看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会議事録  厚労省へリンク

厚生労働省から出された通達

医政局長通達  健康局疾病対策課長通達  老健局振興課長通達  同意書(例)  原文PDF


 

2003年5月13日、厚生省のALS等に対する吸引の検討会が終了しました。
 以下の報告書案が出ました。
 今後はALSの方が病院から退院する際に病院から(家族と同様に)ヘルパーやボランティアに吸引方法などの研修を受けられるようになっていくと思われます。

(なお、ALS以外については今までと変わりません。つまり、従来の見解である、「吸引は「原則として」医療行為であるという見解なので、原則と書いてあるので例外はあります。すべての吸引が医療行為かと聞かれたら、それは違うとはっきりいえます」(2001年12月厚生省談)「介護保険や障害の指定事業者が吸引をやっているからといって指定取り消しになることはありません」(2001年12月厚生省談)の内容は何も変わっていませんとのことです。)

H15.06.03(火)9:23〜9:40 厚生労働記者会見の一部


厚生労働省WEBに分科会報告書(最終)が掲載されました。(平成15年6月9日)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/06/s0609-4.html

「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」報告書(案)

看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会(第8回=最終回)にて配布
日時:平成15年5月13日(火)18:00-20:00
場所:厚生労働省省議室(9階)

(この案は5/13当日資料用に提出されたものであります。当日の議論の結果この案から更に加筆修正されることになりましたので、5月13日時点での案としてお読みください。
 尚、これまでの議論の経緯を知りたい方は、ALS協会新潟支部HPが詳しいです。
または、、http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.html#iseiの中の「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科 会」をご参考ください。)

1.はじめに

  •  ALS患者のたんの吸引については、当該行為が患者の身体に及ぼす危険性にかんがみ、原則として、医師又は看護職員が行うべきものとされてきた。
  •  在宅ALS患者にとっては、頻繁にたんの吸引が必要であることから、家族が24時間体制で介護を行っているなど、患者・家族の負担が非常に大きくなっており、その負担の軽減を図ることが求められている。
  •  このような現状にかんがみ、在宅ALS患者に対するたんの吸引行為についての患者・家族の負担の軽減を図るための方策について検討するため、平成15年2月3日に当分科会が設置された。
  •  当分科会においては、患者家族、看護職員、ヘルパー等の関係者からヒアリングを行うなど、在宅ALS患者の療養生活の質の向上を図るための看護師等の役割及びALS患者に対するたんの吸引行為の医学的・法律学的整理について、 回にわたって検討してきたところである。
  •  今般、当分科会として、これまでの議論を整理し、本報告書を取りまとめたので、これを公表するものである。

2.在宅ALS患者の療養環境の向上を図るための措置について

(1) 在宅療養サービスの充実
 

@ 施策の総合的な推進

  •  ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、筋萎縮と筋力低下が特徴的な疾患であり、徐々に全身に拡がり、歩行困難になるほか、言語障害、嚥下障害、呼吸障害に及ぶものであり、病気の進行により、コミュニケーションも阻害され、ベッド 上の生活を強いられる患者の苦悩は計り知れない。
  •  患者は長期にわたる療養を余儀なくされている状況にあり、人工呼吸器を装着しながら在宅で療養している患者にとっては、頻繁にたんの吸引が必要なこともあり、患者及び患者を介護する家族にとっての負担は大きい。
  •  こうした現状を踏まえ、患者のQOLの向上や患者及び家族の負担の軽減を図るため、在宅ALS患者の療養環境の更なる向上が求められており、患者が家族の介護のみに依存しなくても、円滑な在宅療養生活を送ることができるよう、以下のような施策を総合的に推進していく必要がある。
 

A 訪問看護サービスの充実と質の向上

  •  在宅ALS患者の療養生活を支援するためには、訪問看護サービスが十分に提供されることが重要であり、引き続き訪問看護サービスの充実を図っていくことが求められる。
  •  また、在宅ALS患者が必要なときに適切な訪問看護サービスを受けることができるようにするためには、診療報酬で定められた回数を超える訪問看護の費用を補助している「在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業」を積極的に活用するよう、実施主体である都道府県に対して事業の周知徹底を図り、その取組を促進していく必要がある。
  •  さらに、24時間の巡回型訪問看護の実施に向けては、同一日に、一人の利用者に対し、複数の訪問看護事業所(訪問看護を実施する医療機関及び訪問看護ステーションをいう。以下同じ。)から複数回の訪問看護を行えるようにする必要があることから診療報酬上の要件について検討することが望まれる。
  •  訪問看護の質の確保については、訪問看護師に対する研修や潜在看護師に対する研修等訪問看護サービスを担うべき看護職員の質を高めるための施策を講ずるべきである。
 

B 医療サービスと福祉サービスの適切な連携確保

  •  ALS患者の在宅療養の支援に関しては、医療機関、訪問看護事業所、訪問介護事業所などのサービス提供機関、あるいは、都道府県等の保健所や市区町村の担当部局など、医療や福祉などの関係機関が多岐にわたっているが、各種サービスの患者への提供についての総合的な連携・調整が十分とは言えない状況にあることから、各機関が相互の連携を適切に図り、地域でのチームケア体制を確立していくことが求められている。このため、国及び地方公共団体において、引き続き、各機関の連携体制や地域のチームケア体制の確立を支援するための施策を講ずるべきである。
  •  医学的な管理が必要である在宅ALS患者については、チームケア体制において、主治医(入院先の医師や在宅のかかりつけ医)が中心となるべきである。また、患者の退院時指導に際しては、医療や福祉の関係者を参加させるなど、入院期間中から地域でのチームケア体制の確立を図るべきである。なお、在宅ALS患者の主治医に対しては、ALSに関する情報提供が行われることが必要である。また、国及び地方公共団体において、「特定疾患医療従事者研修」や「難病患者等ホームヘルパー養成研修事業」など、医療や福祉の関係者の研修を引き続き適切に実施する必要がある。
  •  また、介護保険制度の導入に伴い、保健所保健師等の難病患者への関わりが弱まったという指摘もあるが、在宅ALS患者を支援するチームケア体制の確立の上で、医療のニーズが高い患者にとって、各種サービスが最適な組み合わせとなるようにするためには、保健所保健師等が担うべき総合的な調整機能は極めて重要であり、今後とも当該機能の充実強化を図るべきである。
  •  なお、平成15年度から開始される難病相談・支援センター事業を推進するなど、ALS患者や家族に対する相談・支援などを充実させる必要がある。
 

C 在宅療養を支援する機器の開発

  •  たんの自動吸引装置等在宅療養を支援する機器の開発・普及の促進は、患者及び家族の負担の軽減に資するものであることから、引き続き機器の研究開発及び普及の促進を図るための措置を講じるべきである。
 

D 家族の休息(レスパイト)の確保

  •  家族に必要な休息(レスパイト)を確保し、在宅ALS患者の療養環境の向上を図るため、今後とも、ホームヘルプサービス事業、ショートステイやデイサービス事業などの各種の施策の充実を図っていく必要がある。
  •  なお、都道府県や市町村において、独自に先進的な事業に取り組んでいるところもあり、これらの施策が有効に活用され、また、各地における取組の参考となるように、各種施策の情報提供や周知に努めるべきである。
(2) 入院と在宅療養の的確な組合せ
 

@ 入院から在宅への円滑な移行

  •  在宅への移行の判断は、医師の判断に基づくものであるが、患者の病状や患者の療養環境も踏まえた、適切な退院時指導の実施を促進するため、退院時指導の基本的なルール作りが必要である。
 

A 緊急時等の入院施設の確保

  •  患者の病態急変などに対応するため、引き続き入院施設を確保するための施策の推進が必要である。

3.たんの吸引行為について

(1) たんの吸引の安全な実施
 

@ 専門的排たん法の普及

  •  専門的排たん法(体位排たん法、呼吸介助法(スクィージング)、軽打法、振動法など)が適切に実施されれば、たんの吸引の回数を減少させることができることから、たんの吸引に伴う患者及び家族の負担の軽減を図るためにも、専門 的排たん法の普及促進に努める必要がある。
 

A 日常的なたんの吸引に関する適切な対応

  •  日常的なたんの吸引については、行為の危険性に応じた適切な対応(プロトコル)を示すことが必要である。
(2)

家族以外の者によるたんの吸引について

  •  たんの吸引は、その危険性を考慮すれば、医師又は看護職員が行うことが原則であり、ALS患者に対する家族以外の者(医師及び看護職員を除く。以下「家族以外の者」という。)によるたんの吸引については、医師及び看護職員により十分にサービスが提供されるならば、実施する必要はないと考えられる。
  •  しかしながら、たんの吸引は頻繁に行う必要があることから、大部分の在宅ALS患者において、医師や看護職員によるたんの吸引に加えて、家族が行っているのが現状であり、家族の負担軽減が求められている。このような在宅療養の現状にかんがみれば、家族以外の者によるたんの吸引の実施についても、一定の条件の下では、当面の措置として行うこともやむを得ないものと考えられる。この場合においても、医療サービスを受ける機会が閉ざされることのないよう、医師及び看護職員が積極的に関わっていくべきである。
  •  なお、この取扱いについては、訪問看護サービスの更なる充実やたんの自動吸引装置の開発・普及の進展等、今後における在宅療養環境の変化に応じて、適宜・適切に見直すことが必要であり、まずは3年後に今回の措置の実施状況や在宅ALS患者を取り巻く療養環境の整備状況等について確認すべきである。
  •  また、今回の措置は在宅ALS患者の療養環境の現状にかんがみ、当面やむを得ない措置として実施するものであって、ホームヘルパー業務として位置付けられるものではないが、医療と福祉の関係、それぞれの役割分担も含めて、在宅医療に携わる者の行う業務や在宅医療そのものの在り方についての議論が必要であるという意見もあり、これについては、今後検討すべき課題であると考える。
  •  以下は、家族以外の者が患者に対してたんの吸引を行う場合の条件を示したものである。

@)療養環境の管理

  •  入院先の医師は、患者の病状等を把握し、退院が可能かどうかについて総合的に判断を行う。
  •  入院先の医師及び看護職員は、患者が入院から在宅に移行する前に、当該患者について、家族や在宅のかかりつけ医、看護職員、保健所保健師、家族以外の者等患者の在宅療養に関わる者の役割や連携体制などの状況を把握・確認する。
  •  入院先の医師は、患者や家族に対して、在宅に移行することについて、事前 に説明を適切に行い、患者の理解を得る。
  •  入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員は、患者の在宅への移行に備え、医療機器・衛生材料等必要な準備を関係者の連携の下に行う。医療機器・衛生材料等については、患者の状態に合わせ、入院先の医師や在宅のかかりつけ医が必要かつ十分に患者に提供することが必要である。
  •  家族、入院先の医師、在宅のかかりつけ医、看護職員、保健所保健師、家族以外の者等患者の在宅療養に関わる者は、患者が在宅に移行した後も、相互に密接な連携を確保する。

A)在宅患者の適切な医学的管理

  •  入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員は、当該患者について、定期的な診療や訪問看護を行い、適切な医学的管理を行う。

B)家族以外の者に対する教育

  •  入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員は、家族以外の者に対して、ALSやたんの吸引に関する必要な知識を習得させるとともに、当該患者についてのたんの吸引方法についての指導を行う。

C)患者との関係

  •  患者は、必要な知識及びたんの吸引の方法を習得した家族以外の者に対してたんの吸引について依頼するとともに、当該家族以外の者が自己のたんの吸引を実施することについて、文書により同意する。

D)医師及び看護職員との連携による適正なたんの吸引の実施(注:別紙参照)

  •  適切な医学的管理の下で、当該患者に対して適切な訪問看護体制がとられていることを原則とし、当該家族以外の者は、入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員の指導の下で、家族、入院先の医師、在宅のかかりつけ医及び看護職員との連携を密にして、適正なたんの吸引を実施する。
  •  この場合において、気管カニューレ下端より肺側の気管内吸引については、迷走神経そうを刺激することにより、呼吸停止や心停止を引き起こす可能性があるなど、危険性が高いことから、家族以外の者が行うたんの吸引の範囲は、口鼻腔内吸引及び気管カニューレ内部までの気管内吸引を限度とする。
  •  入院先の医師や在宅のかかりつけ医及び看護職員は、定期的に、当該家族以外の者がたんの吸引を適正に行うことができていることを確認する。

E)緊急時の連絡・支援体制の確保

  •  家族、入院先の医師、在宅のかかりつけ医、看護職員、保健所保健師及び家族以外の者等の間で、緊急時の連絡・支援体制を確保する。

4 おわりに

  •  本検討会では、在宅ALS患者の在宅療養環境の向上を図るとともに、患者及び家族の負担を軽減する観点から、必要な措置について検討を重ねてきた。
  •  これらの措置が有効に機能するためには、在宅ALS患者の療養生活を支援する関係者が一体となって取り組むことが不可欠であり、国及び地方公共団体を始め、関係者の更なる努力を期待するとともに、これらの措置を通じて、患者及び家族の療養環境が向上していくことが望まれる。


(H15.06.03(火)9:23〜9:40 厚生労働記者会見)

記 者

 ALS患者さんの吸引の問題なんですが、大臣の昨年11月のご指示で検討会 が設置されて、ようやく報告書の形でまとまったんですけれども、その内容につ いてALSの患者さん団体の方はALSの在宅のみに限られているとか、他の疾 病、例えば筋ジストロフィーとか、他の疾病で吸引が必要とされている人たちに は、報告書ではどうも対象になっていないということに不満というか、さらに検 討して欲しいというような要望が出されているようですけれども、大臣のお考え として吸引問題だけに限らずですけれども、医療と介護の狭間というか、医療行 為のあり方についてどのようなお考えがあるかお聞かせ下さい。

大 臣

 ALSの皆さま方からご依頼を受けてスタートしたことでございますが、これ は本来はALSだけにとどまった話ではないと私も思っております。ただどこか の問題を中心にして議論をして、そして決着をつけて風穴をあけないと全体に広 がっていかないわけでございますから、まずその点でお話をさせていただきまし た。ALSの場合には非常に難しいほうでございまして、口腔内に溜まりました 痰を取るというだけではなくて、喉のところに手術をされてそしてそこに人工呼 吸器等をつけておみえになるわけでございますから、そうした皆さん方が痰を取 るというのはそこも取らなければいけないわけでありまして、ふつうの口腔内に おける痰を取るというのよりも非常に難しいというふうに思っております。ここ で認めるということになれば、他のところに対しましてもそれ相応の対応をする のが妥当だと私は思っております。したがいまして、介護のいわゆる介護士さん の皆さん方も非常に訓練を積んで、そしていろいろなことを出来るようになって まいっておりますから、そうした皆さん方に対して出来ることはお渡しをしてい くということにしないといけないというふうに思っております。医師でなければ 出来ない、看護師でなければ出来ないということではないと私は思っておりま す。したがってもう少しそこは段階的に拡大をしていくということでなければい けないというふうに思います。いつかも申し上げましたように、初めは血圧を計 ることすら抵抗がございまして、それをやることは医師法違反だといったような 意見も最初はあったわけでございますから、最近は機械も発達をいたしましたけ れども、個人が計ろうと、あるいはまた看護師さんが計ろうと、もう保健師さん はもちろんでございますけれども、あらゆる人が計っているわけでありまして、 私は出来ることはみんながやれるようにしていけばいいというふうに思います。 ただその結果の判断というものについては、それは専門的な知識が必要でござい ますから、そこは専門家にお任せをするということでよろしいのではないかとい うふうに思っております。したがいまして、痰を吸引をするということにおきま しても、ただ吸引をするというだけではなくて痰の量が非常に増えてきたといっ たような時、あるいはまた痰が非常に濃厚になって、そして普段とは違うといっ たような時、そうした時にはやはり専門家にそのことを報告をするといったよう なことは必要なことだというふうに思っております。

記者会見内容全文は厚生省ホームページに掲載されています http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2003/06/k0603.html

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