「障害者支援費170億円不足」の記事(6/22朝日新聞(夕刊))についての厚労省の見解
            6月22日の朝日新聞(夕刊)で、厚生労働省が2004年度の障害者支援費制度におけ るホームヘルプサービスの国庫補助金が170億円不足する試算を出したことが報じられ 
              ました。これについて同省障害福祉課では、関係者に対して、以下のとおり文書連絡を行 いました。  
             
            (厚生労働省資料)
             平成16年6月22日付け朝日新聞(夕刊) 「障害者支援費170億円不足」の記事について  
            ○ 平成16年度の居宅生活支援費については、平成15年度の実績をもとに、今後のサービ スの伸びを勘案して試算すると、昨年度の不足額を上回る見込みとなると考えている。 
             
            ○ しかしながら、支援費の施行状況については、平成15年度の実績がとりまとめられた 段階であり、現時点では平成16年度の不足額について、確定的な不足額は明らかでない。 
             
            ○ 今般、報道された不足額については、平成15年度最終月の実績に伸率を掛けた粗い推 計の結果である。 
             ○ 居宅生活支援費については、今後、執行状況を適宜確認しながら、更なる運用上の工 夫を行うことが必要であると考えている。  
            ○ また、障害者が安心して必要なサービスを利用できるようにするため、制度がより安 定的かつ効率的なものとなるよう、中長期的な財源の在り方を含め、関係審議会等の場等 
              において、更に検討する必要がある。 
             ○ 今後とも、当面の制度の運営や今後の見直しの検討を進め、あらゆる機会を通じ必要 な予算の確保に向けて、最大限の努力を行う所存であるので、引き続きよろしくお願いし 
              たい。  
             
            参考
             <6/22朝日新聞・夕刊・一面記事> 
             ■障害者の在宅サービス補助、約170億円不足の見通し 
                              04年度在宅分:2年連続制度危機 厚労省試算■ 
              身体・知的障害者を対象にした障害者支援費制度で、04年度の国の在宅サービス の補助金が当初予算で約170億円不足する見通しであることが22日、厚生労働省 
              の試算でわかった。財源のめどはたっておらず、障害者の生活や市町村財政への影響 は避けられそうにない。03年度に始まってから2年連続100億円を超える大幅な 
              不足で、制度は早くも存続自体が危ぶまれる状況だ。 
             ◇ 
              不足が見込まれるのはホームヘルパーを派遣したり、グループホームの運営を支援 したりする市町村のサービスで、費用は全額税金で賄う。2分の1を国が補助し、都 
              道府県と市町村が4分の1ずつ負担する。 
              支援費制度で障害者がサービス内容を選べるようになって需要が掘り起こされ、利 用が進んでいなかった知的障害者・障害児のサービスなどが急増。厚労省が昨年11 
              月から今年2月までの利用実績をもとに、04年度に必要な補助額を試算したとこ ろ、当初予算の約602億円より約170億円多い約770億円となった。 
              不足見込み額が最も多いのはホームヘルプサービス。当初予算で約342億円計上 したが約480億円必要になる見通しで、不足額約140億円は全体の8割を占め 
              る。 
              同省は4月にホームヘルプサービスの報酬単価が引き下げられたことなどで不足額 は25億円前後減ると見込んでいるが、残りの約145億円をどう補うか、めどは 
              たっていない。 
              03年度も当初予算で516億円を計上したが、128億円が不足。省内のほかの 予算を流用して約114億円分穴埋めした。障害福祉課は「(2年連続の)流用は極 
              めて困難で、制度上補正予算も難しい」としている。財源が確保されなければ不足分 は自治体財政で賄うことになるため、サービス支給を抑える市町村も出かねず、障害 
              者の生活にも影響が出そうだ。 
              04年度予算で在宅サービスは増額されたが、サービス需要に追いつかない状態。 それでも在宅の身体・知的障害者約380万人のうち、制度を利用しているのは1割 
              に満たない。05年度以降も需要はさらに伸びる可能性は高く、制度の抜本的な見直 しが迫られる。  
            ◇ 
            <キーワード>障害者支援費制度:障害者が自ら必要なサービスの支給を申請して事業 者を選び、契約する仕組み。市町村がサービスの内容や事業者を決めていた措置制度 
              を改め、障害者の希望や選択を重視する目的で03年度に導入された。精神障害など は対象外。 
            ◇ 
            2面 <解説> 
            「脱施設」へ明確な姿勢を 
              障害者支援費の補助金が2年連続で大幅に不足する見通しとなったことについて、 厚労省は「予想を超える利用増が原因」と説明する。 
               しかし、同省は制度導入の際、介護保険の時と異なり、細かいサービスの必要量や ニーズに関する実態調査をしていない。潜在的な需要を把握せず、財源確保の見通し 
              をつけないままの見切り発車を懸念する声は導入当初からあったが、具体的な対応策 は打たれてこなかった。 
               国は03年度からの新障害者プランで「障害がある人も、ない人と同じように地域で 生きる」という理念を掲げた。支援費制度も、入所施設中心の政策を変えて「脱施 
              設」 を進める一環として始まった。  
               地域での受け皿作りを進めるためにも在宅サービスの充実は重要で、入所施設向け の予算を在宅にシフトすることがかぎだ。だが、約3500億の支援費予算のうち、約6 
              割超が入所施設関連に使われ、在宅は20%に満たないという予算配分は04年度でも変 わっていない。 
               現在、精神障害者を含む障害者福祉と介護保険制度の統合が省内で議論されてる。 一緒になれば財源が確保され、需要増も賄えるというのが大きな理由だ。 
               しかし、障害者福祉には就労支援など介護保険では対応できない部分もある。統合 すれば、すべて解決するわけではない。国が本気で 脱施設に取り組む気があるのか。支援費の不足問題は、国にその答えを突きつけてい 
              る。(寺崎省子) 
             (朝日新聞・夕刊 2004年06月22日)  
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