新型コロナウイルス対策で筋ジス病院にヘルパーが入れなくなったなかで、人工呼吸器利用者が退院し、一人暮らしに成功(秋田)
自立生活センター(CIL)の支援で自立生活を目指していた筋ジス男性(鼻マスク呼吸器利用)が、コロナ対策緊急事態で病院が出入り禁止になってしまったなか、病院の全面協力を得て、ヘルパーの介護練習をオンラインで行うなどして、ついに退院し、1人ぐらしをスタートしました。全国の病院や施設で同様にコロナ対策で出入り禁止になり退院ができなくなっている中で、貴重な情報です。
国立病院機構あきた病院に療養介護として長年入所していた加藤さんは、筋ジスで鼻マスク呼吸器利用者。昨年から自立を目指して、CILヘルパーと自薦ヘルパーによる重度訪問介護での外出練習を週に数回ずつ始めました。外出日は病院のすぐ近くにある患者家族などが泊まれる家を1日借りて、そこで生活の練習をすることを始めました。
ところが、この練習を始めたばかりでコロナウイルスの全国蔓延によって、病院が外部との出入り禁止になってしまいました。入所者が外に出るのも禁止になり、外部からくるヘルパーも病院に入れなくなりました。
そこで、加藤さんは病院の役員に思いを伝える要望書を出し、病院側も「今まで通りの出入りはできないが、退院の支援なら全面協力しよう」ということになりました。
CILは男性の常勤ヘルパー求人や基本育成を行い、オンライン研修なども行って、数ヶ月準備にかけ、やっと退院しました。
いま、加藤さんは、CILの借りているアパート(自立体験室)に住んで、外出などもして生活しています。24時間の重度訪問介護利用で、数人の常勤中心の男性ヘルパーがローテーションで介護に入っています。
退院時に何人かのヘルパーは直接会うのは初めてでした。新人ヘルパーはCILが求人して雇用し、CILで基礎研修を受けてました。CIL代表者がALSで気管切開呼吸器利用者で1人ぐらし、CIL事務局長が筋ジスということで、ヘルパーの基本の研修はCILで行い、病院の加藤さんとオンラインで動画を繋いで、個人独自の介護方法の研修も行って準備しました。
以下は、推進協会(地方のCIL支援の全国団体)の先日行われた新規団体向けオンライン研修会でのCILくらすべakitaと加藤さんによる発表原稿に写真を加えたものです。
コロナ禍(か)の旧筋ジス病棟(療養介護施設)からの自立支援
CILくらすべakita
加藤与一さんとの出会い
・もともと同じ筋ジス協会の支部会員
・鷲谷が支部長になって病棟にちょくちょく出入りするようになって知り合う事になる。
きっかけ
・筋ジス協会支部会員のグループラインに入っていて自薦ヘルパー、CILの情報を少しずつ流していたが、その時あまり興味を示さなかった印象だった。
・2018年3月末にはじめて相談あり。
内容
2018.3.29
「こんにちは!鷲谷さんにお聞きしたいことがあってLINEしました。まだ自分の気持ちの中だけのことなんですけど、全国各地で重度障害を抱えている方達の自立の話が最近多く聞かれるようになって、自分にも最近自立生活への意思が芽生えてきてます。今まで人生の大半を施設や病院で過ごしてきましたけど、40歳という年齢を迎えて残りの人生を考えたら、このまま一生限られた閉塞感のある環境の中で過ごすというのが本当に自分が望むものなのかな?と思うようになりました。残りの人生どれくらいあるのかはわかりませんが、一生に一度くらいは自分の生きたいように過ごしてみたいなと思ったりします。自分みたいな重度の障害があっても障害者福祉サービスの制度を使って秋田で自立生活をすることは可能ですかね?24時間介護ヘルパーを派遣してもらうことは可能なんですかね?行政に働きかけをしなければならないでしょうけど。自薦ヘルパーというのは秋田ではまだ認知というか浸透してないんですかね?障害者福祉について自分なりに調べてはいるんですけど、鷲谷さんのように詳しく知ってる方に聞いたほうが理解しやすいのかなと思いまして。いきなり長文ですみません。
ここ最近、病院での生活が苦痛というか生活し辛くなってきました(>_<)
鷲谷さんの研修が終了して自立生活センターが立ち上がるまで気持ちを整理しておきます。自分なりに情報収集はしてますけどね。徳島県初の自薦ヘルパーを利用して自立生活をされてる内田由佳さんとも繋がり、色々お話を伺ってますよ。実際に自立されてる方のお話には説得力があります。由佳さんもサポートしてくれるそうなので心強いです。
実際に在宅または自立生活をするとはまだ決めてませんけど、自立生活プログラムは受けられるんですか?情報だけでも知っておきたいなとは思ってますけど。
方向性としては少なからず自立生活に向いてますし、そちらの方向へ歩みは進めていきたいと思ってます。」とありました。
・5月3日全国広域大野さんに自薦利用の事で相談したと加藤さん本人から聞いてます。
・この年6月に新規団体としてくらすべAkitaの名乗りを上げ、準備期間に入るがスタッフ不足や経験不足などこの時は支援する余裕がなかった。
・その間、本人はインターネットやSNSを通じて情報収集をして決意を固めていったようです。
・翌年加藤さん本人から自立の決意を確認し、推進講師の青森和田さんに相談して、和田さんを中心にILを進めて行くこととなる。
・6月27日青森和田さんがあきた病院に来院し、第一回目のILがスタートしました。
そのあと↓
CILくらすべAkita立ち上げイベントから自立支援活動への本格始動開始
●病院で暮らす自立生活希望者を中心にした啓発イベントを病院内で開催!
2019年8月25日(日)
「みんなで語ろう障害者の自立生活!」
●病院で暮らす自立生活希望者の個別相談と推進基本ILP本格的に開始
自立生活希望者:加藤与一さん
最初、推進講師中心:青森代表和田さんを中心にアークスペクトラム代表岡田さん、てくてく代表川崎さん、こころ代表山口さん、にいがた・まいらいふ代表山内さん、盛岡代表川畑さんにも入ってもらう。
くらすべAkitaが連絡調整、鷲谷が担当することになる。
●10月本籍のある大仙市より2人付け220hで重度訪問介護が決定。
この時間数を利用して病院から外出及び外泊をし自立体験を始めることとなり、鷲谷の介助者2名、1名は加藤さん専属の介助者を採用することになったが、介助者が慣れていないことを理由に加藤さんのご家族(お母さん)が来られる日のみ主治医から許可される。また外出、外泊は何かあったらすぐ戻れる病院敷地向かいの宿泊施設「いこいの家」(遠くから病院の見舞いに来る家族が泊まれるために作られた宿泊施設)を利用という条件付きだった。そのため練習回数はかなり少なかった。少し慣れたころ、主治医の許可を得ていこいの家以外の数回の外出と1回の外泊。12月には2泊3日でCIL青森のピア・カウンセリング集中講座に参加。やはり家族が付いていくという条件付き。
●翌年2月末に新型コロナウイルスにより外出及びヘルパーの出入り、面会等すべて出来なくなり一時中断。
いつ収束するかわからない中、自立に対する集中力を維持するために専属の介助者を鷲谷宅に入れ、リモート研修をしながらコロナの収束を待つことになるが、本人の気持ちがおさまらず、「コロナがいつ収束するのか確証もないし、もしかしたら自立しないまま一生終わるなんて後悔しか残らない、やるのは今なんだ!」と病院長宛に要望書を提出。その要望書が引き金になり、じゃあ待つのではなくて「やろう!」というスイッチに切り替わり、退院を目標に支援の体制強化に繋がった。
別紙 要望書(画面共有参照)
● 自立生活希望者 加藤与一さんへの支援強化
・個別相談推進基本ILP 毎週火曜日 19:00〜20:30
くらすべAkita事務局長鷲谷
推進講師:和田さん
推進CN:増子さん
・レギュラーセッション
毎月第一月曜日:和田さん
毎週水曜日:くらすべAkita代表安保・事務局長鷲谷
・フリートーク(個別相談)
毎週土曜日:くらすべAkita代表安保・事務局長鷲谷
・各地のCILの皆さんに加藤さん自身から直接、話をしてもらう働きかけ
・YouTubeにアップされている障がい者の一人暮らし動画の情報提供や、JILの
DVDを観てもらい加藤さんの不安やストレスを軽減。
新規団体主体の自立に向けた個別ILPと推進の支援体制
●コロナ禍の中で施設封鎖状態からの自立を実現するための支援
オンライン(Skype、zoom、 LINE)を利用したILP
リモートや動画を利用したロールプレイやトレーニング
●自立生活達成までの役割分担
(本人)
加藤:自分の介護方法をヘルパーに習得してもらうための手立てを考え、自分の指示でや
ってもらうための練習を増子さんと共に行なう。自分の自立生活のイメージを具
体的に考えて退院と引っ越しの準備をしていく。1分単位の介護内容作成、
病院への意思表示と退院に向けてのやり取り、病院スタッフに介助動画の撮影協力などを行なう。
(くらすべ)
鷲谷:IL担当として加藤さんの一番身近な存在として寄り添い話を聴き、個別ILPを
中心となって進めていく。行政や病院と加藤さんのコーディネート、求人、引
っ越し先の体験室整備等、加藤さんの支援の全体の総指揮を担なう。
安保:団体の責任者として支援活動を支える。加藤さんと同様に人工呼吸器を利用し
ている部分での支援や、担当の鷲谷の苦手な部分を含めたフォローしてい
く。
佐々木:CN見習いとして加藤さんの介護にあたるヘルパー全員のフォローを行なう。
記録やスケジュールの管理や確認等を行ない必要な資料の準備や書類等の作
成を担い、問題等の対策を担当やGMと共に行なう。
(推進講師)
和田:全体を通して関わり団体運営や自立支援状況の確認しアドバイスやサポート
を行なう。推進CNの情報をもとに対策を行なう。
河本:問題点の指摘や自立支援の理念に基づいた全体のバックアップを行なう
川畑:計画相談全般を通すための相談支援専門員としての支援を行なう。
穂高:ヘルパー全体の体制の確認。計画案の作成とCN見習いの佐々木の指導育成
フォローを行なう。
増子:加藤さんのヘルパー利用全般のサポートや指導を行ない、加藤さんのヘルパーの
個別相談を行なう。
●制度申請と交渉
くらすべ鷲谷を中心に各役割を分担し、満額時間が取れるよう徹底した指導を講師の皆さんが多角的に支援、ロープレ等を行い加藤与一さんの月/重訪1147時間の計画案を作成、交渉に臨む。
2020年7月15日 代表安保、事務局長鷲谷、CN佐々木で体験室のある秋田市に交渉
8月 7日、審査会の結果。
重訪1147時間満額が9月1日付けで支給設定!!
●その後のリモートによる個別ILP
週3日(火木土)鷲谷と安保で行なっていく。
毎週火曜日は鷲谷と安保の他に推進から和田さんと増子さんが加わり状況確認を行なう。
進行状況等をみて火曜日に推進講師陣を入れた支援会議を行なう。
毎週水曜日はピアカンを1時間、鷲谷がレギュラーセッションを行なっていく。
●介助トレーニング(withコロナ禍で今までにないやり方、特有のILP(リモート等)
毎週金曜日に推進講師陣より増子さんが行なってきた。
内容:不安に感じている介助のピックアップ
@マスク交換(自力呼吸が不可能なため)
A移乗や着替え時の骨折リスク
B調理をしていないこと
対策として
@病院での全ての介助方法を動画で送ってもらい、動画を見ながら支持と説
明を受け、質問しながらリモートイメージトレーニングを行なった。
Aリモート調理実習ビデオ通話で体験室にいる鷲谷のヘルパーに指示を出し料理を作ってもらい鷲谷に食べてもらい味を聞く。そのほか掃除、洗濯もリモートで行う。
●自立までの全体の行動計画づくり
●新人ヘルパー介助研修
最初、ベッドを体験室に設置し仮の車椅子を置き、ビデオを見ながらイメージ練習を行っていた。それだけだと実戦には程遠く、加藤さんは体重24sと軽くお姫さん抱っこでの移乗が必須だったため代わりになる人がおらず、人形を思いついて他県の団体に呼び掛けたところ、所沢に介護人形があることを知り、お借りすることになる。
プラス、本人が普段使っている鼻マスクと同じもの、寝る時に使用しているフルマスクに近いもの、車椅子用のヘッドレストを用意してもらうなど協力を得る。
●リモートで介護人形を使っての指示だし介助練習、買い物、調理、掃除、洗濯
実際に本人から一人一人指示をもらい一番の課題だった介助練習をしたことで格段に実践に近いものとなり、実践では緊張はあったもののみんながイメージ出来ていた。
写真:CILの自立体験室アパート(退院して加藤さんが当面住む場所)で介護人形を使い、病院の加藤さんと画像通話をつないで介護研修
ベッドに介護人形 周りはヘルパー タブレットでオンラインで病院の加藤さんとつないでいる様子
介護人形を使って呼吸器の鼻マスク脱着の練習
●10月22日ついに退院が実現!!
現在、体験室での生活ですが常勤ヘルパー1名、新人ヘルパー6名(内パート1名)の計7名。往診医2週間に1回、訪問看護(月・水・木・金)週4回、訪問入浴(月・木)週2回入れて、1ヶ月以上何事もなく、自立生活が送れている。
●現在は退院後ILを週2回(火・金)鷲谷、安保が担当。
※大事な場面では入れる推進講師が入ってくれている。
まだ終わったわけではなく今後も体験室から巣立ち、自立生活をスタート、安定させるまでの自立支援を行っていく。
参考資料
加藤さんが入院中に病院に送った要望書
要 望 書
・面会禁止措置について
新型コロナウイルスの国内感染拡大に伴い、あきた病院では院内感染防止策として3月2日から全館面会禁止という措置が執られています。面会禁止となってから2ヵ月半余りを経過して国内の感染状況も日を追うごとに変化してきています。
全国的に増加傾向にあった感染者数も緊急事態宣言を発出した効果もあり、発出前と比較すると減少傾向にあるように思います。
特定警戒区域では感染者数が減ってきているとはいえ、まだまだ予断を許さない状況が続いいます。しかし、特定警戒区域以外の地域では数日間での新規感染者数がゼロといったところもあり、外出自粛や休業要請の緩和に伴って徐々にではありますが社会活動を再開させています。
秋田県も感染者が4月17日以降は確認されておらず、新規感染者ゼロの状況が続いております。病院の感染対策としては日本国内の感染者数の推移を見極めて状況に応じて検討されているかと思います。
福祉や医療の観点からすれば利用者または患者の命を守る責務があり、施設内での集団感染や病院での院内感染は絶対に防がなければなりません。徹底した感染防止策を講じる必要があり、面会禁止措置もその対策の一環であることは承知しています。
我々のような慢性的な持病を抱えている患者にとってコロナウイルスは命を脅かすものであり、感染すれば重症化は免れず最悪死に至らしめる恐ろしい感染症です。
抵抗力の弱い患者が沢山いる院内にコロナウイルスの感染が発生してしまうと瞬く間に集団感染に発展し、最悪の事態を招くことが懸念されます。そうした最悪の事態を起こさせないためにご尽力されているあきた病院の職員ならびに感染対策委員の皆様に感謝申し上げます。
面会禁止措置は感染対策として重要ではありますが、やはり患者や患者家族としましては精神的な苦痛やストレスを感じずにはいられません。
あきた病院では週に1回時間制限を設けてオンライン面会を実施しておりますが、やはりオンラインだけではケアできない部分もあります。
患者の精神的な負担もそうですが、身体的な部分での負担もあるというのが現状としてあります。病棟スタッフだけではカバーできない部分を家族が手をかけることでカバーできていたところもあります。
例に挙げるとするならば、普段の療養生活の中では病棟スタッフのマンパワーが足りず、寝たきりを余儀なくされている患者さんを車椅子に乗せて院内を散歩させてあげることすら難しい状況にあります。そうした状況の中でもご家族が面会に来られることで可能になることが幾つかあると思います。寝たきりの患者さんにとってはそれがQOLの向上に繋がると共に精神的なケアにも繋がると思います。
コロナの完全終息の見通しが立たないこの状況下で家族すら面会できないような状態が続くとなれば、患者のQOLの低下に繋がることは否めませんし、患者とその家族にとってその精神的な負担は計り知れないものになります。そのような精神的なストレスは患者の健康にも悪影響を及ぼし兼ねません。
コロナは命に関わる感染症というのはみんな理解しています。でも、このコロナウイルスが完全に安全だと認められるようになるには確実な治療薬やワクチンができてからだと思います。
では確実な治療薬やワクチンができるまで面会禁止を続けるのか。そこに至るまでは1年半〜2年はかかると言われていますが、精神的ストレスやQOLもそうですが、我々患者の立場から言わせてもらえば2年先の僕達の命があるとは限りません。
今の面会禁止措置では僕らが何らかの病気で危篤にでもならない限り家族には会えないことが懸念されますし、会えないまま亡くなる人も出て来るかも知れません。ある程度で面会禁止の解除あるいは緩和してもらわないとこのままでは我々の気持ちが持ちません。
家族の面会ができない他に現在は理容師さんも来院できない状況にあります。この2ヵ月半の間で髪が伸びた患者さんがたくさんおります。面会禁止になる前は床屋の利用は順番を決めて髪を切ってもらっていたので、患者さんによっては長くて半年以上髪を切っていない方もいて伸び放題になっています。
これから季節は梅雨時期に入りジメジメとした日が続くと思われます。髪が長いと暑苦しいですし、汗を掻いて頭皮の痒みが生じてきます。清潔を保つためにはやはり髪が伸びすぎてもいけないですし、髪が目や耳にかかって煩わしいといった精神的なストレスになります。衛生面でのケアというのも患者の健康を守る上では必要なことだと思います。
病院のほうでバリカンを買って頂いたとのことですが、男性の患者さんは坊主でも構わないという方もいますが、女性の患者さんはできないと思います。男性の患者さんでも坊主は嫌という方もいると思うで、一律にとはいかないと思います。
散髪というのもまた日常生活には必要なものであり、より良い療養生活を過ごすには不可欠なものです。来院される理容師さんに健康チェックと感染対策を徹底して頂いた上で利用を許可して頂きたいです。
リスクで言ったらもちろん誰もが同じでありノーリスクはあり得ません。それを言ってしまえば堂々巡りの論争になってしまいますが、治療薬やワクチンができるまでの1年半〜2年をただただ我慢してコロナとは異なる理由で命を落としたとしたら、死んでも悔やみきれないというのが本音です。
県内の感染者数の推移と世の中の動向を注視して、状況に応じて完全に解除とまでいかなくても部分的にでも制限緩和の検討をお願い致します。
目安として面会禁止措置の緩和または解除をするために必要な条件を示して頂ければと思います。国内でも政府をはじめ各自治体が出口戦略を模索しているように、病院としても緩和または解除に向けた条件目安があれば患者側としての精神的な部分での希望にも繋がります。
希望となるような道筋が作られないと残るは先の見えない不安と絶望しかありません。希望となる道筋は何もしなければ作られることはありません。希望となる目安を作って明確な指針を示して患者やその家族に提示をお願い致します。
今は若干落ち着いてきているように思いますが、またいつ第二波が襲ってくるのかわかりません。第二波には十分に警戒しなければなりませんが、感染者数の推移と世の中の動向を見極めながら病院としての制限の緩和または一時解除を求めます。
ただ面会禁止措置の緩和または一時解除を求めるのではなく、面会者が来る際には院内に入る前に体温測定、マスクの着用、手洗いや手指消毒といった基本的な感染予防の他、面会者の人数制限や面会時間の制限といった条件付きでも構いません。
また県内での新規感染者が出た場合には再度、面会禁止の措置を執る必要があるとは思いますが、もし可能であるならば新規感染者が出ていない期間だけでも面会禁止を緩めて頂けないでしょうか。
ここからは僕個人としてのお願いなのですが、ご存じかとは思いますが僕は昨年の11月から病院を退院し地域で自立生活をするというのを目標にヘルパーを雇用して外出訓練を行っています。
CILくらすべ秋田と全国ホームヘルパー広域自薦登録協会の支援を受けて活動をしていますが、コロナの影響により病院が面会禁止となりましてヘルパーの来院が認められず活動を自粛せざるを得なくなりました。
活動自粛する前までは専属のヘルパー1名とCILくらすべ秋田のヘルパー2名の計3名のヘルパーを入れて外出や外泊の訓練をしていました。この訓練とは僕の身体介護をはじめ家事援助などヘルパーに完璧に覚えてもらうために行っているもので、この訓練でヘルパーの知識と技術を養っていかなければ地域移行することができません。
昨年11月から3月に入るまでの4カ月間でヘルパーも僕の介助にだいぶ慣れ、僕も安心して身を任せられるようになりました。しかし、ここにきてコロナの影響により約3ヵ月の間ヘルパーが入れず大きなブランクが生じてしまいました。
重度障害者を介護する者にとって3ヵ月のブランクは大きいものであり、云わばリセットされ振り出しに戻った状態です。知識として介助の方法を頭で覚えていたとしても、実際に介護に入るに当たって力加減であったり要領であったり感覚を取り戻すには時間が必要となります。ブランクが長くなればなるほど感覚を取り戻すのは容易ではなくなります。
僕としてはなるだけ早い段階で活動を再開させたい気持ちがあります。年齢的に考えると僕自身、先が長いとは思いません。筋ジスは進行性の病気であり僕の場合はデュシェンヌ型の平均寿命に達しています。
もちろん筋ジスだから早死にするとは限らないですし、それこそコロナに感染したら命を落とす可能性はあります。焦って判断を誤るようなことはあってはならないとは思っておりますが、正直な気持ちとしては焦りがないとは言い切れません。
地域で自立生活をするという目標は僕の人生を懸けた最大の挑戦です。過去にないくらいの大きな挑戦です。このまま何もできないで病院の中で体力の限界を迎え目標を果たせないまま最後の瞬間を迎えることになってしまっては後悔しか残りません。
なるだけ早く目標を達成するためにはヘルパーとの外出訓練を早期に再開させる必要があります。コロナが完全に終息するまでには数年かかると言われていますが、そこまで待てないというのが率直な気持ちです。
病院の指示に従って感染対策を徹底した上で、ヘルパー3名もしくは1名だけでも来院して介護の訓練に入れるようにして頂けないでしょうか。ヘルパーには私生活においても感染対策を徹底させたいと思います。
ヘルパー自身も介護に携わる者として責任と自覚を持って業務に当たっているので、日頃から徹底した感染対策を行っております。在宅の重度障害者のお宅でも介護の業務を行っており、ヘルパー自身も絶対に感染してはいけないという自覚があります。
訓練を院内でとなると制度上の問題でヘルパーが入れないので、院外へ出掛ける必要があります。街の中に出掛けるのはまだまだ難しい状況だと思うので、せめて憩いの家だけでも外出許可を頂きたいです。
僕だけ特別に面会と外出が許されるのかと言われると心苦しいものがありますが、地域で自立生活をするというのは僕としてはどうしても成し遂げたい目標なのです。病院とし許可を出すのは難しい決断になるかとは思いますが何卒ご理解を頂きたいです。よろしくお願い致します。
今回このような文書の提出に至ったのは、僕自身と患者の気持ちを少しでも病院の幹部または職員の方々に知ってもらえればという思いからでして、ただ悶々と気持ちを抑え込んで過ごすよりも自分たちが今できることをしようと覚悟を持って行動に移した次第であります。
病院側の方針に対しての批判や不信感を抱くものでは決してありません。ただ僕自身と我々患者の切実な思いを伝えたかったのです。僕の気持ちを少しでも組んで頂ければと思っています。ご検討のほどよろしくお願い致します。
すべてが患者の総意であるとは言い切れないと思うので、ここに書いた内容はあくまでも僕個人としての想いということで受け止めて頂けたら幸いです。
南3病棟 加藤与一
要望書はここまで
これを出した結果、病院職員が一丸となって、退院の協力をしてくれることになりました
秋田の過去の経過がわかる記事は
http://www.arsvi.com/2020/20200203on.htm
http://www.kaigoseido.net/i/als-chiikiseikatsu.htm
人工呼吸器利用者の24時間介護と自立生活事例まとめページ
http://www.kaigoseido.net/kokyuki-jiritu/kokhuki-index.htm