特定の者の研修講師について厚労省による解説情報
医療的ケア研修のうち、特定の者(第3号研修)の講師について、他団体が厚労省に問い合わせたそうです。その結果について情報提供してもらったので転載します。
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話の発端は、A県の障害者団体からの問い合わせでした。A県では、平成23年度の指導者養成事業では、国の実施要綱どおり「DVD自己学習→レポート提出」で講師になれる看護師を増やしていました。しかし、「DVD自己学習→レポート提出」の修了看護師を講師に据えたケースで研修が上手くいかなかったケースがあったそうです。このため、A県は、今年の改正法施行を契機として、講師になる看護師に「座学による指導者講習」を必須とする方針に転換したそうです。
ただ、もともと特定の者の研修制度は、障害者にいつも訪問看護を提供している看護師が、実地研修の指導看護師を務めることを念頭に置いた制度です。このため、忙しい訪問看護師に県庁所在地まで出向いてもらって「座学による指導者講習」を受けてもらうのは難しいので困っている、というのが障害者団体からの問い合わせ内容でした。
そこで、厚生労働省障害福祉課福祉サービス係に問い合わせました。関係法令とともに整理します。
1.「社会福祉士及び介護福祉士法」附則第8条第1項第1号(登録研修機関の登録基準)では、
喀痰吸引等に関する法律制度及び実務に関する科目について喀痰吸引等研修の業務を実施するものであること。
とされていて、さらに同第2号では、
前号の喀痰吸引等に関する実務に関する科目にあつては、医師、看護師その他の厚生労働省令で定める者が講師として喀痰吸引等研修の業務に従事するものであること。
とされています。
2.省令の施行通知「平成23年社援発1111第1号」の第5の(2)では、
・・・喀痰吸引等の実務に関する科目・・・は、・・・別表第3においては、第1号の基本研修のうち、科目「重度障害児・者等の地域生活等に関する講義」を除く全ての科目を指すものであること。
・・・「重度障害児・者等の地域生活等に関する講義」については、当該科目について相当の学識経験を有する者を講師として差し支えないこと。
とされています。つまり、特定の者の研修の場合、「基本研修9時間のうち7時間」と「実地研修のすべて」について、「医師、看護師その他の厚生労働省令で定める者(=保健師、助産師)」が講師を務めることを規定しています。
3.以上を踏まえ、施行通知の第5の(3)では、「喀痰吸引等の実務に関する科目」について、
・・・以下の指導者向け研修を修了した者が、研修課程に応じて講師を行うことが望ましいこと。
と要請しています。つまり、特定の者の研修の場合、「喀痰吸引等の実務に関する科目」に該当する「基本研修9時間のうち7時間」と「実地研修のすべて」について、
(1) 平成23年度の指導者養成事業を修了した医師、保健師、助産師、看護師
(2) これに相当する知識及び技能を有すると認められる医師、保健師、助産師、看護師
が講師を務めることが望ましい、ということになっています。
4.ここで、平成23年度の指導者養成事業の実施要綱「平成23年障発0914第3号」では、指導者養成事業を「座学による指導者講習」と「DVD自己学習→レポート提出」のどちらで修了してもOKと書かれています。
つまり、現行制度における特定の者の研修の「基本研修9時間のうち7時間」と「実地研修のすべて」の講師は、
(1)−1 平成23年度の指導者養成事業を「座学による指導者講習」で修了した医師、保健師、助産師、看護師
(1)−2 平成23年度の指導者養成事業を「DVD自己学習→レポート提出」で修了した医師、保健師、助産師、看護師
(2) (1)−1や(1)−2に相当する知識及び技能を有すると認められる医師、保健師、助産師、看護師
の3類型が考えられます。
5.このため、(2)に該当する看護師などについて「(1)−1や(1)−2に相当する知識及び技能を有する」と認めるうえで、
(2)−1 「座学の指導者講習を必須」とするか、
(2)−2 「DVD自己学習→レポート提出で良い」のか、
(2)−3 「DVD自己学習すら課さない」のか、
は、都道府県の判断に拠ることになります。
6.しかし、現実の問題として、(2)−1の「座学による指導者講習」であれ、(2)−2の「DVD自己学習→レポート提出」であれ、その内容は「基本研修9時間のうち7時間」に対応するものになっています。ですから、少なくとも「実地研修のすべて」の講師を担当する看護師などについては、「座学による指導者講習」も「DVD自己学習→レポート提出」もほとんど意味がありません。むしろ、普段から訪問看護師として利用者に医療的ケアを提供し、個人個人で独特な医療的ケアの手技に熟練していることの方が重要です(by厚労省福祉サービス係)。
7.さらに言えば、新法に基づく医療的ケアを普及させていくうえでは、少なくとも「実地研修のすべて」の講師を担当する看護師などについては、要件を厳しく設定するのではなく、なるべく門戸を広く開放すべきだ、ということで、厚労省障害福祉課から都道府県に話しているそうです(by厚労省福祉サービス係)。
■「社会福祉士及び介護福祉士法」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S62/S62HO030.html
■省令の施行通知「平成23年社援発1111第1号」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/tannokyuuin/dl/2-4-3.pdf
■平成23年度の指導者養成事業の実施要綱「平成23年障発0914第3号」
http://www.okinawa.med.or.jp/doctors/kaigo/kaigo-doc/h231008-6k.pdf
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