介護保険の財政、今後数年で急速に悪化
自治体代表はサービス上げに拒否感

〜第5回審議会・介護保険部会の議論より〜


 障害者の統合が一部自治体等から求められている介護保険制度ですが、財政的に裕 福とされてきた介護保険財政が、今後数年で急速に悪化する見こみが出ています。す でに高齢化率の高い町村部では保険料が月5000円を超える自治体も出ており、全 国町村会の代表委員は、介護保険のサービス水準を上げると財政的に破綻すると話し ています。
 浅野宮城県知事など障害者の介護保険への統合の賛成派は、障害が入ることにより 介護保険水準のアップなども提案しており、保険料高騰にすでに苦労し始めている高 齢化の進んだ市町村との意見の相違が注目されます。  なお、厚生労働省も審議会の資料として10年後には介護費用が現在の2倍以上の 20兆円を超えると推計しています。

第5回社会保障審議会・介護保険部会の主な議論の解説

自薦ヘルパー推進協会本部事務局  

第5回社会保障審議会・介護保険部会(10/27)の議事録が厚労省のHPに掲 載されています。 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/10/txt/s1027-1.txt

 これまでの論点整理ということで、1巡目の議論のとりまとめを行っています。
 介護保険の給付の伸びが多く、今後、財政的に維持できるのかという議論がかなり でています。
 気になる主な意見をひろってみました。

議事録の抜粋であり、各個人の発言の前後をカットしています。詳しくは厚生省HP の全文を参照してください。この抜粋をもとに各委員個人に批判などを行わないよう にお願いします

 

○介護保険財政について

■喜多委員・全国市長会介護対策特別委員会委員長(大阪府守口市長)

 「給付費が増大するなか、現行制度では国は負担に耐えられるのか」と書いてある が、「耐えられないでしょう」というのが本意であり、その辺は今後の議論の中で御 理 解いただきたい。

■矢野委員・日本経済団体連合会専務理事

 介護保険制度は、高齢者の介護サービスを給付するという制度の目的に沿って、基 本 的な部分について保障する制度であることを改めて確認する必要がある。それを超え る 部分は利用者が選択して自己負担でサービスを補うということができるようにする、 と いう制度の性格付けを常にきちんと決めておくことが必要。
 利用者が付加価値のある質の高いサービスを求めた場合は、追加的な費用を払うよ う な制度とすべき。

■下村  健  健康保険組合連合会副会長

 1つの問題点は給付が非常に高いスピードで伸びており、このままいくと、平成16 年 は何とかなるのかなと思うが、現在の介護保険料で平成17年が赤字にならないかと非 常 に気になる。あるいは第三期に入るときは相当大幅な保険料の引上げになるのではな い か。

■山本 文男  全国町村会会長(福岡県添田町長)

 保険料を決めるときの苦痛というのは、お分かりかどうか分からないが、大変なも の。下げるならいいが、少しでも上げるとなると大変。給付が足りないという意見があるが、保険料を決める立場からすれば、何を言っているのかという気持ち。保険料を ど どん上げていくということになれば、介護保険制度は破綻するよりも破滅する。だか ら、これは皆さんがよく理解をして検討していただくことが必要。
 グループホームが全く規制がないので、どんどん作っていくことになる。要らないと言っても、文句言うなら裁判で訴えると言われる。ある程度の法規制が必要。法規制 の ないようなことをやるから、介護費用がどんどん上がっていく。このままでは破滅の 時 期があと2〜3年で来る。新しい時代の新しい介護制度を真剣に検討いただきたい。

■田近 栄治  一橋大学大学院教授・経済学研究科長

 端的に言えば、保険料が5,000円を突破しているところもあり、制度がサステイン で きるかどうかは非常に厳しい。厳しい財政の中で、今やるべきことは何か。そして、 も っと根本的にやらなければいけないことは何か。その辺の仕分けが必要だ。
 今やるべきことは何かと言えば、負担とサービスの見直し。負担については、1割 負 担のままでいいのか。1割でモノが買えるなら、どんな財政だってもつわけない。そ し て負担をどうやって増やしていくか。

■花井 圭子  日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局次長

 家族介護への現金給付については行うべきでない。ドイツと違い、現金給付を入れ な かったからこそ、今日まで介護サービスの量と利用が増えてきたのだろうと思うし、 家 族介護の悲惨さというものは、これまでも相当語られてきている。もう一度現金給付 を 行う議論に対しては、賛成できない。ただし、現実に痴呆の方を抱えて家族で介護を 担 っている方たちに対しては、現金給付ではない形での支援の在り方を検討していくべ き ではないかと思う。

■小川 泰子  NPO法人湘南ふくしネットワークオンブズマン理事

 コストの問題については、古い調査だが、県や市の予算を調べてみると、ヘルパー を 1時間出すのに1万円のコストがかかっている。そのときはまだ介護保険前で、市場 の 株式会社等が出している価格で言うと6,800円。それに対してNPOは産直のような も のだから1,000円で済む。行政で請け負ってきたあるいは社会福祉法人や社協を軸に し てつくってきたものが、どれだけコストがかかっているか、無駄がないかということ を 考えないといけない。財源の問題の前にコストパフォーマンスの問題を考えなくては な らない。


○被保険者の範囲について

■矢野委員・日本経済団体連合会専務理事

 被保険者の範囲については、給付の在り方を見直さずに安易に被保険者の範囲を広 げ ることには賛成できない。社会保障制度全般について言えるが、現役世代から高齢世代 への所得再配分の傾向が強まっている。一方、税制を見ると高齢者の優遇措置があ り、 資産の高齢者への偏りもあることを考えれば、若年層は税金で納めているという考え方 ができる。


○ケアマネジメントについて

■西島 英利  日本医師会常任理事

 ケアプランの問題については、介護支援専門員が非常に多くの数を必要としていることに問題がある。施設ケアの場合は歴史があり、看護計画、介護計画、更にはソー シャ ルワーカーというマンパワーがいるわけで、介護支援専門員は居宅介護支援に特化し て いくべきだと思う。そうすることでケアプランの充実につながっていくと思う。

■永島 光枝  呆け老人を抱える家族の会理事

 痴呆の人のケアについては、介護する側、ケアする側の視点ですべてが語られている気がする。例えば、ショートステイは、本人がどういうふうになるのかというより は、 むしろ家族が休養するためのケアということでしか現状ではあり得ていない。痴呆の人の本人の感じ方ということを、もう少し全体のケアの中に取り入れて考えなくてはい け ないのではないか。
 本人の思いを知るというアンケート調査をしているが、それを見ると初めの頃に本人がどんなに悩み、心細い思いをしているかがよく分かる。いわゆるグレーゾーンとい う ところで非常に悩んでいることが多い。

■京極 高宣  日本社会事業大学学長

 介護労働者の需給調整あるいは質的アップ等の問題については、新しい段階を迎え て いるのではないかという気もするので、少し検討を要するのではないか。
 ケアマネの水準アップというのは21世紀の最大の課題だと思うので、抜本的に見直 す必要がある。


○医療行為

■花井 圭子  日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局次長

 ヘルパーの医療行為の範囲が、最近、在宅ALSの方についてだけ、痰の吸引に 限っ て認められるようになったが、例えば、血圧測定や爪切りぐらいは実際的には行われていることが多いという話も聞く。もう一度ヘルパーの医療行為の範囲について検討してはどうかと思う。

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