている。地域生活支援のあり方について多角的総合的に検討してもらう場だと考えている。当事者、事業者、学識経験者等の割合のバランスを実質的・形式的に考慮していく必要がある」との見解を示した。
  知的障害者の参加問題は、精神障害分野を検討の対象に入れるかどうかという問題と同様、今後も主要テーマであることには変わりはない。

 さて、ヒアリングははじめに(社)日本自閉症協会北海道支部の佐藤裕さんが行った。
  「自閉症という障害をもっと多くの人たちに知ってほしい。コミュニケーションの方法として絵など視覚的手段に訴えていくことが有効的であるが、それをきちんと行っている専門家が少ない。アメリカなどに行くと普通の市民にもいろいろな人がいるので、奇異な行動をしても受け止めてくれる土壌がある。日本は、『親は何してるんだ』という目で見られてしまう」と佐藤さんは語った。
  さらに質問に答えて「ガイドヘルパーを頼んでも通勤通学は対象外となっているため、自腹を切っている状態。公的支援をきちんとしてほしい」とも述べた。
  続いて、地域ケア・ネットワークの実践として、横浜市福祉局の桑折良一さんと、長野県北信圏域障害者生活支援センターの福岡寿さんの2人が発言した。
  まず、桑折さんは支援費移行後の状況を語り、「おしなべて前年度より実績が上がっている状況である」と報告した。また「グループホームなどが母体となっている地域活動ホームが中核となって地域支援活動を担っている」とした。
  「日常生活支援が少ないのは、担い手と時間制限があるからではないか」との質問に対し、桑折さんは「確かにその通りかもしれない。検討課題である」と答えた。他の委員からも多くの質問が出され、白熱した。
  福岡さんは「自分は療育等地域生活支援センターでコーディネーターをしているが、まずその人のうちに出かけていくことがネットワークを作る出発点ではないか。行政の人や関係者の人にも一緒に行ってもらい、実際に見てもらうことが重要である」と発言した。さらに、「国が明確な方針を出さないならば、地方に全部任せてほしい」と訴えた。

 オブザーバーのピープルファーストや、全日本手をつなぐ育成会などからも発言があり、「グループホームでなくて、アパートを借りて介助を受けて生活したい」「家賃や住宅の問題を何とかしてほしい」などの発言があった。
  これに対して、横浜市の桑折さんは「横浜ではアパートを借りて生活する重度障害者に対してはアシスタントシステムがある」と語った。

 最後に、この秋にかけて行う「データ収集の進め方について」の説明が事務局よりあり、意見交換があった。このデータ収集は基本的にはすべての自治体に対して行うものとし、支援費制度移行後の自治体などの状況や、サービスを受けている障害者の生活状況などを把握しようとするものである。

  それにしても冒頭に戻るが、ホームヘルプサービスの予算が概算要求の段階でどれくらい確保されるのかが心配である。精神障害者の社会復帰施設の国庫補助も今年度大幅に厳格され、大きな問題となっている昨今である。私たち障害者団体は油断することなく、厚生労働省の姿勢を正し続けていくことを求められている。

 次回検討会は8月26日(火)に行う予定である。

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