介護保険と支援費の統合の結論、延期
1月には、厚生労働省障害保健福祉部長は、「3月までに結論を出したい」との発 言を行っていましたが、主要障害者8団体の合意が得られず、時期がずれ込んでいま
す。審議会の障害部会や介護保険部会のスケジュール、介護改革本部のスケジュール から、6月までが、めどと考えられています。
審議会の障害部会では、介護保険統合賛成の委員(精神障害関係の事業者など)が 大幅に増員され、月2回ペースの集中審議が行われています。
現在は年金の保険料負担問題で手一杯で、とても介護保険料負担拡大の話をできる 状況ではないため、参議院選挙後の秋に大きく事態が動く可能性が高くなってきてい
ます。それまでは水面下の動きしか見えてこないかもしれません。
■障害者7団体と厚労省障害保健福祉部との話し合いの報告について(2004年1月16日)
厚生労働省が2005年の介護保険法の改正を踏まえ、各部局をまたぐ横断的な組織として介護制度改革本部を発足させました。検討項目には、「介護保険と障害保健福祉施策の関係」もあがっており、これに対して、障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会の障害者7団体で、障害保健福祉部長に介護制度改革本部の設置についての説明を要望し、1月16日に厚労省から詳しい説明を受けました。
最初に塩田障害保健福祉部長より、「昨年は支援費制度がスタートしたという点で、障害者福祉行政の点で記念すべき年であり、課題はいろいろあったが、関係者の努力の結果、順調なスタートをきることができた。途中で財源が不足するという問題がおきたが、障害者団体とも協力して取り組み、政治家、地方自治体、財務省、厚労省他部局から障害者福祉の向上が非常に大事な課題だという共感を得ることができ、乗り切ることができた。今年は支援費制度の二年目に入り、支援費制度が目指した理念をこれからも末永く前進させていくために何をしたらよいかという年であり、そのための色々な方策を決めていかなければいけない。」
という支援費の一年目の評価と今後に向けた話がなされました。
そして介護制度改革本部について、「介護制度改革本部では、障害者の問題については幹事会を作って検討する。厚労省としては幹事会で議論して、6月ごろに方向性を決める。介護保険の改革案は9月に発表し、様々な意見を聞いて、来年の通常国会に法案を出すことになっている。」という説明がありました。
介護保険の議論については、「障害者のかたが時期尚早ということであるならば、今回の介護保険との話は見送りという結論にならざるをえない。私たちの立場からは障害者団体が反対することを持ち出せない。6月に向けて、それぞれの関係者で考えて欲しい。厚労省は支援費制度を否定しているのではなく、その理念をどう実現していくか、どう発展させていくかを考えている。高齢者の介護保険に入れてもらうのではなく、対等な気持ちで、自分たちが介護保険の仕組みを変えるという、もっと前向きな議論をしていきたい。結論ありきではなく、議論をして良い結果がでなければ、介護保険の話はやめれば良い。」との投げかけがありました。
この話を受けて、障害者7団体で場所を移して協議したところ、非常に重要な問題で各団体がこの場で結論をだせる問題ではないので、持ち帰って会員に対して説明をし、検討したいということになりました。また、この問題についてはしばらく重要な局面が続くので、お互いの情報共有と意見交換を密にしたいということで、1・2月は1週間に1回のペースで7団体が集まって話し合いの場を持つことになり、次回は検討会が行われる1月22日とすることを決めました。
その後、厚労省を再度訪れ、村木企画課長に対して、「部長も、課長も、障害者団体がノーといったらできないという部分を重く受けとめた」、「持ち帰って団体として検討するために、今後の検討のスケジュール、検討内容、項目などについて情報を頂きたい」、「支援費制度によって地域生活が一定進んできた。障害者の地域生活の拡充ということがさらに必要」「次回検討会の後に再度障害者7団体が集まるので、厚労省とも各団体が持ち帰って検討した内容について話をしたい」ということで申し入れをしました。これについては、企画課長が預かり、日程調整をして連絡をもらえることになっています。
(1月22日情報 22日は午前中に「ありかた検討会」が行われ、午後に、あり方検討会参加7団体に加えて、精神障害者の家族団体である全家連やピープルファーストが加わり、9団体で課長と懇談が行われ、現状の状況が説明され、今後の議論の進め方について意見が交換されました。)
■障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年1月22日)の報告
1月16日の障害者7団体への介護制度改革本部の説明の場において、塩田障害保 健福祉部長から「支援費制度の理念の実現、発展のために、介護保険を活用する前向
きな議論をしたい」との呼びかけを受けて、障害者7団体は連携を深めること目的に 今後週1回ペースで集まることに合意し、その第1回目の話し合いを1月22日に
行った。同時に村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合い(情報共有と意 見交換)を行った。今回から全家連の正式な参加により、3障害8団体としての話し
合いを進めていくことになった。
厚労省に対して、各団体が16日の話を持ち帰って検討した結果、現在の情報で結 論を出すことは難しく、介護保険への統合を前提とせずに8団体がまとまって厚生労
働省と率直に意見交換をしながら、その是非を判断していきたい旨を伝えるととも に、現状のサービスが維持できる仕組みと、施設から地域生活に移行することが目標
で、それをベースに現状よりも障害者施策が一歩でも進むような話をしたいという発 言が出された。
続いて厚生労働省から配付資料に沿って介護保険法改正の審議の進行スケジュール と議論に要する事項について説明があり、質疑が行われた。
8団体側からは、「財政状況が困難であることは理解するが、支援費制度は未だ課 題が多い。スタートして1年を経過したばかりで検証もしておらず、介護保険と一緒
にしてもうまくいかないのではないか」「現状の支援費制度においても十分にサービ スが受けられていないので、今後どうなるのか多くの障害者が不安に思っている」な
どの発言もあった。
厚生労働省からは、当事者の考えが今後の政策決定に大きなウェイトを占めるこ と、介護保険法の附則で5年後の見直しが法文上明記されていること、したがって介
護保険と障害者施策の関係を検討する上では当事者団体の意見を聞き、地域生活を実 現するためにはどの手段をとるのが有効なのかという観点から一緒に検討をしていき
たい、ということが述べられた。
障害者団体側は厚労省に対して、今後障害者8団体と週1回ペースで話し合いを行 い、実務レベルの情報も含めた具体的な情報提供を求めた。また、次回は厚労省と障
害者団体がもつそれぞれの課題の共有化を図るために、介護保険制度及び介護保険法 についての理解を深めるための情報提供を受けつつ、互いの意見交換を行う集まりを
持つことになった。
■障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年1月29日)の報告
1月22日の障害者8団体の協議において、今後障害者8団体で週1回ペースで話 し合いを行い、その際に厚労省に対して介護保険の見直しに関してなされている検討
について実務レベルの情報も含めた具体的な情報提供を求めていくことを決定した。 そのことを受け、第3回目の集まりを1月29日にもった。
当日は午後3時から会議を始め、まず8団体での協議を行った。介護保険と支援費 の相違点や介護保険を障害者施策に適用することに対して懸念される事項について、
また、介護保険のメリットをどう考えるかについて事務局で作成した資料をもとに意 見交換を行った。
その中で、厚労省と協議をするのにあたって、各論から入るのではなく、まず、障 害者福祉施策の抱える基本的な課題(扶養義務、障害認定、所得保障、総合福祉法の
確立等)をきちんと押さえ、その上で地域生活支援に必要なサービスの介護保険と重 なる部分と重ならない部分を仕分けた上で、重なる部分に介護保険を適用することが
良いのかどうか判断するという議論の方向性がだされた。
そのように、基本論・総論・各論と整理して話を進める中で、障害者団体が指摘し たことに厚労省が答えるにとどまるのではなく、介護保険に障害者の介護保障をどう
リンクさせるのか厚労省が描く全体像についての情報を求めていくことになった。
続いて、午後4時から村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合い(情報 共有と意見交換)を行った。
最初に村木課長から、介護保険に吸収合併ではなく障害福祉施策としてどう打ち出 していくのかについて協議したいとの言葉があり、当面2月までに協議を行うテーマ
とスケジュールが示された。
また、厚労省からこれからの障害者福祉の基本的な方向性について、資料をもとに 説明が行われた。厚労省は、これからの障害者福祉は地域で暮らすことを前提に、
- 障害者種別や年齢を超えた地域ケアをできるだけ身近なところで受けられること
- 就労や住まいの問題も含めての支援の在り方を考えること
- 地域のニーズを的確に把握するための仕組みが必要であり、また、今後、地域移行 の中で新たなサービスを受ける人が増えるためにサービスの伸びのスピードに耐えら
れる仕組みが必要であること
- 税と保険では財政弾力性に違いがあり、これからは財政の弾力性ある仕組みが求め られること
- 特区における取組みも含め、地域の実情に応じたサービスを生み出す仕組みが必要 であること
などをあげた。
また、自治体から国への要望として「安定的な財源確保」「ケアマネジメントの制 度化」「支給決定基準の策定」などがあり、一方で障害者福祉の補助金について廃止
し地方に財源移譲を求める声が大きいということもあげられた。
障害者団体側からは、
- "障害者種別を越えたケア"という理念は重要だが、福祉法はそれぞれ身体・知的 ・精神と種別に分かれている。法律が別でサービスだけ統合ということではなく、障
害者団体は従来から障害者総合サービス法を制定するよう提案してきている。
- 平成7年に障害者プランができて7年間の計画が終わったが、知的障害者の入所施 設は増えていて、精神障害者の社会的入院は横ばいである。市町村障害者計画は91
%の市町村で策定されたが、現状が変わったという実感がもてない。
- 扶養義務制度を変えない限り、いつまでも親が子供を見るということで、公的責任 をあいまいにして最後は家族の責任としている。これは逆に本人の自立意欲を阻害し
ている面があり、扶養義務問題について、政治も含めてどう提起していくのか考えな ければならない。
- 障害認定や等級問題についても、医療モデルで決まっていて、それがサービスに結 びついている。知的障害者、精神障害者の認定の方法にも問題がある。
- 総合的な障害者施策、所得保障など古くから指摘されてきた問題で、問題意識だけ ではだめで、それをどう施策にしていくかが重要である。
などの意見がだされた。
議論は当初の予定を大幅に越えて6時過ぎまで続いたが、これらの問題意識を障害 者団体と厚労省の双方が共有し、次回以降の介護保険と支援費制度の具体的な問題に
ついて協議する中でも議論の念頭においていくことを確認して、今回の話し合いを終 了した。
最後に障害者団体から介護保険と支援費制度を比較して懸念される点についてまと めた第一次資料を提出した。
次回も引き続き、厚労省と障害者団体がもつそれぞれの課題の共有化を図るため に、介護保険制度及び介護保険法について互いの意見交換を行う集まりを持つ予定で
ある。
(この文書は8団体の確認を経て、共同で配信されているものを、そのまま掲載させてい ただいています)
■障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年2月5日)の報告
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月5日の午後3時より開催した。
前回に厚労省と行った「これからの障害者福祉の基本的な方向性」についての議論 を踏まえて、今回の厚労省との話し合いは「介護保険の現状と今後の方向性」につい
て、高橋紘士氏(立教大学教授)より話を伺い、質疑を行うことで進めていくことを 確認した。
各団体の中で介護保険と障害者サービスについての検討がなされており、その中の 論点として、介護保険と支援費制度のアセスメントの違い、給付の上限と上乗せ・横
出しサービスの問題等の課題があがったことの報告がなされた。精神障害の立場から も、介護保険の”自立”の概念を障害者に適用することの問題点も提起された。それ
らを受けて、次回については、厚労省側から引き続き介護保険について学者から話を 聞く場を設けたいという提案を受けていたが、厚労省の考えを聞き、障害者団体側が
もつ問題点を議論する方向にしたいという意見がだされた。
また、早急にそれぞれの団体が課題を出し合い、今後の検討における共通の認識を 作っていくことが確認された。
また、この間の動きとして、厚労省が1月末に各自治体に示した”ホームヘルプ サービスの国庫補助配分予定額””居宅生活支援サービスの事業運営上の工夫につい
て”と、それを受けての自治体の反応についての情報交換を行った。
午後4時からは、村木企画課長をはじめとする厚生労働省との話し合いを行った。
高橋紘士氏に加え、老健局から渡辺企画官(総務課)、宮崎課長補佐(介護保険 課)が出席され、それぞれから介護保険制度についての説明が行われ、その後、質疑
を含めた議論がなされた。
高橋氏は「介護保険と障害福祉」と題する資料に基づいて話をされた。概要は以下 のとおりである。
- 税方式か保険方式かではなく、必要とされる介護のニーズにどう機動的に対応する かという仕組みとして介護保険をとらえる。一般財源は政治的な仕組みとして配分が
決まるが、介護保険は福祉にしか使われない特定財源である。
- 介護保険導入によって、3年間で高齢者人口の増加分をはるかに越えてサービスが 増加した。保険はニーズの増加に応じサービスを増やすのになじむ仕組みである。
- 介護保険は赤字が発生すれば財政安定化基金から借りて運営し、次期のでどう見直 すかを議論できる柔軟な仕組みをもっている。
- 介護保険は市町村が必要なサービスを考え、保険料を決め、運営する地方分権の仕 組みにのっとっている。
- 従来の福祉は問題がおきた時に救済するという仕組みだったが、介護保険はあらか じめ必要なサービスを明らかにし、標準的なサービスを提供する仕組みである。
- 介護保険の現在のケアモデルも転換が必要で、地域生活移行を痴呆性高齢者を中心 にして考える。地域に小規模、多機能型のサービスを作り出していく。
- 介護保険は標準的なニーズに対するサービスであり、介護保険では提供できない特 別なサービスについても整備する必要があるが、中心部分として介護保険は機能する。
- 国民が保険料を負担するということは重要なメッセージであり、サービスを自分の こととして考え、自分たちで仕組みを支えていくという価値の転換が行われること
が、議論の大きなポイントである。
続いて宮崎課長補佐により、「介護保険制度の現状と今後の方向性」と題する資料 に沿って介護保険制度の目指した理念と現状、そして今後の課題についての説明が行
われた。概要は以下のとおりである。
- 介護保険創設時の考えとして「社会連帯」「地方分権」「自立支援と在宅サービス の充実」「利用者本位」「公平な負担と給付」の5つの視点があった。
- 介護保険制度の実施状況として、全体では利用者が150万人から300万人に増加し、 特に在宅サービスの伸びが著しい。また、財政規模も3兆円でスタートして現在5兆
円になっており、ニーズに合わせて費用をまかなっている。給付が増えるにしたがっ て負担も上昇している。
- 介護保険制度に対する評価は、評価している人が発足時の4割だったが、現在は6 割に増えた。
- 今後の課題としては、「制度の持続可能性」「サービスの在り方」「サービスの質 の確保」「予防・リハビリテーションの充実」があげられる。
これらを受けて
- 現在の要介護認定の仕組みでは身体的な障害以外の多様な障害が評価されていな い。これを今後どうするのか。
- 介護保険は標準的なサービスを提供する仕組みという話があったが、個別ニーズに どう対応するのか。障害者サービスは個別ニーズの重要性が大きい。
- 今後、介護保険の費用は高齢化の中で拡大していくと推計されているが、いずれ財 源問題にぶつかるのではないか。障害者がその中に入っていくのは不安がある。
- 介護は日常生活・社会参加・労働のそれぞれの場面で必要であり、介護保険でどこ まで担い、それ以外をどうするのかを考える必要がある。
- 今日の説明では、介護を受けながら地域で暮らすことを“自立”と言っていたが、 介護保険の仕組みでは介護を必要としないことを“自立”と呼んでいる。“自立”を
どちらの概念でとらえるのか。
などの意見が出され、現在の介護保険の仕組みを前提とせずに、現在の課題をどう介 護保険の中で解決し、あるいはそれ以外の仕組みでどう対応するのかについての意見
交換がなされた。
今回の議論を踏まえて、次回は12日に再度「介護保険制度の現状と今後の方向 性」について、池田省三龍谷大教授から、市民活動として社会運動として介護保険を
どうとらえるかをテーマに勉強会を開催するとともに、障害者団体の持つ課題も含め て議論することとなった。
■障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年2月12日)の報告
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月12日の午後4時より開催した。
前回の厚労省の話し合いでは、「介護保険の現状と今後の方向性」について高橋紘 士氏(立教大学教授)から話を伺い、ディスカッションを行った。今回も、先に池田
省三氏(龍谷大学教授)から介護保険の話を伺うとともに、障害者団体の持つ課題も 含めて議論することとなった。
前回からの課題であった障害者団体側の今後の検討における共通の認識を作ってい くための作業として、23日に勉強会を行うことを確認した。事前に各団体から課題
をあげてもらい、障害者団体に共通する課題とそれぞれの団体の固有の課題につい て、事務局で論点整理をすることとなった。
午後5時からは、村木企画課長をはじめとする障害福祉部と、前回に引き続き老健 局から渡辺企画官(総務課)、宮崎課長補佐(介護保険課)の出席のもと話し合いを
行った。
まず、池田省三氏が「介護保険−その思想とシステム−」と題する資料に基づいて 話をされた。概要は以下のとおりである。
- 介護保険の思想と理念は理解されていない。介護保険は普遍主義、自立支援、共助 の思想でできている。介護保険のニーズ判定は、個々の要介護度のみで行い、所得や
家族の有無とは関係がない。利用者の選択と契約に基づき、行政処分ではない。普遍 主義は費用負担ついても適用され、全ての人が1割を負担する。
- 介護保険は、予算主義(あらかじめ決まった中での配分)から決算主義(出来高に よる財源確保)に転換した。普遍主義を担保するには決算主義にしなければならな
い。
- 在宅サービスを利用している人の金額は支給限度額の約4割だが、それでもドイツ より水準が高い。在宅サービスの支給限度額は特別養護老人ホームに入ったのと同じ
金額に設定している。また、35万円は平均的な勤労世帯(年収600万円世帯)の可処 分所得と同水準である。介護保険では現在の支給限度額ではあまり問題がおきていな
い。限度額を越える人は市町村が独自にやるか、自己負担でサービスを買っている。
- 介護保険は全てのニーズをみたせるわけではなく、1割の自己負担できない人、痴 呆で契約が難しい人などの問題がある。制度はメインシステムとサブシステムがあっ
て、その補完関係である。介護保険のメインシステムは普遍主義でできていて、そこ ででてくる問題にはサブシステムが用意されている。
- 特定ニードへの支援をどうするか。配食サービスは保険給付になじまない。しか し、配食サービスが必要な人がいるので自治体が実施している。軽い痴呆でお金の管
理が必要な場合は地域福祉権利擁護事業がある。虐待がある場合、措置で対応するこ ともできる。
- 自立支援の考え方は、魂の自立が人間の尊厳であるということ、人間は何者にも支 配されず、自らの意思で決定する。これを回復するのが介護保険である。これまでの
福祉は、家族モデル(依存)と病院モデル(管理)しかなかった。サービスの利用料 は無料・低廉ので、あくまでも与えられるサービスだった。介護保険は自己決定が先
にあって、必要な社会的な支援が受けられる仕組みである。
- 従来は、心身機能の低下によって自己決定できなくなり保護になっていた。自己決 定を実現することが、介護保険が目指すケアである。自己決定を回復するとケアは上
手くいく。良質な介護事業者はそれを考えている。痴呆性高齢者は自己決定がないが しろにされているために、それが問題行動として現れる。痴呆性のケアは自己決定の
回復が重要なテーマになる。
- ケアの対等関係は、費用を自分で払うという事で担保される。有償ボランティアは お金を払うことで使いやすくなった。障害者の主張するダイレクトペイメントと共通
する。
- 障害者と介護保険が出会えば、支援型の介護ができるので、期待している。支援型 介護は高齢と障害とで共通した理解ができる。
- 自助、互助、共助、公助については、個人ができることを行政が行ってはけない、 市町村ができることを都道府県が、都道府県ができることを国がやってはいけないと
いうこと。問題が起きたときにまず解決を迫られるのは本人(自助)で、次に家族・ 友人(互助)である。しかしこれには限界があり、全てが解決できるわけではないの
で、次に共助が必要となる。ヨーロッパでは教会が担っていて、日本ではかつては村 落共同体が担い、都市化が進む中で企業、労働組合などの職域コミュニティが担って
きた。それでも解決できないことについては行政(公助)の支援で行う。
- 日本は共助と互助の区別がついていない。措置制度が介護保険に替わったのではな く、介護保険は失われた共助システムを作った。家族は本来の役割に立ち戻る事がで
きた。介護保険が全てをやるわけではなく、介護保険でカバーできないものについて は公助がカバーする。
- 介護保険料は約3200円。訪問介護は4020円で、介護保険は40歳以上の人 が月1回訪問介護をしていることと考えられ、その分を保険料として負担していると
いうことになる。
- 介護保険は、本来、保険者の規模が大きいほうが財政が安定する。諸外国では全て 国が保険者である。しかし、本当の地域ケアシステムは市町村しかできない。北欧型
の福祉は市町村が責任を持っており、日本も同じである。国家が責任を持つのでな く、地域がケアをする。考え方によっては、日本はドイツの介護保険を使いながら、
北欧システムを実現できている。
続いて、老健局の宮崎課長補佐から前回、障害者団体側からでた質問について、資 料をもとに説明がなされた。
- 前回、自立の理念が2つあるという話があったが、介護保険法の自立の理念は、” その有する能力に応じ自立した日常生活を営む”という意味での自立である。要介護
認定の自立は法の理念と意味が違っていて、本来は”非該当”が妥当な表現だと考え る。
- 介護保険制度は4年目を迎え、15年度から要介護認定を改定している。痴呆性の高 齢者の認定が低く出ているという批判があったので、改めて痴呆の評価をより適切に
出来るようにした。概ね7割のかたが納得してもらえている。また、推計されたケア と実際のケア時間が比例しており、要介護認定のシステムは改善されてきている。
- 痴呆性高齢者のケアをどうしていくかが大きな問題であり、要介護認定を受ける人 の半分は痴呆が見られる。高齢者の1割が痴呆をもつという調査結果もあり、ケアの
転換も必要である。痴呆性高齢者のケアは尊厳の保障、生活をもとにケアを組み立て ていくという指摘を受け、日ごろ、住み慣れた場を基本としてケアを組み立ててい
く。介護保険を変えていかないといけない部分である。
- 支給限度基準額については、平均利用率は概ね35%〜50%であり、限度額を超えた 部分については、各保険者で独自に行っている。上乗せを行っている保険者は27保険
者であり、約1%である。実施している市町村の数が少ないのは第1号保険者の保険 料を財源とするため、保険料にはねかえってくることの影響もある。また、身体障害
者手帳をもっている場合は、支援費から給付を受けていることもある。
- 横出しを実施している保険者は、介護保険の枠内については、市町村特別給付(寝 具乾燥、移送サービス、配食サービス等)として115保険者、保健福祉事業(介護者
相談、健康づくり事業等)として158保険者である。全体の4〜6%で取り組みとし ては多くない。これ以外にサブシステムとして市町村が実施しているところは多い。
これらを受けて、参加者とのディスカッションがなされ、
- 家族(互助)については、障害者運動は家族介護が得られなくても、重度であって も一人暮らしできるように進めてきた。介護保険のサービスメニューを検討していた
時に、一人暮らしの重度の障害をもつ者のメニューは検討されていなかった。自助と 互助がまだ分離されていない問題がある。
- 障害者が求めるものは社会参加、生活支援であり、介護に限定されない。社会参加 のサービスが保険制度になじむのか。
- 介護保険は、その前に10年間のゴールドプランがあって基盤整備がされてできた。 障害者のサービスも、まず基盤整備に取り組むべきではないか。
- 介護保険もこれから改善されるものであり、支援費と統合してどこまで整理できる のか先が見えない。
- 社会政策は法律・システム・財政の視点が必要で、障害者福祉は法律が弱い。福祉 法が3障害にわかれている、障害認定制度や所得保障が不十分である。財源論だけで
は崩れる要因になる。大事なのは扶養義務で、これが公的責任をあいまいにしてい る。国民的な議論になるが、せめて厚労省の中で自立を理念とするなら扶養義務の問
題を考えて欲しい。
などの意見が出された。
質疑の中で池田氏から介護保険と障害の統合については三段階があるということ で、「来年、介護保険法が提出されて、その翌年が介護保険の第3期になる。そこに
障害者サービスをいれられるかというと無理である。時間的な経過で3つのステージ がある。支援費は財政面の問題があり、まずこれを緊急的に財源で支える。次に、
サービスの供給体制がおいついていないので、高齢者と障害者のサービス提供者を統 合することのメリットがある。第三ステージは保険給付をどうするのかを考え、障害
者の吸収合併でなく、対等合併を行う。要介護認定、支給限度額、介護保険でできな いサービスをどうするかを考える。そういう意味の三段階の統合のステージがあ
る。」との考えが説明された。
前回、今回と2回にわたって介護保険を中心とした議論がなされた。これを踏ま え、次回は19日に介護保険と支援費の関係について、具体的に障害者団体側と厚労
省で議論していく予定である。
■障害者8団体と厚労省障害保健福祉部との話し合い(2004年2月19日)の報告
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月19日の午後4時より行った。
前回の厚労省との話し合いでは、池田省三氏(龍谷大学教授)から介護保険の話を 伺うとともに、障害者団体の持つ課題も含めて議論した。これを受けて、今回の厚労
省との話し合いは支援費と介護保険の関係についての議論に入っていくことが確認さ れた。
また、公明党厚生労働部会より2月24日に障害者福祉施策に関する要望を障害者団 体から聞きたいと言うことで案内があった件での対応を協議した。これについては、
障害者8団体にピープルファースト、精神障害当事者も加えて参加することとなっ た。
さらに、8団体協議の状況について節目に合同集会や記者会見等で報告していくこ と、23日に予定している8団体勉強会の予定確認等を話し合った。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、前回同様に 老健局から渡辺企画官、宮崎課長補佐の出席のもとで話し合いを行った。
まず間課長補佐が配付資料「意見交換のための資料(その4)」に沿って介護保険 と障害者施策について対比的に説明された。 介護保険法は老人福祉法と老人保健法を基礎にその上部に位置づけられており、障害
分野に対しても身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・児童福祉法・精神保健福祉法 の各法を基礎としてその上部に介護保険が入る組み立てが考えられること、施策はメ
インシステムとサブシステムによって成り立っていること等が説明された。
次に具体的にサービスの対象者と利用の決定について、措置制度・精神障害者施策 ・支援費制度・介護保険の各制度を比較しながら説明された。その中で、ケアマネジ
メントについては自治体からガイドライン策定の要望があること、ケアマネジメント の今後の課題として、エンパワメント・ソーシャルワーク機能の充実や制度としての
位置づけがあげられた。また、障害のニーズは特に多様であり、特別なニーズについ て、その状況と内容を明確にする必要があるとされた。
説明に続く参加者とのディスカッションでは主に次の事項について質問・意見が出 された。
「障害者施策と介護保険の関係を考える際にはアセスメントの問題が重要で、理念的 には類型化のサービスから個別化のサービスに変わっており、支給量を要介護度で段
階的に決めるのはこの流れに反している。公平性の意味するところは等しく分けると いうことではなく、必要なところに必要なだけ使うことではないか。」
「必要なところに必要なサービスを提供するという点では同意するが、より妥当性の 高いシステムとはどういうものか。現在ある地域格差の問題も十分に考慮しなければ
ならない」
「知的障害者の場合は定義がなく、従って認定ができず、手帳制度もできなかった。 介護保険ではそれができるのか。また、苦情解決システムの支援費と介護保険の利用
実態をデータで示して欲しい。」
「知的障害者のニーズについても、他障害と同様に、生活の中でどんなケアが必要か という観点から捉えられると考えている。介護保険では痴呆性高齢者に対して“見守
り”も含めたアセスメントを行うように変わってきている。苦情解決についてのデー タは、支援費についてのデータは現在ないが、介護保険については国保連に寄せられ
たデータがあるので、次回資料を用意する。」
「介護保険の支給限度額を越えてサービスを必要とする人について、どのように対応 するのか。現状の支援費制度で受けているサービス量を担保できるのか。」
「介護保険で全てまかなうのではなく、税によるサービスや医療保険も含め様々な方 策がある。介護保険の話とは別に、どういう介助を必要としている人にどれくらい費
用がかかっているのかという議論が重要になる。」
などのやりとりがなされ、これらの質疑を通じて、ケアマネジメントがもつ問題点、 特別のニードをどのように具体化し財源確保をするのか等の議論がなされた。また、
課題のある両制度を統合する議論よりも第三の方法を模索してはどうかという意見も 出された。
次回は2月26日(木)17時から、今回議論できなかった利用者負担や保険料な どの課題も含め、引き続き支援費と介護保険との関係について検討する予定である。
■障害者8団体と厚生労働省障害福祉部との話し合い第5回(2004年2月27日)の報告について
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを2月27日の午後4時より行った。
前回の厚労省との話し合いでは、介護保険と支援費の関係について、支給限度額や 要介護認定、ケアマネジメントに関する問題が話し合われたことを受けて、そのやり
とりの中で疑問点があるのでさらに議論を深めたいという意見がだされた。 また、滋賀県で開催されたアメニティフォーラムや新聞報道などで厚労省が「全身性
や強度行動障害など特別のニーズがある人に対しては、税財源で上乗せのサービスを 行う」と発言していることが報告され、この点についても議論していくことになっ
た。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と話し合いを 行った。
最初に、特別のニーズに対する上乗せサービスについて意見が交わされた。障害者 団体側からは、
- 介護保険に税財源でサービスを上乗せする仕組みにした場合、生命維持に必要な基 礎部分である介護保険を越えるサービスを市町村が行わない可能性が高い。
- 介護保険が基礎部分になった時に支援費制度はどうなるのか。
- これまでの政策を転換して、基礎部分を市町村が担い、重度障害者などの基礎部分 を超えるサービスは国が責任を持つという考え方はどうか。
- 介護保険の導入の時に、介護保険以外のサービスはあまり増えなかった。障害者を 統合して、介護保険で対応できないサービスを確保できるのか。
などの意見が出された。
これに対して厚労省からは以下のような考えが示された。
- 財源は、税・介護保険・医療保険・自己負担しかないので、介護保険の上乗せを考 えた場合、税で行うことが有力な考え方である。
- 現在の65歳以上と40歳以上の特定疾病の障害者に行っているように介護保険を基礎 にして支援費制度を上乗せで使う方法をとることもできるし、それ以外により良い方
法があるかについても考えている。
- スウェーデンのように市町村が基本的な部分を行って、それを越えるものを国が行 うという考え方はわかるが、国が全額負担する場合、極めて限定された人に限定され
た使い方になり、自由度は狭まるのではないか。
- 介護保険の導入の時は、介護保険本体を大きくしてそれ以外のサービスを増やすと いう視点はなかった。障害者の場合は事情が違って、介護保険以外のサブシステムが
重要だと考えている。
これらのやりとりを受けて、二階建てをとる場合の具体的な仕組みとその将来的な 安全性が担保されないと、地域で重度な障害をもって生活している人の不安は拭えな
いので、もっと判断のための材料が欲しいということを伝えた。
続いて、厚労省よりニーズを顕在化させる仕組みとしての市町村障害者計画の必要 性について資料をもとに説明がなされた。高齢者には、市町村に老人福祉計画、老人
保健計画、介護保険事業計画が義務づけられており、市町村が計画策定を通じてニー ズを把握するよう仕組まれている。市町村障害者計画は現在義務づけされておらず、
計画を策定しても数値目標まで掲げているところは少ない。今後は市町村障害者計画 を義務づけし、市町村障害者計画を積み上げて国の障害者基本計画を作っていくこと
などの必要性について議論がなされた。
また、前回から議論されている特別のニーズへの対応としてどういう介助を必要と している人にどれくらい費用がかかっているのかという論点については、障害者は高
齢者に比べて数が限られており、現在の障害者の統計や支給決定の内容から十分把握 できるのではないかという意見もだされた。
知的障害者の分野からは、グループホームについて支援費では出身地の市町村が支 援費を支給しており、介護保険ではグループホームのある居住地の市町村が被保険者
になっていることの違いに対する懸念も示された。
次回は3月5日(木)17時から、引き続き介護保険と支援費との関係を考えると ともに、障害福祉施策の立場から研究者の北野誠一氏からの意見も伺う予定である。
■障害者8団体と厚生労働省障害福祉部との話し合い第6回(2004年3月4日)の報告について
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを3月4日の午後4時より行った。
今回は研究者の北野誠一氏の話を伺うとともに、前回からの厚労省との話し合いの 中での疑問点についてさらに議論を深めていくこととなった。
また、3月3日に開催された社会保障審議会障害者部会の中でも介護保険と障害者 施策についての議論がなされており、その報告も行われた。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局から 渡辺企画官、宮崎課長補佐の出席のもとで話し合いを行った。
最初に、北野誠一氏から「支援費制度と介護保険制度の展望」とした資料をもとに以 下の話がなされた。
- 支援費と介護保険を語るときに、ケア・介護・介助・支援・パーソナルアシスタン トという言葉を用いるが、人によって言葉のイメージが違っている。それぞれの言葉
の定義をした上で議論しないと内容が深まらない。
- 介護保険法は“介護”の明確な定義がなく、サービスのメニューを列挙することに とどまっている。知的障害者福祉法が“知的障害者”を定義していないのと同様、介
護を定義せずに法律が成立していることが様々な問題を生んでいる。
- 世界障害者問題研究所ではパーソナルアシスタントの定義を「本人が選んだ生活に おいて、通常は本人がする(はずの)ことを、障害があるために他者が直接援助する
こと」としており、この定義は全ての障害者・高齢者の持つニーズに対して普遍的な 定義である。
- “自立”概念はさらに違っており、共通の定義を作る必要がある。「福祉自治体ユ ニット改革への提言」での自立概念は“残存能力の維持・向上”で医療・リハビリ
テーション的な定義である。一方、10年前に出された「高齢者介護・自立支援システ ム研究会報告書」の自立論は当時としては画期的であり、重度の障害を持つ高齢者も
外出し、社会参加し、生活を楽しむことが介護の基本理念とされている。ただ、在宅 での生活のイメージが中心で、障害者のように社会にでていって活動するというビ
ジョンが弱かった。このビジョンをもたないと高齢と障害をあわせたサービス、地域 生活支援保険には結びつかない。
- 今、厚労省では様々な検討会をやっているが全体のビジョンを示すことが重要であ る。生活保護の検討会では、扶養義務規定、他人介護料、住宅扶助の単給、救護施設
の問題がある。障害者者総合福祉法の制定も必要である。医療保険も見直されてお り、介護保険と統合して高齢者医療介護保険の構想もあり、この構想と高齢者と障害者の統合の構想はどのような関係になるのか。
また、権利擁護についても、消費者保護基本法の改正が検討されており、団体訴訟 制度の導入が検討されている。この流れで、障害者差別禁止法も真剣に議論すべきで
ある。知的障害者入所更生施設の指定基準にも地域移行計画の作成が義務付けられ た。これの実効性を担保するためには差別禁止法が重要である。手話通訳などの情報
保障にとっても差別禁止法は重要である。
費用負担で応益負担を求めていくなら、所得保障がセットであり、就労支援を進め ていく必要がある。法定雇用率と差別禁止法は法的に両立できる。
- 介護保険の問題については、要介護認定の仕組みと介護給付額の2点が決定的な問 題である。要介護認定で、痴呆、知的障害者、コミュニケーションの支援をするとし
たら、細かい設定が必要となる。また、要介護認定は施設での介護時間の調査であっ て、施設なら入浴介護は食事介護より時間が短くてすむが、在宅では入浴のほうが時
間がかかる。
- 支給限度額の中でのサービスの選択となると、痴呆専用デイサービスは単価が高く て利用時間がすくなるという質と量がトレードオフになる。
- 要介護度5の認定に、一人暮らしの重度障害者を想定していたら、もっと支給限度 額は高くなっていたはずである。介護保険の守備範囲を明確にして、一人暮らしの重
度障害者をモデルとして想定しないなら、他にどういうシステムを想定するのか示す べきである。
- グループホームの単価を他の国の単価と比較した場合、アメリカではグループホー ムの単価は12通りあり、一番高い単価は100万近くになる。民間のサービスがグルー
プホームをやっているので、単価が低いと契約をしてもらえない。低い単価だとサー ビスの質が落ちて、人権侵害がおこる。
しかし、アメリカ方式にすると、同じ単価(同じ障害)の人ばかりになって、ノー マライゼーションに反する。日本のように、個人ごとに支援費を出すのは世界的にす
ぐれた制度である。グループホームでも一人一人のニーズに応じて、ホームヘルプ、 ガイドヘルプをつけられる日本方式のよさをいかして欲しい。
- ケアマネジメントの問題は、民間の事業所がケアマネジメントをやっており、公正 中立を担保できていない。また、知的障害者、聴覚・視覚障害者、精神障害者、重度
身心障害者の全部をケアマネできる人はいないので、様々なものがあって消費者に選 択をまかせるのがいい。カナダのブリティッシュコロンビア州は幅広いコンサルティ
ングの仕組みをもっており、サービスの自己管理モデルから一部自己決定・自己選択 モデル、専門職への委任モデルまで、幅広い仕組みをもっている。日本の介護保険の
ケアマネジメントは多くある選択肢の一つであり、当事者主導の自立支援マネジメン トの可能性も問われている。
続いて、間課長補佐より、資料に基づき費用負担について、措置制度・精神障害者 ・支援費制度・介護保険を比較しながらの説明があった。
措置制度、支援費制度はサービスにかかる費用の負担は援護の実施者である市町村で あり、市町村に対して国及び都道府県が補助をする仕組みになっている。利用者負担
の範囲は障害者本人と扶養義務者である。負担額は応能負担で費用徴収表によって決 まっていて、限度額がある。
介護保険は保険給付については保険者である市町村であり、保険給付以外が利用者負 担となる仕組み(保険給付が9割であるので、残りの1割が利用者負担)になってい
る。利用者負担の範囲は利用者のみである。負担額は応益負担であり、介護保険の利 用者負担にも限度額がある。
応能負担の仕組みでは扶養義務者からの費用徴収の問題がでてくる。また、サービ スを使っている人と使っていない人との差をどう考えるかも問題である。
高齢者サービスが措置制度であった時には応能負担であり、多くの人は利用者負担 を払っていなかった。介護保険導入時には、それまで使っていた人で生計中心者が住
民税非課税者の場合は、1割の利用者負担を3%、6%と段階的に引き上げる経過措 置を行った。さらに生計中心者が市町村民税世帯非課税者等の場合に、社会福祉法人
が市町村と相談して利用者負担を半分もしくはゼロにでき、その一部を国と都道府県 が補填する仕組みも作った。また、生活保護の介護扶助のみ適用する単給の仕組みも
ある。ストック、フローはないが、生活保護を受けるまででもないという人をどうす るかは課題で、所得保障との話とも絡んでいる。
その話を受けて、障害者団体側と厚労省とで以下の意見交換がなされた。
障害者団体からは
- 北野さんが話された「介護」「自立」の定義や要介護認定、ケアマネジメントの指 摘をどう考えるか。
- 介護保険の利用者負担は本人負担のみと言うが、利用者負担の減免では生計中心者が 非課税という条件があり、扶養義務の考えがでてくる。支援費は扶養義務者の対象に
親が外れたが、介護保険では親元で暮らす人は減額にならない。
- 地域生活移行をどうするかが重要な政策課題であって、親元から、施設から地域へ 具体的にどういう道筋がつくれるのか。
などの意見がだされ、これに対して厚労省からは以下の意見がだされた。
- 「2015年の高齢者介護」の中では痴呆性高齢者のケアを考えて、これからの介 護は生活全体を見ていくとしている。サービス体系、ケアのメニューについも考えて
いかなければならない。若い障害者と高齢者を比較すると社会に対するかかわり方は 違うかもしれないが、高齢者も外出や社会的自立の観点は必要である。
- 要介護認定の仕組みは客観的にニーズを図るものであり、介護保険の大きな成果で ある。その基準は障害者を考える際にはデータをもとに見直す。高齢者介護においても、緊急時の対応、医療ニーズへの対応などの課題があって試行錯誤している。
- ケアマネジメントの課題は認識として持っていて、一人のケアマネージャーがあら ゆる障害のマネジメントを行うのは難しいのではないか。専門家がチームを組んで解
決する体制が重要である。
- 減免には税をあてているので、扶養関係が問われてくる。住民税非課税と生活保護 世帯の間にもいろんなかたがいるので、障害者をいれる場合は低所得者をどう考える
かを議論しなければいけない。
- どの制度かを問わず、地域生活支援を進めていくことは重要である。現在、施設に 入っている人が施設を出る時は、皆さん並々ならない決意をしている。そのきっかけ
は、地域での障害者の仲間と出会いであり、そういった機会をどう作り、また、出た いと思った時のサポートやシステムをどう作っていくか。施設の人が外にでて、地域
の人と交流する仕組みをガイドヘルプやそれ以外の方法も含めて考えないといけな い。
これまで厚労省との6回にわたる討議において双方の意見交換を行ってきたが、今 後も引き続き、週1回のペースで話し合いを行うこととなった。次回は、障害者団体
側で現時点での質問をとりまとめて、それをもとにさらなる議論を続けることとなっ た。次回は3月11日(木)を予定している。
■障害者8団体と厚生労働省障害福祉部との話し合い第7回(2004年3月11日)の報告について
先週に引き続き、障害者8団体の話し合いを3月11日の午後4時より行った。
前日の10日の午前中に障害者8団体の会合を持ち、各団体の検討の状況や厚労省 との話し合いを今後どのように進めていくべきかを意見交換したところ、各団体とも
判断するための必要な情報が不足しているという認識では共通し、それぞれの団体の もつ課題を集約して質問として厚労省に投げかけていくこととなった。この話し合い
を受けて、事務局で「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」「今後の障害者施 策の基本的な方向性に関する質問事項」の2種類の質問書を作り、本日の話し合いで
厚労省に提出することを確認した。
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局から 渡辺企画官の出席のもとで話し合いを行った。
最初に障害者団体側から、「これまで話し合いを続けてきたが、もう少し具体的な 内容が見えてこないと判断をすることができない。障害者8団体の会員だけでなく、
多くの障害者と関係者がこの議論に関心を持っている。8団体で現時点の課題につい て集約して質問書を作成したので、現段階での考えを示していただきたい。」と要望
を述べるとともに、2つの質問書を提出した。
ついで、JDの太田氏より「今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事 項」、DPIの中西氏より「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」についての
内容の説明を行った。
これを受けて厚労省からは、障害者施策の基本的な方向性については、
- サービスの給付を世帯単位から個人単位に変えていくことについては、民法との関 係があって障害者だけ個人単位にするということはすぐにはできないが、方向性とし
ては日常的なサービスを利用する、負担することについては個人単位にじょじょにシ フトしていくのではないか。個別法が変わる中で民法が変わるということもあるだろ
う。
- 障害の定義については、個別の法律についてはその法の目的にあった形で障害を定 義していくことが良いのではないか。これまでのように、障害者手帳にサービスが付
随するのではなく、必要がある人にサービスを給付することが重要だと考える。
- 所得保障については就労施策が重要であり、現在、厚生労働審議官をトップに省内 で検討会を行っている。また、利用料負担についての低所得者対策はしっかりやるべ
きだと思う。無年金問題についても坂口大臣の私案もでて、現在検討している。
- 住宅については所管の省庁と意見交換もしており、福祉のサポートについても明確 にしながら、具体的に政策のイメージを固めていこうと動いている。
- 総合福祉法については、三障害で同じ施策を進めていく中で、もっと具体的な法律 が見えてくるのではないか。特に精神障害者の福祉が課題で、現実的な積み重ねをし
ていくことが必要ではないか。
介護保険と障害者施策の統合に関する質問については、
- 社会保障審議会の介護保険部会では被保険者の問題は4月末に議論する予定であ る。委員から障害者部会での議論について聞きたいという意見もでている。介護保険
も自治体、健康保険、事業者などの様々な関係者がいる。今の段階で個々のサービス をどうするかは決まっていない。現行の15種類のサービスに加えて、「2015年の高齢
者介護」の報告書にもあった痴呆性高齢者へのサービス、小規模・多機能サービスな ども検討する。介護報酬報酬と関係するところが決まるのは2006年になる。
- 理念の問題も、介護保険は「自立支援」がキーワードで始まったが、これからはそ れに加えて「尊厳」をキーワードとしていく。要介護状態から抜け出すことだけでな
く、介護サービスを受けながら日々の生活を過ごすことを考え要介護の状態での尊厳 を支える方向で介護保険を見直していく。高齢と障害の目指すところは共通してい
る。
- 要介護認定についても、客観的なニーズ判定のシステムは必要であるが、その基準 が変わらないかというと、去年も痴呆性高齢者に対応できるように変えている。障害
にあったシステムを実証データをもとに段階的に作っていく。
- 授産については日中活動の場から就労の場まで多様な活動をしている。その中身を 整理して、介護保険だけでなく就労支援施策とも絡めて検討していくことになる。
- ガイドヘルプは重要な制度であり、使いやすさも含めてどのような形が良いのか考 えている。ガイドヘルプだから、社会参加だから介護保険に入らないということでは
ない。
- 手話通訳については、通訳者の人材がいないという声もいただいていて、養成の問 題とも関係している。
- 精神障害者の医療と福祉の範囲については、今の精神障害者施策は、本来は福祉で 支えるところまで医療で支えており、現在の精神医療の一部が介護保険に移ることも
あるかもしれない。精神障害者のサービスの在り方を考え、地域に戻るためのしか け、サービス体系を含めて見直しを図る。 ・補装具や日常生活用具については議論が十分ではないが、補装具はそのかた個人に
あうもので、介護保険は標準的なものをレンタルしている。現状でも個々人にあわせ たものが必要な場合は補装具をだしている。
- 団塊の世代が高齢者になってくると、高齢者も障害者と同じように権利として主張 するようになる。今の障害者サービスのノウハウも高齢者に必要となり、サポートの
レベルも変えていかないといけない。障害者の現場の実践の中で磨かれてきたものが 高齢者のケアにいきると思う。
などの意見がだされた。
今回議論できていない点も多くあり次回も質問書の事項について議論するととも に、さらに自立生活センターと高齢者生活協同組合とで行った共同調査の結果から障
害者と高齢者のサービス利用の違いについても議論することとなった。
平成16年3月11日
厚生労働省 障害保健福祉部長
塩田幸雄 様
今後の障害者施策の基本的な方向性に関する質問事項
平素より障害者福祉の向上にご尽力いただき感謝申し上げます。
ご承知のとおり、2000年にわが国の社会福祉制度は大きな転換点を迎えました。社会福祉基礎構造改革のもと、それまでの措置制度から「契約」による福祉サービスを提供して、提供者と利用者の対等な関係を構築し、利用者主体の制度を作るという、方向性の大きな転換がはかられました。その制度上の仕掛けとして「支援費制度」が今年度より施行され、様々な改善すべき点はあるものの、制度の利用当事者からは高く評価されています。
しかし、昨年末ごろより、制度の基礎的な理念の問題を抜きにした財政的な論議から、障害者施策と介護保険の統合が言われ始め、最近ではマスコミ等でも大きく取り上げられています。
私たちはこの問題に関連して、厚生労働省側と様々な意見交換の場を持ってきましたが、話の中身が介護保険統合問題に終始し、施策を支える基礎的な理念や展望が全く見えてきていません。介護保険制度が障害者の地域生活や社会参加を保障するものとなりうるのかという点に関して大きな疑念を持っており、財政論のみの理念なき統合の議論をみると、政府の障害者施策の方向性について非常に危惧せざるを得ません。
こうした問題意識から、障害者施策の基本的な課題について以下のとおり要望いたしますので、できるかぎり早急にご回答下さいますようお願いいたします。
記
1. 障害者政策の給付単位について、障害者の自立した地域生活を推進するために、世帯単位から個人単位に変更すること。
2. 障害の定義・認定のあり方については、いわゆる三障害だけではなく、あらゆる障害を包括できるものにし、日常生活や社会生活の支障の度合いをきちんと反映できるものとすること
3. 憲法に保障された基本的人権を実質的に保障するため、障害者の年金政策など、所得保障をきちんと行うこと。特に無年金障害者をなくすための施策を早急に行うこと
4. 脱施設化を進め、地域生活を支援していくため、公営住宅の整備、グループホームなどの整備、家賃補助の制度化、バリアフリー化に向けた改造施策などの多様な住宅政策をとること
5. わが国における障害者の劣悪な就労状況を改善するため、多様な就労の場を用意し、ひとりひとりに合った就労支援システム、社会参加システムを構築すること
6. 国の障害者施策の土台となる包括的な社会サービス法、あるいは総合的な障害者福祉法などの制定に向けた研究に着手すること
要 望 団 体 |
|
社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 |
会長 兒玉 明 |
日本障害者協議会 |
代表 河端 静子 |
特定非営利活動法人 DPI日本会議 |
議長 山田 昭義 |
社会福祉法人 日本盲人会連合 |
会長 笹川 吉彦 |
財団法人 全日本聾唖連盟 |
理事長 安藤 豊喜 |
社団法人 全国脊髄損傷者連合会 |
理事長 妻屋 明 |
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 |
理事長 藤原 治 |
財団法人 全国精神障害者家族会連合会 |
理事長 小松 正泰 |
|
|
平成16年3月11日
厚生労働省 障害保健福祉部長
塩田幸雄 様
介護保険と障害者施策の統合に関する質問
日頃より障害者福祉の向上にご尽力いただき感謝申し上げます。
さて、介護保険と障害者施策の統合の是非について、1月29日から6回にわたる検討の場を障害者8団体と厚生労働省との間で持ってきました。しかしながら、まだなお多くの課題があり、さらなる検討が必要であると考えおります。また、私たち障害者8団体の会員のみならず、多くの障害者及びその関係者もこの問題について大きな関心を持っています。つきましてはこれまでの検討の内容を踏まえ以下の質問をさせていただきますので、現段階におけるお考えを早急に示していただけますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
記
(全体施策との関係)
1. 介護保険を障害者施策に適用する場合、現行の全ての障害施策について、介護保険の対象になるもの、支援費の対象となるもの、措置の対応となるもの、その他の各種施策での対応になるものがあると考えられるが、その全体像についてどう考えられているのか。
一例としてあげれば、
・支援費の居宅サービス・施設サービス
・通所授産施設・小規模通所授産施設・小規模作業所、就労支援施策
・ガイドヘルプ(移動介護)
・手話通訳
・日常生活用具、補装具
・更生医療
・精神障害者の福祉と医療との範囲
など、現行の全ての障害者施策について示していただきたい。
2.介護保険を障害者施策に適用した場合、支援費制度はどうなるのか。
3.障害者の地域生活支援システムという観点から、介護サービスを底上げしていく展望があるのかどうか
4.介護保険(メインシステム)及び介護保険以外の施策(サブシステム)の組み合わせについて、高齢者施策の現状では介護保険以外のサブシステムが十分機能していない。介護保険を障害者に適用した場合、サブシステムは高齢者施策以上に重要になってくるが、これについてどのように考えられているのか。
(理念について)
5.現状の障害者施策と介護保険において、「自立」「社会参加」などの概念が違うと思われるが、これについてどのように考えられているのか。
6.介護保険を障害者施策に適用した場合、今後の施設からの地域生活移行についてどのような方向性・展望をもたれているのか。
(利用者負担について)
7.障害者を統合する場合に保険料や利用者負担の低所得者に対する方策について、現行より新たなものを考えているのか。
(申請・契約などの利用援助について)
8.視覚障害者・聴覚障害者については、支援費においても手続き支援、コミュニケーション支援が不十分であり、申請や事業者との契約ができないためにサービスを利用しづらい状況がある。現行の介護保険には、手続き支援、コミュニケーション支援の点でさらに不安があり、これついてどのような対応を考えられているのか。
(要介護認定について)
9.介護保険の79項目のアセスメントでは、全身性障害・知的障害・精神障害・視覚障害者・聴覚障害者・言語障害等、多様な障害のアセスメントを行う際に十分ではないと思われるが、これについてどう考えられているのか。
また、障害者にとって重要な社会参加のニーズのアセスメントについてどう考えられているのか。
(ケアマネジメントについて)
10.現行の障害者ケアマネジメントと介護保険の居宅介護支援では理念・手法・従業者の養成などに多くの違いがあるが、これをどのように考えられているのか。
11.サービスがケアプラン通りに行われる介護保険に比べ、支援費のサービス利用は比較的自由度が高くなっているが、これについてはどう考えられているのか。
(支給限度額について)
12.介護保険の支給限度額ではサービスが不足する障害者がでてくるが、この対応として具体的にどのような方策が講じられるのか。
税による二階建ての仕組みが検討されているという報道もあるが、税による二階建ての仕組みをとる場合、税部分の財政安定化を図るために具体的にどのような方策が講じられるか。
13. 要介護認定が仮に3ないしは4の場合であっても、税による二階建てサービスが展開し得るのかどうか
(ホームヘルプサービスについて)
14.介護保険ホームヘルプは本人への支援のみに限定されるため家事援助の不適正事例が定められているが、障害ホームヘルプでは障害者が自立して生活するための援助が目的のため子育て支援や家族も含めた家事援助も認められている。これについてはどう考えられているのか。
15.視覚障害者の透析利用者の身体介護を伴うガイドヘルプについて、介護保険の中でどう対応するのか。
16.現行では精神障害者のホームヘルプサービスの認定に医者がかかわっているが、介護保険ではどうなるのか。
17.介護保険ではホームヘルパー資格3級以上を必要とするが、支援費では日常生活支援、ガイドヘルパー(視覚障害・全身性障害・知的障害)の障害独自の資格制度があり、これについてはどう考えられているのか。
(グループホームについて)
18.グループホームについて支援費では出身地の市町村が支援費を支給しており、介護保険ではグループホームのある居住地の市町村が被保険者になっていることの違いがあるが、これについてはどう考えられているのか。
19.介護保険のグループホームは他の居宅サービスとの併給ができないが、支援費のグループホームはホームヘルプ、ガイドヘルプの併給ができている。これについてはどう考えられているのか。
(給付方法)
20.給付方法についてダイレクトペイメントの導入の意思があるか回答を要求したい。
要 望 団 体 |
|
社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 |
会長 兒玉 明 |
日本障害者協議会 |
代表 河端 静子 |
特定非営利活動法人 DPI日本会議 |
議長 山田 昭義 |
社会福祉法人 日本盲人会連合 |
会長 笹川 吉彦 |
財団法人 全日本聾唖連盟 |
理事長 安藤 豊喜 |
社団法人 全国脊髄損傷者連合会 |
理事長 妻屋 明 |
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 |
理事長 藤原 治 |
財団法人 全国精神障害者家族会連合会 |
理事長 小松 正泰 |
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|
■障害者8団体と厚生労働省障害福祉部との話し合い第8回(2004年3月18日)の報告について
障害者8団体と厚労省の勉強会報告(3月18日開催) 2004/03/26
午後5時からは、村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と、老健局か ら渡辺企画官の出席のもとで話し合いを行った。
前回、提出した「介護保険と障害者施策の統合に関する質問」に基づき、障害者 団体側と厚労省側とでやりとりをする形で進められた。
「障害者を統合する場合に保険料や利用者負担の低所得者に対する方策について、 現行より新たなものを考えているのか」
「介護保険の見直しの中で、利用者負担について、充実させるということは言われ ている。具体的な案にはなっていないが、課題として考えている。現行の保険料設定は本
人や世帯の所得の状況に応じて5段階になっている。中でも「住民税非課税世帯」を対象 とした第2段階は層が広く、この中でより低所得の層に対して何か方策がとれないか検討
している。しかし、住民税非課税というくくりの中で、所得の低い層を補足するのは事務 的に難しいという課題もある。介護保険の制度外にも、生活保護の単給や社会福祉法人が
減免してそれに補助する仕組みを作っている。これをもっと活用できないか。」
「視覚障害者・聴覚障害者については、支援費においても手続き支援、コミュニ ケーション支援が不十分であり、申請や事業者との契約ができないためにサービスを利用
しづらい状況がある。現行の介護保険には、手続き支援、コミュニケーション支援の点で さらに不安があり、これついてどのような対応を考えられているのか。」
「視覚・聴覚障害者の手続き支援、コミュニケーション支援は措置から移行した際 の課題であり、支援費・介護保険の両制度とも十分とはいえない。相談支援の在り方、手
話通訳の人材養成などやるべき課題が多い。」
「介護保険の79項目のアセスメントでは、全身性障害・知的障害・精神障害・視覚 障害者・聴覚障害者・言語障害等、多様な障害のアセスメントを行う際に十分ではないと
思われるが、これについてどう考えられているのか。また、障害者にとって重要な社会参 加のニーズのアセスメントについてどう考えられているのか。」
「要介護認定のプロセスは必要だが、基準は見直しはしていく。社会参加のニーズ は高齢者にとっても必要で、個別給付、事業仕立てなどどういう形で介護保険でやるかは
まだ検討中である。それによってアセスメントの方法も変わってくる。」
「現行の障害者ケアマネジメントと介護保険の居宅介護支援では理念・手法・従業 者の養成などに多くの違いがあるが、これをどのように考えられているのか。」
「ケアマネジメントは現行の介護保険でも全て上手くいっているわけでない。介護 保険のサービス以外のソーシャル的なマネジメントも考えないといけない。障害者は介護
だけでなく、住まい、雇用の問題も含めてマネジメントが必要である。高齢者も総合的に 考えており、障害と同じである。ケアマネージャーの人材の養成も課題である。」
「サービスがケアプラン通りに行われる介護保険に比べ、支援費のサービス利用は 比較的自由度が高くなっているが、これについてはどう考えられているのか。」
「ケアプランの問題は支援費は自由度が高いというが、介護保険のケアプランも事 情によって変更できる。事業者やケアマネに連絡して、月の最初と終わりとではケアプラ
ンの変更が可能である。」
「介護保険の支給限度額ではサービスが不足する障害者がでてくるが、この対応と して具体的にどのような方策が講じられるのか。税による二階建ての仕組みが検討されて
いるという報道もあるが、税による二階建ての仕組みをとる場合、税部分の財政安定化を 図るために具体的にどのような方策が講じられるか。また、要介護認定が仮に3ないしは
4の場合であっても、税による二階建てサービスが展開し得るのかどうか」
「支給限度額の問題を障害者団体が懸念していることは十分理解している。どれだ けのニーズがどのくらいあるのかを、データの積み上げと範囲の明確化の議論していかな
ければならない。必要なサービスを介護保険と他の財源との組み合わせでカバーすること になる。要介護認定3、4でさらにサービスが必要な場合は、まずアセスメントの仕組み
が適切かどうかを考えないといけない。」
「介護保険ホームヘルプは本人への支援のみに限定されるため家事援助の不適正事 例が定められているが、障害ホームヘルプでは障害者が自立して生活するための援助が目
的のため子育て支援や家族も含めた家事援助も認められている。」
「介護保険の家事援助の適正化については誤解があって、生活援助は高齢者自身が 生活する際にできないことを補うものであり、高齢者と一緒に食事を作るような行為は生
活援助として必要である。問題になっているのは、高齢者と接触がなく単なる家事代行的 なサービスになっていないかということである。」
「視覚障害者の透析利用者の身体介護を伴うガイドヘルプについて、介護保険の中 でどう対応するのか。」
「視覚障害の身体介護の伴うガイドヘルプについて、現行の介護保険でも身体介護 が必要であれば、乗降介助やホームヘルプの身体介護で通院時の介護を行っている。」
「現行では精神障害者のホームヘルプサービスの認定に医者がかかわっているが、 介護保険ではどうなるのか。」
「現行では精神障害者のホームヘルプは医者の必要という判断がいる。介護保険は そういう手続きは無く、要介護認定の時に医者の意見書はあるが、個々のサービスを使う
ときに医者が意見をいうということにはならないだろう。」
「介護保険ではホームヘルパー資格3級以上を必要とするが、支援費では日常生活 支援、ガイドヘルパー(視覚障害・全身性障害・知的障害)の障害独自の資格制度があ
り、これについてはどう考えられているのか。」
「障害独自の資格制度については、日常 生活支援やガイドヘルプを介護保険の中でどう位置づけるのか。ホームヘルプにするのか 別の事業にするのか、その位置づけによって変わってくる。」
「グループホームについて支援費では出身地の市町村が支援費を支給しており、介 護保険ではグループホームのある居住地の市町村が被保険者になっていることの違いがあ
る。 また、介護保険のグループホームは他の居宅サービスとの併給ができないが、支 援費のグループホームはホームヘルプ、ガイドヘルプの併給ができている。これについて
はどう考えられているのか。」
「支援費の際には、特定の地域でグループホームが集中すると自治体が大変になる ということで居住地にした。知的障害者、精神障害者のグループホームは住まいの場であ
り、本来はそこの住民ということになるが、まだグループホームの整備が限られている状 況もある。住所地特例をつくるかどうかは自治体の意見もよくきいて、グループホームの
整備をしていく中で検討する。 高齢者のグループホームと知的障害者のグループホームは性格が違っていて、高 齢者のグループホームは全てのサービスがセットになっている。知的障害者のグループ
ホームは住まいであり、そこにヘルパーがきたり、外出のガイドヘルプがあったり、施策 として違っている。今後のグループホームについて、今のような住まいとしての考え方で
いくのか、もっとパッケージになったものが必要なのかは検討していきたい。」
「給付方法についてダイレクトペイメントの導入の意思があるか。」
「ダイレクトペイメントを直接現金を渡すこととするなら、その使途や透明性につ いて議論していかないといけない。」
「支援費の支給決定の勘案事項には、本人がどういう生活をしたいかの意向が含ま れている。今の介護保険のアセスメントは本人の生き方がどう反映されるのか。ひとりひ
とりの生き方がどう保障されているのか。」
「現在の勘案事項でも、自治体は苦しんでいる。本当にいいのかどうか自信がない のが現実で、数値化すればいいという乱暴な話ではないが、外出の部分は課題としてあ
る。何でも要介護認定でいいのかどうか、ガイドヘルプについては、使いやすさを含め て考えていく必要がある。」
また、障害者団体と厚労省の協議が始まって2ヶ月がたち、今後のスケジュール については「社保審・障害者部会の議論が4月28日までに一巡する。介護保険部会でも
被保険者の範囲が議題になる。審議会でなされた議論についても紹介したい。障害者部会 では5月以降、障害者団体のヒアリングもして、どういう問題があるのか議論する。審議
会を開催しながら、障害者団体の意見も聞いていきたい。」ということであった。
また、障害者8団体で4月30日に公開の場でシンポジウムを行い、厚労省から も出席いただいて、障害者施策と介護保険の統合について広く議論を行う場を設けること
についても決定された。
■公明党厚生労働部会 ヒアリングについて(2004年2月24日)
公明党厚生労働部会より、障害者保健福祉施策に関する要望のヒアリングの案内を いただき、2月24日に衆議院第二会館にて障害者8団体で参加した。
当日は公明党からは福島豊衆議院議員、赤羽一嘉衆議院議員、古屋範子衆議院議 員、山下栄一参議院議員が出席され、日本障害者団体連合会、全日本手をつなぐ育成
会、全国脊髄損傷者連合会、日本障害者協議会、DPI日本会議、全国精神障害者家 族会連合会、ピープルファーストが参加し、各団体がそれぞれ要望書を配布するとと
もに、意見を述べた。
その中では、「障害者基本法の改正」、「障害者差別禁止法の制定」、「小規模通 所授産施設の補助金1割カット問題」「精神障害者の法定雇用率の対象実施」など障
害者施策全般に関する要望がなされた。
その中でも、中心となったのは介護保険と障害者施策に関する問題であり、各参加 者から以下のような意見が述べられた。
「新聞では2階建ての案が報道された。長時間介護の問題は介護保険では難しい。ど ういうふうにクリアしていただけるのか。慎重を期して欲しい。
」
「介護保険のことについて大きな問題となっている。毎週、厚労省と障害者団体が勉 強会をやっている。会として機関決定をしないといけないが、介護保険になった場
合、障害者施策とどういう絵がかけるのか。全体像をきちんと示してもらった上で考 えたい。」
「介護保険の統合に対しては不安をもっている人が多い。障害者計画に盛り込まれた 地域移行をどう着実に行えるか。また、重度の障害者が地域の中で生きられるような
仕組みづくりができないと、会員も納得できないと思う。その点を踏まえてお願いし たい。」
「今、厚労省から統合をしたいという考えが示されて、障害者8団体とで話し合いを している。すんなり統合にはいけない大きな課題があると認識としている。課題が明
らかになって、多くの障害者が議論して決まっていくのならいいが、今は具体的な内 容が明らかになっていない。
厚労省は3月までに方向を決めるということだが、このような20、30年後の障害者 の生活に大きな影響を与える決定が拙速に決められることに危機感をもっている。厚
労省も一定の考えを持っているのだろうが、私たちにはまだ十分に明らかにされてい ない。地域で自立した生活をするためのサービスを確立していく。制度見直しに関し
ては6月という短い期間ではなく、十分納得できる議論をしていきたい。
また、要介護度認定による支給限度の問題について、2階建てをとっていくという 報道があったが、今回の資料で説明しているように2階建ては非常に難しいと考えて
いる。2階建てということでなく、介護保険の認定じたいに問題がある。支援費制度 で自立して生活を組み立てている障害者が施設や親元にもどるような事態はあっては
ならない。」
「支援費をよしとしているわけではないが、介護保険がいいかというと、介護保険の 問題も大きい。この問題で、支部に意見を徴収しているが、現場からは反対のFAX
も寄せられている。
財源の問題が大きくいわれているが、現在、5兆円に介護保険が2025年には20兆円 になる。高齢者の介護保険で4倍になる。これに、障害者を加えてやっていけるの
か。見切り発車でなく、国民的な議論をふまえてやるべきものであり、障害者団体の 意見を聞いて進めて欲しいというのが切実なお願いである。」
「精神障害者のサービスは制度に載っていない。現在、介護保険に対して精神障害者 の問題を考えているところで、他の団体が言われたように大きな問題もある。慎重な
る議論の上、決定をお願いしたい。」
「知的障害者は働いても1ヶ月3〜5万の収入にしかならない。介護保険になった ら、お金がないのに、また保険料・自己負担をとるのはやめて欲しい。絶対に介護保
険にならないようにして欲しいと思っている。」
これを受けて、福島豊委員より、「介護保険との統合については、様々なご指摘を いただき、これを踏まえる必要がある。介護保険制度の大きな見直しとして来年は一
つの節目で、時間的な制約もある。どういうことで結論をだすのが、障害者施策に とって前進になるのか。納得いただくためにはプロセスが必要で、関係者の合意を踏
まえないといけない。統合が前提で言っているのではないし、十分な議論をし、合意 をえる。どういう道があるのか、せいいっぱい考えていきたい。」との考えが示され
た。
2004/02/19
JD e-Letter
日本障害者協議会
〒162-0052
東京都新宿区戸山1-22-1
Tel.03-5287-2346
Fax.03-5287-2347
http://www.jdnet.gr.jp/
「支援費の介護保険への統合に対するJDとしての基本的な立場(案)」が理事会から出されました。
支援費の介護保険への統合に関して、e-letterでも毎回お知らせしている通り、厚生労働省と障害者団体との間で交渉が頻繁に行われています。
JDとしてもこの問題に対する立場をどうするか、慎重な議論と対応が必要になっています。さる2月17日の理事会で下記のような原案が出されました。これは案として提示し、会員の意見を入れてまとめていくことになっています。また、関連した学習会(勉強会)も3月20日(土)に開催予定です。
支援費の介護保険への統合に対する日本障害者協議会としての基本的な立場(案)
2004年2月17日 日本障害者協議会理事会
支援費の予想を上回る伸びによる、今年度の財源不足や小泉構造改革による三位一体の改革等の影響もあり、厚労省障害保健福祉部は主要な障害8団体に対し、支援費の介護保険への統合について議論を求めてきた。
私たちは、基本的には支援費制度が始まって1年も経っていないうちに、このような提案がされること自体、筋が通らないことと考える。
障害者基本計画などの理念に沿った、地域生活支援重視の施策としての支援費制度の更なる充実と、そして検証があってはじめて次の段階に移行できるものと考える。
また、支援費制度を介護保険に統合することは、従来の障害者施策の考え方そのものの変更に繋がる構造的なものであると捉える。そうであるならば、障害者施策の基本的な課題であった所得保障や扶養義務の見直し、総合的な障害者福祉法の制定などにみられるように、障害者の個としての独立と人権保障の観点からの、施策の抜本的な改革が平行して行われるべき性質のものと考える。
基本的には上記の方針の下で対していくが、一方現実問題として三位一体の改革による国の補助金削減の動きから、支援費をこのままの形で継続できるかどうかについては、厳しく受け止めていく必要もある。
本協議会としては全体の動きを注視し、極力障害者施策を大きく後退させないような慎重な判断が求められている。そしてこの機会を捉え介護制度や障害者施策を大きく前進させていく粘りと覚悟をもった運動が求められている。
本協議会としては現時点において以下の立場で臨んでいく。
- 問題を支援費制度の介護保険への統合に矮小化させることなく、所得保障や扶養義務の見直し(給付単位の見直し)をはじめ、雇用就労環境の改善、住宅の整備等、障害者施策全体の見直しを強く要求する。
- 統合問題については、会員の意思を十分に聞き、政策委員会における論議を参考にしながら、全体的な視野に立って、方針の結論を出す。
- その際、重要なポイントとして以下のことが指摘できる。
- (1) 仮に介護保険への統合が現実問題となったとき、長時間介護が 必要な人に対する施策がどういう形で位置づけられていくのか。
- (2) サービスに対する自己負担(現行介護保険1割)をどうしていくのか。
-
- (3) 要介護認定はどのような考え方に基づき、誰が行うのか。
-
- (4) 介護を必要とする障害者の全体的な底上げに通じていくのか。
-
- (5) ダイレクト・ペイメントなど新しいシステムの導入があるのか。
-
- (6) 若年障害者等と高齢者等では本当にニーズが異なるのか。
-
- (7) 支援費制度継続では本当に制度が維持できないのか。
- 本来的に本協議会はできれば税を財源とするサービスが好ましいとは考えるが、税であるか介護保険であるかに関わりなく、必要なサービスが必要とされる人に地域社会の中で展開される必要があるとも考える。また、それは年齢によって区別されることなく同一の制度の構築が求められているという認識をもつ。そうかといって現状の介護保険に丸ごと統合することに短絡的に賛成することなく、ひとつひとつの事柄に対する理論的整理が求められている。
JD事務局では、理事会や各委員会(小委員会、プロジェクト)の活動状況を中心に、随時「JD e-Letter」として正会員、理事、各委員会委員の皆さまに情報提供をしています。ご意見、ご感想をお待ちしています。
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2004/03/05
JD e-Letter
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2月27日に厚生労働省と障害者8団体の勉強会が開催されました。
障害者8団体と厚生労働省障害福祉部との話し合いの報告
(2004年2月27日)
村木課長、間課長補佐をはじめとする障害福祉部と話し合いを行った。
最初に、特別のニーズに対する上乗せサービスについて意見が交わされた。障害者団体側からは、 ・介護保険に税財源でサービスを上乗せする仕組みにした場合、生命維持に必要な基礎部分である介護保険を越えるサービスを市町村が行わない可能性が高い。
・介護保険が基礎部分になった時に支援費制度はどうなるのか。
・これまでの政策を転換して、基礎部分を市町村が担い、重度障害者などの基礎部分を超えるサービスは国が責任を持つという考え方はどうか。
・介護保険の導入の時に、介護保険以外のサービスはあまり増えなかった。障害者を統合して、介護保険で対応できないサービスを確保できるのか。
などの意見が出された。
これに対して厚労省からは以下のような考えが示された。
厚労省からは、
・財源は、税・介護保険・医療保険・自己負担しかないので、介護保険の上乗せを考えた場合、税で行うことが有力な考え方である。
・現在の65歳以上と40歳以上の特定疾病の障害者に行っているように介護保険を基礎にして支援費制度を上乗せで使う方法をとることもできるし、それ以外により良い方法があるかについても考えている。
・スウェーデンのように市町村が基本的な部分を行って、それを越えるものを国が行うという考え方はわかるが、国が全額負担する場合、極めて限定された人に限定された使い方になり、自由度は狭まるのではないか。
・介護保険の導入の時は、介護保険本体を大きくしてそれ以外のサービスを増やすという視点はなかった。障害者の場合は事情が違って、介護保険以外のサブシステムが重要だと考えている。
これらのやりとりを受けて、二階建てをとる場合の具体的な仕組みとその将来的な安全性が担保されないと、地域で重度な障害をもって生活している人の不安は拭えないので、もっと判断のための材料が欲しいということを伝えた。
続いて、厚労省よりニーズを顕在化させる仕組みとしての市町村障害者計画の必要性について資料をもとに説明がなされた。高齢者には、市町村に老人福祉計画、老人保健計画、介護保険事業計画が義務づけられており、市町村が計画策定を通じてニーズを把握するよう仕組まれている。市町村障害者計画は現在義務づけされておらず、計画を策定しても数値目標まで掲げているところは少ない。今後は市町村障害者計画を義務づけし、市町村障害者計画を積み上げて国の障害者基本計画を作っていくことなどの必要性について議論がなされた。
また、前回から議論されている特別のニーズへの対応としてどういう介助を必要としている人にどれくらい費用がかかっているのかという論点については、障害者は高齢者に比べて数が限られており、現在の障害者の統計や支給決定の内容から十分把握できるのではないかという意見もだされた。
知的障害者の分野からは、グループホームについて支援費では出身地の市町村が支援費を支給しており、介護保険ではグループホームのある居住地の市町村が被保険者になっていることの違いに対する懸念も示された。
次回は3月5日(木)17時から、引き続き介護保険と支援費との関係を考えるとともに、障害福祉施策の立場から研究者の北野誠一氏からの意見も伺う予定である。
JD事務局では、理事会や各委員会(小委員会、プロジェクト)の活動状況を中心に、随時「JD e-Letter」として正会員、理事、各委員会委員の皆さまに情報提供をしています。ご意見、ご感想をお待ちしています。
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障害連事務局FAXレター
NO.68 2004.2 19(木)
千代田区神田錦町3−11−8
武蔵野ビル5階障害連事務局
TEL03-5282-0016 Fax03-5282-0017
編集人 太田修平
第4回の介護保険勉強会が行われる
厚労省障害保健福祉部と障害8団体(日身連、JD、DPI、全日ろう連、日盲連、脊損連合、育成会、全家連)との介護保険に関する勉強会の4回目が、2月19日夕方厚労省で行われた。この日も、老健局が同席した。
この日は、障害保健福祉部の企画課より、障害者保健福祉施策と高齢者保険福祉施策の制度上の比較を中心に説明があり、質疑応答となった。
説明の中で、「介護保険は市町村を単位とするサービスとなっており、より身近なところで支えあうシステムとなっている」とした。そして、「市町村の介護認定審査会が要介護認定を行い、ある程度客観的判定が行われているのではないか」とした。
「支援費制度にしろ、介護保険にしろ、今後の障害者介護施策については、社会的合意を得る上でも客観性をもった基準としなければないのではないか」とも述べた。
さらに「検討会の課題ともなっているが、今後、長時間介護が必要な人たちについては、それはどういう人たちで、どういうサービスが必要であるか、ということを明らかにすることが求められているのではないか」とした。
団体からは「客観的基準ということで、上限が設定されることがあれば、地域での自立生活が困難になってしまう人が多くなってしまう」という発言や、「介護保険になったとき、
施設から地域に新しく出る障害者にきちんとしたサービスが保障されるか疑問である。かえって今の介護保険では要介護5の半数以上が施設で暮らしている実態をみたときに、障害の重い人たちは、施設に逆戻りせざるを得ない状況になってしまうのではないか」という疑問の声が次々と出された。
障害連事務局FAXレター
NO71 2004.2 27(金)
千代田区神田錦町3−11−8
武蔵野ビル5階障害連事務局
TEL03-5282-0016 Fax03-5282-0017
編集人 太田修平
厚労省との第5回勉強会から
2月27日(金)、厚労省障害保健福祉部と障害者主要8団体(日身連、JD、DPI、日盲連、全日ろう連、脊損連合、育成会、全家連)との介護保険に関する5回目の勉強会が行われた。
この日は、仮に介護保険に移行した場合での、長時間介護を必要とする人たちの仕組みのあり方について活発な議論が展開された。
焦点は介護保険制度においても支援費制度という違う制度を残し、2階建てなり別建てなりが現実に可能であるかということであった。この点をめぐって様々な意見が出し合われた。
また、今後の施策のあり方として「ニーズを把握するためのきちんとした調査が必要」とする意見や、「実定法としての身体障害者福祉法の改正が必要」や、「就労や住宅施策も合わせた検討が必要」などの指摘もあった。
時間がなく次回以降に持ち越されたが、市町村計画の障害者のものと、高齢者のものと比較も少し行われ、「高齢者の計画の方が義務化されている部分が多く、特に数量的なものが義務化されている」と企画課は報告した。
次回は3月4日(木)、障害者施策に精通している立場としての北野誠一桃山学院大学教授を招くこととなった。さらに制度の比較として「計画」について今日の続きを行うことになっている。
障害連事務局FAXレター
NO72 2004.3 4(木)
千代田区神田錦町3−11−8
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編集人 太田修平
厚労省との勉強会、第6回目を迎える
〜北野誠一氏を迎えて〜
この日は北野誠一氏(定籐記念福祉研究会会長)をゲストに、「支援費制度と介護保険制度の展望」を中心に話し合われた。
北野氏はまず「介護・介助・支援などという用語が違う意味として使われている」ことを問題にし、「共通定義をつくる必要がある」と述べた。
また介護保険で想定されている介護が、「食事・トイレ・入浴などADLの支援が中心なのに対し、1994年の高齢者介護・自立支援システム研の報告では、"地域社会の一員として様々な活動に参加する"ことの支援を含めた画期的な広い概念が提起されていた」とした。
さらに「障害者の地域生活支援保障を考えていくには、現在進行中の様々な福祉施策やその他の施策の見直しについても視野にいれ、根本問題を考えていく必要がある」と述べた。その中で「特に障害者差別禁止法の制定の動きと就労・所得保障を注視していく必要がある」とも述べた。
続いて現行の介護保険の問題点を指摘し、"要介護認定の仕組み"などを挙げ、「一人暮らしの重度障害者を想定しないモデルであった」とした。「ドイツの介護保険がそうであるように、日本も介護保険では基礎的な部分しか保障をできないことを明記し、重度の障害者に対しては自費もしくは社会扶助で対応するということを明確にした方がよい」とした。
カナダのブリティッシュコロンビア州では、「地域介助システムは自己管理モデルから第三者への委任モデルまで5通りあり、その人に合ったシステムとなっている」とし、「日本でも検討課題である」と語った。
北野氏の話の後、障害保健福祉部企画課から前回の継続として、措置制度・精神障害者・支援費制度・介護保険の4つの制度における費用負担の制度比較の説明がされた。最大の違いとして「支援費制度は応能負担、介護保険は応益負担である」とし、「それによって支援費制度には世帯単位として扶養義務の問題がついてまわっている」とした。
次回からは介護保険統合に関して団体として統一した質問や指摘を出し(場合によっては個別のものも含めて)それらをもとに討論をしていこうということとなった。また、多くの障害者関係者が情報を共有しきれていないことも問題とされ、それに対して何らかの対応が必要ということも共通認識となった。
障害連事務局FAXレター
NO73 2004.3 11(木)
千代田区神田錦町3−11−8
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編集人 太田修平
7回目の勉強会から
3月11日(木)介護保険に関する厚労省障害保健福祉部と8団体との勉強会の7回目があった。
団体側から文書で、障害者福祉全般にわたる構造的な問題と、介護サービスを中心とする具体的な問題の2点にわたって質問をだした。
しかし、残念ながら具体的な回答はほとんどなく、次回このことについて意見交換を継続して行う予定としている。
最初の質問書については、障害保健福祉部側もある程度共有できるとしたが、目標や方法については明らかにしなかった。
老健局のメンバーからは2番目の質問書に関連し、一人暮らしの高齢者が増えている中、「介護保険サービス自体の内容も見直そうとしている。自立や尊厳にふさわしいサービスを模索している」との発言があった。
#以下要望書
障害連事務局FAXレター
NO74 2004.3 18(木)
千代田区神田錦町3−11−8
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編集人 太田修平
障害保健福祉部との勉強会(第8回)
先週に引き続き、8団体(日身連、JD、DPI、日盲連、全日ろう連、脊損連合、育成会、全家連)が共同で出した質問書に対する回答と、それに基づく意見交換となった。
第8回目の勉強会は、老健局のメンバー同席のもと、3月18日(木)の夕方行なわれた。
低所得者に対する利用者負担の配慮のあり方について、「障害者が介護保険に入るとしても、一割負担の原則には変わりはない」としながらも、何らかの措置は必要となるだろうと障害保健福祉部と老健局のメンバーは述べた。その内容については「これからの問題」とした。また、「扶養義務の範囲については見直していくことも必要」とした。
団体側は「やはり所得保障が重要である」や、「利用者負担ができないから十分な介護を受けられないことがないように」などと発言をした。
障害保健福祉部は「社会参加のための介護が一定必要である」とした。そのための方法論として、"介護保険で行うのか""別立てで個別給付を行うのか""事業費方式で行うのか"
色々と考え方はあるとした。
「介護保険との統合について、対等合併か吸収合併なのか」という質問が再三だされたが、明確な回答は得られなかった。
障害保健福祉部側は、「今後、障害者部会や介護保険部会でだされた方向性に対し、各団体と協議を重ねていきたい」とした。
4月30日(金)この介護問題の公開ヒアリングを8団体は企画し、厚労省にも参加してもらうことになっている。場所は戸山サンライズ。
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NO75 2004.3 25(木)
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編集人 太田修平
いろいろな動き
昨日3月24日(水)、東京地裁は画期的な判決を出した。学生無年金障害者4人が起こしていた訴訟に対し、「障害を負った学生が保険給付を受けられるよう立法的手当てをしないまま放置したことは法の下の平等を定めた憲法に違反する」と述べて国に計1500万円の賠償を命じたのであった。
ところで、今日は毎週木曜日定例で行われている厚生労働省障害保健福祉部と8団体との介護保険に関する勉強会の日であった。しかし、急遽中止となった。昨日の無年金問題の判決で対応に追われ、職員が出席できないとのことであった。
昨日、もうひとつ動きがあった。厚生労働省障害保健福祉部障害者福祉課は8団体に対し、今年度のホームヘルプの国庫補助について、最終的には96%しか交付できないなどの報告をした。特に東京の市町村は大きな打撃を被ることとなる。
DPI日本会議やJIL(全国自立生活センター協議会)が緊急に呼びかけ、抗議行動を開催、約200名が雨の中集まった。交渉ももったが、平行線であった。
今日(3月25日)、障害者団体はこれに対して早急に対応していく必要があるという認識で一致した。
また、「心の健康問題の正しい理解のための普及啓発検討会」の報告書が発表された日でもあった。
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NO76 2004.4.4(木)
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編集人 太田修平
介護保険の勉強会第1ラウンド終了する
厚生労働省障害保健福祉部と障害8団体(日身連、JD、DPI、日盲連、全日ろう連、育成会、脊損連合、全家連)との介護保険に関する勉強会は、4月1日(木)の第9回でとりあえず終了し、また節目節目で議論を続けることになった。
この2ヶ月半、障害8団体は介護保険に仮に統合された場合の、懸念される問題や障害者施策に関する基本問題について質問書を障害保健福祉部に出し、議論をした。しかし、障害保健福祉部からは、団体としての判断材料となり得るような、明確な回答は示さなかったというのが、多くの団体のメンバーの感想である。
この日は、団体から「3月末ぐらいまでに基本的な方向性を出すということだったはずで、中間的なまとめを考える必要があるのではないか」という意見もあったが、「何が何でも3月末でなければならないということはなく、支援費の一般財源化を念頭に置き.、きちんと手順に従った議論を行なっていることが重要なのではないか」という考え方が障害保健福祉部のメンバーからあった。さらに「地域生活支援に関する問題で、問題認識の意味では一定の共有が勉強会によってはかられたと認識している」とも語った。
今後は社保審などでこの問題が議論されていくことになる。夏から秋にかけて大きな山場を迎えることとなるであろう。
障害8団体は来たる4月30日(金)厚労省をよび、この介護問題のシンポジウムを開催する予定である。当初戸山サンライズの予定だったが、中野サンプラザ鳳凰の間に変更になった。午前午後の一日がかりで行なう予定である。
介護制度改革本部の資料については下記アドレスから見ることができます。 http://www.wam.go.jp/wamappl/bb05Kaig.nsf/vAdmPBigcategory20/
4818E6441030948A49256E16001C7BCF?OpenDocument
三位一体改革の動向の資料は、1/22の検討会資料1-1の 4ページに掲載されています。
(検討会コーナーにリンク)
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