今年の政策研は12月18・19日に行われます 詳しくは以下URLを参照
http://www.dpi-japan.org/event/041218-1.htm

自立支援分科会

●自立支援分科会

  12月19日(日)戸山サンライズ(午前10時〜12時30分、午後1時30分〜4時45分)

テーマ: 障害者施策の今後の展望
内容: ・障害施策の改革のグランドデザインについて 
・介護保険制度改正について
パネルディスカッション

午前の部 午前10時〜12時30分

障害施策の改革のグランドデザインの解説と問題点についてパネラーからの説明 (介護保険についても少し)
コーディネーター 川元恭子さん (自立支援分科会事務局)
パネラー 横山晃久さん(全国障害者介護保障協議会)       
小田島栄一さん(ピープルファーストジャパン(知的障害当事者団体/知的障害当事者)       
加藤 真規子さん(精神障害者ピアサポートセンター/精神障害当事者)
山本 創さん (難病をもつ人の地域自立生活を確立する会)

午後の部 午後1時30分〜4時45分

パネルディスカッション
コーディネーター 川元恭子さん (自立支援分科会事務局)
パネラー 横山晃久さん (全国障害者介護保障協議会)
橋本みさおさん (日本ALS協会、ALS当事者)
中村宏子さん (CIL松江)
小田島栄一さん (ピープルファーストジャパン(知的障害当事者団体))
加藤 真規子さん (精神障害者ピアサポートセンター、当事者)
ほか精神障害関係行政・専門家予定

 

下記、全国障害者介護制度情報10月号に加筆

厚労省、障害福祉施策を大改正案 在宅を義務的経費に
  来年の法改正目指す

 厚生労働省障害保健福祉部は、障害福祉施策の大改正を行います。
 精神・知的・身体の3障害のサービスを1つの法律に統合することや、ホームヘルプな ど在宅福祉を現在の施設と同様の義務的経費(注)にするかわりに国の補助は一定までに限定する、支給料の決定を市町村とは独立した「審査会」が行う、ほぼ全ての障害者にケアマネジメントの導入など、大きな改正を含んでいます。
 10月12日の審議会障害部会で、厚生労働省は障害制度改正の厚生労働省案(グランドデザイン)を配布しました。

  現在の制度 改正案
施設経費 施設は義務的経費(かかった費用は必ず国と県が補助しなくてはならない) 施設は義務的経費(かかった費用は必ず国と県が補助しなくてはならない) 
在宅経費 在宅は裁量的経費(予算を超える支出があった場合は、国や県は予算までしか補助しなくて良い。国庫補助が満額受けられない市町村がその不足分を負担する) 在宅を義務的経費に(かかった費用は必ず国と県が補助しなくてはならない)
財政負担割合 ホームヘルプなどは国50%県25%市町村25%だが、福祉工場や精神の社会復帰施設などは国50%県50%、更生施設は国50%市町村50%。 全施策を国50%、県25%、市町村25%の負担割合などに統一(国と県は調整交付含む)
ヘルパー時間の国基準 現在は国の基準なし 国の基本的基準を障害に応じて3段階で作る(区分1〜3をホームヘルプ利用者にも適用)。
ヘルパーの時間数決定の方法 時間数決定は市町村の障害福祉担当部署が行う。障害者は交渉して市町村の制度を伸ばしていくことが可能。 時間数決定は市町村とは独立した「審査会」が行う。(3000市町村で審査会が作られ、医師会や民生委員、学識経験者が委員につくことが想定される)。障害者は交渉ができなくなる
ケアマネジメント ケアマネジメントは制度化されておらず、ヘルパーなどの時間数決定にケアマネジメントは義務化されていない。 ほぼ、全障害者がケアマネジメントを受け、ケアプランを作ってもらう。(自分でケアプランを作ることも可能だが、介護保険の前例のように限りなく0人に近い結果になる恐れも)。ケアプランを沿えてヘルパーなどの申請を行うことが義務付けられる。
費用負担 応能負担=同じサービスを使っても、所得に応じて、支払う自己負担が違う。ヘルパー制度は時間数×所得ごとの自己負担を支払う。ただし、所得に応じて月の上限があり、ヘルパーを長時間使っても費用負担が過大にならない。 応益負担=介護保険同様、所得に関係なく同額を利用した量だけ負担する。ただし、低所得者には減免措置(介護保険と同じ方法。なお、介護保険は非課税世帯は月2万4600円以上は負担しなくて良い。一般世帯は3万7200円が上限)。
ガイドヘルパー制度(移動介護) 移動介護(ガイドヘルパー)は、身体介護や日常生活支援と同じ1類型。指定事業所には1時間4020円〜1530円が入る。利用者は自由に事業所を選べる。24時間の介護精度が出ていない市町村では、障害者団体が、24時間介護の必要な障害者に対して、1時間の移動介護の収入で、5時間の介護を提供して障害者が生きている例も。 ガイドヘルパー制度は(社協など)特定の法人に委託され、その法人が直接実施する。(おそらく、ガイドヘルパーには800円〜1000円程度しか入らないと想定される)。
精神障害者 支援費制度に入っていない 支援費制度に入る

ヘルパー制度が今後まったく伸びていかなくなる

 この案には大きな問題が2つあります。
 1番の問題は、ヘルパー時間は市町村が設置する独立機関の「審査会」が決めるという案です。
 審査会の委員は3000市町村がそれぞれ決めますが、介護保険と同じような人選になります。つまり、医師会や看護協会や大学教 授が過半数になり、ここで決められた時間数は、24時間の介護が必要な1人暮らしの障害者で命にかかわる人が、市町村の部長や課長と交渉しても、決定時間をかえられません。厚生労働省は障害に応じて3段階の標準的な金額を示すとしており、「審査会」はこの水準を参考に時間数を決めていくことになります。3段階の最高水準でも、現在の国庫補助基準(3ランクある)の全身性障害者の月125時間(約20万円)から大きく変わるとは考えられません。
 「審査会」の決定は、たとえば、市長や市議会与党でも変更できません。これでは、最重度の1人暮らしの障害者による時間数を伸ばす交渉は、一切できなくなり、ヘルパー時間数の低い地域は、永久にその水準から変更できなくなります。
 30年以上の1人暮らしなどの全身性障害者の運動により日本の介護制度は改善されてきましたが、この制度が導入されると、今後は制度改善の運動はまったく出来なくなり、日本の介護保障制度水準は低迷固定化します。これは、すべての障害者にとって不幸なことになります。 (厚生省案には、審査会は、10月12日の審議会の資料1の6pの下の表、資料2の7p「審査会の設置等によ る支給決定の透明化」、資料3の7p、21行目「2)利用決定の透明化」の丸2、に出 ています。10月12日の配布資料は、ホームページ参照)
 この案が通ると、これからヘルパー制度の水準の低い市町村に1人暮らしして介護制度 を伸ばす交渉を行う最重度障害者が、生活できなくなります。  日本のほとんどの地域では、まだ24時間介護保障はもちろん、24時間介護の必要 な1人暮らし障害者に対して、1日12時間保障も実現していません。
  「審査会」は最大の問題点を持っています。

移動介護廃止

 2番目の大きな問題としては、 移動介護がなくなり、1つの法人に委託されるガイドヘルプ事業になります。
  これでは、支援費前の状況に逆戻りです。つまり、全国の9割の市町村で社協委託になります。時給800円〜1000円くらいのガイドヘルパー制度になるでしょう。
  支援費実施前の、独占委託のサービスの悪い、暗黒の時代に戻ります。
  24時間の介護が必要な1人暮らしの障害者が、1時間5030円の移動介護(夜間)を5時間の介護に引き伸ばして、ぎりぎり生存している大阪やその他の全国各地の地域(24時間の介護保障が出来ていない地域)では、このままでは、それらの障害者の介護が受けられる時間数が足りなくなり、確実に死人が出ます。
(10月12日の審議会の資料1の12p、資料3の15p(移動介護はB障害者地域生活支援事業に入る)、資 料3の後半の、参考資料の35p、を参照)
 ホームヘルプは「介護給付」に入り、舗装具などは「自立支援給付」に入りますが、ガイドヘルプ事業はリフトカーによる移送サービスなどと共に「地域生活支援事業」に入ります。

1介護給付 ホームヘルプ・通所・ショート・重度障害者包括サービス・ケアホーム(ケア付グループホーム) 障害者個々人へ給付
2自立支援給付 就労移行支援事業・要支援障害者雇用事業・グループホーム・自立支援事業(機能訓練・生活訓練)・補装具 障害者個々人へ給付
3地域生活支援事業 ガイドヘルプ事業・リフト付福祉バス事業・相談支援事業・権利擁護事業・デイサービス(本人活動・生きがい)・手話通訳・訪問入浴・日常生活用具 法人に一括補助

このように3つに分けたのには、以下の理由があると考えられます。障害者に介護保険が適用された時に、1の介護給付は介護保険と重なる部分、2の自立支援給付は障害者特有の横だしサービス、3の地域生活支援事業は(重要度が低いので)一般財源化になっても仕方のない事業という考え方であると読めます。実際に、3番は、メニュー事業として包括補助金として計画されています。なお、この事業の方式は、市町村との密接な関係のある特定の社会福祉法人や福祉公社にだけ委託されるものなので、一般の民間事業所が委託を受けることはできません。3000市町村のほとんどの地域では社会福祉協議会1箇所への委託となることが予想されます。

ALSなどの包括

  なお、包括問題に関しても記述があります。これは、12月に出る、ホームヘルプの包括案とは別物で、ALSなどに対する全制度を包括して一定額で提供する制度です。現状では包括単価が決まっていないので、なんともいえない 案になっています。ALSや呼吸機利用者や重度の知的・精神障害者が想定された内容になっています。包括の単価が たとえば、月80万円になるとすると、当然、それに入らない脳性まひや頚損や筋ジスなどの24時間介護の必要な1人暮らしの全身性障害者は、この包括単価より低い単価までしか、時間数決定が出ないと思います。審査会委員へも、最初に市町村は当然、委員に対してそう説明をすると思われます。

自己負担

 多くの団体が反対していることに自己負担の問題もあります。介護保険と同様に一律の自己負担を行うという案になっています。介護保険では非課税世帯では月の費用負担上限2万4000円となっており、自己負担金がこれを超えた世帯は後日申請すれば還付されます。
 たとえば、介護保険同様1割負担の場合、身体介護型ヘルパーを日中毎日3回×1時間利用する場合、1日1206円、月に3万6180円の自己負担となります。親と同居の障害者で親が働いている場合は減免は受けられません。一方、1人暮らしなどで非課税世帯であれば、2万4000円を超える自己負担は後日還付されます。
 自己負担が大きくなる、親元の障害者などがサービスを利用しなくなり、自立しなくなるのではないかと懸念されています。

ホームヘルプにも障害程度区分類型

  現状の支援費制度では、デイサービスや入所施設に障害程度区分1〜3がそれぞれのサービスごとに決められます。改正案では、全サービス共通の「新障害程度区分」3〜5区分が審査会によって決められます。
  ホームヘルプには今まで障害程度区分はありませんでしたが、3〜5区分ごとの上限金額が決まります。最高ランクになっても、現状の全身性の125時間分(21万円)はかわらないと考えられます。(予算不足が今回の改正の主な理由のため)。なお、グランドデザイン案資料では、3区分という案になっていますが、最近になり、審議会では3ないし5区分という言い方に代わっています。
  なお、障害程度区分ごと標準的な金額を超えるサービスが必要であるというケアプランが作られた利用者は、審査会で審査され査定されます。つまり月125時間(と予想される)を越えるヘルパー利用者は全員、審査会で審査を受けます。

この他にもさまざまな問題点があり、1つ1つは書ききれないのですが、このグランドデザインは原案通りでは認めるわけにはいかないと思います。

「審査会」の問題点

・審査会方式では、ヘルパー制度の水準の低い地域は、今後も低い水準のまま、固定化する。何十年も水準が低いまま改善しなくなる。

 市町村で、ヘルパーなどの制度の水準が上がるときというのは、最重度の障害者の両親が入院するなど、緊急の事態に対し、当事者からの交渉が市町村に対して行われ、行政が緊急性を判断し、障害福祉担当の部課長が、議会や助役や首長を説得して、補正予算を組むなど、行政の内部主導で動かないと、大幅なアップはできないものである。このようにして、1人が長時間のサービスを利用開始すると、数年立てば、障害福祉担当課の職員も全員異動し、それがその市町村の決定水準となっていき、ほかの障害者も、介護がたくさん必要な状態になれば、個々人が自立して生活するのに必要な適正な時間数のヘルパー制度などが受けられるように変わる。これに対して、外部委員の審査会は、すでに決められている障害福祉の当初予算の範囲内でしか、サービス水準を決定できない。このため、サービス水準の低い地域では、永久に制度が改善されなくなる。

・審査会方式が導入されると、市町村が制度が伸ばせない言い訳に「審査会で決まったから」を使うようになり、制度が伸びなくなる。

 1970年代から、現在まで、障害者の運動は、全国で交渉を行い、市町村の制度を改善してきた。障害者の運動がなければ、現在のような障害ヘルパー制度はなかった。海外でも同様に、当事者による改善運動により制度は改善されてきた。北ヨーロッパでも障害者の運動によって24時間の介護が受けられるようになった。
 しかし、審査会のような外部委員がヘルパー時間数決定権を持つようなシステムになると、障害者が市町村と交渉して制度を改善していくことが不可能になる。(福祉制度は、障害者1人が交渉して、制度を改善させれば、ほかの同じニーズを持つ障害者全員が制度を受けられるようになる)。 しかし、審査会が導入されると、市町村の障害福祉担当課の課長や部長は、たとえ、非常に水準の低いサービスしか行っていなくて、障害者が困っていても、「審査会で決めることです」「審査会で決まったことですから」と逃げることができ、交渉ができなくなる。




『DPI』20-3号より

緊急企画 グランドデザインを読む

【激動の障害保健福祉施策    
    −「グランドデザイン」をめぐって】

DPI日本会議事務局長 尾上浩二  

 「障害者福祉サービス法制定へ」。10月上旬に新聞各紙で一斉に報道された。10月から社会保障審議会・障害者部会で議論されている「今後の障害保健福祉施策について」(改革のグランドデザイン案、以下「グランドデザイン」と略)を取り上げたものである。
「自立支援型システムへの転換」を掲げている「グランドデザイン」。だが、ここに示されている内容が実施されれば、私たちの生活に大きな影響を及ぼすことは間違いなく、その意味では「大転換」であろう。執筆時点では審議会でも議論の途中であり、その具体的内容は不明な点は多いが、「グランドデザイン」を読みといてみたいと思う。

■「(介護保険)被保険者拡大」論の中「グランドデザイン」発表

 支援費制度実施後わずか1年半しか経っていないにも関わらず「介護保険制度への統合、活用」といった議論が進められてきた。1〜4月には「介護保険との統合論」、6月には「活用」論が言われてきたが、9月からは厚労省は「統合」という言葉を避け、「被保険者拡大」論での「論点整理」をしてきた。こうして「論点」が変化する中、10月12日の障害者部会で「グランドデザイン」が示されたのである。
 まず、「今後の障害保健福祉施策の基本的な視点」として、1.障害保健福祉施策の総合化、2.自立支援型システムへの転換、3.制度の持続可能性の確保、の3点が掲げられている。しかし、後ほど見る通り、その具体的内容は、1990年代に入って言われてきた「障害者自身の自己決定」を基本においた自立論から明らかにズレがある。そして、目につく内容は「支給決定プロセスの透明化」「負担の見直し」と言った「給付の重点化・公平化」「制度の効率化・透明化」に関連してのものである。

■グランドデザインの4つの項目群

 紙面の都合で主な内容だけをピックアップしていきたい。内容面からは、次の4つの項目群に整理できる。

  1. 市町村計画義務化と支給決定のプロセスの透明化−サービス共通の尺度+認定審査会+3区分の国庫補助基準、付随的なツールとしてのケアマネジメント
  2. 負担の見直し−応益的負担の導入、施設入居者の負担増+公費医療助成の低所得者のみへの限定
  3. サービス体系の見直し−介護給付・自立支援給付・地域生活支援事業の3種類への振り分け、「自立」理念の揺り戻しと施設体系中心の再編、極めて重度への包括報酬
  4. 障害者福祉サービス法(仮)−既存の障害者法体系(3分立、障害認定・手帳制度等)を前提としつつ、共通のサービス項目を一括りにしたもの

1.「サービス提供量等の目標の記載を義務づけた障害保健福祉計画策定の制度化」が示されている。おそらく、1993年の老人健康福祉計画の義務づけに習ったものと思われる。老健計画時点では「ゴールドプラン〜新ゴールドプラン」といったサービス総量全体の拡大計画が国レベルであった。一方、新障害者プランは数値目標の低さが批判されてきた。国レベルでの障害者プランの大幅な見直しや地域生活基盤整備の特別立法等が求められる。
 「支給決定プロセスの透明化」に関連しては、「イ.サービス共通の尺度づくり、ロ.サービス認定審査会の設置、ハ.サービスモデルに基づく費用額設定とそれに対応した国庫補助基準の仕組み」の3点が中心となる。支給決定に関しては「認定審査会」が受け持ち、障害者ケアマネジメントは付随的な役割になると思われる(図1)。

「サービス共通の尺度」は介護的側面については「要介護認定を基本に障害種別の特性を踏まえた尺度設定」となっている。参考資料を見ると3区分程度が想定されている。認定審査会では、結局、介護保険の認定審査会に準じた構成となり、医療モデル中心で、障害者ニードへの十分な考慮のない画一的な支給決定がされかねず、「自己決定」「個人のニードに基づく支給決定とサービス利用」という支援費制度の理念と矛盾する。

2. 「負担の見直し」では、「契約に基づくサービスだから応益的負担の導入」という非常に荒っぽい根拠しか示されていない。2000年の社会福祉法改正当時の議論で、「障害者の所得・就労状況をふまえ必要なサービスを受けられるよう」に応能負担が採用された。当時と比べて、大きな改善は見られないのに応益負担を導入するのはあまりにも唐突である。  「応益的負担の導入に併せて扶養義務を廃止する」とされているが、減額措置については「生計を一にする家族の負担能力を勘案する」とされており、自己負担分を本人が払うのが困難な低所得な障害者、親元に暮らす在宅障害者の多くにとって、実質的に扶養義務が強化されることになりかねない(図2)。

 施設入居者については、食費、日用品費等について自己負担とされている。現行の水準を大きく上回る場合は、年金のほとんどが徴収されることとなり、地域生活移行のための準備資金が作れなくなるのではないか。また、「長期入所者」に対する別途利用料の設定も想定されている。これは、介護保険のホテルコスト論をそのまま当てはめたもので、障害者が望んで長期入所しているわけではない実態がふまえられていない。医療の公費助成も、実態をふまえた検討がなされているようには見えない。

3.「総合的な自立支援システムの構築」として、今後のサービスについて介護給付・自立支援給付・地域生活支援事業の3種類への振り分けが提起されている(表1)。

 介護給付にはホームヘルプ、デイ、ショートステイ等の在宅サービスと障害者支援施設(入所施設の住まい機能部分)等がある。自立支援給付では補装具制度以外は、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援等の施設の日中活動が中心で、「地域での自立生活への支援」ではなく、「施設による自立訓練」への給付になっている。そして、移動介護等は個別給付から外され、地域生活支援事業という市町村が実施する事業に整理されている。グループホームについても障害程度による分類を前提にし、ホームヘルパー等の利用が想定されず、「ミニ施設」的な位置づけに変わっている。包括給付については、ALSや強度行動障害等、「極めて重度の障害者」に限定した仕組みが想定されている。
 将来は、地域生活支援事業は地方へ委譲され、国は介護給付と自立支援給付のみ関わるという事態も一定視野に入れているのでないか。
 これまで「介護に馴染まないサービスは障害者施策による横出し・上乗せの仕組みでカバーする」と言われてきたが、実際には「横出しサービス」は施設が実施するものに限定されており、地域生活支援サービスの横出し・上乗せの仕組みがなくなっている。地域生活・自立生活支援の新しいサービス体系こそが検討されなければならない。

4.障害者福祉サービス法(仮)については、まだ具体的な内容が明らかになっていないが、「法律構成のイメージ」をみると、既存の障害者法体系(3分立、障害認定・手帳制度等)を前提としつつ、共通のサービス項目を一括りにしたものと言える。難病等「制度の谷間」にある障害者の問題や、サービス受給権・申請権等が明記されるか等の問題がある。

■障害種別を超え地域自立生活を実現する法制度・サービスを

 以上、ポイントに絞って取り上げてきたが、次の点が特徴としてあげられる。

  1. 「自立支援システムへの転換」 「各障害共通の枠組のため障害者福祉サービス法」と一見「改革的」な枠組みが示されている。しかし、その具体内容は「ADL自立・職業自立論」へ傾斜しており、「自立」理念の揺り戻しが起きている。
  2. これまで障害者施策では、障害者の実態・特性をふまえた一定のきめ細やかさや、1990年代以降、当事者発・地域発の事業等を積極的に採用する形で展開されてきた。「グランドデザイン」は、そうした展開と矛盾する内容となっている。

 おそらく「グランドデザイン」は、介護保険見直しと三位一体改革という動きを射程に入れ、その形に沿って、あたかもジグソー・パズルのピースを作るかのように検討されてきたのではないか。そのために、これまでの障害者施策の内在的な発展方向との整合性や実態的な検証が行われないままの案となったと見るのは、うがち過ぎだろうか。
 支援費制度移行で実際に重度障害者の地域生活が少しは始まった。「介護保険との統合問題」、「グランドデザイン」のいずれも、この重度障害者の地域生活を維持・継続できるのか、脱施設・地域生活支援がより進むのかどうかが議論の基本視点であることには変わりはない。私たちが求めているのは、障害種別を超えて権利に基づき一人ひとりの必要なサービスが確保され、どんなに重度の障害があっても地域で生活できるサービス、システム、法律だ。障害者運動と施策の歴史をふまえた検討を求めていかなければならない。

包括問題を考える
   障害ホームヘルプの利用の分布について

(厚生省の定点観測市町村の調査(全市町村ではなく100程度の市町村の調査のため、不正確です)を再度編集したものです。一部)(この調査内容は、地域生活支援のあり方検討会や障害部会で数字は入らずにグラフだけ公表されました)

 

支援費利用金額小計(身体)

65歳未満

利用者数

利用金額小計

(人)

(%)

(万円)

(%)

            5万円未満

2,589

45.23

6473

10.32

  5万円以上  10万円未満

1,180

20.61

8850

14.11

 10万円以上  15万円未満

868

15.16

10850

17.30

 15万円以上  20万円未満

428

7.48

7490

11.94

 20万円以上  25万円未満

161

2.81

3623

5.78

 25万円以上  30万円未満

122

2.13

3355

5.35

 30万円以上  35万円未満

77

1.35

2503

3.99

 35万円以上  40万円未満

39

0.68

1463

2.33

 40万円以上  45万円未満

40

0.70

1700

2.71

 45万円以上  50万円未満

24

0.42

1140

1.82

 50万円以上  55万円未満

35

0.61

1838

2.93

 55万円以上  60万円未満

33

0.58

1898

3.03

 60万円以上  65万円未満

20

0.35

1250

1.99

 65万円以上  70万円未満

19

0.33

1283

2.04

 70万円以上  75万円未満

18

0.31

1305

2.08

 75万円以上  80万円未満

6

0.10

465

0.74

 80万円以上  85万円未満

7

0.12

578

0.92

 85万円以上  90万円未満

7

0.12

613

0.98

 90万円以上  95万円未満

7

0.12

648

1.03

 95万円以上 100万円未満

6

0.10

585

0.93

100万円以上 105万円未満

5

0.09

513

0.82

105万円以上 110万円未満

5

0.09

538

0.86

110万円以上 115万円未満

4

0.07

450

0.72

115万円以上 120万円未満

4

0.07

470

0.75

120万円以上 125万円未満

3

0.05

368

0.59

125万円以上 130万円未満

3

0.05

383

0.61

130万円以上 135万円未満

3

0.05

398

0.63

135万円以上 140万円未満

2

0.03

275

0.44

140万円以上 145万円未満

2

0.03

285

0.45

145万円以上 150万円未満

1

0.02

148

0.24

150万円以上 155万円未満

1

0.02

153

0.24

155万円以上 160万円未満

1

0.02

158

0.25

160万円以上 165万円未満

1

0.02

163

0.26

165万円以上 170万円未満

1

0.02

168

0.27

170万円以上 175万円未満

1

0.02

173

0.28

175万円以上 180万円未満

0

0.00

0

0.00

180万円以上

1

0.02

183

0.29

 

5,724

100.00

62725

100.00




 

 

支援費利用金額小計(身体)

65歳未満

利用者数

利用金額小計

(人)

(%)

(万円)

(%)

            5万円未満

2,589

45.23

6473

10.32

  5万円以上  10万円未満

1,180

20.61

8850

14.11

 10万円以上  15万円未満

868

15.16

10850

17.30

 15万円以上  20万円未満

428

7.48

7490

11.94

 20万円以上  25万円未満

161

2.81

3623

5.78

 25万円以上  30万円未満

122

2.13

3355

5.35

 30万円以上  35万円未満

77

1.35

2503

3.99

 35万円以上  40万円未満

39

0.68

1463

2.33

 40万円以上  45万円未満

40

0.70

1700

2.71

 45万円以上  50万円未満

24

0.42

1140

1.82

 50万円以上  55万円未満

35

0.61

1838

2.93

 55万円以上  60万円未満

33

0.58

1898

3.03

 60万円以上  65万円未満

20

0.35

1250

1.99

 65万円以上  70万円未満

19

0.33

1283

2.04

 70万円以上  75万円未満

18

0.31

1305

2.08

 75万円以上  80万円未満

6

0.10

465

0.74

 80万円以上  85万円未満

7

0.12

578

0.92

 85万円以上  90万円未満

7

0.12

613

0.98

 90万円以上  95万円未満

7

0.12

648

1.03

 95万円以上 100万円未満

6

0.10

585

0.93

100万円以上 105万円未満

5

38

0.09

0.66

513

4820

0.82

7.68

105万円以上 110万円未満

5

0.09

538

0.86

110万円以上 115万円未満

4

0.07

450

0.72

115万円以上 120万円未満

4

0.07

470

0.75

120万円以上 125万円未満

3

0.05

368

0.59

125万円以上 130万円未満

3

0.05

383

0.61

130万円以上 135万円未満

3

0.05

398

0.63

135万円以上 140万円未満

2

0.03

275

0.44

140万円以上 145万円未満

2

0.03

285

0.45

145万円以上 150万円未満

1

0.02

148

0.24

150万円以上 155万円未満

1

0.02

153

0.24

155万円以上 160万円未満

1

0.02

158

0.25

160万円以上 165万円未満

1

0.02

163

0.26

165万円以上 170万円未満

1

0.02

168

0.27

170万円以上 175万円未満

1

0.02

173

0.28

175万円以上 180万円未満

0

0.00

0

0.00

180万円以上

1

0.02

183

0.29

 

5,724

100.00

62725

100.00





支援費利用金額小計(知的)

65歳未満

利用者数

利用金額小計

(人)

(%)

(万円)

(%)

            5万円未満

1,039

12.33

2598

2.08

  5万円以上  10万円未満

865

10.27

6488

5.19

 10万円以上  15万円未満

1,721

20.42

21513

17.19

 15万円以上  20万円未満

3,649

43.31

63858

51.04

 20万円以上  25万円未満

692

8.21

15570

12.44

 25万円以上  30万円未満

222

2.63

6105

4.88

 30万円以上  35万円未満

152

1.80

4940

3.95

 35万円以上  40万円未満

40

0.47

1500

1.20

 40万円以上  45万円未満

13

0.15

553

0.44

 45万円以上  50万円未満

8

0.09

380

0.30

 50万円以上  55万円未満

1

0.01

53

0.04

 55万円以上  60万円未満

9

0.11

518

0.41

 60万円以上  65万円未満

6

0.07

375

0.30

 65万円以上  70万円未満

3

0.04

203

0.16

 70万円以上  75万円未満

3

0.04

218

0.17

 75万円以上  80万円未満

0

0.00

0

0.00

 80万円以上

3

0.04

248

0.20

 

8,426

100.00

125115

100.00








厚生労働省全体予算(17年度(2005年度)概算要求)


平成15年度障害保健福祉部予算について
総額6,659億円(100%)

 注) 施設サービス利用者数(入所・通所とも)は、社会福祉施設等調査(平成14年10月)による。
    居宅サービス利用者数は、厚生労働省障害福祉課調べ(平成15年4月)による。

 




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