埼玉県羽生市(群馬県境)で家族同居のALS患者に24時間支給決定



東京のNPOが介護チーム雇用で24時間支援


羽生市は埼玉県の北部にあり、利根川を超えるとすぐ群馬県という場所にある農業地帯です。

羽生市に住むHさん(65歳)は、7年前の2013年にALSを発症、徐々に障害が重くなる中、同居する家族(夫・娘)が介護を中心に行ってきました。介護保険は使っていましたが、介護保険だけでは1日の家ほんのわずかな時間しかサービスを受けられず、24時間の介護が必要になる中、家族の介護負担は膨大になっていました。2019年に全国広域協会に相談があったときは、家族全員が介護うつになるなど、家庭崩壊寸前でした。市役所やケアマネもなんとかしようと色々考えていましたが、ヘルパー事業所も人材不足で、対応方法が見つからない状況でした。

 

 

201812月、Hさんは、インターネットのFacebookプライベートグループ「広域自薦(ALSと在宅生活)」(クラウゼ江利子さん(長崎の利用の壱岐でお父様がALSになり、24時間介護チームを作ることを成功させた)の運営)に参加する事により、24時間の在宅介護の存在を知り、全国広域協会コーディネータ(相談員)に相談をしました。
 Hさんは、これまでの5年間、家族のみで介護(介護保険のみ使用)を続けてきたため、親子共に疲弊していました。コーディネータがHさん自宅を約半年間毎週のように訪問し、Hさんと家族に、制度の説明や、今後の介護チームの育成計画などを説明しました。
 コーディネータが重度訪問介護の存在を説明することから、交渉のノウハウ(資料作成をアドバイス)をつたえました。20194月、埼玉県羽生市に124時間(一部2人介護)、月884.5時間の重度訪問介護の申請。(申請書別紙として30ページほどの資料等や医師の意見書やケアマネによるサービス等利用計画案を添付)。交渉に至りました。(ケアマネにもたびたびHさんとともに他地域の24h重度訪問計画例を見せて説明し、Hさんのニーズを話し合い、重度訪問介護24h利用の計画案を作成・利用者合意)

市の理解もあり、5月、重度訪問介護884.5時間、 移動加算 60時間×2人(=120時間)、 同行支援 120時間×年3人(=360時間)の支給決定がされました。
 これまで、羽生市福祉課では、重度訪問介護の存在は知りつつも、毎日24時間の利用などは、全くもって知識が無かったのですが、申請と交渉を通じて、国の意向や全国や県内の他地域の24時間利用の事例も知り、納得して支給に至りました。
 

(写真1・2  呼吸器も車椅子に乗せて外出の様子)

 

支給決定後は、ヘルパーの利用をどうするかですが、羽生市には重度訪問介護を受ける事業所が全く無く、これまでも近隣まで含めて散々探してもサービス提供できるヘルパー事業所が見つからない状況でした。

また、このような場合は、自薦ヘルパーを選択するALSの方が多いですが、本人と家族がすでに長年の介護等で、精神的疲弊が強く、自薦ヘルパーを自ら雇用して行くことは無理な状況でした。そこで、東京のNPO法人広域協会(全国広域協会の傘下の事業団体)と重度訪問介護の利用契約し、事業所がヘルパー雇用やサポートなどを行っていく事になりました。

コーディネータが民間の求人専門誌(タウンワーク等)やハローワークで常勤の無資格未経験者歓迎の求人をし、20198月に1人目の常勤ヘルパーを採用し、無資格だった人材も、同月中に研修をし、資格を取得。9月よりコーディネータと家族の指導の元、勤務を始めました。
 同年、10月に2人目の常勤ヘルパー、11月に3人目の常勤、12月に4人目(非常勤)、2019年1月に5人目(非常勤)のヘルパーを採用しました。交渉から約1年足らずで24時間365日のサービス提供ができる介護チームを編成。現在では毎日24時間(一部2人介護)の介助を1事業所のヘルパーのみで行っています。

コーディネータは、当初、介護現場(部屋)のレイアウトからアドバイスし、ヘルパーの働きやすさを追求。また、ヘルパーと家族の中間になり、問題点があれば解決をするなどや、良いコミュニケーションが取れるよう努めています。初めて介護に従事するヘルパーの中には、根を上げる者もいましたが、コーディネータがフォローする事でチームを保っています。

S__6848517.jpg20201月には、Hさん宅で24時間在宅介護の状況を市の福祉課が視察しました。従来、市としても支援が困難で悩んでも解決策がみつからなかったケースだったので、市職員も24時間介護体制で問題解決された現状に、驚くと共に、勉強になったと言う事でした。(支援した団体として、市に運動理念を伝えつつ、良い関係を続けています)。
 羽生市の福祉課は視察の際、
ヘルパーの採用から勤務体系、教育(医療行為を行えるヘルパーを育成、喀痰吸引等事業者(特定行為事業者)の登録まで)など、著しい介護状況の向上に理解を示しました。
 また、市が現在まで有効と認識していたレスパイト入院も、ALS患者にとっては本来は避けたいことであり、適切な介護支給時間が無いために介護に疲れた家族のための逃げ込み的措置であり、当事者にもご家族にも全くもって良い制度ではないという事を説明しました。24時間介護の有意性、その他、相談窓口の向上など、他の市民の方々にも還元できるような話し合いを現在も行っています。

 









(写真4
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透明文字盤でのコミュニケーション)


















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