★障害者総合福祉法の骨格提言 総合福祉部会

 新しい制度の概要案を紹介

 

 

 

★厚労省が吸引等制度改正で都道府県向け説明会

 

 

 

 

月合併号

 2011.9.10

編集:障害者自立生活・介護制度相談センター

情報提供・協力:全国障害者介護保障協議会

 

発送係(定期購読申込み・入会申込み、商品注文)  (月〜金 9時〜17時)

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2011年8月9月合併号  

 

目次

 

3・・・・障害者総合福祉法の骨格提言特集

     新しい制度の案を提言書から抜粋で紹介

    17・・市町村の義務

    18・・支給決定

    23・・サービス体系

    28・・パーソナルアシスタント

    43・・相談支援

    52・・長時間介助の財源措置

    53・・出身市町村が半額負担

    54・・8時間以上は市町村負担5%に軽減

55・・・厚労省が吸引等制度改正で都道府県向け説明会

56・・・全国ホームヘルパー広域自薦登録協会のご案内

 

 

全国ホームヘルパー広域自薦登録協会よりお知らせ

・2009年5月より制度改正で時給12%アップ

・2009年10月より介護人材助成による加算がさらに上乗せ

 たとえば東京と周辺県は重度訪問介護区分6で時給1620円に、身体介護は時給2120円に(詳しくは巻末の広告ページを)

・制度の単価改善で、重度訪問介護の単価アップ・雇用保険加入・原則厚生年金加入開始。自薦ヘルパーを確保するための求人広告費や、ヘルパー研修受講料の助成(東京などで随時行う研修を受けるための交通費なども助成)、求人広告むけフリーダイヤル番号無料貸し出しと求人広告の電話受付代行も実施中。

・介護者の保障のアップで介護人材確保がより確実になりました。


推進会議総合福祉部会が新法の骨格提言を取りまとめました

 

障がい者制度改革推進会議総合福祉部会は、8月30日に「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」を取りまとめました。

 

障害者総合福祉法(仮称)については、すでに「障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書」(平成22年1月7日)や「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(平成22年6月29日閣議決定)で、平成25年8月までに施行する方針が決まっています。このため、平成24年1月から始まる通常国会に法案を提出できるように、この骨格提言を踏まえて厚生労働省が法案作成作業を開始しています。

 

注目点は以下のとおりです。

 

▼重度訪問介護をパーソナルアシスタント制度に改組するなどの訪問系サービスの再編(p35〜p37)

T.障害者総合福祉法の骨格提言

T−4 支援(サービス)体系

A.全国共通の仕組みで提供される支援

5.個別生活支援

【表題】@重度訪問介護の発展的継承によるパーソナルアシスタンス制度の創設

【結論】

○ パーソナルアシスタンスとは、

)利用者の主導(支援を受けての主導を含む)による

)個別の関係性の下での

)包括性と継続性

を備えた生活支援である。

○ パーソナルアシスタンス制度の創設に向けて、現行の重度訪問介護を充実発展させる。

○ 対象者は重度の肢体不自由者に限定せず、障害種別を問わず日常生活全般に常時の支援を要する障害者が利用できるようにする。また、障害児が必要に応じてパーソナルアシスタンス制度を使えるようにする。

○ 重度訪問介護の利用に関して一律にその利用範囲を制限する仕組みをなくす。また、決定された支給量の範囲内であれば、通勤、通学、入院、1日の範囲を越える外出、運転介助にも利用できるようにする。また、制度利用等の支援、見守りも含めた利用者の精神的安定のための配慮等もパーソナルアシスタンスによる支援に加える。

○ パーソナルアシスタンスの資格については、従事する者の入り口を幅広く取り、仕事をしながら教育を受ける職場内訓練(OJT)を基本にした研修プログラムとし、実際に障害者の介助に入った実経験時間等を評価するものとする。

【説明】

重度訪問介護を発展させ、パーソナルアシスタンス制度を創設するにあたっては、

1)利用者の主導(ヘルパーや事業所ではなく利用者がイニシアティブをもつ支援)、

2)個別の関係性(事業所が派遣する不特定の者が行う介助ではなく利用者の信任を得た特定の者が行う支援)、

3)包括性と継続性(支援の体系によって分割され断続的に提供される介助ではなく利用者の生活と一体になって継続的に提供される支援)

が確保される必要がある。

現行の障害者自立支援法における重度訪問介護の対象者は、「重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者」(第5 条3)に限定されているが、障害の社会モデルを前提とする障害者権利条約及び谷間のない制度をめざす障害者総合福祉法の趣旨を踏まえれば、このような機能障害の種別と医学モデルに基づく利用制限は見直しが必要である。

「身体介護、家事援助、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援及び外出介護が、比較的長時間にわたり、総合的かつ断続的に提供されるような支援」(平成19(2007)年2月厚生労働省事務連絡)を難病、高次脳機能障害、盲ろう者等を含む「日常生活全般に常時の支援を要する」(同)すべての障害者に対して利用可能とする。

特に、重度の自閉症や知的障害等により行動障害が激しいなどの理由で、これまで入所施設や病院からの地域移行が困難とされてきた人たちが、地域生活を継続するためには、常時の見守り支援を欠かすことはできない。また、現行制度においては重度訪問介護の対象となっていない障害児についても対象とする。

以上に鑑みると、パーソナルアシスタンス制度は、各障害特性やニーズから来るキャンセルや待機などへの対応等、利用者にとっては柔軟な利用ができ、かつ報酬上も評価される仕組みにすべきである。

また、パーソナルアシスタンスは、利用者の主導性の下、個別の関係性の中で、個別性の強い支援に対応できるかを踏まえることが求められるため、資格取得のための研修は、現在の重度訪問介護研修よりも従事する者の入り口を幅広く取り、仕事をしながら教育を受ける職場内訓練(OJT)を基本にしたものとする必要がある。

 

 

 

 

▼支給決定では協議調整モデルが導入されます(p21〜p26)

T.障害者総合福祉法の骨格提言

T−3 選択と決定(支給決定)

【表題】支給決定のしくみ

【結論】

○ 支給決定のプロセスは、原則として、以下のとおりとする。

. 障害者総合福祉法上の支援を求める者(法定代理人も含む)は、本人が求める支援に関するサービス利用計画を策定し、市町村に申請を行う。

. 市町村は、支援を求める者に「障害」があることを確認する。

. 市町村は、本人が策定したサービス利用計画について、市町村の支援ガイドラインに基づき、ニーズアセスメントを行う。

. 本人又は市町村により、申請の内容が支援ガイドラインの水準に適合しないと判断した場合には、市町村が本人(支援者を含む)と協議調整を行い、その内容にしたがって、支給決定をする。

5.4の協議調整が整わない場合、市町村(または圏域)に設置された第三者機関としての合議機関において検討し、市町村は、その結果を受けて支給決定を行う。

. 市町村の支給決定に不服がある場合、申請をした者は都道府県等に不服申立てができるものとする。

○ 支給決定について試行事業を実施し、その検証結果を踏まえ、導入をはかるものとする。

 

 

 

▼財政のあり方の項目では、長時間の訪問系サービスのための財政措置が重要です(p21〜p26)

U.障害者総合福祉法の制定と実施への道程

U−4 財政のあり方

(3)長時間介助等の地域生活支援のための財源措置

【表題】長時間介助等の地域生活支援のための財源措置

【結論】

○ 国は、長時間介助に必要な財源を確保する。

○ 地域移行者や地域生活をする重度者に関する支援サービスに関して、他の支援サービスの場合における負担と支給決定のあり方とは、異なる仕組みを導入する。

○ 国は、地方自治体が、国庫負担基準を事実上のサービスの上限としない仕組みを財源的に担保するとともに、地方公共団体の財源負担に対する十分な地方財政措置を講じる。

【説明】

どんなに重度の障害者であっても、障害者権利条約第19条の「他の者と平等な選択の自由を有しつつ地域社会で生活する平等な権利」を実現することが求められる。長時間介助も、その人の障害特性やニーズ、医療的ケアの必要度等に応じて、日中の介助のみが必要な人から、24時間のパーソナルアシスタンスが必要な人まで、必要とされる介助内容は様々である。ただ、どんなに重度の障害者でも、またどこに住んでいても、地域社会で暮らす権利が満たされる為に必要な支援量は提供されるべきである。上記を満たし、各人のニーズに応じた支援が適切に届けられるために、財源を確保して支援することが必要である。

地域移行者の中には、出身自治体と居住自治体が分かれているケースがくない。住民票がある住所では地域生活が出来なかったため、入所施設や病院に長期間、社会的に入院・入所している、という住民票住所と実際の居住地が異なるケースなどである。こういう人が地域移行した場合、移行先が住所地となるため、施設や病院に近い自治体、あるいは重度者の地域移行を先進的に進めてきた自治体は、過剰な負担を強いられる可能性がある。これが、地域移行を阻害する要因の一つでもある。

そこで、施設・病院から地域移行する人や親元から独立して別市町村で暮らす障害者については、出身自治体が一定年度の財政負担(恒久的かどうかは検討)をした上で、居住自治体での支給決定をすることも検討してはどうか。例えば、入所施設や病院への入院・入所者の地域生活移行等を促進するため、居住地と出身地で費用を負担してはどうか。(下図参照)

 

 

 

 

 

 

 


ただし、入所施設やグループホーム、ケアホーム利用者の自立支援給付についての現行の居住地特例は当面継続しつつ課題を整理し、施設・病院等から地域移行する人等の扱いと併せて、そのあり方を慎重に検討することが必要である。

また、現状では国庫負担基準という形で実質的な予算上限を設定しているため、なからぬ自治体が、国庫負担基準を事実上のサービス上限としている。はじめに予算ありき、ではなく、まずは障害者のニーズを中心に検討すべきである。そのニーズを積み上げる形で、必要な支給決定がなされる必要がある。障害者総合福祉法においては、障害者の実態とニーズに合わせ、「地域で暮らす権利」を保障するための財源を確保すべきである。

したがって、国庫負担基準については次のような考え方が考慮されるべきである。

(1)地域で生活をする重度の障害者について、現行の国庫負担基準以上の負担は国の負担とすることを原則とする。ただ、そのことが無理な場合、例えば都道府県での基金化も含め市町村負担を大幅に引き下げる対応を考えるべきである。

(2)ホームヘルプについては、8時間を超える支給決定をする場合は、8時間を超える部分の市町村負担は5%程度に下げ、都道府県が45%を負担し、8時間以内の支給決定をする場合および8時間以上の支給決定の場合の8時間分については、市町村負担を26%とし、都道府県負担の1%を確保して使うようにする案を提示した。(下図参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


なお、ホームヘルプにかかる国の負担割合は現行5割であるが、地域格差なく、必要とされるサービス提供が保障されるためには、現行以上の国の負担割合を検討すべきである。

上記の図で8時間を境にしている理由は、重度訪問介護の区分6の国庫負担基準が約40万円で、月212時間程度の単価となり、1日当たり7時間超であることから、8時間を境にしている。

もちろん、他の部分もすべて重要です。障害者自立支援法に代わる新法の土台となる提言ですから、ぜひ全文を読んで把握してください。

 

なお、骨格提言の内容がそのまま新法に反映されるとは限りません。たとえば、総合福祉部会の各作業チームの検討報告に対して、厚労省は軒並み消極的なコメントを提出しています(第12回部会、第15回部会)。

 

また、法案作成過程の各省協議(厚労省と他省庁との折衝)の段階で、他省庁から消極的な反応が示される可能性もあります。特に予算の大幅な増加を伴う制度変更については、その分だけ厚労省障害保健福祉部が所管する他の予算を削らないと認めてくれないのが、財務省の基本スタンスです。このほか、全国知事会、全国市長会、全国町村長会などの地方六団体の意向にも配慮しなくてはなりません。

 

このような制約条件の下で、厚労省は新法の法案をつくらなければなりません。ですから、来年の通常国会に提出される法案が、骨格提言よりも大幅に後退する危険性もあります。

 

ただし、たとえば長時間の訪問系サービスのための財政措置は、国の予算増を回避しながら24時間保障ができるような仕掛けになっています。よって、個々の重要テーマについて、骨格提言に沿った内容で法制化されるように、障害者団体から厚労省や政党・都道府県等に対して働きかけていく必要があります。

 

■障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言(厚労省HP)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sougoufukusi/dl/110905.pdf

介護制度情報HPにも全文を掲載しています。


障害者自立支援法に変わる障害者総合福祉法の骨格を提言

 〜推進会議の総合福祉部会が最終報告〜

 

 政府の障害者制度改革推進会議の総合福祉部会では、障害者団体や学者・自治体・関係者などが集まり、自立支援法を廃止して、新たに障害者総合福祉法を作るための法律の内容について話し合っていましたが、最終報告書が完成しました。

 今後、新しい法律はこの提言を元に作られていきます。ただし、財務省は予算の裏付けのないものを法律にすることは同意しませんので、予算の増加を伴う提言は採用されないのが普通です。また、予算の増加がわずかな改正部分も、省庁の抵抗でそのままでは盛り込まれないことがあります。これからあらゆる障害者団体が各政党にロビー活動を行う予定です。みなさんもご協力ください。

新しい制度の主な変更点では、重度訪問介護はパーソナルアシスタントへ名称変更し、職場・学校・泊まりがけ外出・入院時・運転中も支給量の範囲でなら制度対象になります。

支給決定方法は、協議調整方式に切り替わり、市町村が障害者と協議して支給決定する方法になります。都道府県での不服審査請求も権限強化され、市町村に支給量を指示できるようになります。

全国の市町村で24時間介護を可能にする財政システムについては、最後の2ページの図表をぜひ見ておいてください。長時間介護の財源確保についての仕組みで、これができたら全国で24時間保障になります。省庁の抵抗もあるため、この方法を実現するために全国の皆さんにロビー活動をお願いすることになると思います。
次ページから抜粋で重要部分を紹介します。

 

障害者総合福祉法

骨格に関する総合福祉部会の提言

 

 

 −新法の制定を目指して−

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成23(2011)830

障がい者制度改革推進会議総合福祉部会

 

 

 

掲載部分は、介護制度情報が重要と考える部分を抜粋したものです。(各項目ごとの罫線内や説明部分も抜粋しています。) 全文はホームページに掲載しています。


 

【表題】法の目的

【結論】

○ この法律の目的として、以下の内容を盛り込むべきである。

・ この法律が、憲法第13条、第14条、第22条、第25条等の基本的人権や改正された障害者基本法等に基づき、全ての障害者が、等しく基本的人権を享有する個人として尊重され、他の者との平等が保障されるものであるとの理念に立脚するものであること。

 

・ この法律が、障害者の基本的人権の行使やその自立及び社会参加の支援のための施策に関し、どこで誰と生活するかについての選択の機会が保障され、あらゆる分野の活動に参加する機会が保障されるために必要な支援を受けることを障害者の基本的権利として、障害の種類、軽重、年齢等に関わりなく保障するものであること。

 

・ 国及び地方公共団体が、障害に基づく社会的不利益を解消すべき責務を負うことを明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加に必要な支援のための施策を定め、その施策を総合的かつ計画的に実施すべき義務を負っていること。

 

・ これらにより、この法律が、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するものであること。

 

【説明】

今回、障害者自立支援法にかわる新たな法律を必要とするに至った大きな要因は、障害者権利条約の批准に当たって障害者自立支援法を抜本的に改革する必要があること及び障害者自立支援法違憲訴訟原告らと厚生労働省との間に障害者自立支援法の廃止を含む基本合意文書が成立したことに存する。

 

まず、障害者自立支援法違憲訴訟原告らと厚生労働省との間で交わされた基本合意文書の一項では、障害者自立支援法を廃止することを前提に、新たな総合的な福祉法制においては、「障害福祉施策の充実は、憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援するものであることを基本とする。」とされている。

 

日本国憲法13条の幸福追求権及び22条の居住・移転の自由は、支援選択権を保障すると解すべきであり、25条の生存権は、地域間格差を是正するナショナルミニマムとしての支援請求権を保障するものであるので、以上の合意の趣旨を踏まえ、目的条項において、憲法の基本的人権に関する規定を盛り込むことは必須と考えた。

 

また、障害者総合福祉法に関連する障害者権利条約の中心的課題は、同条約第19条の

a項 障害者が、他の者と平等に、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の居住施設で生活する義務を負わないこと。

b項 地域社会における生活及び地域社会への受入れを支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(人的支援 [personal assistance]を含む。)を障害者が利用することができること。

c項 一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者と平等に利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること。

である。

 

 

 

【表題】法の理念

【結論】

○ 以下の基本的視点を理念規定に盛り込むべきである。

 ・ 保護の対象から権利の主体への転換を確認する旨の規定

・ 医学モデルから社会モデルへの障害概念の転換を確認する旨の規定

 

【説明】

従来、障害者は、障害者施策の対象、保護の対象とされ、当事者としては扱われない面があった。しかし、この法律においては、障害者が権利の主体であり、当事者であることを明確にする必要性がある。また、障害の本質とは、機能障害や疾病を有する市民の様々な社会への参加を妨げている社会的障壁にほかならないことをここに確認し、機能障害や疾病をもつ市民を排除しないようにする義務が社会、公共にあることが今後の障害者福祉、支援の基本理念であることをここに確認する必要がある。

なお、このことは、障害者の支援を自己責任・家族責任として、これまで一貫して採用されてきた政策の基本スタンスを、社会的・公的な責任に切り替えるということを意味することを確認するものである。

 

医学モデルの視点からいえば、障害者の問題は、障害者自身が自己責任により訓練と努力で克服するべきものということになるが、かかる古い考え方から脱却し、むしろ、障害者の社会参加を排除して、適切な支援を実施しない社会の側が障害の原因であるという社会モデルへの転換を明確化しない限り、この国の障害者施策のあり方は旧態依然として変わらない。なお、社会モデルは、障害概念の転換を示すものであり、治療やリハビリテーションそのものを否定するものではない。

 

 

 

【表題】地域で自立した生活を営む基本的権利

【結論】

   地域で自立した生活を営む権利として、以下の諸権利を障害者総合福祉法において確認すべきである。

. 障害ゆえに命の危険にさらされない権利を有し、そのための支援を受ける権利が保障される旨の規定。

. 障害者は、必要とする支援を受けながら、意思(自己)決定を行う権利が保障される旨の規定。

. 障害者は、自らの意思に基づきどこで誰と住むかを決める権利、どのように暮らしていくかを決める権利、特定の様式での生活を強制されない権利を有し、そのための支援を受ける権利が保障される旨の規定。

. 障害者は、自ら選択する言語(手話等の非音声言語を含む)及び自ら選択するコミュニケーション手段を使用して、市民として平等に生活を営む権利を有し、そのための情報・コミュニケーション支援を受ける権利が保障される旨の規定。

. 障害者は、自らの意思で移動する権利を有し、そのための外出介助、ガイドヘルパー等の支援を受ける権利が保障される旨の規定。

. 以上の支援を受ける権利は、障害者の個別の事情に最も相応しい内容でなければならない旨の規定。

. 国及び地方公共団体は、これらの施策実施の義務を負う旨の規定。

 

 

 

【表題】国の義務

【結論】

○ 国の義務として、以下の規定を設けるべきである。

. 国は、障害の有無、種別、軽重等に関わらず障害者がどの地域に居住しても等しく安心して生活することができる権利を保障する義務を有すること。

. 国は、障害種別や程度による制度の谷間や空白及び制度上の格差が生じないように制度設計を行う責務を有すること。

. 国は、地域間に支援の格差が発生することを防止し、又は発生した格差を解消することができる制度設計を行う責務を有するとともに、市町村への支援施策に関し必要な財政上の措置を行うこと。

. 国は、都道府県と共に、市町村が実施する支援施策の実態を把握し、障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて、それが実施されるように、広くその実施状況を国民に明らかにし、同法の実施を監視し、推し進める責務を有すること。

 

【説明】

憲法に示された基本的人権を保障する義務は第一義的には、国にあることから、障害者支援の最終責任は国にあることを確認した上で、障害種別による制度の谷間、制度上の格差の防止に関する義務、地域間格差の防止と財政的支援等の諸支援、実施状況に関する監視や情報開示等について、規定を設ける必要がある。

また、国は、障害者が地域で自立した生活を営む権利をもつことを、障害者を含む国民に広く周知しなければならない。

 

 

【表題】都道府県の義務

【結論】

○ 都道府県の義務として、以下の規定を設けるべきである。

. 市町村の行う支援施策の実態を把握すると共に、障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて、それが実施されるように、広くその実施状況を都道府県民に明らかにし、同法の実施を推し進めること。

. 市町村の支援施策に対して、必要な財政的補助を行うこと。その際、特定の市町村に集中する実態等があればそのことを勘案すること。

. 市町村の支給決定に対してなされる不服申し立てを受理し、障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて審査する等、必要な措置を講じること。

. 市町村と連携を図りつつ、相談支援体制の整備及び広域でなければ実施が困難な支援を行うこと。

【説明】

都道府県については、特に市町村間の格差是正に向け施策の実施状況に関する情報公開と財政的補助を障害者総合福祉法の基本的権利をふまえて行うと共に、不服申し立てに関する責務があることを明記した。

 

 

【表題】市町村の義務

【結論】

○ 市町村の義務として、以下の規定を設けるべきである。

. 障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて、当該市町村の区域における障害者の生活の現状及び障害者がどこで誰と生活し、どのような分野で社会参加を希望・選択するかなどを把握した上で、関係機関との緊密な連携を図りつつ、必要な支援施策を総合的かつ計画的に実施すること。

. 障害者総合福祉法の基本的権利に基づいて、障害者の支援施策の提供に関し、必要な情報の提供及び適切な説明を尽くし、並びに相談に応じ、必要な調査及び指導を行うと共に、そのサービス利用計画等を勘案して必要な支援施策を提供すること。

 

【説明】

市町村については、障害者総合福祉法で明記された基本的権利としての「どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されることを前提とした義務を規定した。また、公的支援からこぼれる人をなくす上で、行政の説明責任が重要であることに鑑み、これも明記した。

 

 

【表題】介護保険との関係

【結論】

○ 障害者総合福祉法は、障害者が等しく基本的人権を享有する個人として、障害の種別と程度に関わりなく日常生活及び社会生活において障害者のニーズに基づく必要な支援を保障するものであり、介護保険法とはおのずと法の目的や性格を異にするものである。この違いを踏まえ、それぞれが別個の法体系として制度設計されるべきである。

 

○ 介護保険対象年齢になった後でも、従来から受けていた支援を原則として継続して受けることができるものとする。

 


T−3 選択と決定(支給決定)

 

【表題】支給決定の在り方

【結論】

○ 新たな支給決定にあたっての基本的な在り方は、以下のとおりとする。

. 支援を必要とする障害者本人(及び家族)の意向やその人が望む暮らし方を最大限尊重することを基本とすること。

. 他の者との平等を基礎として、当該個人の個別事情に即した必要十分な支給量が保障されること。

. 支援ガイドラインは一定程度の標準化が図られ、透明性があること。

. 申請から決定まで分かりやすく、スムーズなものであること

 

【説明】

 支給決定は、他の者との平等を基礎とし、障害者の意向や望む暮らしが実現できるよう必要な支援の種類と量を確保するためのものであり、上記事項を基本として行われなければならない。

 

 

【表題】支給決定のしくみ

【結論】

○ 支給決定のプロセスは、原則として、以下のとおりとする。

. 障害者総合福祉法上の支援を求める者(法定代理人も含む)は、本人が求める支援に関するサービス利用計画を策定し、市町村に申請を行う。

. 市町村は、支援を求める者に「障害」があることを確認する。

. 市町村は、本人が策定したサービス利用計画について、市町村の支援ガイドラインに基づき、ニーズアセスメントを行う。

. 本人又は市町村により、申請の内容が支援ガイドラインの水準に適合しないと判断した場合には、市町村が本人(支援者を含む)と協議調整を行い、その内容にしたがって、支給決定をする。

5.4の協議調整が整わない場合、市町村(または圏域)に設置された第三者機関としての合議機関において検討し、市町村は、その結果を受けて支給決定を行う。

. 市町村の支給決定に不服がある場合、申請をした者は都道府県等に不服申立てができるものとする。

 

○ 支給決定について試行事業を実施し、その検証結果を踏まえ、導入をはかるものとする。

 

【説明】

 新たな仕組みにおいては、障害程度区分は使わずに支給決定をする。障害者自立支援法の一次審査で用いられる障害程度区分認定調査項目の106項目は、特に知的障害、精神障害については一次判定から二次判定の変更率が4割から5割以上であり、かつ地域による格差も大きいことから、障害種別を超えた支給決定の客観的指標とするのには問題が大きい。

 

新たな支給決定の仕組みが機能するための前提としては、当事者によるエンパワメント支援事業の充実や相談支援事業の充実、さらには市町村におけるニーズアセスメント能力の向上が図られなければならない。特に、支援ニーズを的確に伝えることが困難な人のニーズをくみ取るためには、日常的にかかわりのある支援者等がコミュニケーション支援するなどし、本人の意思や希望が確認されなければならない。

 

市町村においては、支給決定にかかわる職員等のニーズアセスメント能力の向上に向けて、一定の研修及び仕事をしながら教育を受ける職場内訓練(OJT)を充実することも必要である。

 

 

【表題】サービス利用計画

【結論】

○ サービス利用計画とは、障害者総合福祉法上の支援を希望する者が、その求める支援の内容と量の計画を作成し、市町村に提出されるものをいう。なお、そのサービス利用計画の作成にあたり、障害者が希望する場合には、相談支援専門員等の支援を受けることができる。

 

【説明】

サービス利用計画は、障害者総合福祉法による支援等を利用するにあたって、市町村に提出する必要な支援の内容と量を示すものである。障害者がどの支援をどの程度利用したいのか、本人のニーズに基づいて利用希望を明らかにするものである。サービス利用計画は、本人自身が策定する(セルフマネジメント)こともできるが、本人が希望する場合には相談支援専門員とともに策定することもできる。また、本人を中心に、家族や本人が信頼する日常的な支援者、契約行為等を締結する際の支援者を加えて相談支援専門員とともに策定することもできる。

 

 

【表題】支援ガイドライン

【結論】

   国及び市町村は、障害者の地域生活の権利の実現をはかるため、以下の基本的視点に基づいて、支援ガイドラインを策定するものとする。

. 国は、障害者等の参画の下に「地域で暮らす他の者との平等を基礎として生活することを可能とする支援の水準」を支給決定のガイドラインのモデルとして策定すること。

. 国及び市町村のガイドラインは、障害の種類や程度に偏ることなく、本人の意思や社会参加する上での困難等がもれなく考慮されること。

. 市町村は、国が示すガイドラインのモデルを最低ラインとして、策定すること。

. 市町村のガイドラインは、障害者等が参画して策定するものとし、公開とすること。また、適切な時期で見直すものとすること。

 

【説明】

ガイドラインは、障害者が住み慣れた地域で生活していくために必要な支援の必要度を明らかにすると共に、その人の生活を支援する支援計画を作成する過程において、何が公費により利用できる福祉サービスであるかを明らかにすることを目的に作られるものである。

 

また、ガイドラインで示す支給水準は、障害者権利条約に規定されている障害者の「他のものとの平等」や「地域生活の実現」を基本原則にするべきである。この基本原則に基づき、障害者の支援の必要度を類型化し、類型ごとの標準ケアプランに基づく支給水準を示すべきである。

また、類型化にあたっては、長時間介助、見守り支援、複数介助、移動支援等の必要性を含めて検討されるべきである。

 

市町村は国のガイドラインのモデルを最低ラインとして、ガイドラインを策定する。

策定にあたっては、当事者(障害者、家族及びその関係団体等)と行政、相談支援事業者、サービス提供事業者等の関係者が参画し、地域のその時点での地域生活の水準を踏まえて協議しなければならない。

この策定過程を通して、当事者、行政、事業者の協働が生まれることが期待される。

なお、地域生活をする重度障害者が少なく当事者の声が出にくい地域などでは、格差が広がるリスクも懸念される。そのため、国がガイドラインのモデルを示し、自治体ごとにその指針内容を最低ラインとして、独自のガイドラインを策定するものとする。市町村のガイドラインは、現在の支給決定の際に自治体で用いられている「要綱」等とは異なることから、適切に作成されるように国が助言すべきである。さらに、財政面から国基準をそのまま引用することがないようにするため、国がモデルとして策定したガイドラインの水準を超えて、市町村が必要に応じた支給決定ができる財源的な保障が必要となる。

 

さらに、国及び都道府県は、各市町村のガイドラインとそれに適合しない事例にかかわる情報を集約して、国のモデルガイドラインの見直しに反映させるとともに、その情報を自治体やその合議機関等に提供し、各市町村におけるガイドラインの作成や見直し、さらには支給決定事務の参考に資するように努めなければならない。

 

【表題】協議調整

【結論】

     障害者又は市町村において、サービス利用計画がガイドラインに示された水準やサービス内容に適合しないと判断した場合、市町村は、障害者(及び支援者)と協議調整を行い、これに基づいて支給決定する。

 

【説明】

協議調整による支給決定は、ガイドラインで示される水準やサービス内容に当てはまらない事例(類型を超える時間数等が申請された場合)について、個別の生活実態に基づいて本人と市町村間で行われるものをいう。

 

 

【表題】合議機関の設置と機能

【結論】

   市町村は、前記の協議が整わない場合に備え、第三者機関として、当事者相談員、相談支援専門員、地域の社会資源や障害者の状況をよく知る者等を構成員とする合議機関を設置する。

 

   合議機関は、本人のサービス利用計画に基づき、その支援の必要性を検討するとともに、支援の内容、支給量等について判断するものとする。

 

   障害者が希望する場合には、合議機関で意見陳述の機会が設けられる。

 

   市町村は、合議機関での判断を尊重しなければならない。

 

【説明】

障害者と市町村の協議において調整がつかない場合は、市町村に設置された合議機関において検討し、その結果を受けて、市町村が支給決定を行うことができるものとする。

合議機関では、障害特性や障害福祉サービス等の必要性をより適切に支給決定に反映するため、本人の状況について必要な情報をもとに個別事例についての検討を行う。障害者が希望する場合には、どのような支援をどの程度必要であるのか、合議機関で意見を述べる機会が設けられる。

ある合議機関での判断に不服がある場合には、他の合議機関で再調整ができる仕組みとすべきである。また、合議機関の構成員は、第三者として公平中立な役割を担うことができる人物とすべきである。

 

 

【表題】不服申立

【結論】

○ 市町村は支給決定に関する異議申立の仕組みを整備するとともに、都道府県は、市町村の支給決定に関して、実効性のある不服審査が行えるようにする。

 

○ 不服申立は、手続き及び内容判断の是非について審議されるものとし、本人の出席、意見陳述及び反論の機会が与えられるものとする。

 

【説明】

支給決定は、一連のプロセスに基づいた行政処分であるが、本人がその決定に不服がある場合には、極めて簡便に不服申立ができる仕組みが求められる。市町村への異議申立や都道府県への不服申立の手続きのハードルを低くするため、相談支援機関に不服審査の支援等を求めることができるようにすべきである。

国は、支給決定にかかわる決定処分取り消しに止まらず、申請に対する一定の処分をすることを都道府県が市町村に義務付けることができる仕組みを検討すべきである。


 

T−4 支援(サービス)体系

 

【表題】支援体系

【結論】

○ 障害者の支援体系は以下の通りとする。

 

A.全国共通の仕組みで提供される支援

 1.就労支援

 2.日中活動等支援

 3.居住支援

 4.施設入所支援

 5.個別生活支援

 6.コミュニケーション支援及び通訳・介助支援

 7.補装具・日常生活用具

 8.相談支援

9.権利擁護

 

B.地域の実情に応じて提供される支援

    市町村独自支援

     ・福祉ホーム

      ・居住サポート

      ・その他(支給決定プロセスを経ずに柔軟に利用できる支援等)

 

C.支援体系を機能させるために必要な事項

1.医療的ケアの拡充

2.日中活動の場等における定員の緩和等

3.日中活動の場への通所保障

4.グループホームでの生活を支える仕組み

5.グループホーム等、暮らしの場の設置促進

6.一般住宅やグループホームへの家賃補助

7.他分野との役割分担・財源調整

 

【説明】

 障害者総合福祉法の支援体系について、障害者権利条約を踏まえ、障害者本人を主体(自律・自己決定)として、地域生活が可能(施設・病院から地域自立生活への移行を含む)となるような支援体系として構築する必要がある。

 また、障害者自立支援法の「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」といった体系は、介護保険との整合性を意識した制度構築の結果であり、さらには、「介護給付」という名称も、そのニーズと支援実態を適切に表しているとは言い難い上に、介護保険の「介護保険給付」との混同も生みかねない。また、障害程度区分は介護給付の利用に対してのみ適用されているが、障害程度区分の廃止に伴い「介護給付」と「訓練等給付」に分ける必要性はなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


A.全国共通の仕組みで提供される支援

1.就労支援

 

【表題】就労支援の仕組みの障害者総合福祉法における位置づけ

【結論】

○ 障害のある人への就労支援の仕組みとして、「障害者就労センター」と「デイアクティビティセンター(仮称、以下同様)(作業活動支援部門)を創設する。

○ 社会的雇用等多様な働き方についての試行事業(パイロット・スタディ)を実施し、障害者総合福祉法施行後3年をめどにこれを検証する。その結果を踏まえ障害者の就労支援の仕組みについて、関係者と十分に協議しつつ所管部局のあり方も含め検討する。

 

2.日中活動等支援

 

【表題】@デイアクティビティセンター

【結論】

○ デイアクティビティセンターを創設する。

○ デイアクティビティセンターでは、作業活動支援、文化・創作活動支援、自立支援(生活訓練・機能訓練)、社会参加支援、居場所機能等の多様な社会参加活動を展開する。

○ 医療的ケアを必要とする人等が利用できるような濃厚な支援体制を整備するなど、利用者との信頼関係に基づく支援の質を確保するための必要な措置を講じる。

 

【説明】

障害者自立支援法における生活介護や自立訓練、地域活動支援センター等の利用者等の障害者総合福祉法に基づく活動の場として、デイアクティビティセンターを創設し、よりシンプルな支援体系とする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


【表題】A日中一時支援、ショートステイ

【結論】

○ 日中一時支援は、全国どこでも使えるようにするため、個別給付にする。

○ ショートステイは、医療的ケアを必要とする人も安心して利用できるよう条件整備をする。

 

【説明】

現行の日中一時支援事業は地域生活支援事業の選択事業であり、助成金や報酬が少ないため受託する事業所が少なく、事業を停止する事業者がみられる。事業者がないとの理由で実施していない市町村も多いようである。全国どこでも使えるようにするために、障害者総合福祉法の日中一時支援は従来のショートステイの日中利用のように個別給付とする。

ショートステイは、家族を含む介助者のレスパイトを保障し、社会的入院・入所を生み出さないための重要な事業である。また、現状からの一時避難としての機能を有することに鑑みると、一般の宿泊施設の利用も念頭において整備されるべきである。さらに、ショートステイについても医療的ケアを必要とする人に配慮した条件整備をする。

 

3.居住支援

 

【表題】グループホーム・ケアホームの制度

【結論】

○ グループホームとケアホームをグループホームに一本化する。グループホームの定員規模は家庭的な環境として4〜5人を上限規模とすることを原則とし、提供する支援は、住まいと基本的な日常生活上の支援とする。

 

【説明】

地域社会で自立生活をすすめるための共同住居(家)という原点に立った制度構築をする。グループホームでの支援は、居住空間の確保、基本的な生活支援、家事支援及び夜間支援とし、一人ひとりに必要なパーソナルな支援については個別生活支援を利用できるようにする。一人ひとりがよりその人らしさを発揮できる状況を生み出し、住民として暮らしていくことが大切である。一方、グループホームは「特定の生活様式を義務づけられない」ためにも、自分で自分の暮らしを選ぶ、選択肢の一つだと考える必要がある。

グループホーム、ケアホームは実態からしてもグループホームで統一すべきである。また、定員規模は、生活の場なので家庭に近い規模にするという観点から4人から5人とし、複数の住居に分かれて住むことを認める。

なお、市町村独自事業の福祉ホームがグループホームへの移行を希望する場合には、移行できるようにする。

 

4.施設入所支援

 

【表題】施設入所支援

【結論】

○ 施設入所支援については、短期入所、レスパイトを含むセーフティネットとしての機能の明確化を図るとともに、利用者の生活の質を確保するものとする。

○ 国は、地域移行の促進を図りつつ、施設における支援にかかる給付を行うものとする。

○ 国及び地方公共団体は、施設入所者の地域生活への移行を可能にするための地域資源整備の計画を策定し、地域生活のための社会資源の拡充を推進する。

○ 施設は入所者に対して、地域移行を目標とする個別支援計画を策定することを基本とし、並行して入所者の生活環境の質的向上を進めつつ、意向に沿った支援を行う。また、相談支援機関と連携し、利用者の意向把握と自己決定(支援付き自己決定も含む)が尊重されるようにする。

○ 施設入所支援については、施設入所に至るプロセスの検証を行いつつ、地域基盤整備10カ年戦略終了時に、その位置づけなどについて検証するものとする。

 

【説明】

 現行の障害福祉計画では、施設の定員削減目標、地域生活への移行目標が掲げられている。しかし、地域生活への移行が進められているものの、新規入所者が後を絶たないため、施設入所定員の削減目標の達成が難しい状況である。したがって、施設入所に至るプロセスの検証を行うことは重要である。

今まで以上に地域生活の支援体制、グループホーム等の社会資源の拡充、公営住宅等の住宅施策の充実、必要な人へのホームヘルパー等の居宅支援や個別生活支援等、地域生活のための支援を強化すべきである。

 


5.個別生活支援

 

【表題】@重度訪問介護の発展的継承によるパーソナルアシスタンス制度の創      

    設

【結論】

○ パーソナルアシスタンスとは、

)利用者の主導(支援を受けての主導を含む)による

)個別の関係性の下での

)包括性と継続性

を備えた生活支援である。

 

○ パーソナルアシスタンス制度の創設に向けて、現行の重度訪問介護を充実発展させる。

 

○ 対象者は重度の肢体不自由者に限定せず、障害種別を問わず日常生活全般に常時の支援を要する障害者が利用できるようにする。また、障害児が必要に応じてパーソナルアシスタンス制度を使えるようにする。

 

○ 重度訪問介護の利用に関して一律にその利用範囲を制限する仕組みをなくす。また、決定された支給量の範囲内であれば、通勤、通学、入院、1日の範囲を越える外出、運転介助にも利用できるようにする。また、制度利用等の支援、見守りも含めた利用者の精神的安定のための配慮等もパーソナルアシスタンスによる支援に加える。

 

○ パーソナルアシスタンスの資格については、従事する者の入り口を幅広く取り、仕事をしながら教育を受ける職場内訓練(OJT)を基本にした研修プログラムとし、実際に障害者の介助に入った実経験時間等を評価するものとする。

 

【説明】

 重度訪問介護を発展させ、パーソナルアシスタンス制度を創設するにあたっては、

)利用者の主導(ヘルパーや事業所ではなく利用者がイニシアティブをもつ支援)

)個別の関係性(事業所が派遣する不特定の者が行う介助ではなく利用者の信任を得た特定の者が行う支援)

)包括性と継続性(支援の体系によって分割され断続的に提供される介助ではなく利用者の生活と一体になって継続的に提供される支援)

が確保される必要がある。

 

 現行の障害者自立支援法における重度訪問介護の対象者は、「重度の肢体不自由者であって常時介護を要する障害者」(5条3)に限定されているが、障害の社会モデルを前提とする障害者権利条約及び谷間のない制度をめざす障害者総合福祉法の趣旨を踏まえれば、このような機能障害の種別と医学モデルに基づく利用制限は見直しが必要である。

 

「身体介護、家事援助、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援及び外出介護が、比較的長時間にわたり、総合的かつ断続的に提供されるような支援」(平成19(2007)年2月厚生労働省事務連絡)を難病、高次脳機能障害、盲ろう者等を含む「日常生活全般に常時の支援を要する」(同)すべての障害者に対して利用可能とする。

 

特に、重度の自閉症や知的障害等により行動障害が激しいなどの理由で、これまで入所施設や病院からの地域移行が困難とされてきた人たちが、地域生活を継続するためには、常時の見守り支援を欠かすことはできない。また、現行制度においては重度訪問介護の対象となっていない障害児についても対象とする。

 

以上に鑑みると、パーソナルアシスタンス制度は、各障害特性やニーズから来るキャンセルや待機などへの対応等、利用者にとっては柔軟な利用ができ、かつ報酬上も評価される仕組みにすべきである。

 

また、パーソナルアシスタンスは、利用者の主導性の下、個別の関係性の中で、個別性の強い支援に対応できるかを踏まえることが求められるため、資格取得のための研修は、現在の重度訪問介護研修よりも従事する者の入り口を幅広く取り、仕事をしながら教育を受ける職場内訓練(OJT)を基本にしたものとする必要がある。

 

 

【表題】A居宅介護(身体介護・家事援助)の改善

【結論】

    現行の居宅介護を改善した上で、個別生活支援に位置付ける。

 

【説明】

居宅介護(身体介護・家事援助)においても、各障害特性やニーズから来るキャンセルや待機などへの対応等、利用者にとっては柔軟な利用ができ、かつ報酬上も評価される仕組みにすべきである。

居宅介護は、家族が同居する場合やグループホームで生活する場合、更に障害児にも利用可能とする。

 

 

【表題】B移動介護(移動支援、行動援護、同行援護)の個別給付化

【結論】

○ 障害種別を問わず、すべての障害児者の移動介護を個別給付にする。

 

○ 障害児の通学や通園のために移動介護を利用できるようにする。

 

【説明】

「歩く」「動く」は「話す」「聞く」「見る」と同様、基本的権利であり、自治体の裁量で行う支援には馴染まないため、移動介護(移動支援、行動援護、同行援護)は個別給付とし、国1/2・都道府県1/4の補助金精算という仕組みにするなど、国・都道府県の財政支援を強化する。また、車(障害者の自家用車や障害者が借用した車)を移動の手段として認めるよう環境を整備する。移動介護の対象は障害種別を問わず、支援を必要とするすべての障害者が利用できるものとする。

 

 

6.コミュニケーション支援及び通訳・介助支援

 

【表題】コミュニケーション支援及び通訳・介助支援

【結論】

○ コミュニケーション支援は、支援を必要とする障害者に対し、社会生活の中で行政や事業者が対応すべき必要な基準を設け、その費用は求めない。

 

○ 通訳・介助支援に関しては、盲ろう者の支援ニーズの特殊性・多様性、さらにその存在の希少性等の事情から都道府県での実施とし、個別のニーズに応じたコミュニケーションと情報入手に関わる支援及び移動に関わる支援等を一体的に利用できるようにする。

 

【説明】

 通訳・介助支援とは、盲ろう者向けの通訳・介助を指す。コミュニケーション支援と通訳・介助支援は、「話す」「聞く」「見る」「歩く」「動く」という基本的権利の保障であり、自治体の裁量には馴染まないものでありながら、現状では自治体が個別に判断している。そのことによる自治体間格差も深刻な問題である。これらの支援は、障害者の地域生活支援に不可欠であり、かつ今までその権利性が十分に認められてこなかった類型である。

 

. 補装具・日常生活用具

 

【表題】補装具・日常生活用具

【結論】

    日常生活用具は補装具と同様に個別給付とする。

 

【説明】

 日常生活用具給付等事業は、自立支援給付である補装具との明確な定義上の違いも不明瞭であり、障害者の地域生活には不可欠である。そこで、日常生活用具の支給も個別給付とすべきである。

 

8.相談支援  「相談支援」の項参照

9.権利擁護  「権利擁護」の項参照

 

B.地域の実情に応じて提供される支援

市町村独自支援

 

【表題】市町村独自支援

【結論】

○ 現在、地域生活支援事業の下で実施されているものは、できるだけ「全国共通の仕組みで提供される支援」とし、柔軟な形の障害者の社会参加を進めるものなど自治体の裁量として残す方がよいものは、市町村独自支援として事業を残す。

 

○ 現行の福祉ホームと居住サポート事業は市町村独自支援として継続し、前者はグループホームへの移行を可能にする。

 

【説明】

障害者自立支援法の地域生活支援事業の中で、地域活動支援センターでの活動は多岐に及び、支給決定プロセスを経ずに、より柔軟な形で障害者の社会参加支援を進めているところもある。そうした活動については障害者総合福祉法の下でも、全国共通の仕組みとは別に、市町村独自事業として実施できるようにする。

 

 

C.支援体系を機能させるために必要な事項

1.医療的ケアの拡充

 

【表題】医療的ケアの拡充

【結論】

○ 日中活動支援の一つであるデイアクティビティセンターにおいて看護師を複数配置するなど、濃厚な医療的ケアが必要な人でも希望すれば同センターを利用できるような支援体制を確保する。併せて重症心身障害者については、児童期から成人期にわたり、医療を含む支援体制が継続的に一貫して提供される仕組みを創設する。

 

○ 地域生活に必要な医療的ケア(吸引等の他に、カニューレ交換・導尿・摘便・呼吸器操作等を含む)が、本人や家族が行うのと同等の生活支援行為として、学校、移動中など、地域生活のあらゆる場面で確保される。

 

○ 入院中においても、従来より継続的に介助し信頼関係を有する介助者(ヘルパー等)によるサポートを確保し、地域生活の継続を可能とする。

 

【説明】

(略)また、生活支援行為としての医療的ケアとは、個別性を重視して十分な信頼関係のあるヘルパーが、本人や家族が行うのと同等な行為として特定の者に医療的ケアを行うということであり、信頼関係のある介助者が研修や訓練を受けた上で、医療的ケアができる濃密な支援を可能とする仕組みが求められる。同様の仕組みは、学校においても必要である。また、一方で入院が必要な場合には、信頼関係のある介助者(ヘルパー)によってサポートが得られるようにして、必要な医療を得ながら、地域生活が継続できるようにする。

 

2.日中活動等支援における定員の緩和など

 

【表題】日中活動等支援の定員の緩和など

【結論】

    過疎地等の事業所が利用者5名でも事業を展開できるようにする。

 

【説明】

地方に行けば行くほど人が集まらないため、5名でも事業を展開することができるようにする。現在の重症心身障害児・者通園事業B型は平成24年4月からは生活介護事業への移行も考えられるが、地方や利用者が少ない地域では、利用者が集まらないために運営が困難になる可能性があり、十分な配慮が必要である。

 

3.日中活動等支援への通所保障

 

【表題】日中活動等支援への通所保障

【結論】

○ 国は日中活動等支援への送迎を支援内容の一環に位置付け、これに係る費用は報酬上で評価する仕組みとする。

 

○ 報酬の算定にあたって声かけなどの送迎中の支援を踏まえることや、公共交通機関等による通所者の扱いを併せて検討する。

 

【説明】

日中活動等支援を利用するには送迎が必要である。また、医療的ケアを必要とする人の送迎には看護師の添乗も必要になる。現行の生活介護には送迎経費も含まれているとの解釈があるが、他の通所事業には送迎経費は含まれていない。障害者総合福祉法においては、実績に応じて報酬に含まれるような制度にする必要がある。

報酬の算定に当たっては、送迎を声かけや見守りを含めた支援として位置づけるのか、単なる移動の支援として位置づけるのかについて結論を得る必要がある。また、公共交通機関等を利用する通所者の交通費等移動に係る費用の支給についても、その取扱いを検討する。

 

 

4.グループホームでの生活を支える仕組み

 

【表題】グループホームでの生活を支える仕組み

【結論】

○ グループホームで居宅介護等の個別生活支援を利用できるようにする。

 

○ 高齢化等により日中活動にかかる支援を利用することが困難であるか、又はそれを必要としない人が日中をグループホームで過ごすことができるように、支援体制の確保等、必要な措置を講じる。

 

【説明】

障害者総合福祉法におけるグループホームは多様な住まい方支援の一つであることから、他の在宅障害者と同様に、居宅介護等の個別支援を併給できるようにする。

今後、高齢、重度・重複障害、医療的ケアや行動障害等さまざまなニーズのある人たちの利用が多くなることが想定され、介助等個別支援を必要とするそれらの人たちに対して、居宅介護等を活用することで、地域での自立生活が可能となる。

また、それらの人たちも利用できるようハード面での整備を推進するとともに、職員の夜間常駐、休日の日中支援、医療的ケアの実施が可能となるよう、報酬、運営基準、人員配置の見直しを図る必要がある。

したがって、グループホームでの支援をグループホームの機能として全てを包括せず、最低限機能を備えつつ、それ以外のパーソナルな支援はオプションとして、利用できるようにすることが適切である。これらの関係を整理、検討し、生活支援体制を確保することが必要である。

 

5.グループホーム等、暮らしの場の設置促進

 

【表題】グループホーム等、暮らしの場の設置促進

【結論】

○ 国庫補助によるグループホームの整備費を積極的に確保する。また、重度の障害や様々なニーズのある人への支援も想定し、安定的運営を可能とする報酬額が必要である。一方、グループホームを建設する際の地域住民への理解促進について、事業者にのみに委ねる仕組みを見直し、行政と事業者が連携・協力する仕組みとすることが必要である。

                                         ※ 公営住宅や民間賃貸住宅の活用についてはVを参照のこと。

 

【説明】

地域生活への移行を促進する上で、重度の障害者が利用できるグループホームを含む住居を確保するため、国庫補助による整備促進が必要である。また、報酬単価が低く、人材確保や事業運営に困難があるなど、グループホーム単独では経営が成り立たない現状があるため、積極的に整備を推進するための予算確保が必要である。

 

 

 

 

7.他分野との役割分担・財源調整

 

【表題】シームレスな支援と他分野との役割分担・財源調整

【結論】

○ 障害がいかに重度であっても、地域の中で他の者と平等に学び、働き、生活し、余暇を過ごすことができるような制度とする。

 

【説明】

 「他の者との平等」の視点から障害がいかに重度であっても、地域の中で「他の者」と同じ生活を営み、共に育ち、学び、「他の者」と同じ職場で仕事をこなし、「他の者」と同様に余暇を過ごすことができるような制度が必要である。

 その際、シームレスな支援を確保するために、障害者雇用納付金や介護保険、教育等関連分野の財源との調整をする仕組みも必要である。


 

T−5 地域移行 

 

表題】「地域移行」の法定化

【結論】

○ 「地域移行」とは、住まいを施設や病院から、単に元の家庭に戻すことではなく、障害者個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現することを意味する。

 

○ すべての障害者は、地域で暮らす権利を有し、障害の程度や状況、支援の量等に関わらず、地域移行の対象となる。

 

○ 国が、社会的入院、社会的入所を早急に解消するために「地域移行」を促進することを法に明記する。

 

○ 国は、重点的な予算配分措置を伴った政策として、地域移行プログラムと地域定着支援を法定施策として策定し、実施する。

 

【説明】

障害者自立支援法において、平成23年度末までに、身体・知的の施設入所者の1割(13,000人)の地域移行と精神科病院からの72,000人の退院促進が、地域移行政策の目標として謳われた。だが、退院・退所しても新たに入院・入所する現状がある。そうした状況を解消するめに、入院・入所に至るプロセスの検証を行い、地域生活のための社会資源を拡充しなければならない

 

本来は誰もが地域で暮らしを営む存在であり、障害者が一生を施設や病院で過ごすことは普通ではない。入院・入所者が住みたいところを選ぶ、自分の暮らしを展開するなど、障害者本人の意志や希望、選択が尊重される支援の仕組みと選択肢を作ることが早急に求められる。とりわけ家族の状況や支援不足から希望していない生活環境にある障害者についても、本来地域移行の支援対象者に含まれるべきであり、一部屋に多数の者が住まう形態を解消し、地域生活を実現できるようにすることを検討されるべきである。

 

地域移行の促進にあたって、地方における地域基盤整備や財政等の格差等、国と地方の財政負担構造などに課題があるなかで、単に、施設の入所定員や病院の病床数の減少を法定化することだけでは、家族の不安や負担を強いる危険性と混乱を招きかねない。そこで地域移行は、地域移行プログラムと地域定着支援を入所・入院している障害者に提供しつつ、誰もが地域で暮らせるための地域資源と支援システムを整備する必要がある。特に、長期入所者、入院者については、地域移行の阻害要因を検証しつつ、緊急に人権が回復されるよう支援されるべきである。

 

その上で、今後、「地域基盤整備10カ年戦略」等、入所施設・病院から地域生活への地域移行に向けた各種施策により、地域における基盤整備が進展する中で、入所施設・病院の役割や機能等、その位置づけを見直す必要がある。また、地域移行ホーム、退院支援施設等のように、同一敷地内に移行のための施設の是非を含め、その在り方についても今後検討すべきである。

 

 

【表題】地域移行プログラムと地域定着支援

【結論】

○ 地域移行プログラムと地域定着支援は、実際に地域生活を始められるように、一人ひとりの状況に合わせて策定される。地域移行プログラムでは、入院・入所者に選択肢が用意され、本人の希望と納得のもとで施設や病院からの外出、地域生活を楽しむ体験、居住体験等のプログラムも提供される。また、地域定着支援では、地域生活に必要な支援、その他福祉制度に関する手続等の支援や必要とする社会資源に結び付けるなどの環境調整も行うものとする。

 

○ 地域移行プログラムと地域定着支援の事業は、国の事業として行う。施設及び病院は、これらの事業を受けるよう積極的に努めなければならない。施設及び病院がこれらの事業を行う場合には、地域の相談支援事業者、権利擁護事業者等の地域移行支援者と連携するための体制を整備しなければならない。

 

○ ピアサポーター(地域移行の支援をする障害当事者)等は、入院・入所者の意思や希望を聴きとりつつ、支援するノウハウを活かし、重要な人的資源として中心的な役割を担う。特に長期入所者や入院者に対する支援は、不安軽減と意欲回復のために、本人に寄り添った支援が必要である。

 

○ 入所施設・病院の職員がそれぞれの専門性をより高め、地域生活支援の専門職としての役割を果すため、国は移行支援プログラムを用意し、これらの職員の利用に供しなければならない。

 

※ 地域移行を促進するための住宅確保の施策についてはVを参照のこと。

 

【説明】

 地域移行プログラムは、障害者の意志や自己決定を確認し、それを実現するためのものである。

入院者・入所者が自ら選ぶことを基本として設計されるべきである。地域移行プログラムは、地域移行できる人を選別するものではないので、標準的なプログラムに適応できるかどうかを判断するものであってはならない。あくまでも本人支援という観点から本人に合わせた個別的なものとして準備されるものである。

 

このような地域移行プログラムの実施に当たっては、入所者・入院者が、どのようなニーズがあって入所・入院しているのか、定期的にそのニーズを聞き取る必要があり、社会的入所・入院の軽減を目指さなければならない。

 

その際、施設・病院関係者だけでなく、地域移行支援者(相談支援事業者、権利擁護事業者、障害者団体、地域生活支援協議会、市民等、様々な立場の者)とチームを組むことができる仕組みを作ることが必要である。このことは、安易な新規の入所・入院を避けるためにも重要である。

 

また、地域移行プログラムを提供しつつ、移行先での地域定着支援として、様々なサービスを受けるため申請や社会資源の配置等が行われるべきである。地域移行プログラム及び地域定着支援の事業は、まず施設・病院から外出したり、地域での生活を楽しむ体験等をしながら、自分の地域生活をイメージする期間も必要である。そのため移動支援等の福祉サービスを利用できる仕組みや経済的に困難な入院・入所者にはその費用を助成する仕組みが不可欠である。

 

また、この事業を支える人材、特にピアサポーターを地域移行推進のための重要な人的資源と位置づけ、ピアサポーターの育成ならびに地域移行支援活動に対する正当な報酬等の財源を確保すべきである。

 

さらには、現行の施設・病院の職員がその専門性を地域支援に活かしていくことが、地域移行を推進していく上で求められることになる。その際には、職員には、地域生活支援の観点から支援の在り方について視点の転換が求められるので、その転換を容易にするための移行支援プログラムが用意される必要がある。

 

 

T−6 地域生活の資源整備 

 

【表題】 「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)策定の法定化

【結論】

     国は、障害者総合福祉法において、障害者が地域生活を営む上で必要な社会資源を計画的に整備するため本法が実施される時点を起点として、前半期計画と後半期計画からなる「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)を策定するものとする。

策定に当たっては、とくに下記の点に留意することが必要である。

 

・ 長期に入院・入所している障害者の地域移行のための地域における住まいの確保、日中活動、支援サービスの提供等の社会資源整備は、緊急かつ重点的に行われなければならないこと。

 

・ 重度の障害者が地域で生活するための長時間介助を提供する社会資源を都市部のみならず農村部においても重点的に整備し、事業者が存在しないためにサービスが受けられないといった状況をなくすべきであること。

 

・ 地域生活を支えるショートステイ・レスパイト支援、医療的ケアを提供できる事業所や人材が不足している現状を改めること。

 

     都道府県及び市町村は、国の定める「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)に基づき、障害福祉計画等において、地域生活資源を整備する数値目標を設定するものとする。

 

     数値目標の設定は、入院者・入所者・グループホーム入居者等の実態調査に基づかなければならない。この調査においては入院・入所の理由や退院・退所を阻害する要因、施設に求められる機能について、障害者への聴き取りを行わなければならない。

 

 ※ 地域移行を促進するための住宅確保の施策についてはVを参照のこと。

 

【説明】

 福祉サービスは、それを提供するマンパワーなくして成立しない。福祉サービスには様々なものがあるが、地域社会で生活を営む上で必要な支援を行う事業所と人材は、いまもって不足している。

 

とくに、重度障害者が地域で生活するうえで、障害者自立支援法の重度訪問介護等を担う事業所と人材は、大都市部も含め全般的に不足しており、農村部にはほとんどないといった状況が存在することは、このたびの東日本大震災の被災地の状況を見ても明らかである。しかしこれでは、どこで、だれと住むかといったきわめて基本的な権利さえ実現できない。

 

(略)

 

施設待機者は、全てが真に施設入所の必要な者とは言えない。障害福祉計画等で単純に施設待機者数を施設設置の根拠とすることは妥当ではない。待機者は、さまざまな福祉サービス利用の待機者であるとの視点に立ち、具体的な地域基盤の整備を進めることが必要である。また再入院・再入所についても、障害者本人の問題としてのみ捉えるのではなく、地域支援の不足・不備からくるものとして検証し、再び地域移行にむけて支援を行うことが必要である。

 

これらを行うためには、入院者・入所者実態調査が不可欠である。

なぜ入院・入所に至ったのか、入院者・入所者の希望は何か、何が退院・退所を阻害する要因であるのかを、国主導で分析すべきである。その際、全国的な把握、地域特性の把握が、地域支援のあり方に関わる貴重なデータであり、地域移行に向けた取り組みの根拠となる。なお、定員が一定数を超える大規模なグループホームについても、病院や入所施設同様に入居者への聴き取り調査の対象に含めるべきである。

 

以上に基づき、国は、地域における障害者向けの住宅、日中活動、訪問系サービス等を新たに大規模に提供することを目標にした「地域基盤整備10ヵ年戦略」(仮称)を策定すべきである。この際、設定される数値目標は、今後行われる入院・入所者への調査の結果などに基づいて設定されるものとする。

 

また、都道府県、市町村の障害福祉計画は、この「10ヵ年戦略」に基づいた数値目標を設定すべきである。地方公共団体の障害福祉計画等で掲げられた地域移行者目標数値は、地域支援サービス整備の目標数値とともに現実に達成されることが求められる。しかし、地域移行は施設や病院から住まいを移行しただけで終るものではないため、移行後も地域での生活実態の把握や支援状況の検証を行なうべきである。

 

 

【表題】障害福祉計画

【結論】

○ 障害者総合福祉法の支援資源を総合的・計画的に整備するため、市町村は市町村障害福祉計画を、都道府県は都道府県障害福祉計画を策定し、国はその基本方針及びそのための整備計画を示す。

 

○ 国が定める障害福祉計画のための第1期の整備計画は「地域基盤整備10ヵ年戦略」の前半期の整備計画をもって充てる

 

○ 障害福祉計画は、その策定過程と評価・見直し過程で、障害者、障害者の家族、事業者、その他の市民が参加する「地域生活支援協議会」の十分な関与を確保する。とくに知的障害・精神障害やこれまで制度の谷間におかれてきた障害者・難病等の当事者の参加が求められる。

 

○ 基本方針および障害福祉計画の策定・評価は、客観的な調査データを踏まえて行なう。とりわけ地域社会での日常生活や社会参加の実態を障害のない市民のそれとの比較したデータを重視する。

 

○ 障害福祉計画は1期5年とする。

 

○ 国、都道府県、市町村は障害福祉計画の実施に必要な予算措置を講じる。

【説明】

障害福祉計画は、支援資源の計画的整備、障害当事者・関係者・行政の協議と相互理解の形成、一般市民や議会が障害者支援について理解する手段、実態調査などデータ収集の契機などの多様なメリットがあり、障害者総合福祉法でも既存の計画との関係性をよく整理した上で、継続発展させるべきである。

障害者自立支援法の障害福祉計画は、十分な当事者参加がなく参加する障害者の障害種別が限定されていること、国の目標を人口比で当てはめた計画が多いこと、策定後の実施状況評価とその評価をふまえた改善・修正という面が弱いことなどの課題が指摘されてきた。これらの克服が必要とされる。

 

また、障害者基本計画が10年計画であり、前半・後半に分けて数値目標を含む「重点施策実施5ヵ年計画」を定め進捗状況を毎年報告することが定着してきた。その中心分野である「福祉」が障害者自立支援法の下では3年計画(数値目標の基本設定は6年間)の障害福祉計画となっているのは、介護保険との統合をめざした結果である。障害者施策の総合的・計画的推進の観点から、障害福祉計画は1期5年とし、障害者基本計画の「重点施策実施5ヵ年計画」と一致させるべきである。

 

なお、「障害福祉計画」の名称については、障害者基本法に基づく「障害者計画」、社会福祉法に基づく「地域福祉計画」等の類似計画があるので、「障害」分野の「福祉」領域の計画であることを単純明快に示す名称は現行のままがよい。

 

 

【表題】地域生活支援協議会

【結論】

○ 地域における既存の社会資源を有機的に連携させ、地域全体にかかる課題を検討して地域社会の支援体制をより充実させる仕組みとして、市町村(ないし圏域)および都道府県単位で、障害者及びその関係者の参画を前提とした地域生活支援協議会を法定機関として設置する。

 

○ 地域生活支援協議会は、その地域における障害者施策の現状と課題を検討し、改善方策や必要な施策を講じるための具体的な協議を行うほか、市町村又は都道府県における障害者に関する福祉計画策定に意見を述べるものとする。

 

○ とくに、都道府県単位の地域生活支援協議会は、上記のほか、広域的・専門的な情報提供と助言や市町村障害者福祉計画策定の支援機能を果たすものとする。

 

○ 地域生活支援協議会は、ライフステージにわたる途切れない支援体制が整備されるよう、地域における様々な社会資源と連携するものとする。

 

T−7 利用者負担 

 

【表題】利用者負担

【結論】

○ 他の者との平等の観点から、食材費や光熱水費等の誰もが支払う費用は負担をすべきであるが、障害に伴う必要な支援は、原則無償とすべきである。

ただし、高額な収入のある者には、収入に応じた負担を求める。その際、認定する収入は、成人の場合は障害者本人の収入、未成年の障害者の場合は世帯主の収入とする。

また、高額な収入のある者の利用者負担については、介護保険の利用を含む必要なサービスの利用者負担を合算し、現行の負担水準を上回らないものとすることが必要である。

 

○ 上記の障害に伴う必要な支援とは、主に以下の6つの分野に整理することができる。

@       相談や制度利用のための支援

A       コミュニケーションのための支援

B       日常生活を送るための支援や補装具の支給

C       社会生活・活動を送るための支援(アクセス・移動支援を含む)

D       就労支援

E       医療・リハビリテーションの支援

なお、Eの医療については、障害者のすべての医療費を全額公費負担にというものではなく、障害に伴う医療費の自己負担を公費負担にすることについて述べたものである。

 

 

T−8 相談支援

 

【表題】相談支援

【結論】

     相談支援の対象は、障害者総合福祉法に定める障害者、同法の支援の可能性がある者及びその家族等とする。

 

     相談支援は、福祉制度を利用する際の相談のみでなく、障害、疾病等の理由があって生活のしづらさ、困難を抱えている人びとに、福祉・医療サービス利用の如何にかかわらず幅広く対応するものとする。 

また、障害者本人の抱える問題全体に対応する包括的支援の継続的なコーディネートを行う。

さらに、障害者のニーズを明確にするとともに、その個別ニーズを満たすために、地域でのあらたな支援体制を築くための地域への働きかけも同時に行うものとする。

 

 

【表題】相談支援機関の設置と果たすべき機能

【結論】

○ 人口規模による一定の圏域ごとに、地域相談支援センター、総合相談支援センターの配置を基本とし、エンパワメント支援事業を含む複合的な相談支援体制を整備する。

 

○ 身近な地域での障害種別や課題別、年齢別によらないワンストップの相談支援体制の整備充実、一定の地域における総合的な相談支援体制の拡充を行い、さらに広域の障害特性に応じた専門相談支援や他領域の相談支援(総称して以下、特定専門相談センター)との連携やサポート体制の整備を行う。

 

○ 身近な地域での障害者本人(その家族を含む)のエンパワメントを目的とするピアサポートや家族自身による相談支援を充実する(エンパワメント支援事業)。

 

○ 地域相談支援センター、総合相談支援センター(以下「相談支援事業所」と総称する)は、障害者本人等の側に立って支援することから、給付の決定を行う市町村行政やサービス提供を行う事業所からの独立性が担保される必要がある。

 

【説明】

1.地域相談支援センターの組織体制と役割

(1)組織体制

地域の相談支援センターは、もっとも住民の生活に身近な圏域(人口3〜5万人に1ヶ所を基準とする)を単位に設置されるものとする。

地域相談センターは、迅速にニーズに応えるため、シンプルかつネットワークする相談支援体制をめざし、その人材と機能を強化していく。

地域相談支援センターは、当該センターのみでは支援が困難な場合において、総合相談センターおよび特定専門相談機関に協力や助言、直接の対応を求めるものとする。

 

(2)役割

地域相談センターは、障害者に寄り添った相談支援(アウトリーチを含む)や継続的な相談支援を行う。そのうえで、地域相談支援センターに所属する相談支援専門員は、希望する人を対象に本人中心支援計画・サービス利用計画を策定できるものとする。

 

想定される相談者として、具体的には、以下の障害者及びその家族等である。

@     支援を受ければ、ある程度の希望の実現やニーズの解決が想定できる人。

A     生活の質の維持や社会参加に継続してサービスを利用する必要があり、また希望の表明や制度手続き、サービス調整等に一貫した支援を希望する人。

B     社会資源の活用をしておらず、生活が困難な状態にあり社会参加が果たせていない人(手帳をもたない人も含む)。

C     部分的にサービス等を利用しているものの、生活の立て直しを必要としている人。

D     既存のサービス等では解決困難な生活課題を抱えている人。

E     家族等の身近な関係のなかで問題を主体的に相談できる人がおらず、踏み込んだ支援を必要としている人(虐待を含む)。

F     その他、相談支援を希望する人。

 

2.総合相談支援センターの組織体制と役割

(1)組織体制

総合相談支援センターは、15万〜30万人の圏域を単位に、都道府県が市町村と協議して一定の条件を満たした事業者に事業を委託して設置する。

総合相談支援センターには、手話通訳士有資格者やろうあ者相談員等を配置する。

 

(2)役割

総合相談支援センターは、相談支援のなかで、特に複雑な相談事例について対応する。

 

3.特定専門相談支援センターの組織体制と役割

(1)組織体制

特定専門相談支援センターは、原則都道府県を単位として設置される。

 

(2)役割

特定専門相談支援センターは、障害種別や障害特性に応じた専門相談を担うとともに、地域相談支援センター及び総合相談支援センター等への専門的助言や専門的人材の養成支援、本人中心支援計画・サービス利用計画策定にあたっての助言等を行う。

  とくに、障害特性に応じた専門相談(重度の障害の場合、医療との連携が必要な場合、難病等の難治性慢性疾患に伴う場合など)については、全国規模の当事者組織等の特定専門相談支援センターを活用し「T‐4 支援(サービス)体系」の「C-1.医療的ケアの拡充」の内容に基づいて、地域相談支援センター、総合相談支援センター等との相互の緊密な連携協力を行い、地域で暮らせる相談支援を行うことが必要となる。

 

4.相談支援事業所の独立性

相談支援事業所は、市町村やサービス事業所から独立性を担保されるべきであるから、都道府県が指定することを基本とする。また、地域の実情に合わせて障害保健福祉圏域単位や市町村域の単位で障害者本人や障害福祉関係者、行政関係者が参画する運営委員会の設置などを通じて、運営の独立性がチェックされなければならない。

 

 

【表題】本人(及び家族)をエンパワメントするシステム

【結論】

     国は、障害者本人によるピアサポート体制をエンパワメント事業として整備する。身近な地域(市町村、広域圏、人口5万人から30万人)に最低1か所以上の割合で地域におけるエンパワメント支援を行える体制の整備を行うものとする。

 

○ エンパワメント支援事業の目的は、障害者たちのグループ活動、交流の場の提供、障害者本人による自立生活プログラム(ILP)、自立生活体験室、ピアカウンセリング等を提供することで、地域の障害者のエンパワメントを促進することである。

 

○ エンパワメント支援事業の実施主体は、障害者本人やその家族が過半数を占める協議体によって運営される団体とする。

 

○ エンパワメント支援事業は、地域相談支援センターに併設することができる。

 

○ 障害者本人(及び家族)をエンパワメントするシステムの整備については、当事者リーダーや、真に障害者をエンパワメントできる当事者組織の養成を図りつつ、段階的に実施する。

 

【説明】

実際に地域で生活する障害者の意思(自己)決定・自己選択を支援し、エンパワメントを支援しているのは、本人のことをよく理解する家族や支援者であるとともに、各地の自立生活センター(CIL)や知的障害の本人活動、各種の難病や精神障害等の仲間によるさまざまな当事者相互支援活動(セルフヘルプグループ)である。

問題は、一定の当事者リーダーとその活動をサポートする仕組みが存在する地域と、存在しない地域との間に大きな格差が存在する。

 

制度改革にあたっては、当事者リーダー養成や真に障害者をエンパワメントできる当事者組織とその活動を公的にサポートする仕組みを創出していくべきである。

 

その方法については、各地の取り組みが参考となるが、今後は、当事者活動を先進的に取り組む地域をモデル指定し、その成果を検証しながら、全国的に格差を解消していくことが望まれる。

また、デイアクティビティセンターのサービスのなかには、交流の場の提供やグループ活動を位置づけて、エンパワメント支援を行うことも必要である。

 

 

【表題】相談支援専門員の理念と役割

【結論】

○ 相談支援専門員(仮称)に関する理念と役割を示すことが重要である。

 

○ 相談支援専門員の基本理念は、すべての人間の尊厳を認め、いかなる状況においても自己決定を尊重し、当事者(障害者本人及び家族)との信頼関係を築き、人権と社会正義を実践の根底に置くことである。

 

○ 上記の理念に基づき相談支援専門員は、本人の意向やニーズを聴き取り、必要に応じて本人中心支援計画およびサービス利用計画の策定にかかる支援を行う。具体的には、本人のニーズを満たすために制度に基づく支援に結びつけるだけでなく、制度に基づかない支援を含む福祉に限らない教育、医療、労働、経済保障、住宅制度等々あらゆる資源の動員を図る努力をする。

 また、資源の不足などについて、その解決に向けて活動することも重要である。

 

【説明】

1.相談支援専門員の役割

 

(1)相談支援専門員は、相談する障害者及びその家族それぞれの利益のために存在することを一義とする。そのためには福祉サービス等を決定し提供する役割から独立することを原則とする。但し、行政において相談に応じ、支給決定にかかわる職員は相談支援専門員の研修を受けた者であることが望ましい。

 

(3)相談支援専門員は障害者に寄り添い、信頼関係のもと障害者の生活を成立させ、継続でき、夢・希望などを叶えることを含む個々の人生を支援する専門職である。本人によって選択される立場にあることから、地域などを超えて、相談支援専門員や相談支援事業所を選択できる体制整備やそのための財政措置も検討されるべきである。

 

(4)障害者自身が相談支援専門員となり、地域の相談支援体制全般において、協働することが望ましい。なお、障害者が相談支援専門員になる際には、障害者としての生活経験などを実務経験として勘案するなどを検討すべきである。

 

3.相談支援専門員の業務

 

相談支援専門員は、具体的には以下のような業務内容を担う。

(1)相談支援を求める障害者本人の包括的なニーズを把握する。とくに、聴覚、視覚障害、知的障害者等の意思疎通や情報を知ることに困難を抱える人向けに、相談支援事業者の所在地や相談方法(誰に、どのようなことを、どのように相談できるか)などについても、情報提供を十分に行う。

(2)依頼を受けた場合には、ニーズ中心の支援計画(本人中心支援計画、サービス利用計画)を本人とともに立案する。

(3)本人の地域生活のニーズを満たすために、総合的なフォーマル・インフォーマルサービスの利用、支給決定のために行政等関係機関との協議を行い調整する。

(4)必要に応じて、本人とサービスを提供する者が参加する会議を開催し、複数のサービスを提供する者等との個別調整やそのための会議を開催する。

(5)サービス資源が不足しているときは必要なサービス(社会資源)の開発につなげる。

 

 

【表題】相談支援専門員の研修

 

○ 研修の実施にあたっては、障害者が研修企画や講師となって研修を提供する側になること、または研修を受ける側にもなるなど、研修への当事者の参画を支援することが重要である。

 

 

【説明】

 

将来的には相談支援専門員の質を担保するうえでソーシャルワーク専門職を基礎資格とすることを目指すべきである。そのためには、現行の専門職養成課程では、その内容が不十分であり、今般の障害者制度改革の趣旨に照らし、必要な見直しが図られるべきである。

 

障害者(本人及び家族)との連携は、本人中心の支援を行うにあたり、重要な課題である。

障害者自身が相談支援専門員となり、地域の相談支援体制全般において、協働することが望ましい。

なお、障害者自身が相談支援専門員になる際には、当事者としての生活経験などを実務経験として勘案するなどを検討すべきである。

 


 

T−9 権利擁護 

 

【表題】第三者の訪問による権利擁護(オンブズパーソン)制度

【結論】

○ 国は、都道府県ないし政令指定都市単位で、障害者のそれぞれの生活領域(居宅グループホーム、入所施設等における生活、日中活動や就労の場等)や場面(精神科病院からの退院促進を含む地域移行)において、障害者の求めに応じ、障害者本人を含む権利擁護サポーター等の第三者が訪問面会を行う権利擁護のための体制整備を行うものとする。  

 

※ 入院中の精神障害者の権利擁護、障害児の権利擁護についてはVを参照  のこと。

 

T−10 報酬と人材確保

 

【表題】報酬の支払い方式

【結論】

○ 報酬の支払い方式に関して、施設系支援にかかる場合と在宅系支援にかかる場合に大別する。

○ 施設系支援にかかる報酬については、「利用者個別給付報酬」(利用者への個別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費)に大別する。前者を原則日払いとし、後者を原則月払いとする。

○ 在宅系支援にかかる報酬については、時間割り報酬とする。

○ すべての報酬体系において基本報酬だけで安定経営ができる報酬体系とする。

 

【説明】

以上のような観点から、施設系支援にかかる報酬については、「利用者個別給付報酬」(利用者への個別支援に関する費用)と「事業運営報酬」(人件費・固定経費・一般管理費)に大別する。概ね、前者を2割、後者を8割程度とする。

「利用者個別給付報酬」は原則日払いとする。但し、利用率80%を上回れば全額支払い、それ以下の場合は、利用実績に応じた日割り計算で事業所に支払われる。

「事業運営報酬」は原則月払いとする。すなわち、施設利用定員による月額を定額で支払う。

 

在宅系支援にかかる報酬については、時間割り報酬とする。

 

 

 

U 障害者総合福祉法の制定と実施への道程

 

【表題】地域での自立した暮らしのための支援の充実

【結論】

○ 障害程度区分に連動する国庫負担基準を支給決定量の上限としてはならないことについて自治体に徹底させる。国庫負担基準を超える分の国から市町村への財政支援を行う。

○ 地域生活支援事業の地域格差の解消の為に予算を確保する。

○ 移動支援の個別給付化、重度訪問介護の知的・精神障害者、障害児への対象拡大を行う。

 

【説明】

障害者総合福祉法への移行に向けて、平成24年4月1日から可能な施策は実施する。必要な支援の量が障害程度区分に連動する国庫負担基準を超える場合、相談支援とケアプランを検証した上で支給できるように、国が市町村に財政支援を行う。

 移動支援、日中一時支援等は地域生活支援事業ではなく、個別給付にする。

 

 

【表題】報酬構造の見直し、加算の整理と報酬改訂

【結論】

○ 各種の加算を整理し、可能なものは基本報酬に組み入れていく。

 

【説明】

複雑な加算制度を基本報酬に組み入れることで、事務処理を簡素化していく事が必要である。但し、人的な支援を手厚く実施していく場合や看護師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、等の専門職を加配した場合などの配置加算は考慮する。


U−4 財政のあり方

 

(3) 長時間介助等の地域生活支援のための財源措置

 

【表題】長時間介助等の地域生活支援のための財源措置

【結論】

○ 国は、長時間介助に必要な財源を確保する。

 

○ 地域移行者や地域生活をする重度者に関する支援サービスに関して他の支援サービスの場合における負担と支給決定のあり方とは、異なる仕組みを導入する。

 

○ 国は、地方自治体が、国庫負担基準を事実上のサービスの上限としない仕組みを財源的に担保するとともに、地方公共団体の財源負担に対する十分な地方財政措置を講じる。

 

【説明】

どんなに重度の障害者であっても、障害者権利条約第19条の「他の者と平等な選択の自由を有しつつ地域社会で生活する平等な権利」を実現することが求められる。長時間介助も、その人の障害特性やニーズ、医療的ケアの必要度等に応じて、日中の介助のみが必要な人から、24時間のパーソナルアシスタンスが必要な人まで、必要とされる介助内容は様々である。ただ、どんなに重度の障害者でも、またどこに住んでいても、地域社会で暮らす権利が満たされる為に必要な支援量は提供されるべきである。上記を満たし、各人のニーズに応じた支援が適切に届けられるために、財源を確保して支援することが必要である。

 

地域移行者の中には、出身自治体と居住自治体が分かれているケースが少なくない。住民票がある住所では地域生活が出来なかったため、入所施設や病院に長期間、社会的に入院・入所している、という住民票住所と実際の居住地が異なるケースなどである。こういう人が地域移行した場合、移行先が住所地となるため、施設や病院に近い自治体、あるいは重度者の地域移行を先進的に進めてきた自治体は、過剰な負担を強いられる可能性がある。これが、地域移行を阻害する要因の一つでもある。

 

そこで、施設・病院から地域移行する人や親元から独立して別市町村で暮らす障害者については、出身自治体が一定年度の財政負担(恒久的かどうかは検討)をした上で、居住自治体での支給決定をすることも検討してはどうか。例えば、入所施設や病院への入院・入所者の地域生活移行等を促進するため、居住地と出身地で費用を負担してはどうか。(下図参照)

 

 

ただし、入所施設やグループホーム、ケアホーム利用者の自立支援給付についての現行の居住地特例は当面継続しつつ課題を整理し、施設・病院等から地域移行する人等の扱いと併せて、そのあり方を慎重に検討することが必要である。

 

また、現状では国庫負担基準という形で実質的な予算上限を設定しているため、少なからぬ自治体が、国庫負担基準を事実上のサービス上限としている。はじめに予算ありき、ではなく、まずは障害者のニーズを中心に検討すべきである。そのニーズを積み上げる形で、必要な支給決定がなされる必要がある。障害者総合福祉法においては、障害者の実態とニーズに合わせ、「地域で暮らす権利」を保障するための財源を確保すべきである。

 

したがって、国庫負担基準については次のような考え方が考慮されるべきである。

 

(1) 地域で生活をする重度の障害者について、現行の国庫負担基準以上の負担は国の負担とすることを原則とする。ただ、そのことが無理な場合、例えば都道府県での基金化も含め市町村負担を大幅に引き下げる対応を考えるべきである。

 

(2) ホームヘルプについては、8時間を超える支給決定をする場合は、8時間を超える部分の市町村負担は5%程度に下げ、都道府県が45%を負担し、8時間以内の支給決定をする場合および8時間以上の支給決定の場合の8時間分については、市町村負担を26%とし、都道府県負担の1%を確保して使うようにする案を提示した。(下図参照)

  

なお、ホームヘルプにかかる国の負担割合は現行5割であるが、地域格差なく、必要とされるサービス提供が保障されるためには、現行以上の国の負担割合を検討すべきである。

 

  

上記の図で8時間を境にしている理由は、重度訪問介護の区分6の国庫負担基準が約40万円で、月212時間程度の単価となり、1日当たり7時間超であることから、8時間を境にしている。

 

 

 

(総合福祉部会の提言の抜粋は以上)


厚労省、都道府県向けに「医療的ケア関係業務の施行等に関する説明会

 

92日に厚労省は、都道府県向けに「医療的ケア関係業務の施行等に関する説明会」を行いました。吸引と経管栄養の改正の詳細が説明されました。(資料全文を介護制度情報のホームページにアップしました。)
例えば、今までヘルパーのみだった気管切開の吸引は、ボランティアや自費介護者や作業所や通所や入所施設や普通学校や特別支援学校や保育所等、す べての場所で誰でも研修を受けたら行えるようになります。(医療機関は医療職だけが行うので除く)
9月か10月には民間の各事業所などが吸引や経管栄養についての研修を始められる予定で、制度は来年4月1日に改正法が施行され、スタートします。
なお、吸引をすでに行っているヘルパーには、簡単な手続き(ヘルパーが書く申請書と事業所代表などの証明書の提出)でみなし認定証が都道府県から発行されます。(ヘルパーの場合はみなし資格は現状の通知のある吸引のみにしか発行されません。「特定の者」対象の場合は、重度訪問介護研修を受講済みの場合は、経管栄養の研修4時間のみを受けることになります。(重度訪問研修未受講の場合は6時間。))
主にヘルパーや教員や小規模通所の介護職員が受けることになる研修は、対象障害者が1名から数名の「特定の者」むけ研修です。(注:特定の障害者に特定の介護者が介護に入る形)。研修時間は9時間+実地研修(利用者の自宅などで実際に吸引などを行い看護師・医師等が2回判定)となります。研修は小規模なヘルパー事業所や個人でも開催可能で、6時間は看護師を確保して実施します。
一方、吸引や経管栄養利用者の多く特定の介護者が介護をするわけではない入所施設等は「不特定の者」対象の研修となり、研修時間50時間+実地研修となります。




















 

全国ホームヘルパー広域自薦登録協会のご案内

(介護保険ヘルパー広域自薦登録保障協会から名称変更しました)略称=全国広域協会

フリーダイヤル 0120−66−0009

フリーダイヤル FAX 0120−916−843

 

2009年5月より重度訪問介護の給与に12%加算手当開始(条件あり)

2009年10月より東京地区他ではさらに処遇改善事業の臨時手当220円/時加算。

(区分6むけ時給1250円の方は、加算がつくと、+150円+220円で時給1620円に。)

 

自分の介助者を登録ヘルパーにでき自分の介助専用に使えます   対象地域:47都道府県全域

介助者の登録先の事業所がみつからない方は御相談下さい。いろいろな問題が解決します。

 

 全身性障害者介護人派遣事業や自薦登録ヘルパーと同じような、登録のみのシステムを障害ヘルパー利用者と介護保険ヘルパー利用者むけに提供しています。自分で確保した介助者を自分専用に制度上のヘルパー(自薦の登録ヘルパー)として利用できます。介助者の人選、介助時間帯も自分で決めることができます。全国のホームヘルプ指定事業者を運営する障害者団体と提携し、全国でヘルパーの登録ができるシステムを整備しました。介助者時給は求人して人が集まる金額にアップする個別相談システムもあります。

 

利用の方法

 広域協会 東京本部にFAXか郵送で介助者・利用者の登録をすれば、翌日から障害や介護保険の自薦介助サービスが利用可能です。東京本部から各県の指定事業者に業務委託を行いヘルパー制度の手続きを取ります。各地の団体の決まりや給与体系とは関係なしに、広域協会専門の条件でまとめて委託する形になりますので、すべての契約条件は広域協会本部と利用者の間で利用者が困らないように話し合って決めます。ですから、問い合わせ・申し込みは東京本部0120−66−0009におかけください。

 介助者への給与は身体介護型で時給1500円(1.5時間以降は1200円)(東京都と周辺県は時給1900円。1.5時間以降は1300円)、家事型1000円、重度訪問介護で区分により時給1100(区分5以下)・1250円(区分6)・1450円(最重度)が基本ですが、長時間利用の場合、求人広告して(広告費用助成あり)人が確保できる水準になるよう時給アップの相談に乗ります。(なお、2009年5月より重度訪問介護のヘルパーには12%の保険手当を加算します。(手当は、厚生年金に入れない短時間の方のみ。また、利用時間120時間未満の利用者の介護者は加算がつきません)。介助者は1〜3級ヘルパー、介護福祉士、看護士、重度訪問介護研修修了者などのいずれかの方である必要があります。(3級は障害の制度のみ。介護保険には入れません)。重度訪問介護は、障害者が新規に無資格者を求人広告等して確保し、2日で20時間研修受講してもらえば介護に入れます。

詳しくはホームページもご覧ください http://www.kaigoseido.net/2.htm


2009年10月よりさらに大幅時給アップ

  補正予算による基金事業を財源に、2009年10月より臨時手当がつきます。各地で額は違いますが、広域協会東京ブロック(東京都と千葉県西部、埼玉県南部、神奈川県北部、山梨県東部)では、以下のように臨時手当により時給がアップします。(東京以外の地域では、時給アップではなくボーナス方式のアップの地域もあります)

09年10月以降の時給体系>

(東京ブロック(東京都と千葉県西部、埼玉県南部、神奈川県北部、山梨県東部))

重度訪問介護(最重度)

1840円(基本給1450円+保険手当170円(※2)+臨時手当220円)

重度訪問介護(区分6)

1620円(基本給1250円+保険手当150円(※2)+臨時手当220円)

重度訪問介護(区分5以下)

1450円(基本給1100円+保険手当130円(※2)+臨時手当220円)

身体介護型(※1)

1.5hまで2120円(基本給1900円+臨時手当220円)1.5h以降1510円(基本給1300円+臨時手当220円)

家事援助型(※1)

1220円(基本給1000円+臨時手当220円)

介護保険身体介護型(※1)

1.5hまで2090円(基本給1900円+臨時手当190円)1.5h以降1490円(1300円+臨時手当190円)

介護保険生活援助型(※1)

1190円(基本給1000円+臨時手当190円)

臨時手当は国の介護人材処遇改善事業の助成によるもので、2012年の報酬改定まで継続する予定です。220円は東京ブロックの金額で、他のブロックでは事業所により金額が変わります。ボーナス方式の地域もあります。詳しくはお問い合わせを。

※1)身体介護型に3級ヘルパーやみなし資格者が入る場合、時給が70%(東京地区以外の場合1.5時間まで1050円、1.5時間以降840円)、家事援助・生活援助は90%(900円)になります。

※2)保険手当は、当会で重度訪問介護を月120h以上利用している利用者のヘルパーのうち、社会保険非加入者に対して支給されます。常勤の4分の3以上稼動して社会保険に加入した場合、手当の支給はありません。 (東京ブロックは週24時間労働から厚生年金加入可能)



 

自薦介助者にヘルパー研修を実質無料で受けていただけます

求人広告費助成・フリーダイヤルでの求人電話受付代行なども実施

 

 全国広域協会の利用者の登録介助者向けに重度訪問介護研修を開催しています。東京会場では、緊急時には希望に合わせて365日毎日開催可能で、2日間で受講完了です。(東京都と隣接県の利用者は1日のみの受講でOK。残りは利用障害者自身の自宅で研修可能のため)。障害の身体介護に入れる3級ヘルパー通信研修も開催しています。通信部分(2週間)は自宅で受講でき、通学部分は東京などで3日間で受講可能。3級受講で身体介護に入ることができます。3級や重度訪問介護の研修受講後、一定時間(規定による時間数)介護に入った後、研修参加費・東京までの交通費・宿泊費・求人広告費を全額助成します。(3級は身体介護時給3割減のため、働きながら2級をとればその費用も助成対象です)。求人広告費助成・フリーダイヤル求人電話受付代行、必ず人が雇える効果的な広告方法のアドバイスなども実施。

 

このような仕組みを作り運営しています

 

全国ホームヘルパー広域自薦登録協会

(自薦登録の継続・保障のみを目的に作られた非営利団体)

        市町村への請求事務や給与支払い事務等の業務委託・提携

 

各県の指定事業者

 

(障害者団体) 

 

各県の指定事業者

 

(CILなど) 

     介護者の登録、介護料振込         介護者の登録、介護料振込

 

障害者と介護者

 

障害者と介護者

 

障害者と介護者

 

障害者と介護者

 

障害者と介護者

 

お問合せは TEL 0120−66−0009(通話料無料)へ。受付10時〜22時 

  

介護保険ヘルパー広域自薦登録保障協会 発起人(都道府県順、敬称略、2000年4月時点)

名前    (所属団体等)

花田貴博  (ベンチレーター使用者ネットワーク/CIL札幌)北海道

篠田 隆   (NPO自立生活支援センター新潟)新潟県

三澤 了   (DPI日本会議)東京都

尾上浩二  (DPI日本会議)東京都

中西正司  (DPIアジア評議委員/JIL/ヒューマンケア協会)東京都

八柳卓史  (全障連関東ブロック)東京都

樋口恵子  (NPOスタジオIL文京)東京都

佐々木信行              (ピープルファースト東京)東京都

加藤真規子              (NPO精神障害者ピアサポートセンターこらーる・たいとう)東京都

横山晃久  (全国障害者介護保障協議会/HANDS世田谷)東京都

益留俊樹  (NPO自立生活企画/NPO自立福祉会)東京都

名前  (所属団体等)

川元恭子                (全国障害者介護保障協議会/CIL小平)東京都

渡辺正直  (静岡市議/静岡障害者自立生活センター)静岡県

山田昭義  (社会福祉法人AJU自立の家)愛知県

斎藤まこと (名古屋市議/共同連/社会福祉法わっぱの会)愛知県

森本秀治  (共同連)大阪府

村田敬吾  (NPO自立生活センターほくせつ24)大阪府

光岡芳晶  (NPOすてっぷ/CIL米子)鳥取県

栗栖豊樹  (共に学びあう教育をめざす会/CILてごーす)広島県

佐々和信  (香川県筋萎縮性患者を救う会/CIL高松)香川県

藤田恵功  (HANDS高知/土佐市重度障害者の介護保障を考える会)高知県

田上支朗  (NPO重度障害者介護保障協会)熊本県

 


全国ホームヘルパー広域自薦登録協会の自薦の利用についてのQ&A

 

求人広告費用を助成・ヘルパー研修の費用や交通費・宿泊費を助成

 

 自薦ヘルパーの確保は、みなさん、どうしているのでしょうか?

  知人などに声をかけるのでしょうか?

 多くの障害者は、求人広告を使っています。多いのは駅やコンビニなどで無料で配布されているタウンワークなどです。掲載料は1週間掲載で1番小さい枠で2〜3万円ほどです。

 重度訪問介護は、かならず8時間程度以上の連続勤務にし、日給1万円以上で広告掲載します。無資格・未経験者を対象に広告を出します。(雇った直後に2日間で研修受講)

 全国広域協会では、求人広告費用も助成しています。(広告内容のアドバイスを広域協会に受け、OKが出てから広告掲載した場合で、雇った介護者が一定時間介護に入ったあとに全額助成)長時間連続の勤務体系を組めば、かならず介護者を雇用できるようにアドバイスいたします。

 また、求人広告は利用者各自の責任で出すものですが、問い合わせ電話はフリーダイヤル番号を貸付します。電話の受付も全国広域協会で代行します。

 つぎに、数人〜数十人を面接し、採用者を決めます。採用後、自分の考え方や生活のこと、介護方法などをしっかり伝え、教育します。

 その次に、たとえば重度訪問介護利用者は、雇った介護者に重度訪問介護研修(20時間)を受講させる必要があるので、東京本部や東海・関西・西日本の関係団体などで、重度訪問介護研修(東京で受講の場合は2日間で受講完了)を受講させます。

 全国広域協会では、研修受講料・交通費・宿泊費も助成しています(自薦ヘルパーが一定期間介護に入ったあとに、全額助成します。)

 (障害のヘルパー制度で身体介護利用者は、3級研修を受講することが必要で、2週間の通信研修(自宅学習)レポート提出のあと2泊3日で東京や西日本に受講に行く必要があります。3級は時給が3割ダウンですので、多くは働きながら2級研修を地元などで受講します。3級や2級の受講料は一定期間働いたあとに全額助成します)

 (介護保険のみを利用する障害者のヘルパーは、2級を受講する必要がありますので、無資格者をいきなり雇用するのは困難です。2級限定の求人を出すしかありませんが、2級を持っている労働人口が無資格者に比べてとても少ないので、かなり給与が高くないと、求人しても人が集まりにくいです。最重度の場合は介護保険を受けていても、上乗せして障害の重度訪問介護などを利用できますので、まずは障害の制度部分のみで自薦ヘルパーを雇用して、働きながら2級をとり、介護保険も自薦にするという方法があります。この場合でも2級受講料を一定時間後に助成します)

 

 全国広域協会を使う障害者の自薦ヘルパーの怪我や物品損傷などの保険・保障は?

 

 民間の損害保険に入っているので、障害者の持ち物や福祉機器を壊したり、外出介護先で無くしたりしても、損害保険で全額保障されます。

 また、ヘルパーの怪我は労災保険で、治療代や収入保障が得られます。病気で連続4日以上休むと社会保険から(常勤の4分の3以上の人に限る)保障されます。通院・入院などは民間の損害保険からも給付が出る場合があります。

 


全国ホームヘルパー広域自薦登録協会理念

47都道府県で介助者の自薦登録が可能に

障害施策の自薦登録ヘルパーの全国ネットワークを作ろう

 2003年度から全国の障害者団体が共同して47都道府県のほぼ全域(離島などを除く)で介助者の自薦登録が可能になりました。

 自薦登録ヘルパーは、最重度障害者が自立生活する基本の「社会基盤」です。重度障害者等が自分で求人広告をしたり知人の口コミで、自分で介助者を確保すれば、自由な体制で介助体制を作れます。自立生活できる重度障害者が増えます。(特にCIL等のない空白市町村で)。

 小規模な障害者団体は構成する障害者の障害種別以外の介護サービスノウハウを持たないことが多いです。たとえば、脳性まひや頚損などの団体は、ALSなど難病のノウハウや視覚障害、知的障害のノウハウを持たないことがほとんどです。

 このような場合でも、まず過疎地などでも、だれもが自薦登録をできる環境を作っておけば、解決の道筋ができます。地域に自分の障害種別の自立支援や介護ノウハウを持つ障害者団体がない場合、自分(障害者)の周辺の人の協力だけで介護体制を作れば、各県に最低1団体ある自薦登録受け入れ団体に介助者を登録すれば、自立生活を作って行く事が可能です。一般の介護サービス事業者では対応できない最重度の障害者や特殊な介護ニーズのある障害者も、自分で介護体制を作り、自立生活が可能になります。

 このように様々な障害種別の人が自分で介護体制を組み立てていくことができることで、その中から、グループができ、障害者団体に発展する数も増えていきます。

 また、自立生活をしたり、自薦ヘルパーを利用する人が増えることで、ヘルパー時間数のアップの交渉も各地で行なわれ、全国47都道府県でヘルパー制度が改善していきます。

 支援費制度が導入されることにあわせ、47都道府県でCIL等自立生活系の障害当事者団体が全国47都道府県で居宅介護(ヘルパー)指定事業者になります。

 全国の障害者団体で共同すれば、全国47都道府県でくまなく自薦登録ヘルパーを利用できるようになります。これにより、全国で重度障害者の自立が進み、ヘルパー制度時間数アップの交渉が進むと考えられます。

47都道府県の全県で、県に最低1箇所、CILや障害者団体のヘルパー指定事業所が自薦登録の受け入れを行えば、全国47都道府県のどこにすんでいる障害者も、自薦ヘルパーを登録できるようになります。(支援費制度のヘルパー指定事業者は、交通2〜3時間圏内であれば県境や市町村境を越えて利用できます)。(できれば各県に2〜3ヶ所あれば、よりいい)。

全国で交渉によって介護制度が伸びている全ての地域は、まず、自薦登録ヘルパーができてから、それから24時間要介護の1人暮らしの障害者がヘルパー時間数アップの交渉をして制度をのばしています。(他薦ヘルパーでは時間数をのばすと、各自の障害や生活スタイルに合わず、いろんな規制で生活しにくくなるので、交渉して時間数をのばさない)

自薦ヘルパーを利用することで、自分で介助者を雇い、トラブルにも自分で対応して、自分で自分の生活に責任を取っていくという事を経験していくことで、ほかの障害者の自立の支援もできるようになり、新たなCIL設立につながります。(現在では、雇い方やトラブル対応、雇用の責任などは、「介助者との関係のILP」実施CILで勉強可能)

例えば、札幌のCILで自薦登録受け入れを行って、旭川の障害者が自分で介助者を確保し自薦登録を利用した場合。それが旭川の障害者の自立や、旭川でのヘルパー制度の時間数交渉や、数年後のCIL設立につながる可能性があります。これと同じことが全国で起こります。(すでに介護保険対象者の自薦登録の取組みでは、他市町村で自立開始や交渉開始やCIL設立につながった実例がいくつかあります)

自薦登録の受付けは各団体のほか、全国共通フリーダイヤルで広域協会でも受付けます。全国で広報を行い、多くの障害者に情報が伝わる様にします。

自薦登録による事業所に入る資金は、まず経費として各団体に支払い(各団体の自薦登録利用者が増えた場合には、常勤の介護福祉士等を専従事務員として雇える費用や事業費などを支払います)、残った資金がある場合は、全国で空白地域でのCIL立ち上げ支援、24時間介護制度の交渉を行うための24時間要介護障害者の自立支援&CIL立ち上げ、海外の途上国のCIL支援など、公益活動に全額使われます。全国の団体の中から理事や評議員を選出して方針決定を行っていきます。

 これにより、将来は3300市町村に全障害にサービス提供できる1000のCILをつくり、24時間介護保障の全国実現を行ない、国の制度を全国一律で24時間保障のパーソナルアシスタント制度に変えることを目標にしています。

全国ホームヘルパー広域自薦登録協会の利用者の声

★(関西) 24時間介護の必要な人工呼吸器利用者ですが一般事業所はどこも人工呼吸器利用者へヘルパー派遣をしてくれないので、広告で募集した介助者に全国広域協会の紹介でヘルパー研修を受講してもらい、全国広域協会を利用しています。求人紙での求人募集方法のアドバイスも受けました。介助者への介助方法を教えるのは家族が支援しています。

★(東日本の過疎の町) 1人暮らしで24時間介護が必要ですが、介護保障の交渉をするために、身体介護1日5時間を全国広域協会と契約して、残り19時間は全国広域協会から助成を受け、24時間の介助者をつけて町と交渉しています。

★(東北のA市) 市内に移動介護を実施する事業所が1か所もなく、自薦登録で移動介護を使いたいのですが市が「事業所が見つからないと移動介護の決定は出せない」と言っていました。知人で介護してもいいという人が見つかり、東京で移動介護の研修を受けてもらい全国広域協会に登録し、市から全国広域協会の提携事業所に連絡してもらい、移動介護の決定がおり、利用できるようになりました。

★(西日本のB村) 村に1つしかヘルパー事業所がなくサービスが悪いので、近所の知人にヘルパー研修を受けてもらい全国広域協会に登録し自薦ヘルパーになってもらいました。

★(北海道) 視覚障害ですが、今まで市で1箇所の事業所だけが視覚障害のガイドヘルパーを行っており、今も休日や夕方5時以降は利用できません。夜の視覚障害のサークルに行くとき困っていましたら、ほかの参加者が全国広域協会を使っており、介助者を紹介してくれたので自分も夜や休日に買い物にもつかえる用になりました。

★(東北のC市) 24時間呼吸器利用のALSで介護保険を使っています。吸引してくれる介助者を自費で雇っていましたが、介護保険の事業所は吸引をしてくれないので介護保険は家事援助をわずかしか使っていませんでした。自薦の介助者がヘルパー資格をとったので全国広域協会に登録して介護保険を使えるようになり、自己負担も1割負担だけになりました。さらに、2003年の4月からは支援費制度が始まり、介護保険を目いっぱい使っているということで障害ヘルパーも毎日5時間使えるようになり、これも全国広域協会に登録しています。求人広告を出して自薦介助者は今3人になり、あわせて毎日10時間の吸引のできる介護が自薦の介助者で埋まるようになりました。求人広告の費用は全国広域協会が負担してくれました。介助者の時給も「求人して介助者がきちんと確保できる時給にしましょう」ということで相談のうえ、この地域では高めの時給に設定してくれ、介助者は安定してきました。


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