財源論議を早急に行うよう当事者委員求める

〜第10回地域生活支援在り方検討会行われる〜

 「予想以上に支援費利用が伸び、今年度のホームヘルプ予算では足りなくなってしまうという情報もあり、この検討会が1月のホームヘルプサービス上限設定問題に端を発してつくられた経緯から、財源確保をどうするかという問題について、この検討会で、今日の予定を変更してでも行うべきだ」と、中西委員、大濱委員、太田など当事者委員は主張した。
   これに対して事務局は、「次回の検討会でテーマとしたい。必要なデータを次回には提出するようにしたい」と答えた。板山座長代理は「事務局に次回までしっかりとした準備をしてもらって、議論をした方が話ができる」と述べた。森祐司委員は「支援費制度がスタートし、障害者の介護サービスの低下が危惧されている。この委員会の議論に障害者団体が消耗していることも確か。そういう当事者の危機意識が存在するということをふまえて、 次回きちんと論議したらどうか」と発言した。

 この日のテーマは「地域生活をとらえるサービス体系の在り方について(就労支援、住まい等の施策について)」であった。
 事務局から、就労・住まいに関する現行の主な施策の形態と、「就労・住まいの支援施策に関する主な意見等」と題した資料が配られ説明があった。
 その後、質疑に入り、笹川委員から「ITの在宅就労の研究会に視覚障害者が入っていない」との指摘があった。また「就労・住まい・介護は地域生活支援にあたって関連性をもつ一体となっているものと捉えられるべきである。一般就労と福祉就労の線引きを考え直す必要がある」と京極委員は発言した。
 竹中委員は「スウェーデンやアメリカに比べ、有能な障害者が社会全体のリーダーとなっていない。福祉とか就労とかいう枠組みそのものを根底から変えていく必要がある」と発言した。
 障害者の就労実態などをまとめていくこととなった。その際、「精神障害者も組み込んだものをつくってほしい」と大熊委員は述べた。
 中西委員からは、住まいに関して「高齢者居住安定法を障害者にも適用していき、家賃債務保証などを行っていく必要がある」との意見提起がされ、さらに「見逃してはならないこととして、知的障害者が公営住宅での単身入居がいまだにきちんと認められていないことがある」と述べた。ピープルファーストや育成会本人部会のメンバーも、この問題について具体的に発言し、さらに家賃補助の必要性について訴えた。

 報告事項として事務局より「居宅生活支援サービスの利用状況調査の結果について」が仮集計として出された。今年の4月の状況を対象に、3201市町村に調査、有効回答数は3192市町村であるとのこと。今年1月の段階と比べ、ホームヘルプサービスの利用状況は相当伸びており、全身性障害者の場合でいえば83時間から、日常生活支援としての135時間と1.6倍に伸びている。
 また、有留委員から東京都における「居宅介護支援費実施状況」が出された。これはこの4月から6月までの3ヶ月分の状況を調査したものであった。サービス決定量とその実績は、身体障害者の日常生活支援が相当大きなウエートを占めており、いずれの月も全国調査の平均値125.8時間の約2倍となっていた。視覚障害者ならびに知的障害者の移動介護等の時間数も軒並みに、昨年度に比べ大幅に上回っており、利用時間数全体でも昨年度に比べ9.9%増という内容であった。
 この状況から、「東京都として厚労省に対して緊急アピールを出した」と有留委員は付け加えた。
 「このような状況をどうみるか」との中西委員の質問に対し、高原課長は「今年度は平年度べースで約15%増の予算を確保した」と述べ、全体を見るには6月以降の不確定要素があるとの見解を示した。  

 次回検討会 11月14日(金) 午後2時〜午後5時
 厚生労働省18階 専用第22会議室

 なお事務局から出された資料は以下の通りである。


居宅支援3事業に関する主な意見等

1.議論が必要な具体的なニーズ

(1) 居宅支援全般

@ 入所施設から一時帰宅中の介助といった支援
A 医療的ケアに対する対応

(2) ホームヘルプ

@ 例えば失禁、転倒、パニックといった突発的に起こることに対する速やかな対応
A 24時間体制で待機者がいて緊急派遣を行う緊急介助派遣のようなサービス
B 職場や学校での介助
C 例えば、自治体単独事業としての放課後の障害児童預かりの場所や、無認可作業所といった活動の場において、介護支援を担うスタッフが十分揃っていない場合の身体介助等
D 重度の聴覚障害者について、情報、コミュニケーションに対する支援
E 通勤・通学等の日常的かつ恒常的な移動に対しての支援
F 自閉症者に対する移動介護における見守りとしての支援
G 移動介護における、公共交通機関以外の移動手段(自家用車等)
H 移動介護における、宿泊を伴う外出

(3) デイサービス

@ 例えば学校からセンターへ、センターから保護者の職場へといった自宅外への送迎
A 障害のある中学生や高校生の放課後や夏休みに対する対応

(4) ショートステイ

@ 施設以外での受入(共同作業やデイサービスセンター等)、受託先の弾力化
A 通所施設における宿泊による受入

2.その他

(1) 地域生活支援に関する理念等

@ これからの施策は、施設サービスから在宅サービスの充実へシフトさせることが必要
A 障害者のホームヘルプは、自宅における介護だけではなく、自立して社会で暮らすということをサポートすることである
B 自立に向けたサービスの在り方を考え、提供していくことが重要
C エンパワメントの視点が重要
D 障害者の介助サービスは、障害者のニーズに応じて時間、対象、サービス内容の3つについて無制限であるべき
E パーソナルアシスタント、ダイレクトペイメントの検討が必要
F ホームヘルプサービスの国庫補助基準は、NPOを含め提供基盤が整備されている都市部のサービス状況と町村のサービス状況に格差があることから、一律の基準ではなじまない

(2) 生活ニーズに応じたサービス提供の在り方

@ 公的サービスを弾力的・柔軟的な運用をすることで利用者のニーズの多くに対応可能
A 公助のみでサービス賄うことは,一人施設化(世界一小さい入所施設)。ケアマネジメントの手法を利用しながらインフォーマルサービスを加えるほうが、生活の幅に広がりがでる
B 現状で用意されている公的サービスの範囲を越えてニーズがある場合は、それを県や市町村に認識してもらい、欲しいサービスがなかったら作ってもらうように活動しなければならない

(3) 財源の確保、サービス量の確保

@ サービス提供事業者について、特に町村部について事業者の確保が必要
A 日常生活支援のサービスを提供する事業者数が少なくその確保が必要
B 移動介護の単価は低いため、移動介護を行う事業者が少なく、その確保が必要
C 地域に移行するためには、ショートステイ事業を増やすことが必要
D ショートステイがないため、市の単独事業でグループホームの寮を使って対応している
E 全身性障害者の居宅支援に関するニーズの内、ホームヘルプサービスとして公的に提供すべき内容と範囲について検討し、市町村が行う支給量決定の勘案基準等の策定を図る」ことが必要
F ガイドヘルパーについて、身体介護を伴う場合と伴わない場合の判断を含む最低限の基準を定めることが必要

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