生活保護の改正情報

厚生労働省保護課の平成20年度生活保護基準・生活保護実施要領等(当会ホームページに丸ごと掲載)の中から、2008年度より生活保護制度の取り扱いが変わった部分を紹介します。

重度障害者の車の保有の条件が緩和

 重度の障害者が通院や通所のために車の保有が必要な場合、生活保護の障害者加算の範囲で維持費がまかなわれる場合には、他からの維持費の援助がなくても、保有が認められることになりました。
 従来は、保護費は車の維持費に当てることが許されていなかったので、自治体からの福祉手当や「○○さんを支援する会」などからの車の維持費の援助があることが、車の保有の条件になっていました。
(平成20年度生活保護基準・生活保護実施要領等 113p)

 なお、通院ならば週3回以上、通所なら週4回以上の利用で、公共交通の利用が困難であることと、資産価値のない車か身体障害者用に改造してある車で、2000cc以下であることが条件です。(詳しくは平成20年度生活保護基準・生活保護実施要領等2627p)
 通所の条件には認可作業所かどうかなどは問われないので、障害者団体事務所でもかまいません。詳しくは制度係にお問い合わせください。
 *別冊問答集の改正になります。

オートバイの保有が認められます

 125cc以下のオートバイや原付は日常生活用品としてテレビ等と同様に保有が認められるようになりました。ただし、処分するより保有したほうが自立助長に実効が上がっているなどの条件があります。
(健常者や聴覚・知的・精神障害などに関係すると思われます)
(平成20年度生活保護基準・生活保護実施要領等 113114p)

その他の車の保有についての改正

 このほか、車の保有については、健常者でも公共交通の利用が著しく困難なところに住んでいる場合には通勤用には認められていましたが、今回、新たに、職場が不便な地域の場合や、夜間の職場の場合にも保有が認められるようになっています。
 また、通勤中に子供を保育所へ送迎するためには公共交通利用が困難な場合も認められることになっています。
(なお、従来より、障害者が通勤する場合は、車以外での通勤が困難な場合は上記のような条件なしで車の保有が認められます)。
 また、今回の改正で、保護の開始申請時には一時的な失業や病気で通勤していなくても、6ヶ月以内に通勤することが確実に見込まれる場合も保有が認められることになりました。
(平成20年度生活保護基準・生活保護実施要領等 25p・113p)

アパート等の契約更新料・保証料・火災保険料も対象に

 従来は文書で明確になっていなかった、アパート等の2〜3年ごとの契約更新料も「敷金等」の対象になると明確に記載されました。(生活保護制度で保護利用者に支払われる。敷金等の増額はなし)。
 また、新規にアパート等を借りる際に、保証人が見つからない場合は、保証人のかわりにに保証料を民間の信用保証会社などに支払うことで、保証を代行してもらうサービスがありますが、その保証料も対象になります。
 また、火災保険料も今回改正があり、対象になりました。
 なお、「敷金等」として保護費から出る金額は、住宅扶助の特別基準の3か月分が標準で、敷金の高い地域では、基準が違います。(東京は4か月分、大阪は6か月分など)。「敷金等」の出る基準については、詳しくはhowto介護保障別冊資料集4巻も参照ください。
 たとえば、この「敷金等」が3か月の地域の場合で、住宅扶助基準額が5万円の場合、敷金等は15万円ですので、「敷金5万円、不動産手数料5万円、保証料4万円、火災保険1万円=合計15万円」の場合、保護制度からの支出ですべてまかなうことが可能になります。これを超えるとまかなえないことになります。
(平成20年度生活保護基準・生活保護実施要領等 5455p)

*民間の賃貸家賃保証サービスは2年契約で1ヶ月の家賃の80%程度が保証料の相場です。国土交通省の高齢者居住支援センターの家賃債務保証制度(障害者も対象:http://www.koujuuzai.or.jp/html/page02_02.html)は同35%となっています。

保護の申請相談では必ず申請書を出すことを文書で明示

 北九州を始め、全国各地で保護の事務の法律違反を行う自治体の保護担当部署があることが問題になったため、今回、文書で「申請権を有する者から申請の意思が表明された場合には申請書を交付すること」と文書で明示されました。
(平成20年度生活保護基準・生活保護実施要領等 79p)

  • なお、北九州の餓死事件で問題になった「辞退届」についても、新たに88pで記述されています。
  • 援助方針の策定と、評価と見直しを年に1回以上行うことが92pに新たに明示されています。今後は年に1回、重度障害者の自宅に特別な訪問面談などがあるかもしれません。

大臣承認の申請から決定まで1年以上かかっているケースがありましたら教えてください

事務局よりお願い
 生活保護の他人介護料大臣承認の申請から決定まで1年以上かかっているケースがありましたら教えてください。市の保護課が2年以上放置していた静岡県M市の場合、厚生省交渉で、後日、厚生労働省に市と県の担当者を呼び出してもらい処理しました。ほかにもありましたら制度係までご連絡ください。

ほかにもこんな事例がありました
東北のA市の事例

 入所施設からアパート暮らしに移行した24時間介護の必要な障害者に対して、障害福祉課は介護の24時間の必要性は認めていたが、福祉部長の意向で予算不足を理由に1日12時間の支給決定しか行わなかった。 そこで、障害者が生活保護と大臣承認他人介護料の保護課に申請をしたところ、保護課は生活保護は決定したが、他人介護料は却下した。(同じ福祉部長の意向によるもの)。

 ヘルパー制度とは違い、生活保護は国の基準による全国同一の制度です。法律上は介護が不足している時間があれば、他人介護料を決定しなくてはなりません。このような問題が起きた場合は国や県の保護課が指導できます。

さまざまな生活保護の問題が出ている場合は、制度係まで情報をお寄せください。

 

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