介護保険改正の大まかな厚生労働省案が出る
7月16日に社会保障審議会の介護保険部会があり、厚生労働省は「制度見直しの具体的内容(案)」を出しました。また、介護保険の範囲を20歳からに拡大することについては賛成・反対意見の両論併記となりました。
「制度見直しの具体的内容(案)」では、大まかな方向として、以下の制度改正の方向が示されました。
支援費制度は介護保険の制度の多くの部分とおなじ制度設計がされており、介護保険の改正にあわせて支援費も改正される可能性が大きくなっています。
介護予防の重視
老人を以下の3分類にわけ、2の廃用症候群モデルについては、ホームヘルプの利用を制限して介護予防・リハビリテーションを行う。
1、脳卒中モデル(要介護3〜5が多い) 2、廃用症候群モデル(徐々に生活機能が低下するモデル。要介護1以下に多い) 3、痴呆モデル(要介護1〜5いろいろ)
また要介護認定のほかに上記2に該当する老人のスクリーニング(振り分け)を行うシステムを作る。この予防給付は民間事業所やボランティア組織も活用する。介護報酬についても月単位やプログラム単位の包括的な設定とする。
施設給付の見直し
個室化を勧め、施設の家賃部分や食費の自己負担をとり、介護の費用のみ保険の対象にする。
利用者負担を2〜3割にする意見もあるが、これには否定的な案となっている。
ホームヘルプについて
「身体介護」「生活援助」という現行の区分を、行為別・機能別に再編し、基準・報酬の設定について見直す。
利用者が自らできるにもかかわらず、掃除・調理等を代行する「家事代行」は見直し。
通所サービスについて
デイサービス、通所リハなどについては、「リハビリ中心型」「痴呆対応型」「社会参加型」に類型化し、基準・単価を見直す。
福祉用具・住宅改造について
福祉用具の購入については、事業者の指定制度を導入する。
住宅改造は市町村への事前申請制度を導入する。
地域密着サービスの創設
「痴呆モデル」「独居モデル」に対応できるように、地域密着型サービスを創設。
地域密着型サービスの例として、「小規模多機能型」サービスや、「地域夜間対象型」「痴呆専門デイサービス」「小規模住宅系サービス」「小規模入所系サービス」がある。
地域密着型サービスは市町村が指定を行う。
グループホームも市町村が指定できることに変更。その設置数も市町村が制限できるようにする。
*「小規模多機能型サービス」とは、「通い」「泊まり」「訪問」「居住」などの機能を小規模で利用者に合わせて自由に組み合わせて実施する形態の総称。
居住系サービスの体系的見直し
「特定施設入所者生活介護」の対象を現行の介護有料老人ホームやケアハウス以外のも拡大する。
入所施設は、現行の「包括型」(1ヶ月定額で介護報酬を支払う方法)だけでなく、「外部サービス利用型」も認める。
「地域夜間対応型」や「地域見守り型」のサービスについて
現行制度は夜間も定時巡回ホームヘルプしかないうえ、日中も一定の時間帯のサービスに限られている。夜間や緊急時のニーズに対応するため、一定の地域を単位に、高齢者からの通報で直ちに対応が取れる体制などを導入。
ケアマネジメント
ケアマネージャーの研修を強化。更新時も研修を実施。基準や報酬と連動した研修・資格の体系見直し。罰則強化。 事業所の指定とケアマネージャーの指定を2重に行う「2重指定制度」の導入。
人材について
ホームヘルパーは26万人の実働者のうち介護福祉士は1割。2級ヘルパーが事実上標準的な任用資格となっている。将来的には任用資格は介護福祉士を基本とすべきなので、これを前提に現任者の研修も見直しを進める。
介護保険料
65歳以上の1号については、保険料の軽減の範囲を検討。 (65歳未満の2号については、現行は全国1律)
市町村の関与の強化
利用が主に市町村の範囲のサービスについては、市町村が子弟・指導鑑査を行う。
複数の市町村にまたがるサービスの場合も、都道府県の指定にあたって、市町村の意見聴取を義務付ける。
見直しの進め方
・ 上記の「介護要望システムの確立」や「新たなサービス体系の確立」など、一定の準備時間が必要なものは、3〜4年かけて開始。
・ 「施設給付の見直し」や、グループホームなどへの市町村指定については、制度改正ですぐに実施される。
*全文は介護制度情報ホームページからリンクしています
障害者への影響は?
介護保険と支援費が統合されない場合でも、介護保険の制度改正に合わせて、支援費制度も同様の改正がされると予想されます。身体介護や家事援助の体系が変わることが予想されます。また、障害者に影響が予想されるものとしては、「地域夜間対応型」があります。これが全国に導入されると、夜間滞在介護が必要な障害者も、夜間緊急サービスがあれば命にはかかわらないだろうと市に言われ、夜間のホームヘルプの決定が受けられないことになる可能性が大きいです。今後の介護保険の動向に注目が必要です。
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